14 / 14
第2章 聖剣の行く方/放伐
14: 父親達
しおりを挟む
莞爾達が固まっている場所から少し離れた貴賓席に、トレバー・リンカーンと暮神英機(ひでき)がいた。
剣士のオーナーは、闘技の血飛沫がかかるような闘技ステージ間近にいなければならないが、今回の剣士の名目上のオーナーはアンジェラで彼女は決まり通りその場所にいてトレバーは関われない。
しかもアンジェラは自ら望んで、そうしているのだ。
トレバーが考えていた聖剣奪取プランにはフォージャリーを使う事が含まれていたが、そのフォージャリーは娘のフォージャリーである必要などなかった。
それをアンジェラが、自分はリンカーン家の跡取り娘だから自分の代理としてチャイナレディをこの試合に出すと言い出したのだ。
娘なりに家の事を思っていっているのか、それとも自分への当てつけの為に、そんな事をやろうとしているのか、トレバーにはそれさえも良く分からなくなっていた。
ただ一つはっきりしていたのは、そんな娘の申し出を撥ね付けられる理由がトレバーにはないと言う事だった。
トレバーは複雑な思いで、自分の娘がドレス姿でセコンド席に座っているのを見た後、次にリングを挟んで娘と向かい合った場所にいる張に視線を移した。
張は他の中世貴族風の仮想に対抗して、昔の中華商人のような格好をしていたが、それがよく似合っていた。
張は自分を見ているリンカーンの視線に気がついたのか、軽く会釈を送って来た。
トレバーも、それに会釈を返した。
会場内の雰囲気は、来る決勝戦に向けて期待と興奮が高まり今にも爆発しそうだった。
観客達は、今までにない剣士達を擁したこの聖剣争奪戦に酔っているのだ。
「張は余裕だな。」
セコンド席で悠然と構えている張の様子を見て暮神英機は言った。
英機は、口ひげが似合っている厳つい身体をした壮年の男で、その姿は渋い好漢であるトレバーとよく釣り合っている。
彼の息子の莞爾の顔は細面だから、莞爾は母親似なのだろう。
「出して来た剣士も凄い。ユミルにもまだあんな人材がいて、それをこの試合に持ってこれる張はやはり侮れんな。それにあの剣の切れ味、出処は特異点テクノロジーかな?ただの後付のブレードではなさそうだ。聖剣は柄に値打ちがあるというのに…人をくった事をする人物だ。」
余裕といえば、トレバーも張に負けず余裕があった。
チャイナレディを試合に出すのには抵抗はあったが、チャイナレディ自体の能力には自信があったからだ。
「、、、剣の方は詳しくは解らんが、剣士の方は知っている。奴と会う場所がここでないなら、儂が捕えなくてはならん男だ。」
暮神英機が面白そうに言った。
「あの剣士、犯罪者か?」
「ああ、すこぶるつきのな。殺し屋だよ。金で人を殺す。殺すときの獲物は、毒薬からライフルまで、時と場合で何でもありだと聞いている。分かっているが、証拠を残さないから捕まえられない。張は、そう言う人間をここに送り込んだんだ。しかし、それはお前も同じだな。この場にあのフォージャリーを出場させるとはな、驚いたものだ。」
楽しくて仕方がないというふうに、暮神英機がトレバー・リンカーンに言った。
それがこの男の腹の太さだった。
「そう言うな。決まりは各家から一人剣士をだす。それだけだったろう。その家の血の濃い人間を、というのは、出来ればの話の筈だ。だが私の家には、一人娘しかない。それにこれは元々、我々のお遊びから始まったものだ。」
「確かにな、あの母星神が悪戯心を出して、このゲームにちょっかいを出さない内は、平和なものだったな。、、しかし、うちの倅が今回の試合を辞退していて良かった。殺し屋はさておき、さすがにお前のところのフォージャリー相手ではな。あのフォージャリー、バンクスの息子の足を食い千切ったそうじゃないか?」
「挑発をしたのはレナード・バンクスの方だ。それはバンクス君も認めているよ。」
