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ディーヴァ
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奏とミドノはお互いボロボロになりながら見合っていた。奏に限っては服だけがボロボロだが。
「準備万端ね……」
ミドノは腰にたくさんの武器を付けていた。
──KTBには何種類もの武器が存在する。同じナイフでも剣のように長く切れ味のあるものもあるし、同じ銃でも研究・進化が進み、まるで宇宙兵器のようななりをしたものもあった。
多種多様で膨大な量のその中から、ミドノは機能良いものでなく、昔からずっと愛用し、使い慣れた武器だけを選び出した。
「ああ……これで苦しめる……」
シミ傷1つない綺麗な手で、ミドノは腰をぽんぽんと叩いた。武器たちが、まるで死のメロディを奏でるかのようにチャカチャカと嫌な音を立てた。
「やっとこの時が来た……奏…………」
「…………」
「……はは! ほんといい目してるよな……お前……」
私を殺すのに、私に会えなくなるのに、何で平気でいられるの。
私はいやよ。ミドノを殺すことも、会えなくなることも。
何で笑っていられるの。何で喜べるの。何で興奮してるの。何で殺したいと思うの。――ミドノはいかれている。ミドノは可笑しい。
ただ、そう思っていた。自分がどんな顔をしているかも知らずに。
「どうしたよ奏……」
「何でもないわ……」
奏の答えにミドノは鼻で笑った。
しょうがねえ奴、と呟いて、優しく冷たく微笑む。
「言えよ……」
「──……本当に殺すの」
ミドノは分かっている。奏がそう質問することを知っていた。ミドノは未来を知ってるとしか思えないほど勘が鋭い。
ミドノは奏を見つめる。
相変わらずの冷たい目で。
そして、いつものように凍結した笑みだけ浮かべる。
「それはどっちの質問だ……?」
奏は一瞬呆ける
「…………まさかカナタのこ――」
「まあいい……」
「──……ミドノ……!」
「ん……?」
ミドノか奏の言葉を待つ。奏は何を言うべきか迷った。
「私たち3人、親友で良かった。私たちで良かった。私はそう思う……ミドノは……?」
ミドノはまた奏を観察するかのように見ている。
観察が終わったのか、奏と目を合わせてこう言った。
「どうでもいい」
暗く黒い冷たい目で。
ミドノはナイフを掲げる。
煌めくそれに奏が目を奪われているうちに、ナイフを彼女の胸に突き刺した。
「うあああっ」
──いやだ。お願いだから……それを抜いて……。手が滑ったと言って……。──どうして、私を殺そうとするのだろうか。
ミドノは手に持つナイフを奏の背中で回転させる。
まるで肉を抉り取るかのように、果物の汁を絞り出すかのように。
床へ落ちた赤い絵の具がむらなく角まで塗りつぶされたとたんにその回転は止められた。
ミドノは目の前の顔に驚いていた。
奏は刺されることに慣れたかのように、ただミドノの顔を見つめた。
ミドノの前髪で隠された目が、どこを向いているかも分からない。
ミドノはナイフを抜く。
「──……あ……」
「痛かったか……? ごめんな奏……」
「う、うん……」
胸から引いた痛みと共に、我に帰った。まだ残るかすかな刺激に判断を遅らせながら。
──抜いて……くれた……?
自分の胸元へ視線を向けた。
そう、だから怖くなったのだろう。
──あれ……痛くない……。
何故。
あれ。傷などないではないか。
そう思った。
──違う。
この目で見たんだ。
刺された瞬間、抉られた血肉。
真っ赤な液体。
──だが、刺されたはずの場所に何一つ傷がない……。まるで何もなかったかのように。
やはり私は化け物だ。
奏はミドノを戸惑いながら見る。
声に出していない、ましてや問いかけたつもりもない。
けれどミドノは、奏の疑問の渦を確かによみ取り、答えると同時に自分の意思も告げる。
「痛くなかったのか……苦しくなかったのか……?」
「……うん……」
ミドノは笑った。奏の疑問をよみ取ったのか、よみ取れなかったのか分からない。
けれど、ミドノは笑いながら言うのだった。
──美しく、輝かしい、宝石のようなあの笑顔で。
「──まずこのナイフで……お前の手首を切り落とす……」
理解するのに時間は不要だった。あの顔を見ればすぐに理解できる──彼は狂っている。
それが分かっているからこそ、理解することを拒んでしまうのだろう。
「──大丈夫だ……痛みを感じるように、ゆっくり切ってやるから……」
「ミ、ミドノ……?」
何言ってるの……。ミドノはゆっくりとゆっくりと、時間をかけて足を踏み出す。一歩ずつ、一歩ずつ。
「奏……好きだよ……」
――な、何!? それ流行ってるの……!? そんなの流行にしないでほしいんですけど!? それで流行語大賞とか狙ってんじゃないでしょうね!?
カナタの顔が脳裏に浮かぶ。その隣にミドノ。
やはり格段に……違う。
「だから殺していいだろ……?」
──……あ……。
『奏!! こいつに騙されちゃだめだよ! 俺の方がプロなんだよプロ! だから――
――――殺していいだろ?』
何なのだろうか。
何故あんな夢を見たのだろうか。
何故正夢になってしまうのだろうか。
──いや、違う。
──やっぱりこれも……夢?
