リクゴウシュ

隍沸喰(隍沸かゆ)

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ディーヴァ

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 奏は心臓辺りが湿っていることに気がついた。自然と視線が下に行き、奏は赤の光を目に射した。カナタの言う通り、奏の心臓は血を吐いていた。
 再生する筈の身体が再生しなかったのだ。
『──やはり……。長い間人間として過ごしてきたお前の体には負担がかかるみたいだ……』
「どう言うことですか譜王様」
『中で覚醒中の血が暴れている』
 え? 覚醒?
 譜王は血の出ているところを撫でる。
 時々胸に当たるが譜王は気にしていない様子だった。
 奏は胸を触られるこの感覚に、疑問を胸に秘めてしまった。
 何度も優しく撫でる譜王の暖かい手が何度も奏を刺激する。
 ──しかし、奏は察した。これも勘違いであると。
 恥ずかしさと違う、何かを求める、感覚。
 それが膨大な量となり、心臓の鼓動を大きくする。
『覚醒したら俺と同じ、お前の髪も赤く染まる。こうなるのは真の純血者だけだ』
 ──え……同じ……?
「止める方法は……」
 ラドが一歩前へ踏み出し、懸命な表情で声を張った。
 譜王の出した答えは、簡単なものだった。
『──勝手に収まる』
 ──……あ、ほんとだ、さっきとは違う。
 ──……そこまで苦しくない。激しい鼓動も消えた。
 そう、だんだんと痛みはなくなっていった。
いくら我慢してもいっこうに終わらなかったあの痛みがなくなる。
「収まった……」
 だが、何か……身体の変化を感じるようで気持ちの悪さも感じてしまった。
 奏はそれを訴えようと譜王へ視線を投げる。
 だが、その瞬間、身体の内側が高鳴るように共鳴するかのように、熱を備蓄し、鼓動が速くなっていく。
『──女、お前の今までの鼓動は、誰かに対して特別な感情を抱いているわけじゃない、勘違いはするな』
「は、はい……」
 リカコと同じことを譜王が言う。
『…………それと……周りの奴等も勘違いするな。俺たちの血の奏でる流水音はメロディとなって血液を引き付ける』
「え──……」
 ──最初に声を漏らしたのはカナタだった。
 一時遠くを見つめるかのように視線を地面へ向け、それを奏に移動させる。しかし、それは、遠くを見つめる目ではなく、悲痛な目をしていた。
 その様子を見たあの人は、優しく告げた。
『──こいつは人間じゃない。俺と同じディーヴァだ。真の純血同士は子孫を残すため、本能のごとく鼓動を鳴らし身体に熱を与える』
「え──……」
 ──次に声を出したのは奏だった。
 私はバカだった。彼に恋をしているのだと、勝手に思い込んでいた。
 リカコさんはこれを言っていた。

