4 / 7
4章 新聞記者
調子に乗りすぎた男
しおりを挟む
雄一郎たち3人は、カウンターの中で椅子に腰かけている。
さて、どうしたものか・・・
そんな感じである。
案内所は営業中になったが、朝から訪れる観光客はいない。
雄一郎は会社の上司に、
「今朝起きたら熱があるので、病院に行って検査してもらってきます。すみませんが、今日は休ませてください。」
と連絡した。
現実をそのまま話すと、ややこしくなりかねないからだ。
上司の返事は、
「わかりました。インフルエンザのような感染症だったら、5日間は休んでください」
と言われた。正直、自分があまり戦力になっていないのだから、さほど困らないのかもしれない。
今日、必要なSDカードも、どうしても今日でなければならない、というわけでもない。
だが、考えようによっては、この5日間は休めるわけだ。その間にこの不思議な現象を考えてみるのも悪くないと思った。
「知り合いに地元の新聞記者がいるから、似たような事例の話を聞いたことがないか、聞いてみましょうか・・・」
菊池はそう言うと、テーブルの上に置かれたスマホを取り上げ、画面を人差し指で操作して、知り合いの新聞記者に連絡した。
最近ではデジタル新聞が主流になりつつあるが、紙の新聞もまだまだ購読者は多い。
「話を聞きに、すぐに来るそうです」
菊池はスマホの電話を切った。
山本と名乗る新聞記者が現れたのは、それから20分ほどしてからだった。
年齢は30歳を超えているように思える。マスクはしていないので、顔の表情がよくわかる。
髪は短く刈り上げている。スポーツでもしているのか、170cmくらいの身長で、紺のスーツの上からでもガタイがしっかりしているのがわかる。
案内所に入って来ると、カウンターの中で椅子に腰かけている雄一郎に気づき、
「この方ですか」
山本記者はすぐにカウンターの中へ入り、名刺を雄一郎に差し出した。つい癖で雄一郎も立ち上がり、慌ててカバンから名刺入れを取り出し、差し出す。
「サクラオ電機の方ですか・・・」
もらった名刺に目を落としながら雄一郎の方へ顔を上げる。
「小さい家電メーカーです」
「存じ上げてますよ。小型家電を作っておられますよね」
「よくご存知で・・・」
「これでも一応、新聞記者のはしくれですから・・・」
苦笑いするその顔は少し皺が寄って、優しい目元になる。
「さて、本題に入りましょうか・・・」
ちょっと前の柔和な表情とは別人の険しい表情に変わった。
雄一郎は少し緊張気味に、今自分が住んでいる場所や、忘れ物を取りに一旦家に戻った事、スローモーションのような足取りになり、一瞬、目の前が真っ白になったあと、気づいたらここにいた事を丁寧に話した。
山本記者は小型録音機を雄一郎の方へかざしながら、時々黙って頷き、録音している。ちなみに、この録音機はサクラオ電機製ではない。サクラオ電機は録音機を製造していない。
話の途中、外国人カップルの観光客が案内所を尋ねて来たが、女性が流暢な英語で応対した。外国人は丁寧にお礼を言うと、案内所を出て行った。
そして再び、戻って来た。
「お二人は最初、その話を聞いてどう思いましたか?」
今度は録音機を案内所の2人の方へ向ける。
2人はそれぞれに率直に感じた事を話した。
山本記者はそれも黙って聞いている。
「すべてが事実だとして、今までこんな体験の話を聞いたことはないですね。
たぶん、周りの誰に聞いても同じでしょう・・・
これはとても不思議で興味深い話です。
もしかしたら、諏訪大社と何か関係があるのでしょうか・・・?
