4 / 14
第1章 彼らの世界/誤謬
04: 父の思惑
しおりを挟む
「このフォージャーの若者は何処までやるかな?おう、やはりボクシングスタイルから始めるか。」
娘に語りかけたつもりだが、それは独り言に近い。
トレバーの声がつまらなそうに響く。
どうせこの娘は父親の言葉など聞きはしない。とトレバーは思った。
だがスカジィは、被投薬者の通常意識を奪ったりはしない。
快感をよぶ感覚や情動を拡大し維続するだけである。
従って、トレバーの言葉のニュアンスをアンジェラは頭の片隅でよく理解していた。
自分の父親は、このチャンピオンが、役不足の相手にフォージャリー達が言うリアルチャクラを使わないだろうと考えて、それを不服に思っているのだ、と。
リアルチャクラの完全発動は、人間の外見の変形を伴う。
通常でもヒューマンフォージャリー達の外見は個々の身体能力とは比例しない。
痩せていても超人的な筋力を発揮する者もいる。つまり彼等の身体は使役目的の為、個別に改良されているのだ。
それが原因で、さらなる二段階目の変身を遂げるという…。
アンジェラは、ヒューマンフォージャリー達のグロテスクな変身など見たくなかったし、目の前のチャイナレディの美しい姿を何時までも観戦していたいと思っていた。
今、チャンピオンとチャイナレディは、お互いボクシングスタイルを取りながら、ジャブの応酬で相手の力量を推し量っているところだった。
相手のマスクを剥すには、どうしても接近戦に持ち込まねばならないが、その時は自分のリアルチャクラを爆発させるなりして、相手を圧勝しなければならない。
今彼らは、その決着の時に向かうセレモニーを行っているのだ。
チャイナレディの黄褐色の肌の表面に珠のような汗が浮かび始め、チャンピオンの拳の軽い打撃が当たる度に、その振動の為に汗が弾けて飛び散る。
アンジェラはそれを拡張された感覚でスローモーション映像を見るように恍惚感に浸りながら見つめていた。
「もうすぐチャンプの不安定因子が発火する。今夜、チャンプを買い取るのが正解だろうな。6回チャンピオンを続けているんだ。いくら人気がなくても競りに掛かかればとかく面倒だ。」
トレバーが言う、面倒というのは金の事ではない、表向き人間社会ではフォージャリーを買い付けることが出来ない。
但しチャンピオンは別だ。抜け穴だ。
チャンピオンはフォージャリーとしてではなく、人間的資材の優良種としてのブランドサンプルとして買える。
そうやって買い取れるのが前提のチャンプには、興業主を仲買にして綺麗な取引が行われる筈だが、それ意外の場合や買取のタイミングを逃すと、そのフォージャリーに、突然親戚と名乗る者が現れたりして、横から法外な金や、誰それを一緒にイーズルへ連れて行け等という、面倒な条件をふっかけられたりする。
フォージャリーである彼らが、人間に強気にでれるのは、買い取り行為が人間社会では違法行為である事を知っているからだ。
フォージャリー達も、なんとか底辺から這い上がろうと必死なのだ。
トレバーがチャンピオンのリアルチャクラ発動を断定的に予言したのには、理由がある。
チャンピオンには、挑戦者に対して相手の力量をはかるため5分以内の観察タイムが許されている。
しかし観察タイムを5分を過ぎても、積極的な攻撃にでなければ、戦闘意欲なしと見なされて自動的にチャンピオンの資格を剥奪されてしまうのだ。
闇ファイトのチャンピオンとは、しぶとく戦いに勝ち残った者のことだけを言うのではない。
いかに「見世物」を、長く演じ続けられるかも含まれているのだ。
その5分が迫りつつある。
だが意外な事に、女性の顔のマスクを付けた挑戦者が善戦を続けているのだ。
アンジェラはスカジィの為に、試合が長く続いているように感じられているが、実質は5分を経過しつつあった。
アンジェラも焦り始めていた。
もし、父親のトレバーがチャンピオンを今夜買い取るなら、それは当然、アンジェラへの誕生祝いという形を取る筈だった。
一人前の豪族の子弟は、いずれ自分専用のフォージャリーを持つ、それが彼ら豪族達の暗黙のルールだったからだ。
リンカーン家の跡取りは、アンジェラ一人しかいない。
ここでフォージャリーを手に入れて、今度の豪族たちのパーティでそれをお披露目する。
つまり、それをもって正式に彼女は、豪族界にデビューするということだった。
それが、フォージャリー居住地区に訪れる前の、父親の勝手な押しつけの約束だった。
どの道、ヒューマンフォージャリー等押しつけられても、アンジェラはそれを相手にするつもりはなかったが、同じ押しつけられるなら、チャイナレディの方がまだましだと彼女は考え始めていた。
ただし、敗者になったチャイナレディを希望するためには、それ相応の理由を上げなければならない。
それが自分の性の嗜好に由縁するなど、この父には口が裂けても言えないと、アンジェラは考えていた。
「よし。組み合った。始めは力勝負だ。」
リング上では、お互いの指をガギッと組み合わせながら、腰を引いて力比べを始めた二人の男達がいる。
チャイナレディの背中に、思いがけない程大きな筋肉の束が隆起した。
彼の筋肉の隆起は、彼女がいる世界では決して見られない種類の優雅さを持っていた。
そしてその背中の上にあるチャイナレディのマスクに埋め込まれた人工のうなじが恐ろしく官能的に見えた。
その瞬間、アンジェラは、何としてでも今夜、このヒューマンフォージャリーを手にいれようと決心した。
おそらくこのフォージャリーを逃しては、自分の好みに合うフォージャリーなど二度と出てこないだろうと思ったのだ。
仮設リングを取り囲む観客達の濁ったどよめきが、蓮の背中を打った。
嘲笑と羨望、見てはならぬ秘密を覗こうとする好奇心、リングに上がり人間に繋がれず、人の形であろうとするいうフォージャリーの誇りを捨て去ろうとする者への蔑み。
ファイターのリアルチャクラが爆発する時には何時も、フォージャリーの観客達の心には、これらの気持ちが働く。
蜥蜴マスク男の握力と手首のスナップが高まってくる。
今までセーブされていた力を開放するといった類の、高まり具合ではない。
無段階に、人間の常識的な握力を遥かに超えて、その力は無制限に伸びて行くのだ。
蓮の目前に迫ったチャンピオンの蜥蜴マスクには、開口部が、鼻孔と口に薄いスリットしかなく、その為、マスク内部に隠された表情は何一つとして読み取れない。
しかしその薄いスリットの奥からチッという、苛立たしげな舌打ちの音が聞こえた。
予想に反して蓮が、チャンピオンの力の開放に屈しそうになかったからだ。
普通の相手なら、この時点でマットに膝を付いている。
マスクを蓮から引き剥す為には、組み込んだ両手のいずれかを離さなくてはならない。
そしてその後の戦いを有利に展開するためには、リアルチャクラによるスピード加速が必要だった。
このチャンピオンには、変態をせずに自分の動きを加速するスピードのリアルチャクラはなかった。
程度には個人差があるものの、フォージャリーが自分の深い階層のリアルチャクラを発火させるためには、人間の外見を捨てさらなければならない。
つまり彼らヒューマンフォージャリーは、超人化の度合いを高めようとすると変態が起こるのだ。
何故、そうなるのか?
今の所、人間とヒューマンフォージャリーの差別化の為だと言う説が優勢だが本当の理由は誰にも判らない。
一説ではフォージャリーは人間にとってはマイナスとしか捉えられない不安定因子を逆説的に利用して超人化するとされている。
人間の場合は、不安定因子が生じるメカニズムは複雑で、個人差がある。
一般的には、脳内の神経伝達物質のバランスの崩れや、過去の経験、思考パターンなどが影響していると考えられている。
その辺りをフォージャリー達は"リアルチャクラ"と一括りにして呼んでいるのだろうとトレバーは捉えていた。
兎に角、チャンピオンは、観客に己の変態をさらさなければならない羽目に陥っていた。
今までの相手には、その手前で勝ち続けてきたのにだ。
しかもチャンピョンが次ぎにやろうとするそれは、勝利を確定するために一気呵成の"攻め"の変態ではないのだ。
見るモノが見れば、チャンピオンが窮して変態に追い込まれた事は判る筈だった。
フォージャリー達には、仲間に変態を見せる事を恥とする傾向がある。
人間なら決して変身はしないからだ。
そして彼らフォージャリーは、自分達の事を、誇りを持って「元は人間」だったと信じ込んでいたのだ。
娘に語りかけたつもりだが、それは独り言に近い。
トレバーの声がつまらなそうに響く。
どうせこの娘は父親の言葉など聞きはしない。とトレバーは思った。
だがスカジィは、被投薬者の通常意識を奪ったりはしない。
快感をよぶ感覚や情動を拡大し維続するだけである。
従って、トレバーの言葉のニュアンスをアンジェラは頭の片隅でよく理解していた。
自分の父親は、このチャンピオンが、役不足の相手にフォージャリー達が言うリアルチャクラを使わないだろうと考えて、それを不服に思っているのだ、と。
リアルチャクラの完全発動は、人間の外見の変形を伴う。
通常でもヒューマンフォージャリー達の外見は個々の身体能力とは比例しない。
