リクゴウシュ

隍沸喰(隍沸かゆ)

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コノカ

24

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 アリシアは自分の部屋に寝かされていた。彼女が目覚めると目の前には大量の花束が置いてある。花瓶の花も用意され、果物のバスケットまで置いてあった。
「誰が一体こんな……」
 アリシアが瞠目していると、扉が開きその先にシティアがあらわれる。
「目が覚めたんだねっ!!」
 シティアは大喜びして、感極まってアリシアに抱きつき唇を重ねる。
「貴方の過去を知ったの。ごめんなさい知りたかったから。皆もきっとそう」
「……そう。知ってしまったのね。いいのよ」
「……アリシア、目が赤く……」
「私の目は義眼を押し退けて回復するの。そして少しずつ色を取り戻していくの。だからオトウサマは手放せなかったのよ」
 アリシアは自分の手を見つめながら言う。
「人間にだって炎は扱えるわ。マッチで火を起こせるし、火炎放射器なんてので人間を炭にだって出来るんだもの。其れに比べて私達コノカは火を操るだけよ。火さえなければ唯の人間。火を起こす力が何故ないのだと思う? そんなものあったら星が滅ぶからよ」
 窓の外を見て呟いた。
「見なさいよ、シティア・ダーワーク。此の世界の大体は燃えて炭になるわ。火はね、起こせば勝手に燃え続けてくれるの。雨が降って消えたとしても、私達みたいなのが火を起こしたら大変でしょ? 世界中のコノカが彼方此方で火を付けてみなさいよ、国中火の海にだって出来るわ。でも私達は火が起こせない。だから私達は不要なのよ」
 シティアが声をかけられずにいると、アリシアはペシミズムなことを言う。
「私達は道具以下なのよ。物の様に扱ってくれるだけマシだわ」
 本当にまいっているのかと、心配したシティアだが。
 彼女はあのビデオのように柔らかい笑顔を浮かべてみせる。
「言ったでしょう。人体発火の実験をする部署があるって。其れは私のことよ」
 その後、生徒たちがゾクゾクとやってきて、蓮も蕁も蘭も感極まってアリシアに、キスをしようとするが避けられて額や頬にキスをしていた。
 生徒が全員集まった頃、アリシアが告げる。
「私の正解の道へ着いて来れる?」
 皆頷き、着いていくと言い、それぞれがそれぞれの意思表示をする。拳を見せる者や気合を入れるように声を上げる者、制服を整えて表現する者もいた。
 アリシアがくすりと笑う、悪巧みのない素直な笑みだ。
「次の任務は、この施設を破壊すること。そして、私たちの脱出よ」
 度肝を抜く生徒達、だが、皆の決意は固まった。作戦はアリシアが用意していると言う。自分達は実行するだけだ。


        ◇◇◇



 アリシアの作戦はこうだった。我々コノカは炎を操る力で炎を圧縮し爆発させることが出来る。
 その近くにも火薬を置き、施設を大爆発させ破壊する。脱出もアリシアの作戦で難なく成功した。
 彼女達が走る背後で、まるで、自由への花火のように施設は爆発していき、黒煙をあげ、太く頑丈な黄金の火柱があがった。
作戦は成功したが外にはまだ化け物達がうじゃうじゃいる。この島から逃げ切るまで油断はできなかった。
 皆で陣形を組んで倒していた頃、頭伎が突然陣形を崩して走り出した。
「何してんだアイツ!」
 コウア・シェユが言うと、アリシアが務めて冷静に言った。
「裏切り者よ、この森にいる誰かさんに魅了されてしまっていたみたいね。ウイルスは私が殺したんだけど。殺すわ」
「アリシア待って!」
「何よシティア・ダーワーク。貴女が殺してくれるの?」
「殺せないわよ……」
「ならでしゃばらないでくれないかしら? 私は忙しいのよ。心優しいフリした誰かさんの尻拭いがあるんだから」
 シティアは黙り込んで、生徒たちと一緒に頭伎を追いかけることにした。
 その先に待っていたのは……
「あら、随分久しぶりね……」
「うはははははははははははうふふふははははッ!! あはは、あはは、あはは、あはは、あはは、あはは、あはは、あはは、っにゃははははははははははははははははははははははははははははははは」
 女の姿をした恐ろしい化け物だった。
「随分立派な成虫になったこと」
 アリシアの言葉を聞いて、資料について思い出す。ウイルスは動物にではなく人に感染するのだと。そしてここはその実験施設の跡地に建てられた施設。コノカが送り込まれた理由に納得がいく。
「アリシアありしあありしあありしあヴぁあああああああああるまでぃいいいいいいいいいいいいいッジぃぃッ……!! ああああああ懐かしい殺したい会いたかったお前の所為でうふふふふかわいいその目その目よその目だわ私達を奈落へ葬った其の憎らしい目玉を差し出しなさいよ煮て出汁を取って一族皆で酒杯に入れて飲んでお前の肉を食ってお前になってやるんだからあぁあはふふふぅっ! そぉしたらみいんな私を思い出してくれるわ迎えに来てくれるわこんな化け物になった私でもお前の綺麗な身体を手に入れたなら、なら、私をこの私を次の当主に選んでくれるはずだわあああああうふううううはははああああははっ素敵素敵素敵皆貴方に夢中だったものね女神の私を差し置いて夢魔の魅惑に洗脳されてみんなみんなみいんな貴方の心臓を欲しがっていたわ! 未だに貴方を探し続けている者もいる、いる、いるのよわああたしのよおおに!」
「あら。光栄だわ」
 まさにウイルス達の女王だろう。大量の虫が飛び交い、彼女の中に入ったり出たりを繰り返す。ウイルスは虫の中にいると前の教育係に教わった。だから皆が炎を絶やさず、炎の鎧を身に纏った。
「その、その驕慢な態度言葉っ相変わらず何も変わらず今以て尚私を見下し周囲を見下すその姿が目を目を焼くのよ。あの、あの時お前さえ現れなければ……私は、私は今頃当主に。当主にいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいイイイイイイイッ!!」
 アリシアと彼女は知り合いなのか。そうシティアが思った時、蘭が立ち止まっている姿を見て急いで駆けつける。
「どうしたの蘭ちゃん!」
「炎の魔王……」
「え?」
 聞いたことがある、或る事件――飛ぶ者、翼を持つ種族國哦伐家とコノカ、梁翼牡家が、協力して任務を行った時、炎の魔王が現れてその全てを焼き尽くしたのだと。生き残った者は家族も友人も燃やされ、彼らは絶望とトラウマを植え付けられた。
 炎の魔王。それがアリシアの正体だった。
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