リクゴウシュ

隍沸喰(隍沸かゆ)

文字の大きさ
107 / 299
コノカ

23

しおりを挟む
「君の中には多少の緑龍子が存在すル。だから体内が熱で燃焼されてもすぐに元通りになル。熱さを感じないくらいの熱にコントロールするんダ。身体の周辺に纏ってもイイ。それが常に意識せずとも出来るようになるなら尚更イイ」
 彼に従うまま炎、熱の扱い方を覚え、他のコノカたちにも炎の扱い方を教えた。彼の代わりに人体発火の実験も全て私がやった。
「アリア、そうじゃないわ。こう、やって……」
 アリアと呼ばれる女の子は白い髪のピンク色の目の女の子だ。アリシアはその子を自分の妹のように可愛がった。
 彼女の背に手を当てて彼女の中の熱を炎に変える。
「分からないよシティア」
「しょうがないわね。私が手本を見せてあげる。」
 アリシアが手本を見せると、アリアは真似しようとして炎を発生させた。
「熱い、熱いよシティア」
「大丈夫よ、落ち着いて。私がコントロールするから」
「え……? ほ、ホントだ。熱くない、凄いわシティア!」
「教えてくれた人がいるのよ」
「知りたくない。その人がシティアを独り占めしてる相手なんでしょ。どうしても許せないの……。最近私とやってくれないし」
「疲れちゃって。オトウサマはあの人の力に興味があるみたいなの」
「逃げたら私の相手もしてよね、アリシア」
 ここにいる子供達はアリシアのことを基本的にヒグナルを見習ってシティアと呼ぶ。だが、彼のいない所でならいくらでもアリシアと呼んでも良かった。彼女の本当の名を知らない人はどうしてアの部屋にいるのかと不思議に思っているだろう。
 そして、決行の日がやってくる。
「もし逃げられたら結婚してくれないカ?」
「逃げられるか分からないなら今結婚しましょうよ」
「君には逃がしたい人がいるんじゃなかったカ? だからこの件に乗ったんダロ? その人を愛してるんじゃないのカ?」
「いないわよ。逃がしたい人も愛した人も」

 そんな話をして、彼とは〝仮の結婚〟なんて遊びまでした。

「お前を一生守ると誓ウ」
「バカね。私なんか守らなくてもいいのよ。自分の身は自分で守れるわ」
 苒はそっとアリシアに近づき、唇同士を重ねさせる。
「な、何するのよ!」
「ほら、お前キスが好きじゃないカ。落ち着くだロ?」
 アリシアはかぁっと顔を赤く染めて、怒り心頭で苒に攻撃を仕掛けるが彼は悠々と避けて笑った。その笑顔にアリシアは惹かれていたのかもしれない。今になったら分からないことだ。好きだったのか、好きではなかったのか、愛していたのか、愛していた気がする。
 いいえ。愛していたんだ。大切な家族だったから。
 アリシアは、一度も彼に勝てなかった。アリシアの炎は苒の炎。苒の技。
 苒から受け継いだ炎の力と言っても過言ではなかった。
 彼と考えた作戦は順調に進んだ。アリシアは完璧だと慢心していた。
 アリアも、アの部屋の子供たちも、ゼの部屋の子供たちも皆連れてきていた。
「大丈夫よ! 私について来て!」
 選択なんて簡単だと思っていた。私は正解の道にだけ進めるのだと。
 あの化け物が出てくるまでは。

『エンタイアを出せ』

 エンタイアとは恐ろしい化け物だった。エンタイアはコノカを食い荒らしていった。炎を操り、アリシアと長年過ごした仲間たちを燃やしていった。

 ――俺たち二人だけになるまで、そう長くはなかった。

 ――出口に着くと、オトウサマが、待ち受けていた。

「シティア……お前は絶対に逃がさないよ。家族だろう? 大事な娘だろう?」
 オトウサマはやっとのことで完成させたシティアと言うキューピットを、能力協会と言う私たちのような化け物を保護する組織に保護された。オトウサマの最愛の人も一緒に。
 そして私のことを代わりとしてか、シティアと呼ぶようになった。
 そのオトウサマのせいで、シャッターが降りていく、出口のシャッターが。
 絶望と希望の境目が。遮断される。
 絶望に落ちる。

 ――とん。

 熱い衝撃に背中を押され、出口の外に立っていた。シャッターの奥に、私の背を押した彼の熱い手が消えていく。

「苒……苒ンンンンンッ!!」

 私の夢も、彼の記憶もそこで終わった。

『おのれ』



『シティアあああああああああああああああああああああああああああ──ッッッ!!!!!!』
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【短編】淫紋を付けられたただのモブです~なぜか魔王に溺愛されて~

双真満月
恋愛
不憫なメイドと、彼女を溺愛する魔王の話(短編)。 なんちゃってファンタジー、タイトルに反してシリアスです。 ※小説家になろうでも掲載中。 ※一万文字ちょっとの短編、メイド視点と魔王視点両方あり。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

処理中です...