「認めている?相手がお前だからだろう?リンカーン家じゃなければ、今頃、両家は戦争になってる。しかし強気に出たな。先方に全て非があると言いきっただろう。何事に対しても慎重なお前が、そう出るとはな。今回の試合への参加にしたってそうだ。いよいよやる気なのか?」
「ああ。腹を決めた。私がこの国をまとめ上げ外の世界に打って出る。ほって置けば、この国は遠からず滅びる。だから聖剣も必要だ。私自身は、聖剣の値打ちなど信用していないが、周囲はそうじゃない。覇者になるには、それなりの飾りが必要だ。、、しかし、聖剣争奪戦の有力候補である君とは戦いたくなかった。でも暮神家は自ら降りてくれた。その事については感謝しているよ。しかも、あの負けん気の強い莞爾君が自ら退いてくれるとはな。」
「リンカーン家が出るんだ。そのあたりは莞爾も考えるさ。それに兄の瑛爾が奪った聖剣の本数は1本、莞爾は2本。兄を超える…この方面では莞爾はもう望みを達成しておる、、。そして倅は元からこの試合自体に興味があるわけじゃない。」
「、、瑛爾君の事は気の毒だったな。立派な跡取りになっただろうに。」
「それを言うな、、儂には、まだ莞爾が残っておる。」
暮神英機は顔に似合わない悲しげな表情を浮かべた。
剣士のオーナーは、闘技の血飛沫がかかるような闘技ステージ間近にいなければならないが、今回の剣士の名目上のオーナーはアンジェラで彼女は決まり通りその場所にいてトレバーは関われない。
しかもアンジェラは自ら望んで、そうしているのだ。
トレバーが考えていた聖剣奪取プランにはフォージャリーを使う事が含まれていたが、そのフォージャリーは娘のフォージャリーである必要などなかった。
それをアンジェラが、自分はリンカーン家の跡取り娘だから自分の代理としてチャイナレディをこの試合に出すと言い出したのだ。
娘なりに家の事を思っていっているのか、それとも自分への当てつけの為に、そんな事をやろうとしているのか、トレバーにはそれさえも良く分からなくなっていた。
ただ一つはっきりしていたのは、そんな娘の申し出を撥ね付けられる理由がトレバーにはないと言う事だった。
トレバーは複雑な思いで、自分の娘がドレス姿でセコンド席に座っているのを見た後、次にリングを挟んで娘と向かい合った場所にいる張に視線を移した。
張は他の中世貴族風の仮想に対抗して、昔の中華商人のような格好をしていたが、それがよく似合っていた。
張は自分を見ているリンカーンの視線に気がついたのか、軽く会釈を送って来た。
トレバーも、それに会釈を返した。
会場内の雰囲気は、来る決勝戦に向けて期待と興奮が高まり今にも爆発しそうだった。
観客達は、今までにない剣士達を擁したこの聖剣争奪戦に酔っているのだ。
「張は余裕だな。」
セコンド席で悠然と構えている張の様子を見て暮神英機は言った。
英機は、口ひげが似合っている厳つい身体をした壮年の男で、その姿は渋い好漢であるトレバーとよく釣り合っている。
彼の息子の莞爾の顔は細面だから、莞爾は母親似なのだろう。
「出して来た剣士も凄い。ユミルにもまだあんな人材がいて、それをこの試合に持ってこれる張はやはり侮れんな。それにあの剣の切れ味、出処は特異点テクノロジーかな?ただの後付のブレードではなさそうだ。聖剣は柄に値打ちがあるというのに…人をくった事をする人物だ。」
余裕といえば、トレバーも張に負けず余裕があった。
チャイナレディを試合に出すのには抵抗はあったが、チャイナレディ自体の能力には自信があったからだ。
「、、、剣の方は詳しくは解らんが、剣士の方は知っている。奴と会う場所がここでないなら、儂が捕えなくてはならん男だ。」
暮神英機が面白そうに言った。
「あの剣士、犯罪者か?」
「ああ、すこぶるつきのな。殺し屋だよ。金で人を殺す。殺すときの獲物は、毒薬からライフルまで、時と場合で何でもありだと聞いている。分かっているが、証拠を残さないから捕まえられない。張は、そう言う人間をここに送り込んだんだ。しかし、それはお前も同じだな。この場にあのフォージャリーを出場させるとはな、驚いたものだ。」