だって……同じこと言ってるじゃない……!
「準備万端ね……」
ミドノは腰にたくさんの武器を付けていた。
──KTBには何種類もの武器が存在する。同じナイフでも剣のように長く切れ味のあるものもあるし、同じ銃でも研究・進化が進み、まるで宇宙兵器のようななりをしたものもあった。
多種多様で膨大な量のその中から、ミドノは機能良いものでなく、昔からずっと愛用し、使い慣れた武器だけを選び出した。
「ああ……これで苦しめる……」
シミ傷1つない綺麗な手で、ミドノは腰をぽんぽんと叩いた。武器たちが、まるで死のメロディを奏でるかのようにチャカチャカと嫌な音を立てた。
「やっとこの時が来た……奏…………」
「…………」
「……はは! ほんといい目してるよな……お前……」
私を殺すのに、私に会えなくなるのに、何で平気でいられるの。
私はいやよ。ミドノを殺すことも、会えなくなることも。
何で笑っていられるの。何で喜べるの。何で興奮してるの。何で殺したいと思うの。――ミドノはいかれている。ミドノは可笑しい。
ただ、そう思っていた。自分がどんな顔をしているかも知らずに。
「どうしたよ奏……」
「何でもないわ……」
奏の答えにミドノは鼻で笑った。
しょうがねえ奴、と呟いて、優しく冷たく微笑む。
「言えよ……」
「──……本当に殺すの」
ミドノは分かっている。奏がそう質問することを知っていた。ミドノは未来を知ってるとしか思えないほど勘が鋭い。
ミドノは奏を見つめる。
相変わらずの冷たい目で。
そして、いつものように凍結した笑みだけ浮かべる。
「それはどっちの質問だ……?」
奏は一瞬呆ける
「…………まさかカナタのこ――」
「まあいい……」
「──……ミドノ……!」
「ん……?」
ミドノか奏の言葉を待つ。奏は何を言うべきか迷った。
「私たち3人、親友で良かった。私たちで良かった。私はそう思う……ミドノは……?」
ミドノはまた奏を観察するかのように見ている。
観察が終わったのか、奏と目を合わせてこう言った。
「どうでもいい」
暗く黒い冷たい目で。
ミドノはナイフを掲げる。
煌めくそれに奏が目を奪われているうちに、ナイフを彼女の胸に突き刺した。
「うあああっ」
──いやだ。お願いだから……それを抜いて……。手が滑ったと言って……。──どうして、私を殺そうとするのだろうか。
ミドノは手に持つナイフを奏の背中で回転させる。
まるで肉を抉り取るかのように、果物の汁を絞り出すかのように。
床へ落ちた赤い絵の具がむらなく角まで塗りつぶされたとたんにその回転は止められた。
ミドノは目の前の顔に驚いていた。
奏は刺されることに慣れたかのように、ただミドノの顔を見つめた。
ミドノの前髪で隠された目が、どこを向いているかも分からない。
ミドノはナイフを抜く。
「──……あ……」
「痛かったか……? ごめんな奏……」
「う、うん……」
胸から引いた痛みと共に、我に帰った。まだ残るかすかな刺激に判断を遅らせながら。
──抜いて……くれた……?
自分の胸元へ視線を向けた。
そう、だから怖くなったのだろう。
──あれ……痛くない……。
何故。
あれ。傷などないではないか。
そう思った。
──違う。
この目で見たんだ。
刺された瞬間、抉られた血肉。
真っ赤な液体。
──だが、刺されたはずの場所に何一つ傷がない……。まるで何もなかったかのように。
やはり私は化け物だ。
奏はミドノを戸惑いながら見る。
声に出していない、ましてや問いかけたつもりもない。
けれどミドノは、奏の疑問の渦を確かによみ取り、答えると同時に自分の意思も告げる。
「痛くなかったのか……苦しくなかったのか……?」
「……うん……」
ミドノは笑った。奏の疑問をよみ取ったのか、よみ取れなかったのか分からない。
けれど、ミドノは笑いながら言うのだった。
──美しく、輝かしい、宝石のようなあの笑顔で。
「──まずこのナイフで……お前の手首を切り落とす……」
理解するのに時間は不要だった。あの顔を見ればすぐに理解できる──彼は狂っている。
それが分かっているからこそ、理解することを拒んでしまうのだろう。
「──大丈夫だ……痛みを感じるように、ゆっくり切ってやるから……」
「ミ、ミドノ……?」
何言ってるの……。ミドノはゆっくりとゆっくりと、時間をかけて足を踏み出す。一歩ずつ、一歩ずつ。
「奏……好きだよ……」
――な、何!? それ流行ってるの……!? そんなの流行にしないでほしいんですけど!? それで流行語大賞とか狙ってんじゃないでしょうね!?
カナタの顔が脳裏に浮かぶ。その隣にミドノ。
やはり格段に……違う。
「だから殺していいだろ……?」
──……あ……。
『奏!! こいつに騙されちゃだめだよ! 俺の方がプロなんだよプロ! だから――
――――殺していいだろ?』
何なのだろうか。
何故あんな夢を見たのだろうか。
何故正夢になってしまうのだろうか。
──いや、違う。
──やっぱりこれも……夢?
だって……同じこと言ってるじゃない……!
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