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第十一章
獣人の郷 5
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2時間が経過した頃――
広場は倒れた獣人たちで死屍累々という有様だった。
その中で佇むのは、叔父ただひとりである。
長老との約束が2時間ということだったので、1時間50分が経過した時点で、叔父が残った全員を相手にバトルロイヤルを敢行した結果だった。
南無三。
「来年までにはもっと鍛錬つけとけよ、若人ども! はっはっ!」
叔父の締めの言葉で、乱取りというか蹂躙に近かった稽古は幕を下ろすことになった。
「おう、お待たせ!」
叔父は近くを流れる川で、川面に頭を突っ込んで顔を洗ってから、水を滴らせてながら戻ってきた。
「ご苦労様でした、セージ様」
「おっ、さんきゅー」
出迎えたリィズさんが手渡した水筒の蓋を開け、叔父は豪快に中身を飲み干す。
「どうでした、今回は?」
「実際、根性あると思うぜ。1度や2度倒されたくらいじゃあ、へこたれる奴もいない。技術的にもだいぶマシになってきたな。獣人は生来の能力が高い分、それに任せた一辺倒の攻撃が多いからな。今回は、ちょっとした技も織り交ぜてみた。気づく奴は気づいただろうから、来年辺りどう工夫してくるか楽しみだ」
「そうですね。彼らなら技の有用性にも気づけるはずです。それは身を以って感じ取ったことでしょう」
さすがというか、お互いが戦闘に関するプロだけに、ふたりの意見は的確だった。
なんというか、そういったことを何気なく話し合えることが、すごくカッコいいと思ってしまう。
「ぱぱー、たおるー!」
「おお、あんがとな、リオ」
叔父はタオルを受け取って頭から被ると、ご褒美とばかりにご機嫌にリオちゃんの頭をぐりぐり撫でていた。
「リオのほうはどうだった? 楽しめたか?」
「うん! かったー!」
「そっかそっか! はっはっ!」
その言葉通り、子供組でのじゃれあいはリオちゃんのひとり勝ちだった。
殴った蹴ったの争いではなく、純粋な体力勝負でだ。
あれほどの体格差があったにもかかわらず、最後まで立っていたのはリオちゃんだけだった。
他の獣人の子供たちは、息を切らして蹲ったり地面に大の字になったりと、こちらはこちらで死屍累々といえる。
素人目にも、リオちゃんの俊敏さをはじめとした運動能力は、他を逸脱していた。
俺にしてみれば、これまでの獣人の比較対象がリィズさんくらいだったので、リオちゃんがというより、獣人がそういうものなんだと思い込んでいたのだが、どうやら認識を改める必要があるらしい。
恐るべきは叔父一家ということだろう。
「じゃあ、そろそろ行くか」
濡れた上半身を抜き終えたところで、叔父はリオちゃんを肩に担いだ。
「そうですね」
「あっ、墓参り?」
「そうだな。もともとこっちが本題だったしよ。墓所はここからさらに奥に入ったところにある。結構、時間を喰ったしな。あまり遅れると、余計に1泊する羽目になる」
「でも……いいの、これ? ほっといて」
俺は苦笑しながら、周囲の獣人の累々たる光景を見やった。
「大丈夫ですよ、アキトさん。皆さん、それほどやわではありませんから」
リィズさんに促されて視線の先を追うと――ぼろぼろになって横たわるラッシさんらしき肢体の腕が伸び、手首だけでしっしっと手を振っていた。
さらに苦笑してしまうが、まあ、そういうことらしい。
1番重傷そうな本人がいいと言うのなら、構わなくてもいいのだろう。
「どうした、秋人? 置いてくぞー」
「にーたん、はやくー」
「あ、ごめん。今行くから」
俺は倒れて動けない獣人の面々に会釈してから、先行する叔父たちの後を追った。
広場は倒れた獣人たちで死屍累々という有様だった。
その中で佇むのは、叔父ただひとりである。
長老との約束が2時間ということだったので、1時間50分が経過した時点で、叔父が残った全員を相手にバトルロイヤルを敢行した結果だった。
南無三。
「来年までにはもっと鍛錬つけとけよ、若人ども! はっはっ!」
叔父の締めの言葉で、乱取りというか蹂躙に近かった稽古は幕を下ろすことになった。
「おう、お待たせ!」
叔父は近くを流れる川で、川面に頭を突っ込んで顔を洗ってから、水を滴らせてながら戻ってきた。
「ご苦労様でした、セージ様」
「おっ、さんきゅー」
出迎えたリィズさんが手渡した水筒の蓋を開け、叔父は豪快に中身を飲み干す。
「どうでした、今回は?」
「実際、根性あると思うぜ。1度や2度倒されたくらいじゃあ、へこたれる奴もいない。技術的にもだいぶマシになってきたな。獣人は生来の能力が高い分、それに任せた一辺倒の攻撃が多いからな。今回は、ちょっとした技も織り交ぜてみた。気づく奴は気づいただろうから、来年辺りどう工夫してくるか楽しみだ」
「そうですね。彼らなら技の有用性にも気づけるはずです。それは身を以って感じ取ったことでしょう」
さすがというか、お互いが戦闘に関するプロだけに、ふたりの意見は的確だった。
なんというか、そういったことを何気なく話し合えることが、すごくカッコいいと思ってしまう。
「ぱぱー、たおるー!」
「おお、あんがとな、リオ」
叔父はタオルを受け取って頭から被ると、ご褒美とばかりにご機嫌にリオちゃんの頭をぐりぐり撫でていた。
「リオのほうはどうだった? 楽しめたか?」
「うん! かったー!」
「そっかそっか! はっはっ!」
その言葉通り、子供組でのじゃれあいはリオちゃんのひとり勝ちだった。
殴った蹴ったの争いではなく、純粋な体力勝負でだ。
あれほどの体格差があったにもかかわらず、最後まで立っていたのはリオちゃんだけだった。
他の獣人の子供たちは、息を切らして蹲ったり地面に大の字になったりと、こちらはこちらで死屍累々といえる。
素人目にも、リオちゃんの俊敏さをはじめとした運動能力は、他を逸脱していた。
俺にしてみれば、これまでの獣人の比較対象がリィズさんくらいだったので、リオちゃんがというより、獣人がそういうものなんだと思い込んでいたのだが、どうやら認識を改める必要があるらしい。
恐るべきは叔父一家ということだろう。
「じゃあ、そろそろ行くか」
濡れた上半身を抜き終えたところで、叔父はリオちゃんを肩に担いだ。
「そうですね」
「あっ、墓参り?」
「そうだな。もともとこっちが本題だったしよ。墓所はここからさらに奥に入ったところにある。結構、時間を喰ったしな。あまり遅れると、余計に1泊する羽目になる」
「でも……いいの、これ? ほっといて」
俺は苦笑しながら、周囲の獣人の累々たる光景を見やった。
「大丈夫ですよ、アキトさん。皆さん、それほどやわではありませんから」
リィズさんに促されて視線の先を追うと――ぼろぼろになって横たわるラッシさんらしき肢体の腕が伸び、手首だけでしっしっと手を振っていた。
さらに苦笑してしまうが、まあ、そういうことらしい。
1番重傷そうな本人がいいと言うのなら、構わなくてもいいのだろう。
「どうした、秋人? 置いてくぞー」
「にーたん、はやくー」
「あ、ごめん。今行くから」
俺は倒れて動けない獣人の面々に会釈してから、先行する叔父たちの後を追った。
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