異世界の叔父のところに就職します

まはぷる

文字の大きさ
36 / 184
第三章

叔父は異世界の勇者で〇〇でした 2

しおりを挟む
「ずいぶん駆けつけるのが早かったね。こっちはそれのおかげで助かったけど」

「なに、姪っ子捜しをしてるときに、魔族の不穏な動向を掴んでな、先んじて――ん?」

 言いかけた叔父がふと首を捻る。

「……叔父さん?」

「んんん~、なーんか、こう……なんだろうな、これ? なにか引っかかるような、もどかしいような……なあ?」

「ごめん。全然わかんない」

「だろうな。俺もよくわからん。まあいいか、ははっ!」

 こんな状況でも、叔父はマイペースだった。

「それにしても、すごい格好だね、それ」

 叔父の装備がどうしても目を引く。

 青く輝くメタリック系の全身鎧はまだしも、肩に担いでいるのは巨大な鉄塊とくる。
 武器と呼ぶのも憚られそうな、長さ2メートル、幅1メートルほどもありそうな巨大な鉈だった。

「だろ? 俺の相棒、惨殺丸だ」

 うわぁ。勇者の武器にあるまじき名称だった。
 まあ、たしかに伝説の剣とかいうよりは、見た目でしっくりくるかもしれない。

「さて。お喋りはこれくらいにして――」

 叔父が振り向きざま、惨殺丸を真一文字に振り抜く。
 ただそれだけで、いつの間にか詰めかけてきていたレッドグリズリー3体の首が宙を舞った。

「人の甥っ子に手出しした礼をしてやらんとなあ!」

 叔父は大鉈を振った勢いそのままに、門の前に殺到する敵集団に単身で突貫した。
 瞬く間に斬り裂かれた魔物や魔獣の死骸が正門広場に撒き散らされる。

 叔父の勢いは留まらず、なおも加速して敵の大群に突き刺さる楔となった。

「いくら叔父さんでも、あの数じゃあ!」

「問題ない」

 冷静に断じたのは、ローブ姿の男だった。

「そなたとは以前にも会ったな。その節はろくに挨拶もせず失敬した。わたしはラスクラウドゥ。そなたはセージの血族だな?」

 なんか大層に呼ばれた。

「血族……そ、そうなりますね。征司の甥で、秋人です」

「ふむ」

「「…………」」

 会話が終了した。
 ふたりで肩を並べて、叔父の突き進む様を無言で眺める。

 「わははー」と呑気な笑い声が遠ざかり、敵の大群がモーゼのごとく割れていくのが見えた。

「いやいや、ではなくてですね!」

「ふむ?」

「いくら叔父が強くても、あれだけの多勢に無勢なんですから危ないかもしれないじゃないですか!? 魔法だって使ってくるんですし、遠距離から攻撃でもされたら!」

「だから問題ないと言っている」

 あくまでも断じる。
 ラスクラウドゥさんは無表情のまま、もうかなり距離の離れつつある叔父を指差した。

「セージの剣技は螺旋。破壊を生みだす嵐だ。セージの膂力にあの超重量の得物、さらには遠心力も加わり、止まらない螺旋の中で一撃ごとに威力を増していく攻撃に、耐えうる生物はいるまいよ」

 たしかに、そう言われてみると叔父の動きには終わりがない。攻撃の始点と終点が連続している。
 横薙ぎから反転して袈裟懸け、独楽のように回って斬り上げ、次いで勢いのままに唐竹割りと、縦横無尽の斬撃が周囲の敵を襲う。まさに螺旋の動きだ。

 もっとも脅威なのは、それを継続できるスタミナだろう。
 余裕の笑い声は、いまだに聞こえてきている。

「それにセージに魔法はほぼ通用しない。見ろ」

 叔父のそばで、ぱっとなにかが光った。
 近くにいた魔族が魔法攻撃を仕掛けたのかもしれないが、次の瞬間には斬撃の餌食となっていた。

「セージは複数の防御専用の魔法石を用いている。セージは並列思考の持ち主でな。その類い稀な動体視力を以って、相手の魔法を見極めた上で瞬時にその系統を判別し、同属性の魔法壁・反属性の魔法壁・通常の魔法壁と最低3つの防御魔法を同時展開する。いかに強力な魔法でも、それだけの魔法壁の突破は容易ではない」

「それって、並列魔法……ですか?」

 喉がごくりと鳴るのを感じる。

「5つくらいまでは使えるそうだ。魔法の判別と攻撃も同時に行なっているから、限界は知れんがな」

 頭がくらくらする思いだった。

 向こうで警備兵に介抱されているデジーを見る。
 たったふたつの並列魔法を数回使ってあの消耗具合だ。きっと、ああなってしまうのが普通なのだろう。
 しかもそれすらデジーという幼き天才だからこそ出来たことで、凡人には不可能に違いない。叔父がどれだけ規格外なのかということになる。

「遠距離戦では通じず、近接戦では無双。まったく、アレに勝てるとは到底思えん」

 ラスクラウドゥさんは叔父を遠くに眺めながら、感慨深げに呟いていた。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。 そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。 しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの? 優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、 冒険者家業で地力を付けながら、 訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。 勇者ではありません。 召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。 でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

処理中です...