僕の好きな子がいつでも可愛すぎている。

抹茶。

文字の大きさ
1 / 7

僕の好きな子が今日もかわいい。

しおりを挟む
「お祭りは好きですか。」
 そう言って緊張した面持ちで顔を少し赤くさせながらうつむきがけに問いかけたその姿に僕の胸がときめいてしまった。

 そのチラシに気づいたのは5日前のことだった。
 「祭り」という大きな字が目立つそのチラシはこの駅を利用した際に何回も見ているはずなのに意外と気づかないものだ。
 1週間後に開催される僕の地元では結構有名な花火大会だ。
 インパクトのあるチラシは1度気づいてしまえば気になるもので電車が来るのを待っている間はよく眺めていた。
 そんなことを数日繰り返していた今日、突然声をかけられたのだ。

 彼女とは同じクラスで半年前に隣の席になり同じ小説が好きと言うことで話が盛り上がり、それをきっかけによく会話をするようになった。
 僕は彼女が好きである。
 そして1ヶ月前のことだが彼女が僕に告白をしてきた。
 僕のことを好きだと、僕と付き合ってほしいという。
 夢か幻かと思ったが自分の手から分泌されている尋常ではない汗がこの現状が現実であるということを強く主張していた。
 そしてそれから晴れやかに僕たちは彼氏彼女の関係に、とうまくはいかなかった。

 彼女の告白を聞いてから何を喋っていたのか全くと言っていいほど記憶がない。
 気づいたら家に帰って自分の部屋で寝ていた。
 何が起きたか分からなかった。

 それから彼女が話しかけてくれるたびに僕は彼女のことを意識をしすぎてしまっていて、うまく喋れないし目も大きすぎるくらいに泳いでしまっている。大水泳大会だ。

 それでもこんなふざけた対応しかできていない僕にたびたび話しかけてくれる彼女に対しては申し訳なさが大きかった。
 
 
 そして現在また彼女は僕に話しかけてきた。きてくれたのだ。

 緊張するとなぜか丁寧な言葉にになってしまいますよね、と以前に何がきっかけだったが覚えてはいないが少し顔を赤らめた彼女から聞いたことがある。
 つまり現在、今も彼女は少し僕に話しかけることに対して少なからず緊張しているのだ。


 かわいい。

 こんなに可愛い子がこの世に存在しているのだろうか、いやいる。
 僕の目の前に実在しているのだ。
 
 僕は彼女のことがとても好きだった。
 こんなにもなにも話せない僕ではあるがとても、とても好きなのだ。
 
 彼女を前にすると色んな考えが吹っ飛んでしまう。それくらい彼女は魅力的な存在なのだ。


 
「あの、私の声聞こえてた?」
 不思議そうに困った顔をしながら彼女が少しうつむきがちになっていた僕の顔を覗き込みながら聞いてきた。 

 ハッとした。話しかけられてからどのくらい時間が経ったのだろうか。無視をしていたつもりはなかったがそう捉えられても不自然ではない。

 「う、ん。ごめん、聞いていたよ。大丈夫。」
 少し早口で言葉に詰まりそうになりながらも彼女に伝えた。
 
 「本当?嬉しい!」
 彼女の顔がぱっと明るくなった。
 とびきりの笑顔をみせてくれる彼女。聖女なのだろうか。可愛すぎる。

 「じゃあ、詳しい日程はまた連絡するね。あ、電車がきたからもう行くね。バイバイ。」
 そう言って微笑みながら控えめに手を降って電車に乗っていった。

 僕はといえば気づいたときには自分の部屋で座っていた。
 まただ。彼女と会話をすると記憶がなくなる。もちろん原因は分かっている。彼女のあの笑顔を見てしまうとそのことしか考えられなくなってしまう。

 吸って、はいてと大きく深呼吸してみる。


 参ったな。会話を何も覚えていないぜ。
 少しカッコつけたところで記憶が戻ってくる訳では無いがとりあえず落ち着こう。

 「また連絡するね」
 たしかに彼女はそう言ったのだ。少なくとも僕にはそう聞こえたのだ。
 連絡…?一体何のだ、なにか話をしたんだろうか。記憶がない。
 焦っても仕方ないとりあえず待っていよう。もし僕の聞き間違いであったらなにもない、ただそれだけなのだから。


 ふと携帯を見ると彼女からメッセージが来ていた。
 え!いつきたんだろう、全く気づかなかった。
 まさか彼女が可愛すぎるあまり彼女の名前の文字を見ただけで僕は記憶を失ってしまっていたのだろうか。さすがだ、可愛すぎる。

 いやいや、そんな関心をしている場合ではない。
 焦りながらも急いでメッセージを開いて読んだ。


 「こんばんは。
 さっき言っていたお祭りね18時に駅前に集合しよう。
 楽しみだね。」


 か、かわいい。
 すごい、彼女はメッセージでまでかわいいのだ。


 ん?いや、ちょっと待って。

 祭り。

 お祭り?
 

 祭りの前におをつけるのかわいすぎないか。もはや尊敬するしかない。

 いやそうではない。それどころではない。
 僕はいつの間にか彼女と祭りに行く約束なんてしていたのか。
 全く記憶にない。どうしよう。
 じんわりと額に汗が出てきた。手からもじわじわと吹きでてくる。

 彼女が、僕の好きな子がせっかく誘ってくれた祭り。行かないわけがないではないか。いや、行くしかない。
 しかし彼女の僕専用特殊スキルにより僕は記憶がなくなるのだ。それほど彼女は可愛いのだ。
 
 焦りながらも僕にはひとつの考えに行き着いた。
 1週間後までに彼女と普通に会話ができるようになる。そのために明日から特訓するんだ。
 これしかない。

 そうすれば1週間後の祭りも何も問題ないし何より普段から普通に会話ができるのはとてもいいことだ。これは良いことづくめだ。

 彼女には「ありがとう、よろしく」と当たり障りのないように返信をしておいた。
 


 そうと決まれば明日からの輝かしい未来を願って僕は早々に眠りについた。


 眠りにつく前にふと思い出した彼女のメッセージ。
 「ね」って。
 可愛すぎないだろうか。ふむ。
 
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

女子ばっかりの中で孤軍奮闘のユウトくん

菊宮える
恋愛
高校生ユウトが始めたバイト、そこは女子ばかりの一見ハーレム?な店だったが、その中身は男子の思い描くモノとはぜ~んぜん違っていた?? その違いは読んで頂ければ、だんだん判ってきちゃうかもですよ~(*^-^*)

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...