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ディーヴァ
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『落ち着け』
「…………」
暖かいその胸に寄りかかりながら口を開いた。
「さっき……」
『……?』
「さっきは止めないって……」
譜王は奏の身体を自分の方に向けた。そして今までにないほど力強く真剣な表情で告げた。
『お前がやりたいことの区別くらいできる』
「…………」
『それとも本当に殺したかったか?』
「い、いえ……」
譜王は何も言わない。譜王はただ、奏の頭をわしゃわしゃと掻き回すだけ掻き回し、そして言うのだった。
『帰るぞ』
「はい……」
この人は優しい。
この人は、知っている。あいつが欲しかった私の事を。それから、この人のあいつに恋をしたこと、あなたに近づかれた瞬間、魅力的すぎるあなたに、汚いあいつなどのことは忘れて、あなたが欲しいと、そんなことを思っていたことを、きっと彼は知っている。
きっと彼はそんな人。
『もう大丈夫だな』
「……ありがとうございました」
先程から、過去の傷を抉るような、そんな酷いことを言ってしまった彼に急いで駆け寄った。
「────ミドノ、さっきの子どもは?」
「……えと、少尉は息をしてるよ……無事だ」
ん? 何この反応。
「俺を泣かした……って……バカなんじゃねぇの……そんなので……あんなことしようとするなんて……俺、本気でどうしようかと…………」
「あ! そ、それ!? それはその……あはは~……」
次の瞬間、奏の頬は真っ赤に染まった。
「バカ野郎ッ!!」
ミドノの手のひらも赤く染まり、その赤く染まった部分は、奏の頬に残る赤い頬と、全く同じ形でそこにある。
「ざけてんじゃねぇよ………………────俺のせいでお前の手を汚させるなんて……ぜってぇ許せねぇ……」
「────何よそれ自分は散々…………!!」
──…………
────……ごめんなさいミドノ、嘘をついてしまって。
でも、あなたの涙を思い出すと、あの人たちのしたことを考えると、私は、許せない。
先程とは違う意味で、今でもそいつの至るところ潰したい。
「ゲホッ……さ、寒気が……ゲホッゲホッ……」
「う、ぐ。ひぁ、ぁ、う。寒、気が……」
吐血しちゃってるし、出血してるし、私、何か酷いことしちゃったな……。
「──…………気にすんなよ……」
奏の気持ちを察したのか、ミドノがぽんと頭に手を置く。そのまま、髪を乱さないよう優しく撫でた。手の温もりが伝わるほど、暖かくて懐かしい。
──うへへ、照れるだろやめれぃ。
リカコさんのもいいけど、今のミドノのそれもいいかも…………うへへへへ……。
「本当に気にすんなよ? あいつら一応生きてんだから」
「それもそうねー……あの子どもの痛みを味あわせただけのことよ!!」
────ミドノにもカナタにも、お兄ちゃんにも、他のみんなにも、絶対に今日のことは振り返らせない。
だって、嫌われてしまいそうで……
──嫌われる可能性を与えてきた、にっくきあいつを睨んでいると、
「こええよその顔……」
何だと!?
「うふ」
満面の笑みと、両の頬の上に乗せた人差し指を思いっきりミドノに向ける。
どうだ! 可愛いでしょうが!
「可愛い……」
「え……!?」
な、なな、何をぅ!? 言っとるんじゃぃ!? こいつぁ!?
頬に蓄積された熱を払うかのように、冷えた手のひらで頬に触れる。両頬が無駄に熱を帯びていて、ミドノを見るとさらに熱が掛かるのを感じた。
──それを見たミドノは──……
「バカなんじゃねぇの……冗談だよ……」
めちゃくちゃ冷たい目をしていた。
違う、あのおかしいミドノなんかではなくて。
何か、ただ私のことを蔑んでいる目なの……─────その目玉ぶっ潰す……。
「そ、そうよね!」
しかし、なんだろうこの胸に沸き立てるこのこのこの、ハッピーな気持ち!!
今にも歌い出したくなるくらい激しく幸せっ!!
なぜ、それは────……ミドノが柔らかくなっているから!!
恐怖のお顔も今や癒しのワルツ! オウ、ビューティホー! アン、ビューティフルフルウェイウェイ!
終わったと思ったら、ネガティブばかりの日々で今まで溜め込んでいたのか、ポジティブが飛び出ていった。
嬉しい。終わった。終わった!!
