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第2話 108の技を持つ男
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小学校には道徳という科目がある。
低学年の頃は「こころの授業」とも呼ばれていたな。
その名の通り道徳性を養うための授業でありこの授業を通してお互いに相手の気持ちを推し量り助け合って生きていくことが大事であると教えられてきた。
うんうんその通りだ。誰かが困っていれば助けてあげるべきだし、そしたら今度は自分のピンチで誰かに助けてもらう。
人はこうして助け合っていくべきである。
それなのにおかしい。釈然としない。
給食ではそれが固く禁じられている。
給食はメニューのトレードや譲渡は一切許されていない。
4年生の頃 隣の今村くんにミネストローネを食べてもらおうとしているのを先生に見つかった時
「先生違うんです!ぼくは嫌だって言ったのに新井くんが無理やり!」
と罪を全て押し付けられ俺だけ居残り掃除をさせられた。
おい今村、てめぇが欲しいって言ったんだろうが。ミネストローネぐらい俺でも食えたんだぞ。トマトさえなければ。
ちっ思い出したら腹が立ってきた。
だが怒りという感情は緊張や動揺を掻き消すことができる。
今日の戦いにも集中して臨めそうだ。
ありがとう今村。じゃなかった、くたばれ今村。
食べられないものを食べられるやつに食べてもらう。確かに食べる側が嫌だというのなら無理強いはできないだろう。
だが食べたがっているのなら話は別でしょ。
お互いの弱点をお互いでカバーする。
立派な助け合いじゃないか。
もっとも、俺に食えて 他人に食えない物はほとんど給食には出てこないから助けてもらいっぱなしになるのだが。
助け合いが大事だと教えてきた先生がその助け合いを妨げてくる。
わからない。いつからこんな世の中になったんだろうか。
「そうか…これが、世界の選択 か…」
「なにブツブツ言ってんの?きもい」
「あっ」
相沢の一言で現実世界に引き戻される。
そういえば今は戦いの真っ最中。
戦場で物思いにふけるなんて俺としたことが。
というかきもいとか言わないでよ。
俺の中で女子に言われたくない言葉ワースト3に入るぞ。
「いや、ちょっと考え事をしていたんだ」
「へぇー きもい。」
聞いてた人の話? いや聞こえるわけないんだけどさ。
「で、今日はどうやって給食残すの?」
あなたの頭にはぼくが完食するという考えはないんですね。
実際その通りだけどよ。
少しくらいは期待してくれたっていいじゃない。
「もちろんすでに作戦は練ってあるぜ
俺は給食を残すための技が108あるからな。」
「嘘だ。そんなにあるわけないじゃん。」
そんな目で見るな。俺はこのあみだした技の数々に誇りすら感じているんだ。
「じゃあ後で108個の技 ノートに書いて見せてよ」
「それは無理だ。お前そのノートを誰かに売るつもりなんだろう。俺の完璧な技の数々を他人に見られちゃかなわんからな」
「いや、そんな技使うのあんたくらいでしょ…誰が買うのよ」
まあな、まさかこんなに給食の時間に色々考えている奴は俺くらいのもんだろう。 実際に108個も技があるわけではない。でも どっかのテニスっぽいなにかをやっている格闘技漫画でも古い方のシリーズだと23くらいまでしか見せなかったし、まあ多少はね?
「ま、仮に買って読んだところで誰にも俺の技を真似することなんてできないけどな、というかお前も話してないでちゃっちゃと食べろよ。お前だっていつも遅くまで食べてるだろ」
「うん…それはまあ…そうなんだけど…」
なにか後ろめたそうに弱々しい声を漏らす相沢。 なんかいつもと様子が違うな?
おっと、今はそれどころじゃなかった。
そろそろ作戦を実行に移さねば。
俺は机に向き合った。
低学年の頃は「こころの授業」とも呼ばれていたな。
その名の通り道徳性を養うための授業でありこの授業を通してお互いに相手の気持ちを推し量り助け合って生きていくことが大事であると教えられてきた。
うんうんその通りだ。誰かが困っていれば助けてあげるべきだし、そしたら今度は自分のピンチで誰かに助けてもらう。
人はこうして助け合っていくべきである。
それなのにおかしい。釈然としない。
給食ではそれが固く禁じられている。
給食はメニューのトレードや譲渡は一切許されていない。
4年生の頃 隣の今村くんにミネストローネを食べてもらおうとしているのを先生に見つかった時
「先生違うんです!ぼくは嫌だって言ったのに新井くんが無理やり!」
と罪を全て押し付けられ俺だけ居残り掃除をさせられた。
おい今村、てめぇが欲しいって言ったんだろうが。ミネストローネぐらい俺でも食えたんだぞ。トマトさえなければ。
ちっ思い出したら腹が立ってきた。
だが怒りという感情は緊張や動揺を掻き消すことができる。
今日の戦いにも集中して臨めそうだ。
ありがとう今村。じゃなかった、くたばれ今村。
食べられないものを食べられるやつに食べてもらう。確かに食べる側が嫌だというのなら無理強いはできないだろう。
だが食べたがっているのなら話は別でしょ。
お互いの弱点をお互いでカバーする。
立派な助け合いじゃないか。
もっとも、俺に食えて 他人に食えない物はほとんど給食には出てこないから助けてもらいっぱなしになるのだが。
助け合いが大事だと教えてきた先生がその助け合いを妨げてくる。
わからない。いつからこんな世の中になったんだろうか。
「そうか…これが、世界の選択 か…」
「なにブツブツ言ってんの?きもい」
「あっ」
相沢の一言で現実世界に引き戻される。
そういえば今は戦いの真っ最中。
戦場で物思いにふけるなんて俺としたことが。
というかきもいとか言わないでよ。
俺の中で女子に言われたくない言葉ワースト3に入るぞ。
「いや、ちょっと考え事をしていたんだ」
「へぇー きもい。」
聞いてた人の話? いや聞こえるわけないんだけどさ。
「で、今日はどうやって給食残すの?」
あなたの頭にはぼくが完食するという考えはないんですね。
実際その通りだけどよ。
少しくらいは期待してくれたっていいじゃない。
「もちろんすでに作戦は練ってあるぜ
俺は給食を残すための技が108あるからな。」
「嘘だ。そんなにあるわけないじゃん。」
そんな目で見るな。俺はこのあみだした技の数々に誇りすら感じているんだ。
「じゃあ後で108個の技 ノートに書いて見せてよ」
「それは無理だ。お前そのノートを誰かに売るつもりなんだろう。俺の完璧な技の数々を他人に見られちゃかなわんからな」
「いや、そんな技使うのあんたくらいでしょ…誰が買うのよ」
まあな、まさかこんなに給食の時間に色々考えている奴は俺くらいのもんだろう。 実際に108個も技があるわけではない。でも どっかのテニスっぽいなにかをやっている格闘技漫画でも古い方のシリーズだと23くらいまでしか見せなかったし、まあ多少はね?
「ま、仮に買って読んだところで誰にも俺の技を真似することなんてできないけどな、というかお前も話してないでちゃっちゃと食べろよ。お前だっていつも遅くまで食べてるだろ」
「うん…それはまあ…そうなんだけど…」
なにか後ろめたそうに弱々しい声を漏らす相沢。 なんかいつもと様子が違うな?
おっと、今はそれどころじゃなかった。
そろそろ作戦を実行に移さねば。
俺は机に向き合った。
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