楽しくて仕方がないというふうに、暮神英機がトレバー・リンカーンに言った。
それがこの男の腹の太さだった。
「そう言うな。決まりは各家から一人剣士をだす。それだけだったろう。その家の血の濃い人間を、というのは、出来ればの話の筈だ。だが私の家には、一人娘しかない。それにこれは元々、我々のお遊びから始まったものだ。」
「確かにな、あの母星神が悪戯心を出して、このゲームにちょっかいを出さない内は、平和なものだったな。、、しかし、うちの倅が今回の試合を辞退していて良かった。殺し屋はさておき、さすがにお前のところのフォージャリー相手ではな。あのフォージャリー、バンクスの息子の足を食い千切ったそうじゃないか?」
「挑発をしたのはレナード・バンクスの方だ。それはバンクス君も認めているよ。」
「認めている?相手がお前だからだろう?リンカーン家じゃなければ、今頃、両家は戦争になってる。しかし強気に出たな。先方に全て非があると言いきっただろう。何事に対しても慎重なお前が、そう出るとはな。今回の試合への参加にしたってそうだ。いよいよやる気なのか?」
「ああ。腹を決めた。私がこの国をまとめ上げ外の世界に打って出る。ほって置けば、この国は遠からず滅びる。だから聖剣も必要だ。私自身は、聖剣の値打ちなど信用していないが、周囲はそうじゃない。覇者になるには、それなりの飾りが必要だ。、、しかし、聖剣争奪戦の有力候補である君とは戦いたくなかった。でも暮神家は自ら降りてくれた。その事については感謝しているよ。しかも、あの負けん気の強い莞爾君が自ら退いてくれるとはな。」
「リンカーン家が出るんだ。そのあたりは莞爾も考えるさ。それに兄の瑛爾が奪った聖剣の本数は1本、莞爾は2本。兄を超える…この方面では莞爾はもう望みを達成しておる、、。そして倅は元からこの試合自体に興味があるわけじゃない。」
「、、瑛爾君の事は気の毒だったな。立派な跡取りになっただろうに。」
「それを言うな、、儂には、まだ莞爾が残っておる。」
暮神英機は顔に似合わない悲しげな表情を浮かべた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
Another World-The origin
ファンファン
SF
現実に飽きた世界を、本物の「業」が震撼させる。
九十二歳、一之進。かつて国宝を打ち上げ、戦場を駆けた「生ける伝説」。
隠居した彼が手にしたのは、息子から贈られた最新のVRギアだった。
ステータス? スキル? そんなものは関係ない。
「本物」が振るう一撃は、物理演算さえも置き去りにする。
これは、役目を終えたはずの老兵たちが、電脳世界で再び「魂の火」を灯すまでの物語。
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
背徳のミラールージュ(母と子 それぞれが年の差恋愛にのめり込んでいく鏡写し)
MisakiNonagase
恋愛
24歳の市役所職員・中村洋平には、自慢の恋人がいた。2歳年上の小学校教師、夏海。誰もが羨む「正解」の幸せの中にいたはずだった。
しかし、50歳になる母・美鈴が21歳の青年・翔吾と恋に落ちたとき、歯車は狂い出す。
母の恋路を「不潔だ」と蔑んでいた洋平だったが、気づけば自分もまた、抗えない引力に引き寄せられていた。
その相手は、母の恋人の母親であり、二回りも年上の柳田悦子。
純愛か、背徳か。4年付き合った恋人を捨ててまで、なぜ僕は「彼女」を求めてしまうのか。
交差する二組の親子。歪な四角関係の果てに、彼らが見つける愛の形とは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる