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ディーヴァ
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ラドのアホ率が高いことを知り、奏は彼の前では真剣に話そうと決める。
「司令官命様のことよ。お兄ちゃんも譜王命と呼んで」
「なるほどディーヴァの王子は信仰対象ではあるからな。おお譜王命よ」
真剣な話である。
「ラド殿おおおおお! 奏殿をお預かりに上がりましたビトスです!」
ラドによって開け放たれていた扉の奥に茶髪のポニーテールで場違いなメイド服を着たボンキュッボンの女の人がやって来て、奏は目を釣り上げてこの世の全ての者を絶滅させる目で彼女のボンキュッボンを眺めた。
ボンッボンッボンッボボンッになれえええええ!
「奏殿、私は美兎須、ビトスと申します! 仲良くしてください!」
「は、はい」
気さくで素敵な人。ボンキュッボンのままでいいわ。憧れの対象として見――……
「私のこれは通常運転ですが、奏殿は同い年なので敬語でなくて良いです!」
「ボンッボンッボンッボンッボンッボンッボンッボンッボンになれえええええ!」
「ボン? ボンッボンッボンとは?」
「いいえ何でもないのですのよおほほほほほ」
「奏殿は面白い方ですね!」
ビトスはハッとして、「ラド殿それどころではないのです! 緊急事態です、大変なんです! 早く操縦席に乗ってください! 司令官が呼んでいます」と、ラドの腕を引っ張ろうとする。
胸が当たるそれにデレデレしたラドが。
「俺は行かない。嫌だと言っててくれ!」
と、ビトスの絡みついて来る腕を丁寧に外した。
「お兄ちゃん、司令官って偉い人なんじゃないの? 行かなきゃダメじゃない?」
「俺にはやるべきことが残っているし、今回の任務に指名されたのがたまたま譜王命(ふおうのみこと)様だっただけだからな。命令は聞かなくていい。あ、お前は聞いた方がいいぞ」
「殺されても知らないわよ」
そんなことする人とは思えないけど。例えよ、例え。
「いいさ。あいつなら」
え。
何よそれ。
死ぬことが怖くないって言うの、あの人ならって何よ。
私だってあの人に信仰心を覚えているけど、殺されて許せるほどではないわ。
お兄ちゃんは、怖くないの?
私は、私は、あんなに怖かったのに。そして焦がれたのに。
あんなに悶々としたのに。
即答しないでよ。
「なんてな、絶対いやだ!! 俺は死んでも生きるぞ!」
「は?」
奏が物凄い殺気と共に視線を送れば、送られた相手はギョッとして後ずさる。
そんなに簡単に冗談だと言われてもムカつくわよ。
どうして簡単に生きると言えるのか。
私は今死にたいと思っても、殺されたいとは思っていない。
自分の生死の判断が難しい。
葛藤ばかりしている、生きるか、死ぬか。
即答できたらどれほど良いか。
「は? って。俺は死なないぞ、今日まで生きて来たのにあいつに殺されるとか嫌だ。まあ殺されないから安心してくれ」
「それは分かってるけど。敵が来たんだよね。危険なんでしょ、気を付けてね」
奏が心配して眉を寄せると、ラドは頬っぺたを赤くして頭を掻く。
「いやぁ。妹に心配される気持ちってこんなのなのかなぁ」
「はあ?」
「じゃ、俺は行くからな。ビトスと一緒に譜王のところに行ってこい!」
「う、うん」
ラドが去っていくと、ビトスが「こちらです!」と操縦室へと案内する。
奏はビトスの案内の元、操縦席へと無事乗り込めた。
そこには司令官の譜王もおり、船体同士の戦闘の指示を出しているようだった。
奏は邪魔にならないよう、端で小さくなる。ビトスに空いている座席に座るように言われ、奏は一番後ろの端の席に座った。
「敵の機体一機接近。左斜め上空に並ばれました!」
「敵はドッキングしようとしています!」
なんかやばそうね。
と、奏が縮こまっていると。
「――司令官!」
男性の一声が響き、その空間に緊張が走る。
「――敵機体から通信です!」
『答える』
「――……繋がりました!」
大画面が出現し、そこに童顔の少女が現れる。いや童顔と言うか子供では?
『姫存軍司令官だ。要件はなんだ』
〈KTB少尉堕。君はなかなか真珠のよう堕〉
『真珠?』
あの……譜王命口説いてない? って言うか子供でも少尉なの、少尉って偉いの?
