リクゴウシュ

隍沸喰(隍沸かゆ)

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コノカ

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 ぎゅ、と手を握られ、キラキラした瞳で見詰められる。無邪気な子供のようで、しかし可愛らしくなど毛程もない。面倒な男に惚れられてしまったとアリシアは自分の失態に溜め息をついた。
「せ、接吻……するか?」
「はあ……? する訳ないじゃない」
「恋人同士はするのだろう?」
「貴方本当にお坊っちゃんなのね。もっと其方(そちら)の知識を高めた方がいいわ」
「父上から教わったことがある。男は本能で動くものだと」
「嫌な教えね。何の参考にもならないじゃない」
「恥ずかしいのなら外へ出てもいいんだぞ」
「何で貴方とキスする前提で噺が進んでるのよ」
「嫌か?」
「嫌よ」
「素直じゃないな」
「今だけは蕁を恨むわ」
「アリシア……」
 唇を寄せてくる蓮を全力で拒むが、力では押し負けてしまうアリシア。潜入調査である為、コノカだとバレたら一溜まりもない。目立つ訳にもいかないし、炎を操る力を使う訳にもいかないのだ。
「やめ……っ、なさい、蓮っ」
「照れるな。未来の嫁だろう」
「訳の分からない事を言ってないで離れなさいっ」
 支えられている腰を使って身体を逸らし、迫る接吻から逃れるが、この儘では教育係としての尊厳も唇も奪われてしまう。
 アリシアは蓮の首に腕を回して抱き付く。頭を横に並べて、間一髪でキスから逃れた。蓮は感極まってアリシアの細い身体を抱き締めて、首筋にキスをする。
「此処じゃ恥ずかしいからバルコニーに連れていって……」
「アリシア……やはり素直になれていなかったのか。愛らしい。直ぐに行こう」
「きゃあっ、ちょ、ちょっと下ろしなさい!」
「貴様からもそんな愛らしい声が出るんだな」
「黙って下ろしなさいよ」
 蓮はアリシアを軽々と横抱きにして必死にしがみ付くアリシアの頬にキスをする。
「やめなさい。気持ちが悪いわ」
「嬉しいのなら嬉しいと言え。口にもしてやるから」
「やめて。本当にやめて」
 青ざめるアリシアを余処に、蓮はアリシアをバルコニーへと連れ出した。するとそこでは自分の妹達と、アリシアの敵視するシティアが驚いたように自分達を見ているではないか。
「君達、ここで何してるんだ」
「私達は休憩してイタ。蓮兄は……一体何をしているんダ」
「お、お兄様……!? ワタクシと言うものがありながらその女といちゃこらいちゃこら……! 不倫ですわ浮気ですわ!」
「何を言っているんだ蔘。アリシアは俺の嫁だ」
「……蓮、言ってなかったけど私結婚してるわ」
 アリシアの言葉に、その場にいた全員が硬直する。皆が言葉を無くして、恐る恐るアリシアを見てから、蓮を見る。
「じょ、冗談を言うな。貴様がここに連れてこいと言ったんだぞ」
「冗談なんか言わないわ。蕁と先刻結婚したもの」
「オレをマきコむなよ!?」
「あら、ダーリンいたの?」
「やめろシャレにならない!!」
 蔘からバルコニーで休むと聞いていたのだろう、蕁は水の入ったコップを蔘の前の机に置いた。
「餓鬼の癖に良く其様な言葉知ってるわね」
 冗談だったのかとシティアや蘭が安堵していると、ぐびっと水を飲み干した蔘が急に席を立ち、「ほら! お兄様! そんな女なんか止めてワタクシと婚姻をなさって下さいまし!」と両手を広げて飛び付こうとする。蓮はそれを、身を翻して避ける。
「アリシア。ここにも人がいたから恥ずかしがっているんだな」
「別に恥ずかしがってないわよ。早く下ろして」
「嫌だ。この儘貴様に触れていたい」
「寒気がしたわ。下ろしてくれないかしら?」
「嫌だ。貴様を見ていたい」
「悪寒がしたわ。お願いしてあげるから下ろしてちょうだい。ほら、約束のキスが出来ないわよ。口にしてくれるんじゃなかったの」
 それを聞いたとたん「キスううううううううううう!?」と他三人が絶叫しているのを見て、あのアリシアの言葉を間に受け過ぎだと蕁は飽きれ果てる。
「下ろさなくてもこの儘出来るだろう?」
「は……?」
「アリシア……ほら、目を瞑れ……」
 身体を反らせることが出来ず、額を重ねられる。唇同士が軽く掠められ、アリシアはゾワッと身体中の肌を粟立てた。
「やめなさい!!」
 完全に触れる直前に抵抗して何とかキスは逃れたが、触れてしまった部分の感触を消すことは出来ない。その焦れったさの所為か、蓮は無理矢理にでもキスをしようと迫ってくる。
「れ、蓮……!」
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