前世の記憶から引き出された真実

ゆきもと けい

文字の大きさ
5 / 5
エピローグ

前世の記憶から引き出された真実

しおりを挟む
 父親と息子は無言のまま、先ほどの{ひょうたん公園}へ戻った。今が陽介なのか隼人君なのかは判断がつかない。古めかしい木のベンチに並んで腰かけた。先ほど遊んでいた母子は居なくなっていた。公園には誰もいない。寂しい限りだ。

 父親は改めて心の整理をつけてみる。

(僕のホクロの位置は特徴的だ。右目の下に2つ左目の下に1つ小さいホクロがある)

 20年前の4月後半…改めて思い起こしてみる。

(遠い記憶だが、その時は確かに高校3年生。修学旅行で九州に来ている。ただ長崎へはいつ来てどこで昼食を食べたかまでは当然ながら覚えていない。もちろん、子供にぶつかったことも…が…隼人君の言ってることが本当ならば、僕である可能性は極めて高い…6歳の子供がそんなウソを言ってるとも思えない…以前もそうだったが、隼人君の話に論理的破綻はない…)

ふと誰かが言った言葉を思い出した。

『人間というものは勝手な生き物だ。自分が他人に迷惑をかけてもすぐに忘れてしまうくせに、されたことは一生覚えていたりする…厄介だ…』

(今の僕がまさにそうなのかもしれない…あの時はだいぶはしゃぎ過ぎていた…今更、反省したところでどうしようないが…僕は取返しのつかないことをしてしまった…隼人君の未来を奪ってしまうキッカケを作ってしまった。まさか隼人君の想いを叶える為にここへやって来たというのに…)

 父親は頭を抱え、俯いた。

(いったい、何をどうしたらいいんだろう…到底償えるものでない事はわかっている…)

「今、何をどうしたらいいかって思ってるでしょ、僕にはわかるんだ」

「…」

「何をどうしたらって言っても、僕はもう生き返らないからね…何をどうするかはおじさんが自分で考えるしかないよね…」

「…」

 隼人君の記憶はいずれ陽介から消える。それまでじっと耐えるか…
 ただ、この真実は陽介の記憶の中に残るのだろうか?だとすると、この先、陽介はどんな気持ちで僕を見ていくのだろうか?横に座っている陽介からは窺いしれない。ただ正面をまっ直ぐに見詰めているだけだ。

 突然、携帯電話が鳴った。着信音で妻からだとわかった。

「どう?今日一日で何かわかったの?」

「あ、ああ。まぁ」

 父親は曖昧な返事をした。

「元気なさそうだけど、大丈夫?」

「で、なんだい?」

「ああ、帰ってきたからでも良かったんだけど、少しでも早い方が良いかと思って…」

「うん」

「今日、病院へ行って診てもらったら、おめでたですって!」

 妻の声は弾んでいた。

「そうか…」

「あら?嬉しくないの?」

「2人目が出来て嬉しくないわけないだろう」

「そうよね。話はそれだけなんだけどね。じゃぁ、明後日、気を付けて帰ってきてね」

 そう言うと電話は切れた。

 その電話の内容を聞いていた隼人君が急にこちらを向き、父親の顔を見上げながら、

「次の赤ちゃんにもきっと僕と同じように前世の記憶があるよ…おじさん…他にも何かやらかしてなければいいけどね…僕の時と同じような事をね…」

 薄笑いを浮かべ、父親の表情を窺うその様子は、異様に不気味で、6歳の子供とは到底思えない。もはや息子の陽介の表情でもない…

 父親は、不気味な薄笑いを浮かべている隼人君の表情をじっと見詰め返し、今、何をどうすべきなのか……

 ベンチから静かに立ち上がった…


 エピローグ 完
しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

喜劇 鈍行列車

ゆきもとけい様。

いつも楽しく拝読させて頂いてます。
ありがとうございます。

衝撃的なラストに、
スマホを握る手が、
汗ビッショリになりました。

今後も、
素晴らしい作品の投稿を
とても楽しみにしております。

解除
2023.05.18 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

2023.05.27 ゆきもと けい

岡本圭地様
はじめまして。読んで頂いてありがとうございます。
楽しんで頂けたら幸いです。
私も岡本圭地様の1995 〜奇跡の出逢い〜を拝読させていただきました。
最後がとても素敵なエンディングで良かったです。

今後ともよろしくお願いいたします

解除

あなたにおすすめの小説

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。