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ディーヴァ
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「ぐぁっ!!」
顔、脚、あばら、すべての骨を折りたくて、暴走する力。
でも怖くない。もっと強く、留まっていないで、もっと奥へ、お前を見るためには、その扉を切り開くしかない。
「がっ!! あ!! やめ……てぁあッ!!」
何故こんなに怒っているのだろう。知らない人なのに。
──あぁそうか。ミドノを泣かせたからだ。
こいつが私を、泣かせたからだ
────そう、そんなの思い込みでしかない。
骨が折れる音同時に、神経の切れる音も聞こえた。そしてもう一人の男の叫びも。
「う、うわぁあ────!! 助けて誰かぁあ!!」
ミドノを泣かせたのは私だって同じだ。
ミドノは啼泣している。本当に悲しんでいる。本当に泣いている。
だからきっと、私は自分に言い聞かせている。私のすべてが求めているもの、分かっているからこそ、認めたくなくて。
「──奏……お前……その髪……」
こいつが泣かせたから。こいつが。
──さあ、お前のあいつを───……
この、私に────……
「ぅぅ、ぅぅぅ……こ、殺さないでくれぇ……」
「たす、けぇ、たすけぇぇぇぇぇぇえええ」
シカソもナナシも血だらけになりながら、地を這いずり回っている。土と血黒の汚れが彼の身体を纏い、とてもとても、汚ならしい。
奏はそんなものが見たいのではない。
彼の青が見たい。彼の美しい青いお前が。私はずっと彼の時からずっと心を奪われて来た。彼の血を。体内に流れるお前を更に得て幸福を感じたいのだと。
だが今はこの男と女で我慢しよう。男と女の流した汚く古いものなど多い尽くすほど、もっともっと綺麗な新しい、新鮮なあなたを、
「ひぃっ……!?」
私のこの手で、あなたに……あなたに会える──……
「何てステキ……」
拳を掲げた。いや、手の槍を掲げたのだ。
────あ……私…………こいつを殺す気なのねぇ……
「奏──!!」
「──!? ミドノ……!」
ミドノは私の手を握り絞める、私とあいつの出会いを、阻止しようと、力付くで。しかし、それはどこか優しく、暖かい。
「奏……もうやめろよ……それぐらいにしとけ、な」
────…………やめる……?
それぐらいにする──……?
痛みに力が入らず、震えることすら出来ないほど弱っている相手の姿を見て、奏はハッと息を飲む。
私、何を──……!!
まるで我に戻ったかのような、目の前の状況がよく分からない感覚が不意に襲った。
しかし────…………
────彼の肌の色が、すごく汚い。
──あああああ、私の大好きな匂い……。
地面に染み込むその素晴らしい匂いが、この人の肉を裂きたくて、お前のすべてを取り出してあげたくて、どうしてもどうしても、止まらない。
「────離してミドノ……殺したいの……」
恍惚とした表情と、その言葉に、ミドノは目を丸くした。
「殺さなきゃ……」
「ダメだ……殺したらダメだ」
ダメ……?
どうして?
どうして、どうして、え、どうして?
あいつに会いたいだけなの。
ただ会いたいだけなの。
少しぐらい大丈夫よ。
あいつをあの檻から解放するだけなの。
きっと綺麗。
好き好き好き。
きっとみんなも大好き。
会いたい。
どうしよう。
会いたい。
身体中に力が湧いてくる、お前のために私のすべてが頑張ってくれている。
「離せ……!」
ミドノの手を振り払おうと、ミドノを睨め付けながら、あいつのことを考える。
ミドノは苦しそうな悲しそうな、そんな顔で奏を見つめた。
「──殺したら…………奏がおかしくなっちまうよ……」
それは、後悔と哀切の入り交じった目だった。
何も見えない。何も考えられない。
「殺したい……!!」
奏の言葉にミドノの悲しそうな顔は、どんどん層を増して暗くなっていく。
「奏、よせ……」
ああ、認めたくない。
認めてしまえば私は、化け物に。
「──だってミドノを泣かした!!」
「…………」
ミドノの目頭が赤い。
赤くしたのはこいつだ。
こいつが
こいつが
こいつが
こいつが
こいつが
こいつが
こいつが
こいつが
こいつが
こいつが
こいつが
こいつが
こいつが
こいつが
こいつが
こいつが──……
ああああああ、お前が
お前が
お前が
お前が
お前が
お前が
お前が
呼んでる私を
好き好き
愛してる
お前に
会いたい
ステキ
どうして
こんなに
ダメ
殺したくない
殺したい
好────…………
奏の身体から、だんだんと力が抜けていった。
──ああ、違う、違った。
お前なんて欲しくない。私が欲しいのはこっち……こっちの方が……好き……。
──共鳴する鼓動。
「…………また……かよ……」
──震えたミドノの声が、遠くから聞こえた。
