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59、ようこそゲリピーズへ
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5分もしないうちに私達3人が取り残された。
「どうする?」
とそう聞くと、
「腹減んねえか?」
とチーノが言ってきたから、
「じゃあ、まずはご飯にでもしましょうか?」
とマルカがそう提案した。
「お、賛成」
と言って3人で飲食店があると思しき所まで歩いて行くと、この騒ぎを聞き付けたのか、さっきは広場にいなかった人達が町長の家まですごい顔をして走って行くのを見かけた。何も言わないけど、
「略奪に間に合わないから急げ」
と顔にはそう書いてあって、それを見て、
「人間の欲って恐いよね」
と私が思ったことをそのまま口にすると、2人は何も言わずに「うん」と頷いていた。
飲食店に着いたところで一つ気付いたことがあるのだけど、私達の世界と違って、いや私達の世界にもそういう傾向があるのかもしれないけど、この世界にはどうやら一つ所に飲食店が密集する傾向があるようだった。だからそれを2人に言うと、
「ん、そうなのか? 確かにベルモンテでは飲食店は全部同じエリアにあったけどな」
というチーノの言葉のあとに、
「あれ、私は飲食店は密集するのが当たり前だと思っていたけど、それは世界によって違うのかしら」
とマルカがそう言っていた。
で、当の飲食店に着いたのだけど、何となく予想をしていたとはいうものの、中には誰もいなくて、調理された料理だけが厨房に残されているというお店ばかりだった。というか、それしかなかった。誰も店員の人がいないのに料理を食べるのも気が引けたから、
「どうする?」
と2人に聞いたのだけど、マルカが何か言うよりも早く、
「いや、これはラッキーだろ。こんな経験人生で一度出来るか出来ないかなんだから、ありがたく飲み食いしようぜ」
とチーノがそう言って、勝手に近くのお店に入って行った。そのあとマルカの方を見ると、
「実は私もチーノと同じ考えなの。お金は食べ終わってからお店に置いておけば問題ないと思うわ」
と私が予想していたのとは違うことを言って、この革命を指導した張本人は何やら楽しそうな顔をした。
「そ、そんなもんか」
と2人に付いて行く私がやはり珍しいことに常識人だった。
中に入ると、美味しそうな匂いが鼻をついた。今はお昼と夕方のちょうど中間くらいの時間で、実はここに来るまで何も食べていなかったから、私は何でもいいからとにかく口に入れたかった。
ということで、食べ物が置いてある厨房に着くと、
「いただきまーす」
と私はお皿に盛られる前の料理を手に取り、バイキングみたいな感じで食べることにした。チーノも厨房に着いてすぐ食べ物を食べるのだけど、マルカはさすが私達とは違ってお嬢様だから、一度厨房にある水道で手を洗ってから料理を食べていた。手を洗わないで物を食べる私達を注意しないところもマルカらしかった。
砂漠に近い所だからか、保存の利く食べ物が多かった。汁気のある物も確かにあるけど、品目としてはそんなに多くはなくて、口に入れるとどれもパサパサして、これだけだとちょっと食べづらかった。
でも肉系の食べ物は全部美味しかった。だからナンみたいなパンとピリリと辛い肉を中心に食べたのだけど、驚いたことに、私よりもチーノとかマルカの方が食べ物をたくさん食べていて、私が食べ終わってもまだ物を食べているから、
「何でそんなに食べるの?」
と思わずそう聞くと、チーノに、
「竜の血を引いたやつは大概大食いだよ。魔法が使えるからっていうのもある」
とそのようなことを言われた。最後の方がよく分からなかったから、
「魔法を使えるのと物を食べるのって関係あるの?」
と聞いてみると、今度はそれにマルカがこう答えた。
