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エピローグ
前世の記憶から引き出された真実
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父親と息子は無言のまま、先ほどの{ひょうたん公園}へ戻った。今が陽介なのか隼人君なのかは判断がつかない。古めかしい木のベンチに並んで腰かけた。先ほど遊んでいた母子は居なくなっていた。公園には誰もいない。寂しい限りだ。
父親は改めて心の整理をつけてみる。
(僕のホクロの位置は特徴的だ。右目の下に2つ左目の下に1つ小さいホクロがある)
20年前の4月後半…改めて思い起こしてみる。
(遠い記憶だが、その時は確かに高校3年生。修学旅行で九州に来ている。ただ長崎へはいつ来てどこで昼食を食べたかまでは当然ながら覚えていない。もちろん、子供にぶつかったことも…が…隼人君の言ってることが本当ならば、僕である可能性は極めて高い…6歳の子供がそんなウソを言ってるとも思えない…以前もそうだったが、隼人君の話に論理的破綻はない…)
ふと誰かが言った言葉を思い出した。
『人間というものは勝手な生き物だ。自分が他人に迷惑をかけてもすぐに忘れてしまうくせに、されたことは一生覚えていたりする…厄介だ…』
(今の僕がまさにそうなのかもしれない…あの時はだいぶはしゃぎ過ぎていた…今更、反省したところでどうしようないが…僕は取返しのつかないことをしてしまった…隼人君の未来を奪ってしまうキッカケを作ってしまった。まさか隼人君の想いを叶える為にここへやって来たというのに…)
父親は頭を抱え、俯いた。
(いったい、何をどうしたらいいんだろう…到底償えるものでない事はわかっている…)
「今、何をどうしたらいいかって思ってるでしょ、僕にはわかるんだ」
「…」
「何をどうしたらって言っても、僕はもう生き返らないからね…何をどうするかはおじさんが自分で考えるしかないよね…」
「…」
隼人君の記憶はいずれ陽介から消える。それまでじっと耐えるか…
ただ、この真実は陽介の記憶の中に残るのだろうか?だとすると、この先、陽介はどんな気持ちで僕を見ていくのだろうか?横に座っている陽介からは窺いしれない。ただ正面をまっ直ぐに見詰めているだけだ。
突然、携帯電話が鳴った。着信音で妻からだとわかった。
「どう?今日一日で何かわかったの?」
「あ、ああ。まぁ」
父親は曖昧な返事をした。
「元気なさそうだけど、大丈夫?」
「で、なんだい?」
「ああ、帰ってきたからでも良かったんだけど、少しでも早い方が良いかと思って…」
「うん」
「今日、病院へ行って診てもらったら、おめでたですって!」
妻の声は弾んでいた。
「そうか…」
「あら?嬉しくないの?」
「2人目が出来て嬉しくないわけないだろう」
「そうよね。話はそれだけなんだけどね。じゃぁ、明後日、気を付けて帰ってきてね」
そう言うと電話は切れた。
その電話の内容を聞いていた隼人君が急にこちらを向き、父親の顔を見上げながら、
「次の赤ちゃんにもきっと僕と同じように前世の記憶があるよ…おじさん…他にも何かやらかしてなければいいけどね…僕の時と同じような事をね…」
薄笑いを浮かべ、父親の表情を窺うその様子は、異様に不気味で、6歳の子供とは到底思えない。もはや息子の陽介の表情でもない…
父親は、不気味な薄笑いを浮かべている隼人君の表情をじっと見詰め返し、今、何をどうすべきなのか……
ベンチから静かに立ち上がった…
エピローグ 完
父親は改めて心の整理をつけてみる。
(僕のホクロの位置は特徴的だ。右目の下に2つ左目の下に1つ小さいホクロがある)
20年前の4月後半…改めて思い起こしてみる。
(遠い記憶だが、その時は確かに高校3年生。修学旅行で九州に来ている。ただ長崎へはいつ来てどこで昼食を食べたかまでは当然ながら覚えていない。もちろん、子供にぶつかったことも…が…隼人君の言ってることが本当ならば、僕である可能性は極めて高い…6歳の子供がそんなウソを言ってるとも思えない…以前もそうだったが、隼人君の話に論理的破綻はない…)
ふと誰かが言った言葉を思い出した。
『人間というものは勝手な生き物だ。自分が他人に迷惑をかけてもすぐに忘れてしまうくせに、されたことは一生覚えていたりする…厄介だ…』
(今の僕がまさにそうなのかもしれない…あの時はだいぶはしゃぎ過ぎていた…今更、反省したところでどうしようないが…僕は取返しのつかないことをしてしまった…隼人君の未来を奪ってしまうキッカケを作ってしまった。まさか隼人君の想いを叶える為にここへやって来たというのに…)
父親は頭を抱え、俯いた。
(いったい、何をどうしたらいいんだろう…到底償えるものでない事はわかっている…)
「今、何をどうしたらいいかって思ってるでしょ、僕にはわかるんだ」
「…」
「何をどうしたらって言っても、僕はもう生き返らないからね…何をどうするかはおじさんが自分で考えるしかないよね…」
「…」
隼人君の記憶はいずれ陽介から消える。それまでじっと耐えるか…
ただ、この真実は陽介の記憶の中に残るのだろうか?だとすると、この先、陽介はどんな気持ちで僕を見ていくのだろうか?横に座っている陽介からは窺いしれない。ただ正面をまっ直ぐに見詰めているだけだ。
突然、携帯電話が鳴った。着信音で妻からだとわかった。
「どう?今日一日で何かわかったの?」
「あ、ああ。まぁ」
父親は曖昧な返事をした。
「元気なさそうだけど、大丈夫?」
「で、なんだい?」
「ああ、帰ってきたからでも良かったんだけど、少しでも早い方が良いかと思って…」
「うん」
「今日、病院へ行って診てもらったら、おめでたですって!」
妻の声は弾んでいた。
「そうか…」
「あら?嬉しくないの?」
「2人目が出来て嬉しくないわけないだろう」
「そうよね。話はそれだけなんだけどね。じゃぁ、明後日、気を付けて帰ってきてね」
そう言うと電話は切れた。
その電話の内容を聞いていた隼人君が急にこちらを向き、父親の顔を見上げながら、
「次の赤ちゃんにもきっと僕と同じように前世の記憶があるよ…おじさん…他にも何かやらかしてなければいいけどね…僕の時と同じような事をね…」
薄笑いを浮かべ、父親の表情を窺うその様子は、異様に不気味で、6歳の子供とは到底思えない。もはや息子の陽介の表情でもない…
父親は、不気味な薄笑いを浮かべている隼人君の表情をじっと見詰め返し、今、何をどうすべきなのか……
ベンチから静かに立ち上がった…
エピローグ 完
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ゆきもとけい様。
いつも楽しく拝読させて頂いてます。
ありがとうございます。
衝撃的なラストに、
スマホを握る手が、
汗ビッショリになりました。
今後も、
素晴らしい作品の投稿を
とても楽しみにしております。
退会済ユーザのコメントです
岡本圭地様
はじめまして。読んで頂いてありがとうございます。
楽しんで頂けたら幸いです。
私も岡本圭地様の1995 〜奇跡の出逢い〜を拝読させていただきました。
最後がとても素敵なエンディングで良かったです。
今後ともよろしくお願いいたします