 ──この人と同じ、赤い髪になれるんだ……。お揃いだ。血もお揃いだ。嬉しいな。

 そんな、勝手な勘違いの影響で喜びを感じていたなんて──今この時、奏は本当の意味で自分を恥じた。
 この人とは昨日あったばかりのただの他人でしかない。それにここまで惹かれるのは確かにおかしいはずだ。
 私はバカだ。
「そんなことより……」
 遠くから見ていただけのミドノが、突然その言葉を口にした。
「あんたちょっと調子に乗りすぎだろ……俺の奏をたぶらかさないでくれよ……」
 ミドノ暗く冷たい目が譜王を責める。
 その目は奏にも冷たく突き刺さった。
 ミドノはぶらっと下へ手を揺らし、手首の運動を始めた。
 それを終えた後、彼は両手を腰へと伸ばした。
 その手が上へあげられたとき、そこには銃が握られていた。
「ちょ、ちょっと待てミドノ!! お前まさか……!?」
 ラドが声を張り上げ叫ぶ。
「あぁ……そいつを殺してから奏を殺すことにする……」
 奏はミドノがもし譜王を殺してしまったらと心配していた。。
 譜王はそんな奏に気づいて、奏の髪をクシャっと撫でる。
『──心配するな』
 だが、その行為はミドノの怒気を上がらせた。
「俺の奏に触るなッ!!」
 ミドノは譜王の首にナイフを突きつけた。
 2つの銃は地面に叩きつけられている。
 カナタは少し回復したのか、奏の隣に並び、説明を始めた。たぶん戦場を知らない奏に教えてくれているのだろう。
「捨てたか……」
「──え……?」
「銃はディーヴァにはあまり効かないんだ。新しく発明された銃ならまだしも、あれは古い型の銃だからな……」
 私は鉛玉でも相当痛かったんですけど……覚醒とやらに関係があるのか?
「──ありがとうカナタ……」
 カナタはそれを聞くとカナタは柔らかく微笑んだ。
「カナタ……」
「何だ奏……」
「へ……!? な、何でもない……」
 何だろう……この気持ち。胃がきゅうっと、締め付けられるような、顔に熱があるような、ずっと、見ていたいような。
 ────やべぇ、握りつぶしてぇ……。
「うっ……また来やがった……」
 ──何なんだよ何で横顔までキラキラしてんだよイライラするんだよ胃がキリキリ言ってんだよ耐えらんねぇよムッカつくなおい血圧ぜってぇあがってるよあっちぃよぶっ殺してええええよ?
 カナタのイケメンGAOを睨み付けていると、
「譜王──そいつから離れろ……!!」
 ラドの怒声が耳鳴りとともに響く。奏もそれで我に帰り、戦況を目にする。
『…………ッ』
 ミドノは興奮して、譜王を殺気で満ちた目で睨め付けている。
 ミドノの刃は確かに譜王を押していた。
 ──しかし、譜王はその攻撃をすべて避けきっていた。
 奏は怖かった。
 ミドノに、もう人を傷つけてほしくない。
 驚異的な攻撃を繰り出してくるミドノにも、譜王はそれを避け何もせず見ているだけだ。
 ──どうして何もしないのだろう。
 ──パリンッ─────……
 突如、耳に響いたその音に誰もが耳を疑った。
「──……え……」
「………………へぇ……」
 ミドノは冷静だ。いや、彼は喜んでいる。
「いいねぇえ……」
 奏は彼のように精神が強くない。臆病者だと自覚している。
 だからかなり混乱している。
 冷静に考えをまとめるのだがやはり分かりはしなかった。
 今この瞬間────ミドノの向けたナイフがまるで何もなかったかのように砕け散った。譜王に切っ先が当たった瞬間、砕けてなくなってしまったのだ。
 いったい彼が、何をしたと言うのか。
『──そう簡単に殺されるつもりはない』
 彼が軽く答えると、
「ふっ……」
 ミドノは不適な笑みを浮かべる。やはり、美しい。
 ───から俺が殺してやりたいいいいいいいいいッ!!
「何か寒気がしたな」
『万物の破壊兵器──……か……よく言えたな……。遠慮することはない。お前のすべてを出せ』
「ふん、俺が自分で名乗った訳じゃねえよ……それに、てめえなんか腕1本で充ぶ──」
『無理だ。たとえ腕10本でも本気を出さないお前は、俺に勝つことなんて不可能だ』
「──…………不可能ねぇ……」
 ミドノは口の端を不気味に歪め、目を瞑り思索する。
 目を開いたときにはもう言葉が決まっていたのだろう。
「──さっきあんた……自分のことを真の純血って言ったよな……」
『…………』
 あの人が声を出さない限り、相手に心を読み取られることはないだろう。だがミドノの場合、それができてしまうから恐ろしい。
 ──それよりミドノは何を言いたいのかしら……。
「純血の中の純血……────一滴たりとも族以外の血を受け継がない真の純血……奏……」
『…………』
 ミドノの言葉を聞いた瞬間、カナタの表情が曇った。私はそれを見て疑問を持つのだけど……。
「つまりさぁぁ……」
 ミドノは先程よりも数倍美しく、黒い笑みで、嘲るように笑った。
「あんたが……ディーヴァの王子ってこと……?」
 ん? 今更それがなんだ?
「奏は姫なんだろ……?」
「──…………ん……?」
 ──ミドノ何言ってんの?
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