痩せていても超人的な筋力を発揮する者もいる。つまり彼等の身体は使役目的の為、個別に改良されているのだ。
それが原因で、さらなる二段階目の変身を遂げるという…。
アンジェラは、ヒューマンフォージャリー達のグロテスクな変身など見たくなかったし、目の前のチャイナレディの美しい姿を何時までも観戦していたいと思っていた。
今、チャンピオンとチャイナレディは、お互いボクシングスタイルを取りながら、ジャブの応酬で相手の力量を推し量っているところだった。
相手のマスクを剥すには、どうしても接近戦に持ち込まねばならないが、その時は自分のリアルチャクラを爆発させるなりして、相手を圧勝しなければならない。
今彼らは、その決着の時に向かうセレモニーを行っているのだ。
チャイナレディの黄褐色の肌の表面に珠のような汗が浮かび始め、チャンピオンの拳の軽い打撃が当たる度に、その振動の為に汗が弾けて飛び散る。
アンジェラはそれを拡張された感覚でスローモーション映像を見るように恍惚感に浸りながら見つめていた。
「もうすぐチャンプの不安定因子が発火する。今夜、チャンプを買い取るのが正解だろうな。6回チャンピオンを続けているんだ。いくら人気がなくても競りに掛かかればとかく面倒だ。」
トレバーが言う、面倒というのは金の事ではない、表向き人間社会ではフォージャリーを買い付けることが出来ない。
但しチャンピオンは別だ。抜け穴だ。
チャンピオンはフォージャリーとしてではなく、人間的資材の優良種としてのブランドサンプルとして買える。
そうやって買い取れるのが前提のチャンプには、興業主を仲買にして綺麗な取引が行われる筈だが、それ意外の場合や買取のタイミングを逃すと、そのフォージャリーに、突然親戚と名乗る者が現れたりして、横から法外な金や、誰それを一緒にイーズルへ連れて行け等という、面倒な条件をふっかけられたりする。
フォージャリーである彼らが、人間に強気にでれるのは、買い取り行為が人間社会では違法行為である事を知っているからだ。
フォージャリー達も、なんとか底辺から這い上がろうと必死なのだ。
トレバーがチャンピオンのリアルチャクラ発動を断定的に予言したのには、理由がある。
チャンピオンには、挑戦者に対して相手の力量をはかるため5分以内の観察タイムが許されている。
しかし観察タイムを5分を過ぎても、積極的な攻撃にでなければ、戦闘意欲なしと見なされて自動的にチャンピオンの資格を剥奪されてしまうのだ。
闇ファイトのチャンピオンとは、しぶとく戦いに勝ち残った者のことだけを言うのではない。
いかに「見世物」を、長く演じ続けられるかも含まれているのだ。
その5分が迫りつつある。
だが意外な事に、女性の顔のマスクを付けた挑戦者が善戦を続けているのだ。
アンジェラはスカジィの為に、試合が長く続いているように感じられているが、実質は5分を経過しつつあった。
アンジェラも焦り始めていた。
もし、父親のトレバーがチャンピオンを今夜買い取るなら、それは当然、アンジェラへの誕生祝いという形を取る筈だった。
一人前の豪族の子弟は、いずれ自分専用のフォージャリーを持つ、それが彼ら豪族達の暗黙のルールだったからだ。
リンカーン家の跡取りは、アンジェラ一人しかいない。
ここでフォージャリーを手に入れて、今度の豪族たちのパーティでそれをお披露目する。
つまり、それをもって正式に彼女は、豪族界にデビューするということだった。
それが、フォージャリー居住地区に訪れる前の、父親の勝手な押しつけの約束だった。
どの道、ヒューマンフォージャリー等押しつけられても、アンジェラはそれを相手にするつもりはなかったが、同じ押しつけられるなら、チャイナレディの方がまだましだと彼女は考え始めていた。
ただし、敗者になったチャイナレディを希望するためには、それ相応の理由を上げなければならない。
それが自分の性の嗜好に由縁するなど、この父には口が裂けても言えないと、アンジェラは考えていた。
「よし。組み合った。始めは力勝負だ。」
リング上では、お互いの指をガギッと組み合わせながら、腰を引いて力比べを始めた二人の男達がいる。
チャイナレディの背中に、思いがけない程大きな筋肉の束が隆起した。
彼の筋肉の隆起は、彼女がいる世界では決して見られない種類の優雅さを持っていた。
そしてその背中の上にあるチャイナレディのマスクに埋め込まれた人工のうなじが恐ろしく官能的に見えた。
その瞬間、アンジェラは、何としてでも今夜、このヒューマンフォージャリーを手にいれようと決心した。
