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27、マルカのアイテム大人気
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そのままラピスの町まで戻った私達は町長の家に顔を出して、まずは夢幻が出来ているかということを聞いてみることにした。
「あ、おはようございます」
と朝のというか午前中の挨拶を交わして早々に町長に夢幻のことを聞いたのだけど、これを聞いた町長は、
「おお、待っとったぞ」
と言ったかと思うと、
「まだ全然できとらん」
と続け私達をプチ落胆させた。そのあと気を取り直してマルカが、預けたアイテムが入っている皮袋のことを聞いたのだけど、これを言われた町長は、
「空は天気で青いかね?」
と何かよく分からないことを聞いてきて、そのマルカの質問から話を逸らそうとした。でも賢いマルカにはそういうものは通じなかった。
「いいえ、今日はくもりです」
と答えたあと、
「それより、私のアイテムの入った皮袋はどこですか?」
と即座に話の軌道を修正させ、町長に向けキリッとした顔を作った。
「いや、あの、素晴らしい物だったので」
とそれを受け町長が露骨に困った顔をする。
「素晴らしい? どうして素晴らしいって分かるんですか? 中を見たんですか?」
「見たっていうか、炎天の騎士様の持っている物は大概素晴らしいと相場が決まっているので」
「何を言っているんですか、あれには旅をするにあたって必要になるアイテムが色々と入っていたんです。返して下さい」
「それは出来ない相談です」
「出来ない相談ってそんなのおかしいでしょう。ちなみに一応聞いておくんですけど、何でなんですか?」
「むしろ何でだと思いますか?」
と町長が言ったところで、マルカが片手に直径20センチ大の火の玉を発生させた。何も言葉は発しないけど、その無機質な表情からは、
「殺されたいのか、こいつめ」
というメッセージが読み取れた。それに、
「ひぃぃ」
と分かりやすく怯んだ町長はマルカに向け土下座をして、
「すいませんでした、みんなで分け合ってしまいました」
とそんな意味の分からないことを言った。預かっていた荷物をみんなで分け合うとか、お前ら社会主義にでもかぶれているのかという話だ。あまりにも非常識だったから、
「はあ?」
と私が攻撃的にそう言うと、
「何だお前その口の利き方はあっ」
と何か私にだけは強気に出て来て、
「お前が悪いんだろっ、このハゲっ」
と頭に来たから反撃すると、
「ハゲたこともない人間が知ったような口利くなあっ」
と相手はなおも強気の姿勢を堅持した。もうダメだと思い、そこでマルカの方を見てみると、マルカは一度頷いてから、
「シルカーム・ラムニード・ソポナーレ」
という詠唱を唱え始めて、掌の炎を徐々に大きくしていった。
「あああ、ひえええ」
とそれに過剰なんじゃないかというくらい恐れる町長。
「すいませんでした、謝ります、謝ってあげます」
「何なんですか、その上から目線の謝り方は。アイテムはどうするんですか?」
「諦めればいいじゃないですか」
「燃えるのはこの家一軒だけでいいですか?」
「分かりました、それならこうしましょう。本当は夕方くらいに夢幻は完成予定だったのですが、大急ぎで作らせて何とか今日の昼までには完成するようにしましょう。これでいかがですか?」
「いかがですかって、自分悪いくせに何無理矢理イコールになるようにしてんの?」
「黙れっ、このバカめえっ」
「いいでしょう、分かりました」
と言ったのはマルカで、マルカがそう言うと、
「ん?」
と私と町長がマルカの方を見た。
「私達が今回優先させなければならないことは、出来るだけ早く夢幻を手に入れて、出来るだけ早く次の目的地であるネストの村に行くということです。夕方に完成するはずだった夢幻をお昼に完成させてくれるのだったら、それで今回の件は不問に付します」
マルカはそう言うと、右手に発生させていた炎をパッと消し、
「どの道貴重なアイテムが入っていたわけではないので」
とそう続けた。それを受け町長が、
「ほら見ろ、やっぱり炎天の騎士様は違うなー」
と私の方を見て批判的に言ってきたけど、ここで私を責めるのは筋違いで、責められるべきはあんただろと思った。何か言い返してやろうと思ったところで、
「じゃあ、私達はお昼になるまで外で待っています。もし夢幻が完成したら、ここに魔法で出来た玉を置いていくので、それを空に放り投げて下さい。そうすると、花火みたいに空で火花が飛び散るので」
とマルカがそう言ったものだから、反撃のタイミングを失ってしまった。そのあとすぐマルカが魔法で丸い玉を出し、それをテーブルの上に置いた。次に、
「これが魔法玉です。夢幻が完成したらこれを空に打ち上げて下さい。ではまた」
と言って私の手を引き外へと歩き出した。こうしてみるとマルカは態度が何だか大人で、無鉄砲に突っ込みたがる私とはやはり性格が違うなと思った。
「あ、おはようございます」
と朝のというか午前中の挨拶を交わして早々に町長に夢幻のことを聞いたのだけど、これを聞いた町長は、
「おお、待っとったぞ」
と言ったかと思うと、
「まだ全然できとらん」
と続け私達をプチ落胆させた。そのあと気を取り直してマルカが、預けたアイテムが入っている皮袋のことを聞いたのだけど、これを言われた町長は、
「空は天気で青いかね?」
と何かよく分からないことを聞いてきて、そのマルカの質問から話を逸らそうとした。でも賢いマルカにはそういうものは通じなかった。
「いいえ、今日はくもりです」
と答えたあと、
「それより、私のアイテムの入った皮袋はどこですか?」
と即座に話の軌道を修正させ、町長に向けキリッとした顔を作った。
「いや、あの、素晴らしい物だったので」
とそれを受け町長が露骨に困った顔をする。
「素晴らしい? どうして素晴らしいって分かるんですか? 中を見たんですか?」
「見たっていうか、炎天の騎士様の持っている物は大概素晴らしいと相場が決まっているので」
「何を言っているんですか、あれには旅をするにあたって必要になるアイテムが色々と入っていたんです。返して下さい」
「それは出来ない相談です」
「出来ない相談ってそんなのおかしいでしょう。ちなみに一応聞いておくんですけど、何でなんですか?」
「むしろ何でだと思いますか?」
と町長が言ったところで、マルカが片手に直径20センチ大の火の玉を発生させた。何も言葉は発しないけど、その無機質な表情からは、
「殺されたいのか、こいつめ」
というメッセージが読み取れた。それに、
「ひぃぃ」
と分かりやすく怯んだ町長はマルカに向け土下座をして、
「すいませんでした、みんなで分け合ってしまいました」
とそんな意味の分からないことを言った。預かっていた荷物をみんなで分け合うとか、お前ら社会主義にでもかぶれているのかという話だ。あまりにも非常識だったから、
「はあ?」
と私が攻撃的にそう言うと、
「何だお前その口の利き方はあっ」
と何か私にだけは強気に出て来て、
「お前が悪いんだろっ、このハゲっ」
と頭に来たから反撃すると、
「ハゲたこともない人間が知ったような口利くなあっ」
と相手はなおも強気の姿勢を堅持した。もうダメだと思い、そこでマルカの方を見てみると、マルカは一度頷いてから、
「シルカーム・ラムニード・ソポナーレ」
という詠唱を唱え始めて、掌の炎を徐々に大きくしていった。
「あああ、ひえええ」
とそれに過剰なんじゃないかというくらい恐れる町長。
「すいませんでした、謝ります、謝ってあげます」
「何なんですか、その上から目線の謝り方は。アイテムはどうするんですか?」
「諦めればいいじゃないですか」
「燃えるのはこの家一軒だけでいいですか?」
「分かりました、それならこうしましょう。本当は夕方くらいに夢幻は完成予定だったのですが、大急ぎで作らせて何とか今日の昼までには完成するようにしましょう。これでいかがですか?」
「いかがですかって、自分悪いくせに何無理矢理イコールになるようにしてんの?」
「黙れっ、このバカめえっ」
「いいでしょう、分かりました」
と言ったのはマルカで、マルカがそう言うと、
「ん?」
と私と町長がマルカの方を見た。
「私達が今回優先させなければならないことは、出来るだけ早く夢幻を手に入れて、出来るだけ早く次の目的地であるネストの村に行くということです。夕方に完成するはずだった夢幻をお昼に完成させてくれるのだったら、それで今回の件は不問に付します」
マルカはそう言うと、右手に発生させていた炎をパッと消し、
「どの道貴重なアイテムが入っていたわけではないので」
とそう続けた。それを受け町長が、
「ほら見ろ、やっぱり炎天の騎士様は違うなー」
と私の方を見て批判的に言ってきたけど、ここで私を責めるのは筋違いで、責められるべきはあんただろと思った。何か言い返してやろうと思ったところで、
「じゃあ、私達はお昼になるまで外で待っています。もし夢幻が完成したら、ここに魔法で出来た玉を置いていくので、それを空に放り投げて下さい。そうすると、花火みたいに空で火花が飛び散るので」
とマルカがそう言ったものだから、反撃のタイミングを失ってしまった。そのあとすぐマルカが魔法で丸い玉を出し、それをテーブルの上に置いた。次に、
「これが魔法玉です。夢幻が完成したらこれを空に打ち上げて下さい。ではまた」
と言って私の手を引き外へと歩き出した。こうしてみるとマルカは態度が何だか大人で、無鉄砲に突っ込みたがる私とはやはり性格が違うなと思った。
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