〈今から君たちの船にぶつかろうと思雨! いやならドッキングさせて貰おう下!〉
奏はすぐ隣の窓の外を覗く。やや上を見ると、敵の機体が見えた。
敵の機体は姫存軍の船より小さいが、姫存軍の船は飛行船だ、ガス袋を破れたらおしまいである。それに向こうは飛行船よりはまだ小さいがそれなりの巨大な戦闘機だ。ガス袋を破いてもその後はうまく交わして飛行し続けるだろう。
『結合しろ』
「――は、はい」
〈それで良違!〉
譜王の判断により機体と船体がドッキングし、飛行船の周囲には他の戦闘機が並んで包囲される。
姫存軍が逃げ切るのは難しいだろう。
〈ではお姫様を貰おう下〉
『何?』
〈お姫様をお迎え出来たら全員見逃してやろ雨。だが、断れば、全員皆殺し堕〉
『…………っ』
奏は自分のことで譜王が決断を遅らせていることに気が付いていた。彼女は立ち上がり、譜王の肩を叩いて彼を振り向かせる。
「行きます」
『奏……!』
ビトスがビックリした顔をした後、ごくりと唾を飲み込む。
譜王は俯き、敵の少尉が笑顔で言ってきた。
「その子がお姫様下! 可愛い子堕奈!」
「えええ!? そうですかぁ?」
いやぁ、とデレデレと頭を掻く奏に、ピリピリした空気が……とその場にいる全員が思う。
『奏……』
「大丈夫です。私、強者でお姫様なんですよね。それに、まだここにはいないあの人がいるじゃないですか」
譜王はそれを聞いて、強ばらせていた顔を緩めた。
『……そうだな。頼んだぞ』
「はい!」
奏は元気に飛び出していき、船体の廊下を走った。
廊下を走っている途中で、乗り込んで来ていたKTBの隊員に出くわす。
輝く銀色の髪。
水晶のように美しい青い瞳。
スーツの上の腰や太ももに通信機やホルスター、銃やナイフが装備されている。
容姿は一般人と比べても飛び抜けて美しく、譜王と比べるとややほんわかした雰囲気だった。
ただ、その顔付きや仕草は、暗いオーラを放ちそうなほどその場を殺伐とさせている。
「カナタ……」
「奏。KTBに捕まる前に俺が殺す」
カナタが乗り込んで来ていた理由はそう言うことなのね。
「私、自分で死ぬって言ったよね」
「――そんなことさせるかッ!!」
空気が震えてカナタが怒鳴ったことが分かる、奏はその声にビクッと身体を震わせた。
奏は眉を下げて、カナタの鋭い眼光を見上げる。
「ど、どうして」
死んで欲しいんじゃなかったの。
だから私を殺そうとするんでしょ。
「司令官命様のことよ。お兄ちゃんも譜王命と呼んで」
「なるほどディーヴァの王子は信仰対象ではあるからな。おお譜王命よ」
真剣な話である。
「ラド殿おおおおお! 奏殿をお預かりに上がりましたビトスです!」
ラドによって開け放たれていた扉の奥に茶髪のポニーテールで場違いなメイド服を着たボンキュッボンの女の人がやって来て、奏は目を釣り上げてこの世の全ての者を絶滅させる目で彼女のボンキュッボンを眺めた。
ボンッボンッボンッボボンッになれえええええ!
「奏殿、私は美兎須、ビトスと申します! 仲良くしてください!」
「は、はい」
気さくで素敵な人。ボンキュッボンのままでいいわ。憧れの対象として見――……
「私のこれは通常運転ですが、奏殿は同い年なので敬語でなくて良いです!」
「ボンッボンッボンッボンッボンッボンッボンッボンッボンになれえええええ!」
「ボン? ボンッボンッボンとは?」
「いいえ何でもないのですのよおほほほほほ」
「奏殿は面白い方ですね!」
ビトスはハッとして、「ラド殿それどころではないのです! 緊急事態です、大変なんです! 早く操縦席に乗ってください! 司令官が呼んでいます」と、ラドの腕を引っ張ろうとする。
胸が当たるそれにデレデレしたラドが。
「俺は行かない。嫌だと言っててくれ!」
と、ビトスの絡みついて来る腕を丁寧に外した。
「お兄ちゃん、司令官って偉い人なんじゃないの? 行かなきゃダメじゃない?」
「俺にはやるべきことが残っているし、今回の任務に指名されたのがたまたま譜王命(ふおうのみこと)様だっただけだからな。命令は聞かなくていい。あ、お前は聞いた方がいいぞ」
「殺されても知らないわよ」
そんなことする人とは思えないけど。例えよ、例え。
「いいさ。あいつなら」
え。
何よそれ。
死ぬことが怖くないって言うの、あの人ならって何よ。
私だってあの人に信仰心を覚えているけど、殺されて許せるほどではないわ。
お兄ちゃんは、怖くないの?
私は、私は、あんなに怖かったのに。そして焦がれたのに。
あんなに悶々としたのに。
即答しないでよ。
「なんてな、絶対いやだ!! 俺は死んでも生きるぞ!」
「は?」
奏が物凄い殺気と共に視線を送れば、送られた相手はギョッとして後ずさる。
そんなに簡単に冗談だと言われてもムカつくわよ。
どうして簡単に生きると言えるのか。
私は今死にたいと思っても、殺されたいとは思っていない。
自分の生死の判断が難しい。
葛藤ばかりしている、生きるか、死ぬか。
即答できたらどれほど良いか。
「は? って。俺は死なないぞ、今日まで生きて来たのにあいつに殺されるとか嫌だ。まあ殺されないから安心してくれ」
「それは分かってるけど。敵が来たんだよね。危険なんでしょ、気を付けてね」
奏が心配して眉を寄せると、ラドは頬っぺたを赤くして頭を掻く。
「いやぁ。妹に心配される気持ちってこんなのなのかなぁ」
「はあ?」
「じゃ、俺は行くからな。ビトスと一緒に譜王のところに行ってこい!」
「う、うん」
ラドが去っていくと、ビトスが「こちらです!」と操縦室へと案内する。
奏はビトスの案内の元、操縦席へと無事乗り込めた。
そこには司令官の譜王もおり、船体同士の戦闘の指示を出しているようだった。
奏は邪魔にならないよう、端で小さくなる。ビトスに空いている座席に座るように言われ、奏は一番後ろの端の席に座った。
「敵の機体一機接近。左斜め上空に並ばれました!」
「敵はドッキングしようとしています!」
なんかやばそうね。
と、奏が縮こまっていると。
「――司令官!」
男性の一声が響き、その空間に緊張が走る。
「――敵機体から通信です!」
『答える』
「――……繋がりました!」
大画面が出現し、そこに童顔の少女が現れる。いや童顔と言うか子供では?
『姫存軍司令官だ。要件はなんだ』
〈KTB少尉堕。君はなかなか真珠のよう堕〉
『真珠?』
あの……譜王命口説いてない? って言うか子供でも少尉なの、少尉って偉いの?
〈今から君たちの船にぶつかろうと思雨! いやならドッキングさせて貰おう下!〉
奏はすぐ隣の窓の外を覗く。やや上を見ると、敵の機体が見えた。
敵の機体は姫存軍の船より小さいが、姫存軍の船は飛行船だ、ガス袋を破れたらおしまいである。それに向こうは飛行船よりはまだ小さいがそれなりの巨大な戦闘機だ。ガス袋を破いてもその後はうまく交わして飛行し続けるだろう。
『結合しろ』
「――は、はい」
〈それで良違!〉
譜王の判断により機体と船体がドッキングし、飛行船の周囲には他の戦闘機が並んで包囲される。
姫存軍が逃げ切るのは難しいだろう。
〈ではお姫様を貰おう下〉
『何?』
〈お姫様をお迎え出来たら全員見逃してやろ雨。だが、断れば、全員皆殺し堕〉
『…………っ』
奏は自分のことで譜王が決断を遅らせていることに気が付いていた。彼女は立ち上がり、譜王の肩を叩いて彼を振り向かせる。
「行きます」
『奏……!』
ビトスがビックリした顔をした後、ごくりと唾を飲み込む。
譜王は俯き、敵の少尉が笑顔で言ってきた。
「その子がお姫様下! 可愛い子堕奈!」
「えええ!? そうですかぁ?」
いやぁ、とデレデレと頭を掻く奏に、ピリピリした空気が……とその場にいる全員が思う。
『奏……』
「大丈夫です。私、強者でお姫様なんですよね。それに、まだここにはいないあの人がいるじゃないですか」
譜王はそれを聞いて、強ばらせていた顔を緩めた。
『……そうだな。頼んだぞ』
「はい!」
奏は元気に飛び出していき、船体の廊下を走った。
廊下を走っている途中で、乗り込んで来ていたKTBの隊員に出くわす。
輝く銀色の髪。
水晶のように美しい青い瞳。
スーツの上の腰や太ももに通信機やホルスター、銃やナイフが装備されている。
容姿は一般人と比べても飛び抜けて美しく、譜王と比べるとややほんわかした雰囲気だった。
ただ、その顔付きや仕草は、暗いオーラを放ちそうなほどその場を殺伐とさせている。
「カナタ……」
「奏。KTBに捕まる前に俺が殺す」
カナタが乗り込んで来ていた理由はそう言うことなのね。
「私、自分で死ぬって言ったよね」
「――そんなことさせるかッ!!」
空気が震えてカナタが怒鳴ったことが分かる、奏はその声にビクッと身体を震わせた。
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