奏は今、ミドノのことなど何も考えていなかった。
だって、奏は今、
恋をしている。
顔、脚、あばら、すべての骨を折りたくて、暴走する力。
でも怖くない。もっと強く、留まっていないで、もっと奥へ、お前を見るためには、その扉を切り開くしかない。
「がっ!! あ!! やめ……てぁあッ!!」
何故こんなに怒っているのだろう。知らない人なのに。
──あぁそうか。ミドノを泣かせたからだ。
こいつが私を、泣かせたからだ
────そう、そんなの思い込みでしかない。
骨が折れる音同時に、神経の切れる音も聞こえた。そしてもう一人の男の叫びも。
「う、うわぁあ────!! 助けて誰かぁあ!!」
ミドノを泣かせたのは私だって同じだ。
ミドノは啼泣している。本当に悲しんでいる。本当に泣いている。
だからきっと、私は自分に言い聞かせている。私のすべてが求めているもの、分かっているからこそ、認めたくなくて。
「──奏……お前……その髪……」
こいつが泣かせたから。こいつが。
──さあ、お前のあいつを───……
この、私に────……
「ぅぅ、ぅぅぅ……こ、殺さないでくれぇ……」
「たす、けぇ、たすけぇぇぇぇぇぇえええ」
シカソもナナシも血だらけになりながら、地を這いずり回っている。土と血黒の汚れが彼の身体を纏い、とてもとても、汚ならしい。
奏はそんなものが見たいのではない。
彼の青が見たい。彼の美しい青いお前が。私はずっと彼の時からずっと心を奪われて来た。彼の血を。体内に流れるお前を更に得て幸福を感じたいのだと。
だが今はこの男と女で我慢しよう。男と女の流した汚く古いものなど多い尽くすほど、もっともっと綺麗な新しい、新鮮なあなたを、
「ひぃっ……!?」
私のこの手で、あなたに……あなたに会える──……
「何てステキ……」
拳を掲げた。いや、手の槍を掲げたのだ。
────あ……私…………こいつを殺す気なのねぇ……
「奏──!!」
「──!? ミドノ……!」
ミドノは私の手を握り絞める、私とあいつの出会いを、阻止しようと、力付くで。しかし、それはどこか優しく、暖かい。
「奏……もうやめろよ……それぐらいにしとけ、な」
────…………やめる……?
それぐらいにする──……?
痛みに力が入らず、震えることすら出来ないほど弱っている相手の姿を見て、奏はハッと息を飲む。
私、何を──……!!
まるで我に戻ったかのような、目の前の状況がよく分からない感覚が不意に襲った。
しかし────…………
────彼の肌の色が、すごく汚い。
──あああああ、私の大好きな匂い……。
地面に染み込むその素晴らしい匂いが、この人の肉を裂きたくて、お前のすべてを取り出してあげたくて、どうしてもどうしても、止まらない。
「────離してミドノ……殺したいの……」
恍惚とした表情と、その言葉に、ミドノは目を丸くした。
「殺さなきゃ……」
「ダメだ……殺したらダメだ」
ダメ……?
どうして?
どうして、どうして、え、どうして?
あいつに会いたいだけなの。
ただ会いたいだけなの。
少しぐらい大丈夫よ。
あいつをあの檻から解放するだけなの。
きっと綺麗。
好き好き好き。
きっとみんなも大好き。
会いたい。
どうしよう。
会いたい。
身体中に力が湧いてくる、お前のために私のすべてが頑張ってくれている。
「離せ……!」
ミドノの手を振り払おうと、ミドノを睨め付けながら、あいつのことを考える。
ミドノは苦しそうな悲しそうな、そんな顔で奏を見つめた。
「──殺したら…………奏がおかしくなっちまうよ……」
それは、後悔と哀切の入り交じった目だった。
何も見えない。何も考えられない。
「殺したい……!!」
奏の言葉にミドノの悲しそうな顔は、どんどん層を増して暗くなっていく。
「奏、よせ……」
ああ、認めたくない。
認めてしまえば私は、化け物に。
「──だってミドノを泣かした!!」
「…………」
ミドノの目頭が赤い。
赤くしたのはこいつだ。
こいつが
こいつが
こいつが
こいつが
こいつが
こいつが
こいつが
こいつが
こいつが
こいつが
こいつが
こいつが
こいつが
こいつが
こいつが
こいつが──……
ああああああ、お前が
お前が
お前が
お前が
お前が
お前が
お前が
呼んでる私を
好き好き
愛してる
お前に
会いたい
ステキ
どうして
こんなに
ダメ
殺したくない
殺したい
好────…………
奏の身体から、だんだんと力が抜けていった。
──ああ、違う、違った。
お前なんて欲しくない。私が欲しいのはこっち……こっちの方が……好き……。
──共鳴する鼓動。
「…………また……かよ……」
──震えたミドノの声が、遠くから聞こえた。
奏は今、ミドノのことなど何も考えていなかった。
だって、奏は今、
恋をしている。
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