お母様のお話も信用できますし、明日の朝刊にこの不思議な体験を載せましょう・・・
もしかしたら、何か情報が得られるかもしれません」
そう言うと、山本記者は録音を止めると、録音機を上着のポケットへしまい、急ぐように案内所から出て行った。
4章 新聞記者 完 続く
さて、どうしたものか・・・
そんな感じである。
案内所は営業中になったが、朝から訪れる観光客はいない。
雄一郎は会社の上司に、
「今朝起きたら熱があるので、病院に行って検査してもらってきます。すみませんが、今日は休ませてください。」
と連絡した。
現実をそのまま話すと、ややこしくなりかねないからだ。
上司の返事は、
「わかりました。インフルエンザのような感染症だったら、5日間は休んでください」
と言われた。正直、自分があまり戦力になっていないのだから、さほど困らないのかもしれない。
今日、必要なSDカードも、どうしても今日でなければならない、というわけでもない。
だが、考えようによっては、この5日間は休めるわけだ。その間にこの不思議な現象を考えてみるのも悪くないと思った。
「知り合いに地元の新聞記者がいるから、似たような事例の話を聞いたことがないか、聞いてみましょうか・・・」
菊池はそう言うと、テーブルの上に置かれたスマホを取り上げ、画面を人差し指で操作して、知り合いの新聞記者に連絡した。
最近ではデジタル新聞が主流になりつつあるが、紙の新聞もまだまだ購読者は多い。
「話を聞きに、すぐに来るそうです」
菊池はスマホの電話を切った。
山本と名乗る新聞記者が現れたのは、それから20分ほどしてからだった。
年齢は30歳を超えているように思える。マスクはしていないので、顔の表情がよくわかる。
髪は短く刈り上げている。スポーツでもしているのか、170cmくらいの身長で、紺のスーツの上からでもガタイがしっかりしているのがわかる。
案内所に入って来ると、カウンターの中で椅子に腰かけている雄一郎に気づき、
「この方ですか」
山本記者はすぐにカウンターの中へ入り、名刺を雄一郎に差し出した。つい癖で雄一郎も立ち上がり、慌ててカバンから名刺入れを取り出し、差し出す。
「サクラオ電機の方ですか・・・」
もらった名刺に目を落としながら雄一郎の方へ顔を上げる。
「小さい家電メーカーです」
「存じ上げてますよ。小型家電を作っておられますよね」
「よくご存知で・・・」
「これでも一応、新聞記者のはしくれですから・・・」
苦笑いするその顔は少し皺が寄って、優しい目元になる。
「さて、本題に入りましょうか・・・」
ちょっと前の柔和な表情とは別人の険しい表情に変わった。
雄一郎は少し緊張気味に、今自分が住んでいる場所や、忘れ物を取りに一旦家に戻った事、スローモーションのような足取りになり、一瞬、目の前が真っ白になったあと、気づいたらここにいた事を丁寧に話した。
山本記者は小型録音機を雄一郎の方へかざしながら、時々黙って頷き、録音している。ちなみに、この録音機はサクラオ電機製ではない。サクラオ電機は録音機を製造していない。
話の途中、外国人カップルの観光客が案内所を尋ねて来たが、女性が流暢な英語で応対した。外国人は丁寧にお礼を言うと、案内所を出て行った。
そして再び、戻って来た。
「お二人は最初、その話を聞いてどう思いましたか?」
今度は録音機を案内所の2人の方へ向ける。
2人はそれぞれに率直に感じた事を話した。
山本記者はそれも黙って聞いている。
「すべてが事実だとして、今までこんな体験の話を聞いたことはないですね。
たぶん、周りの誰に聞いても同じでしょう・・・
これはとても不思議で興味深い話です。
もしかしたら、諏訪大社と何か関係があるのでしょうか・・・?
お母様のお話も信用できますし、明日の朝刊にこの不思議な体験を載せましょう・・・
もしかしたら、何か情報が得られるかもしれません」
そう言うと、山本記者は録音を止めると、録音機を上着のポケットへしまい、急ぐように案内所から出て行った。
4章 新聞記者 完 続く
6
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる