異世界の叔父のところに就職します

まはぷる

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第九章

違和感の正体

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 カルディナの街に戻ってこれたのは、日が中天をとうに越えた14時頃だった。
 この時刻から店を開けるのは中途半端で、家に戻るにもまだ日が高すぎたため、今日のところは街での所用を済ますことに決めた。

 まずは、店の倉庫に疾風丸を駐車しに寄った後、その足で『朝霧の宿屋』に向かう。
 ……まあ、なんとなく結果はわかっていたのだが、ペシルとパニムの双子は当然の顔をしてそこにいた。
 おそらく考えたら負けだ。もうそれはそういうものだと納得して、気にしないことにした。

 ベルデンでのお礼に菓子折りを持参したら、事のほか喜ばれた。
 『現金でもよかったのに』という無邪気な言葉は、聞こえなかったことにしておいた。

 意外なことに、こちらの双子と顔を合わせたときにも、ベルデンで感じたようなあの違和感を覚えた。
 てっきりなんらかの仕組みか仕掛けがあり、ベルデンの双子だけに感じるものかと思っていたのだが、そうではなかったようだ。

 しかもこの違和感、どういうわけか双子だけに限らない。
 宿屋までの道中でも、行き交う人の中にチラホラと感じられた。
 頻度としては20人にひとりいるかいないかといった程度だろう。

 それらの人たちに特に共通点があるわけでもなく、老若男女問わず見た目もごく普通の住人だけに、首を捻るばかりだ。
 ただなんとも形容しがたい違和感だけがある。

 思い切って双子に問いかけてみると、珍しく出し渋るふうもなく教えてくれたので、あっさりと謎が解けた。

 どうも、街中で違和感を受ける相手は人間ではないらしい。
 つまりは双子と同じかそれに近い、妖精の類ということ。

 双子の正体が妖精レプラカーンであるように、こうした人里で妖精は通常、目立たないよう人の姿に身をやつしているらしい。
 妖精特有の能力である幻術に属する力なのだそうだ。

 俺の場合は、肉眼を通して見た偽りの映像と、精霊と一部共有する感覚で捉えた実体との差異が、奇妙な違和感となって表面化しているのだろう。

 以前に双子に聞いた、他の種族が化けていても『なんとなくわかる』とは、この感覚に近いそうだ。

 そういえば最近は、俺を守護している精霊さんが力を使う際、なにかが見えそうな気配がある。
 これはきっと、お互いの親和性が増したことの表れなのだろう。
 もしかしたら、近い内にその姿を視認できる兆候かもしれない。待ち遠しいことだ。

 それにしても、人間の街であるカルディナに、予想以上の人間以外の種族が交じっていたことに驚かされた。
 20人にひとりと考えても、人口1万人のカルディナの街では、単純計算で少なくとも500人は妖精なりなんなりの他種族がいることになる。

(うーん、ファンタジーだ。感慨深い)

 双子の宿屋を後にして、次にギルド会館に向かうことにした。

 今回のアールズ家からの招待は、商人ギルドを通してだったので、ギルドには帰参の報告をしておくべきと考えてのことだ。
 まあ、特筆すべきことはなかったので、アンダカーレン会長に顔を見せて、「無事に済みました」と軽く挨拶するだけに留めておいた。
 実際には、勇者がらみのことだの、軟禁だの、騎士団長の闇討ちだのと、話せる事柄のほうが少なかったので、必然的にそうなってしまっただけなのだが。

 ちなみにギルド会館内にも、妖精と思しき種族の者たちが大勢いた。
 むしろ、街中で出会う人数よりも多かったほどだ。

 商人ギルドの会長は人間だった。見た目の奇妙さと種族は関係ないらしい。
 あの秘書のエロスタ――ではなく、エレスタさんも人間だった。
 あの人は絶対にサキュバス辺りだろうと踏んでいたのだが、ただのエロい人だったようだ。

 報告もつつがなく終了し、ギルド会館からの帰り際、やたら上機嫌の女性に声をかけられた。

 顔を見て誰かと数秒悩んだが、例の月光灯花を譲ったスタラさんだった。
 ようやく花の精製に目処がついたらしく、今日は所属ギルドにその報告に来たそうだ。

 ちょっと思い立ち、スタラさんに精製した月光灯花のエキスをわけてもらえないか交渉してみた。

 月光灯花のエキスに解毒の効能まであるかは疑問だったが、若返りするほどの滋養があれば、もしかするとかのベルデンの騎士団長殿にも効くかもしれない。

 次回の月光灯花の入荷時、優先的に譲ることを条件にスタラさんから快諾を得られたが、エキスの精製にはもう少し時間を要するとのことだったので、完成品を『朝霧の宿屋』に届けてもらうように依頼した。
 理屈はともかく、ベルデンに届けるにはきっとこれが一番早いような気がする。
 双子から門番のエルドを通じて、城のフェブに渡してもらえれば問題ないだろう。

 いろいろ手配を済ませると、かなりいい時間になっていた。
 今日は叔父に相談しないといけないこともあるため、まだ日は高いが帰路に着くことにした。
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