調子に乗りすぎた男

ゆきもと けい

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4章 新聞記者

調子に乗りすぎた男

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 雄一郎たち3人は、カウンターの中で椅子に腰かけている。
 さて、どうしたものか・・・
 そんな感じである。
 案内所は営業中になったが、朝から訪れる観光客はいない。

 雄一郎は会社の上司に、

「今朝起きたら熱があるので、病院に行って検査してもらってきます。すみませんが、今日は休ませてください。」

 と連絡した。
 現実をそのまま話すと、ややこしくなりかねないからだ。
 上司の返事は、

「わかりました。インフルエンザのような感染症だったら、5日間は休んでください」

 と言われた。正直、自分があまり戦力になっていないのだから、さほど困らないのかもしれない。
 今日、必要なSDカードも、どうしても今日でなければならない、というわけでもない。

 だが、考えようによっては、この5日間は休めるわけだ。その間にこの不思議な現象を考えてみるのも悪くないと思った。

「知り合いに地元の新聞記者がいるから、似たような事例の話を聞いたことがないか、聞いてみましょうか・・・」

 菊池はそう言うと、テーブルの上に置かれたスマホを取り上げ、画面を人差し指で操作して、知り合いの新聞記者に連絡した。
 最近ではデジタル新聞が主流になりつつあるが、紙の新聞もまだまだ購読者は多い。

「話を聞きに、すぐに来るそうです」

 菊池はスマホの電話を切った。

 山本と名乗る新聞記者が現れたのは、それから20分ほどしてからだった。

 年齢は30歳を超えているように思える。マスクはしていないので、顔の表情がよくわかる。
髪は短く刈り上げている。スポーツでもしているのか、170cmくらいの身長で、紺のスーツの上からでもガタイがしっかりしているのがわかる。

 案内所に入って来ると、カウンターの中で椅子に腰かけている雄一郎に気づき、

「この方ですか」

 山本記者はすぐにカウンターの中へ入り、名刺を雄一郎に差し出した。つい癖で雄一郎も立ち上がり、慌ててカバンから名刺入れを取り出し、差し出す。

「サクラオ電機の方ですか・・・」

 もらった名刺に目を落としながら雄一郎の方へ顔を上げる。

「小さい家電メーカーです」

「存じ上げてますよ。小型家電を作っておられますよね」

「よくご存知で・・・」

「これでも一応、新聞記者のはしくれですから・・・」

 苦笑いするその顔は少し皺が寄って、優しい目元になる。

「さて、本題に入りましょうか・・・」

 ちょっと前の柔和な表情とは別人の険しい表情に変わった。

 雄一郎は少し緊張気味に、今自分が住んでいる場所や、忘れ物を取りに一旦家に戻った事、スローモーションのような足取りになり、一瞬、目の前が真っ白になったあと、気づいたらここにいた事を丁寧に話した。

 山本記者は小型録音機を雄一郎の方へかざしながら、時々黙って頷き、録音している。ちなみに、この録音機はサクラオ電機製ではない。サクラオ電機は録音機を製造していない。

 話の途中、外国人カップルの観光客が案内所を尋ねて来たが、女性が流暢な英語で応対した。外国人は丁寧にお礼を言うと、案内所を出て行った。

 そして再び、戻って来た。

「お二人は最初、その話を聞いてどう思いましたか?」

 今度は録音機を案内所の2人の方へ向ける。
 2人はそれぞれに率直に感じた事を話した。
 山本記者はそれも黙って聞いている。

「すべてが事実だとして、今までこんな体験の話を聞いたことはないですね。
たぶん、周りの誰に聞いても同じでしょう・・・
これはとても不思議で興味深い話です。
もしかしたら、諏訪大社と何か関係があるのでしょうか・・・?
お母様のお話も信用できますし、明日の朝刊にこの不思議な体験を載せましょう・・・
もしかしたら、何か情報が得られるかもしれません」

 そう言うと、山本記者は録音を止めると、録音機を上着のポケットへしまい、急ぐように案内所から出て行った。


  4章 新聞記者 完 続く
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