「ああ、ツバキには言ってなかったわね。魔法を使うって言うのはつまりあれなのよ。見えないエネルギーを消費するっていうことなのよ。だから消費した分のエネルギーを何か違うもので補わなければならないの。それは睡眠だったり食べ物だったりするわ。今日ここに来る途中で散々アークとの戦闘があったじゃない? そこで魔力を消費したから、こんな感じにその補填を食べ物でしてるの」
それは知らなかったから、
「ああ、そうなの?」
と聞くと、
「ええ、そうなの」
と言ってマルカが何なのかよく分からない肉の塊を一口パクリと齧っていた。
料理を食べ終わったあとは、ステータス画面で決済をしてから店を出た。ステータス画面を開いた時、チーノはギョッと驚いた顔をしてそれを見た。笑いそうになるのを堪えながら、
「多分あんたも使えるよ」
とそう言って、いつの間にか出来ていた左手の紋章を指差すと、チーノは、
「え?」
という声を上げたあと自分の左手の甲に触れ、ポンとステータス画面を出していた。それを見たチーノは、
「な、何だこれ!?」
と露骨に驚いて、ステータス画面を凝視していた。そんなチーノに、
「ようこそ、ゲリピーズへ」
と言ったあとに私がヒヒヒと笑うと、
「これ何ていうかあれなのよ、仲間になった証みたいなものなの」
とマルカがチーノに説明をした。
「そうか、ゲリピーズって言うのか」
となぜかその言葉を拾ったチーノにマルカが、
「違うわ、それはツバキが今冗談で言った言葉。そんな解放的な名前付けるわけないじゃない」
と突っ込みを入れたところで町長の家があるのであろう方角から煙が上がっているのが見えた。私がそれを指差し、
「あれ」
と言うと、2人が3秒くらいそれを見て、
「焼き打ちされてる」
「すげえ恨まれてたんだな」
と何かちょっと嬉しそうにそう言った。そんな2人に、
「なんかスカッとするね」
と言うと、2人とも神妙に頷いていたから、私達はやはり町長の家で同じ感情を共有していたみたいだった。
「で、次は?」
とマルカの方を向いて聞くと、
「まずはさっきツバキが吹き飛ばした元町長をオカマにしに行きましょう」
とマルカは言ったから、私達は元町長が飛んで行った砂漠まで移動することにした。
「どうする?」
とそう聞くと、
「腹減んねえか?」
とチーノが言ってきたから、
「じゃあ、まずはご飯にでもしましょうか?」
とマルカがそう提案した。
「お、賛成」
と言って3人で飲食店があると思しき所まで歩いて行くと、この騒ぎを聞き付けたのか、さっきは広場にいなかった人達が町長の家まですごい顔をして走って行くのを見かけた。何も言わないけど、
「略奪に間に合わないから急げ」
と顔にはそう書いてあって、それを見て、
「人間の欲って恐いよね」
と私が思ったことをそのまま口にすると、2人は何も言わずに「うん」と頷いていた。
飲食店に着いたところで一つ気付いたことがあるのだけど、私達の世界と違って、いや私達の世界にもそういう傾向があるのかもしれないけど、この世界にはどうやら一つ所に飲食店が密集する傾向があるようだった。だからそれを2人に言うと、
「ん、そうなのか? 確かにベルモンテでは飲食店は全部同じエリアにあったけどな」
というチーノの言葉のあとに、
「あれ、私は飲食店は密集するのが当たり前だと思っていたけど、それは世界によって違うのかしら」
とマルカがそう言っていた。
で、当の飲食店に着いたのだけど、何となく予想をしていたとはいうものの、中には誰もいなくて、調理された料理だけが厨房に残されているというお店ばかりだった。というか、それしかなかった。誰も店員の人がいないのに料理を食べるのも気が引けたから、
「どうする?」
と2人に聞いたのだけど、マルカが何か言うよりも早く、
「いや、これはラッキーだろ。こんな経験人生で一度出来るか出来ないかなんだから、ありがたく飲み食いしようぜ」
とチーノがそう言って、勝手に近くのお店に入って行った。そのあとマルカの方を見ると、
「実は私もチーノと同じ考えなの。お金は食べ終わってからお店に置いておけば問題ないと思うわ」