おそらくこのフォージャリーを逃しては、自分の好みに合うフォージャリーなど二度と出てこないだろうと思ったのだ。
仮設リングを取り囲む観客達の濁ったどよめきが、蓮の背中を打った。
嘲笑と羨望、見てはならぬ秘密を覗こうとする好奇心、リングに上がり人間に繋がれず、人の形であろうとするいうフォージャリーの誇りを捨て去ろうとする者への蔑み。
ファイターのリアルチャクラが爆発する時には何時も、フォージャリーの観客達の心には、これらの気持ちが働く。
蜥蜴マスク男の握力と手首のスナップが高まってくる。
今までセーブされていた力を開放するといった類の、高まり具合ではない。
無段階に、人間の常識的な握力を遥かに超えて、その力は無制限に伸びて行くのだ。
蓮の目前に迫ったチャンピオンの蜥蜴マスクには、開口部が、鼻孔と口に薄いスリットしかなく、その為、マスク内部に隠された表情は何一つとして読み取れない。
しかしその薄いスリットの奥からチッという、苛立たしげな舌打ちの音が聞こえた。
予想に反して蓮が、チャンピオンの力の開放に屈しそうになかったからだ。
普通の相手なら、この時点でマットに膝を付いている。
マスクを蓮から引き剥す為には、組み込んだ両手のいずれかを離さなくてはならない。
そしてその後の戦いを有利に展開するためには、リアルチャクラによるスピード加速が必要だった。
このチャンピオンには、変態をせずに自分の動きを加速するスピードのリアルチャクラはなかった。
程度には個人差があるものの、フォージャリーが自分の深い階層のリアルチャクラを発火させるためには、人間の外見を捨てさらなければならない。
つまり彼らヒューマンフォージャリーは、超人化の度合いを高めようとすると変態が起こるのだ。
何故、そうなるのか?
今の所、人間とヒューマンフォージャリーの差別化の為だと言う説が優勢だが本当の理由は誰にも判らない。
一説ではフォージャリーは人間にとってはマイナスとしか捉えられない不安定因子を逆説的に利用して超人化するとされている。
人間の場合は、不安定因子が生じるメカニズムは複雑で、個人差がある。
一般的には、脳内の神経伝達物質のバランスの崩れや、過去の経験、思考パターンなどが影響していると考えられている。
その辺りをフォージャリー達は"リアルチャクラ"と一括りにして呼んでいるのだろうとトレバーは捉えていた。
兎に角、チャンピオンは、観客に己の変態をさらさなければならない羽目に陥っていた。
今までの相手には、その手前で勝ち続けてきたのにだ。
しかもチャンピョンが次ぎにやろうとするそれは、勝利を確定するために一気呵成の"攻め"の変態ではないのだ。
見るモノが見れば、チャンピオンが窮して変態に追い込まれた事は判る筈だった。
フォージャリー達には、仲間に変態を見せる事を恥とする傾向がある。
人間なら決して変身はしないからだ。
そして彼らフォージャリーは、自分達の事を、誇りを持って「元は人間」だったと信じ込んでいたのだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
Another World-The origin
ファンファン
SF
現実に飽きた世界を、本物の「業」が震撼させる。
九十二歳、一之進。かつて国宝を打ち上げ、戦場を駆けた「生ける伝説」。
隠居した彼が手にしたのは、息子から贈られた最新のVRギアだった。
ステータス? スキル? そんなものは関係ない。
「本物」が振るう一撃は、物理演算さえも置き去りにする。
これは、役目を終えたはずの老兵たちが、電脳世界で再び「魂の火」を灯すまでの物語。
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
背徳のミラールージュ(母と子 それぞれが年の差恋愛にのめり込んでいく鏡写し)
MisakiNonagase
恋愛
24歳の市役所職員・中村洋平には、自慢の恋人がいた。2歳年上の小学校教師、夏海。誰もが羨む「正解」の幸せの中にいたはずだった。
しかし、50歳になる母・美鈴が21歳の青年・翔吾と恋に落ちたとき、歯車は狂い出す。
母の恋路を「不潔だ」と蔑んでいた洋平だったが、気づけば自分もまた、抗えない引力に引き寄せられていた。
その相手は、母の恋人の母親であり、二回りも年上の柳田悦子。
純愛か、背徳か。4年付き合った恋人を捨ててまで、なぜ僕は「彼女」を求めてしまうのか。
交差する二組の親子。歪な四角関係の果てに、彼らが見つける愛の形とは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる