ビジネストリッパー

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 ギシギシとうるさいビジネスチェアを180度回転させると、マジックミラー加工のされた全面ガラス張りの窓から向かいのビルの全面ガラス張の窓が見える。
 日本の経済の中心地であるここはどこもかしこもこういったビルだらけだ。
 ショート、トール、グランデのヒートアイランド現象発生装置を数十個敷き詰めた景色を想像してくれ。
 駅近、耐震施工済み、数十階建て、社員の交換保障サービス、至れり尽くせりのヤッピー隔離用タウンシップと考えるのもいい。
「あなたは今あの時ケネディを撃った男と同じ高さから景色を見ています。」
私がこのフロアの総括を任された時、人事部の人間は私にこう言った。ケネディがもし私の眼前にいるのなら、彼はトヨタ車に乗っていてそしてその車はハイブリットカーのはずだ。テロリストの粋な計らいで日の丸にちなんだ真っ赤な脳みそが弾けるはずだ。
 見た所さっきから部下たちが時計を気にしている、そういえばそろそろ昼だ。
もうお昼だ、昼食にしよう。
私は部下に伝えた。部下からの支持を落とさないためには正午を10分前に知らせるといい。
 彼らはぞろぞろとオフィスを出て行き、残ったのは私だけだ。私も彼らの後を追って席を立った、しかし私のデスクに置かれた社用の固定電話が「戻ってこい」とうるさく鳴いた。私は受話器を取った。
「急な連絡失礼いたします。人事部の石川ですが、今から第八会議室までお越し頂いてもよろしいでしょうか。仕事が残っているのであれば中断して頂いて構いません、何せ重要な案件ですので。」
 第八会議室？社長室の目の前じゃないか。何事だろう。
わかりました、とだけ私は答えた。
 私は足早にエレベーターホールへと向かった。