と私が予想していたのとは違うことを言って、この革命を指導した張本人は何やら楽しそうな顔をした。
「そ、そんなもんか」
と2人に付いて行く私がやはり珍しいことに常識人だった。
中に入ると、美味しそうな匂いが鼻をついた。今はお昼と夕方のちょうど中間くらいの時間で、実はここに来るまで何も食べていなかったから、私は何でもいいからとにかく口に入れたかった。
ということで、食べ物が置いてある厨房に着くと、
「いただきまーす」
と私はお皿に盛られる前の料理を手に取り、バイキングみたいな感じで食べることにした。チーノも厨房に着いてすぐ食べ物を食べるのだけど、マルカはさすが私達とは違ってお嬢様だから、一度厨房にある水道で手を洗ってから料理を食べていた。手を洗わないで物を食べる私達を注意しないところもマルカらしかった。
砂漠に近い所だからか、保存の利く食べ物が多かった。汁気のある物も確かにあるけど、品目としてはそんなに多くはなくて、口に入れるとどれもパサパサして、これだけだとちょっと食べづらかった。
でも肉系の食べ物は全部美味しかった。だからナンみたいなパンとピリリと辛い肉を中心に食べたのだけど、驚いたことに、私よりもチーノとかマルカの方が食べ物をたくさん食べていて、私が食べ終わってもまだ物を食べているから、
「何でそんなに食べるの?」
と思わずそう聞くと、チーノに、
「竜の血を引いたやつは大概大食いだよ。魔法が使えるからっていうのもある」
とそのようなことを言われた。最後の方がよく分からなかったから、
「魔法を使えるのと物を食べるのって関係あるの?」
と聞いてみると、今度はそれにマルカがこう答えた。
「ああ、ツバキには言ってなかったわね。魔法を使うって言うのはつまりあれなのよ。見えないエネルギーを消費するっていうことなのよ。だから消費した分のエネルギーを何か違うもので補わなければならないの。それは睡眠だったり食べ物だったりするわ。今日ここに来る途中で散々アークとの戦闘があったじゃない? そこで魔力を消費したから、こんな感じにその補填を食べ物でしてるの」
それは知らなかったから、
「ああ、そうなの?」
と聞くと、
「ええ、そうなの」
と言ってマルカが何なのかよく分からない肉の塊を一口パクリと齧っていた。
料理を食べ終わったあとは、ステータス画面で決済をしてから店を出た。ステータス画面を開いた時、チーノはギョッと驚いた顔をしてそれを見た。笑いそうになるのを堪えながら、
「多分あんたも使えるよ」
とそう言って、いつの間にか出来ていた左手の紋章を指差すと、チーノは、
「え?」
という声を上げたあと自分の左手の甲に触れ、ポンとステータス画面を出していた。それを見たチーノは、
「な、何だこれ!?」
と露骨に驚いて、ステータス画面を凝視していた。そんなチーノに、
「ようこそ、ゲリピーズへ」
と言ったあとに私がヒヒヒと笑うと、
「これ何ていうかあれなのよ、仲間になった証みたいなものなの」
とマルカがチーノに説明をした。
「そうか、ゲリピーズって言うのか」
となぜかその言葉を拾ったチーノにマルカが、
「違うわ、それはツバキが今冗談で言った言葉。そんな解放的な名前付けるわけないじゃない」
と突っ込みを入れたところで町長の家があるのであろう方角から煙が上がっているのが見えた。私がそれを指差し、
「あれ」
と言うと、2人が3秒くらいそれを見て、
「焼き打ちされてる」
「すげえ恨まれてたんだな」
と何かちょっと嬉しそうにそう言った。そんな2人に、
「なんかスカッとするね」
と言うと、2人とも神妙に頷いていたから、私達はやはり町長の家で同じ感情を共有していたみたいだった。
「で、次は?」
とマルカの方を向いて聞くと、
「まずはさっきツバキが吹き飛ばした元町長をオカマにしに行きましょう」
とマルカは言ったから、私達は元町長が飛んで行った砂漠まで移動することにした。
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