「…………」
暖かいその胸に寄りかかりながら口を開いた。
「さっき……」
『……?』
「さっきは止めないって……」
譜王は奏の身体を自分の方に向けた。そして今までにないほど力強く真剣な表情で告げた。
『お前がやりたいことの区別くらいできる』
「…………」
『それとも本当に殺したかったか?』
「い、いえ……」
譜王は何も言わない。譜王はただ、奏の頭をわしゃわしゃと掻き回すだけ掻き回し、そして言うのだった。
『帰るぞ』
「はい……」
この人は優しい。
この人は、知っている。あいつが欲しかった私の事を。それから、この人のあいつに恋をしたこと、あなたに近づかれた瞬間、魅力的すぎるあなたに、汚いあいつなどのことは忘れて、あなたが欲しいと、そんなことを思っていたことを、きっと彼は知っている。
きっと彼はそんな人。
『もう大丈夫だな』
「……ありがとうございました」
先程から、過去の傷を抉るような、そんな酷いことを言ってしまった彼に急いで駆け寄った。
「────ミドノ、さっきの子どもは?」
「……えと、少尉は息をしてるよ……無事だ」
ん? 何この反応。
「俺を泣かした……って……バカなんじゃねぇの……そんなので……あんなことしようとするなんて……俺、本気でどうしようかと…………」
「あ! そ、それ!? それはその……あはは~……」
次の瞬間、奏の頬は真っ赤に染まった。
「バカ野郎ッ!!」
ミドノの手のひらも赤く染まり、その赤く染まった部分は、奏の頬に残る赤い頬と、全く同じ形でそこにある。
「ざけてんじゃねぇよ………………────俺のせいでお前の手を汚させるなんて……ぜってぇ許せねぇ……」
「────何よそれ自分は散々…………!!」
──…………
────……ごめんなさいミドノ、嘘をついてしまって。
でも、あなたの涙を思い出すと、あの人たちのしたことを考えると、私は、許せない。
先程とは違う意味で、今でもそいつの至るところ潰したい。
「ゲホッ……さ、寒気が……ゲホッゲホッ……」
「う、ぐ。ひぁ、ぁ、う。寒、気が……」
吐血しちゃってるし、出血してるし、私、何か酷いことしちゃったな……。
「──…………気にすんなよ……」
奏の気持ちを察したのか、ミドノがぽんと頭に手を置く。そのまま、髪を乱さないよう優しく撫でた。手の温もりが伝わるほど、暖かくて懐かしい。
──うへへ、照れるだろやめれぃ。
リカコさんのもいいけど、今のミドノのそれもいいかも…………うへへへへ……。
「本当に気にすんなよ? あいつら一応生きてんだから」
「それもそうねー……あの子どもの痛みを味あわせただけのことよ!!」
────ミドノにもカナタにも、お兄ちゃんにも、他のみんなにも、絶対に今日のことは振り返らせない。
だって、嫌われてしまいそうで……
──嫌われる可能性を与えてきた、にっくきあいつを睨んでいると、
「こええよその顔……」
何だと!?
「うふ」
満面の笑みと、両の頬の上に乗せた人差し指を思いっきりミドノに向ける。
どうだ! 可愛いでしょうが!
「可愛い……」
「え……!?」
な、なな、何をぅ!? 言っとるんじゃぃ!? こいつぁ!?
頬に蓄積された熱を払うかのように、冷えた手のひらで頬に触れる。両頬が無駄に熱を帯びていて、ミドノを見るとさらに熱が掛かるのを感じた。
──それを見たミドノは──……
「バカなんじゃねぇの……冗談だよ……」
めちゃくちゃ冷たい目をしていた。
違う、あのおかしいミドノなんかではなくて。
何か、ただ私のことを蔑んでいる目なの……─────その目玉ぶっ潰す……。
「そ、そうよね!」
しかし、なんだろうこの胸に沸き立てるこのこのこの、ハッピーな気持ち!!
今にも歌い出したくなるくらい激しく幸せっ!!
なぜ、それは────……ミドノが柔らかくなっているから!!
恐怖のお顔も今や癒しのワルツ! オウ、ビューティホー! アン、ビューティフルフルウェイウェイ!
終わったと思ったら、ネガティブばかりの日々で今まで溜め込んでいたのか、ポジティブが飛び出ていった。
嬉しい。終わった。終わった!!
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