リクゴウシュ

隍沸喰(隍沸かゆ)

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ディーヴァ

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 ラドとカナタは静かに成り行きを見守っていた
「お前たちとの約束を守ってやりたかった……」
 ラドは小さい頃、奏やカナタたちとのたくさんの約束を破り続けてきた。きっと姫存軍の仕事があったからだ。
 歌姫守護・共存軍、通称姫存軍。それがラドや譜王のいる組織。KTBとは正反対の目的を持つ。
 姫存軍内で生まれた子供は姫存軍になる宿命を背負わされると聞く。きっとラドは苦労してきた。それを何も知らずに、俺たちはラドさんに辛い思いをさせて来たんだ。
 約束を守ってやりたかった……か。
「生き抜くことが約束だろ……生き抜ける可能性もあるんじゃないのか」
「違うな、一緒に生き抜く事が、俺達の誓いだ……」
 ──あぁ、そう言うことか。それなら、きっと大丈夫だ。ラドさんは分からないのか、いや、俺もこれが答えだとは思わない。でも、思い込むことならできるかもしれない。
「──…………本当に守れないと思うのかラドさん」
「守りたいんじゃない」
「何?」
 予想外の言葉だった。
「使命だから守ってるだけだ。お前等に寂しい思いをさせた俺の償いだ。だから……」
「一緒に戦うべきだ」
「は──」
「一緒に戦うべきだ」
「一緒って──」
「めんどくせぇな一緒に戦えよ」
「…………なんか酷くない……」
 この人の過去は知りえない。この人は俺達からそれを遠ざける。それが一番寂しい行為とは知らずに。
 でも過去より今だ。ラドさんは過去に囚われ過ぎている。こんな理由で、この人は納得してくれるのだろうか。
「──ハァ……お前は相変わらず頑固だな……。……まあ、認めてやるさ……。そうする、一緒に信じて戦うべきだもんな……」
「え、無理しないでくださいよやめてやめて、無理無理無理無理」
「だから酷くない……なんか俺可哀想じゃない……」
 ラドさんはそう言ったが、やはり納得しているわけがなかった。
「いや無視すんなって」
 でも、こちらの心配が彼女に伝わり、プレッシャーをかける可能性があるのなら死の可能性を彼女に掛けることと同じだろう。
「オイ聞いてるのか?」
 俺はそんなの嫌だった。
すべてを見せてくれ。
「聞けよ」
「──少し黙れよ」
「────…………」
 奏、お前は一人じゃない、俺達はずっと味方だ。
 お前は必ず俺が守る。非力で何の役にも立たないが。
 君が死から逃げられない状態になった時俺が身代わりになりお前の盾になろう。
 俺には盾になる才能しかない。あいつらの樣にはいかないんだ。
 何か起こったら止めてやる。
 お前は知らないだろうが、お前の中に流れる血は他の人類より一級品なんだ。
 だからお前が死ぬ事は決してないと断言出来る。
 でも、奏が傷付けられるだけで自分の胸が張り裂けそうだし、何より皆に顔向け出来ない。
 だから必ず何か起こった時は俺が止めなくてはならない。守り抜いて、君を平和な、元の日常へ連れて帰る。



        ◇◇◇



 ミドノの撃つ銃弾は最新兵器のものだった。リロードも無しに弾が休みなく続けて出されている。それを軽やかに避ける。なぜか弾がゆっくりに見えるのだ……どうせディーヴァ族の血のおかげとかよね。
「奏、さすがだなぁぁ……ディーヴァってのは弱すぎて弱すぎて、俺にとっちゃあゴキブリさんだったが、お前は違う……さすが俺の奏……」
 ミドノは相変わらず銃口から銃声と弾を弾かせる。
――私は銃なんて持ってないのに。
 先に右手のいかつい銃を蹴り飛ばし、ミドノの腹へ拳を向ける。ミドノはその拳に弾を射つ。
拳は鋭い痛みと共に赤く染まった。
「──俺の、なんて言わないでよね」
 そのまま腹へ拳を放り出した。
 ミドノは弾がなくなった銃を血だらけの地面に放り投げ、次は刃物を手に持った。
「なんかよ、それ……ツンデレっぽく聞こえて……可愛くて殺したくなっちまう……それ、誘ってんだよな? バラバラにして殺してくれって……」
 奏の拳を手首ごと切り落とすミドノ。
奏は反対側の拳をミドノの頬に直撃させた。
 吹っ飛ばされて少し遠くにいたミドノは、たくさんの武器をチャラチャラと鳴らして近寄る。
 ミドノは本物の刃物、奏は手刀だ。
「やめてよ、そんなキモい妄想……このキモミドノ」
 ミドノは刃物をちらつかせる。
「う、まぶしっ……」
 ミドノに太陽の光が味方し、奏は彼に蹴り飛ばされてしまった。
「俺自体が悪いような言い方だな……酷いぜ……。それも……ツンデレにしとく……」
「!?」
 ミドノは瞬時に奏の後方に現れた、そして──
「奏の匂い……最高だな……」
「ぎゃああ!?」
 何を抱いてるのよこのバカは!! バカなんじゃないの! バカ!!
 腹に蹴りをお見舞いする。
 これ以上ドキドキさせたらマジで殺してやる。もしかして戦意喪失させる気?
 はは、残念だったなその逆だ。
「怯えろって言ったのに……」
「そ、そんなことされて怯えられるか……!!」
 後ろに回り込み、左足を高々く挙げて、かかとを振り落とす。彼はその脚をガシリと掴み攻撃から身を守る。
──う、脚が切られたらおしまいだわ! 立てなくなったらどうなるか……。ミドノだったら本当にバラバラにしかねない……。早く何とかしなきゃ!
「ひあっ!?」
 何……。
「や……」
 ぬるぬるして、まさか……。
 奏は動きにくいけど、ミドノを覗き込んだ。
ミドノは奏の脚をぺろぺろ、している。うん、ぺろぺろ……。
「な、何してんのよ!? バカじゃないの!?」
「はは、奏真っ赤だな……」
 ムカつく、何笑ってんのよ。変態か!! こいつ……からかってやがる……。
 捕まれた脚を軸にして、宙に体を浮かせ、彼の肩に向かって反対側の脚を振り落とす。
「ぐっ……!!」
 ご、ごめ──や、謝っちゃダメでしょ!?
「手加減ないな……傷つくぜ……」
「ふん、本気で殺し合うんでしょ!!」
「そうだな……本気で……な……」
「な、何よ……」
「本気だしてねえだろ……、本気出さない限り殺してやんねぇ……」
 ──むむ。
 手首の再生した右拳をミドノに向けた。
「出してるわよ──!! きゃぁ!?」
 ミドノはそれを包んでぐいっと引っ張る。
「え……ちょ……」
 このままだと──キス──
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