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第四章

貴族令嬢は唐突に 1

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 やってきました、シービスタ。
 豊富な物資と行き交う人々でごった返す港町。
 規模としてはリジンの町とどっこいだが、活気と物資と人の量が違いすぎる。

 久々に人間形態に擬態した颯真は、何食わぬ顔で人混みに紛れ、異国情緒ならぬ異世界情緒を味わおうと張り切っていた。

 しかし、何故かその5分後。
 颯真は裏通りの片隅で、4人の暴漢チンピラにからまれていた。

(デジャヴ!?)

 以前にもこんなことがあったような。しかもひとり増えてるし。

 チンピラは4つ子だった。

「「「「おうおう、イカす顔したにーちゃん。俺らと遊ぼうぜぃ?」」」」

 まったく同じ顔で同じマッチョな体格で、4人の台詞まで同じくハモる。

「おい、お前ら。攻めの反対はなんだ?」

「「「「受けだろ?」」」」

 さらに全員ホ○だった。BLなどと上品ではなく、○モだ。青く残った髭の剃り跡がその証。
 以前にも増して最悪だ。

「腐ってやがる……!」

 一度言ってみたかっただけの颯真であった。

 とはいえ、何度か修羅場を潜り抜けてきた颯真にとって、ホ○の1匹や4匹、精神的ダメージ以外は物の数ではない。

(こんなときはやっぱり熊だな)

 一般人相手に熊はいい。迫力があるし、単純に暴力の象徴としてわかりやすい。

 熊の擬態に固まったチンピラどもを、問答無用と右前足の一蹴で薙ぎ払う。
 4人は見事な放物線を描き、路地裏のゴミ箱にきれいに収まった。

(ん? 以前よりも力が上がっているような……ま、いいか)

 右手をわきわきしてから、颯真は人間形態に戻った。

「――お待ちなさいっ!」

 そのとき、表通りに続く道から飛び出してくる影がある。

 肩口で揃えたウェーブがかった白金色の髪プラチナブロンドに、大きな銀色の双眸。
 年の頃は16ほどか。整った顔立ちには、まだどこか幼さが残っている。
 スレンダーな体格を覆うのは、上下白で統一された男装で、手には抜き身の刺突細剣レイピアを携えていた。

 ついでに付け加えると、子爵家の3女にしてリジン領主代行。見かけは令嬢、中身はポンコツの残念系美少女だ。

「不穏な空気を感じてみたら――って、あれ? 颯真じゃないの!」

 リジンの町で別れたきりのレリル・ラシューレがそこにいた。
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