8 / 20
第3章
風雲編 3-2 ビターチョコレート 2: ブエノスアイレスのような
しおりを挟む
感傷的になっていた俺はウォン・カーウァイ監督の『ブエノスアイレス』を引っ張り出して夜中に観た。…哀れなる自己憐憫。
俺と湛(しずか)は、この映画のウィンとファイ、どちらに該当するんだろう? 俺は自分がトニー・レオンのファイだと思っていたが、実は湛から見たらウィンの方なのかも知れない。
・・・湛は今、何をしてるんだろう。
………………………………………………………………………………
色んな経緯で親父にSMクラブで置き去りにされちゃって、こっちも調子に乗ってる部分もあったんだけど、いきなりキャミと網タイツ渡された時は『嘘だろう?これ着なきゃいけないの?』と思って憂鬱になった。
逃げられない状況で、女王様に「はい、これ着て」って、何なんだ。
ピンクのフリフリでスケスケのキャミ。それと網タイツ、股とお尻の部分が無いヤツ。
頼んだ訳でもないし、本当にいきなり。
躊躇してたら「着るの?着ないの?別に嫌なら着なくてもいいんだよ」って冷たく言われたから、こっちもなんだか意地になって「着るよ」って答えた。
明らかに、俺の眼の前にいる小柄なその子サイズだよ。
キャミ脇が編み上げになってて、それ緩めたんだけどきつかった。
ピンクのフリフリがいっぱいあってこれで他の客の前にでるなんて泣きたくなるほど恥しい。
キャミウエスト丈で網タイツが股間丸出し、お尻丸出しだし。
ヘタに着ているから、逆に丸出しの股間とお尻に神経集中してしまう。
後ろ手に縛られ、鏡連れて行かれて情けない格好をみせられ、彼女がその場で脱いだムラサキのパンティまで穿かされた。
それで気がついたらその子、縄の痕があるんだよ。
それとあそこの毛に蝋燭。
「あぁ、これ。さっきの客に。とれないんだよね」って笑ってた。
この子さっきまで別の客に、S客にこの衣装着て立ってたんだ。縛られて、あそこに蝋燭垂らされて。
その子、小柄で凄く可愛いんだよ。
屈辱感と嫉妬、逆に今の自分の姿と彼女の姿がダブって、妙な興奮状態だった。
俺の女の子扱い、受けたさ。
まるで男が女の子の体触るように触られ、女の子の様に声上げさせられた。
彼女が着けたペニバンに奉仕させられるし。
浣腸されて、アナルも犯された。
まあそこは、半分ステージショーみたいなもんだから形だけだったけどね。
彼女に自分の女扱い、いや、まるで客に買われたお店の女の子みたい。
ずっとその格好で弄ばれ続け、、大勢の客の前でだよ。
男客の視線にはこたえないんだけど、女の客にはね。女性の前でそんな格好するなんて考えてもみなかったし。
それが、突然目の前に女性モノの下着出され着なさいと強制されたんだよ。
自分で身に着けるのと、強制されるのでは全然違う。
本当に恥しかった。
でも「着るの?着ないの?別に嫌なら着なくてもいいんだよ」って冷たく言われた時は『着ないで済ませられない』ってなんだか思ってしまったんだ。
専門学校もサボり倒して、時々は女装して騙しで小金を稼いでそれで又遊んでという自滅的な自分への処罰ってゆーか、修行みたいな感じもあったし。
彼女の前でキャミ着るときは、本当に恥しくてブルブル震えていた。
網タイツは、穴空きだと気がついた瞬間、屈辱で頭がクラクラした。
パンティは手を後ろ手に縛られてたから、彼女に履かせてもらった。
これ自分で穿くより絶対恥しい。
彼女の体温が感じられたんだけど、あそこの部分は湿って冷たかった。
それは今でも凄く覚えてる。
フリフリのブラウスとか、あり得ない位短いスカートとか、下着もフリフリでリボン付いてるパンティとか逆にシンプルな白の綿パンとか、ホント恥ずかしい。
あとセーラー服も。
女王様姿の姫の前で、素っ裸にされて、「はい、次コレ着て」って指示されながらそれを着るところを見られる状況は、本当に屈辱以外の何ものでもない。
パンティ履くときは何故か内股になってしまうし、ブラジャー着けるときはさらに恥ずかしい。
なんでだろ、、指が震えてホック掛けられなくて、「ブラジャー着けてください、お願いします。」って言わされたときは顔から火が出るくらい恥ずかしかった。
逆合わせのブラウスのボタンをハメル時『自分は女の子にさせられてる。』って強烈に意識したし。
ブラウスは透けてるものが多くて、ブラジャーとか透け透けになって恥ずかしいし。
ワンピースも、極度に舞い上がってるから、自分でチャック開け閉めできず、全て姫にお願いしなくちゃいけなくなるしね。
一口に女装といっても個人個人の趣味があって、この時着せられたブラウスもワンピも全然好みじゃない。
「ファスナー上げてください。」までははまだ良かったんだけど、 声震わせながら「ワンピース脱がせてください。」ってまでお願いさせられるんだよ。
まあスカートまで履いてしまうと、不思議に落ち着いたけどね。
ウエスト高くキュッと締め付けられ、ブラジャーしてるせいもあって胸あって腰からお尻へのラインも女の子っぽくて。まあこれならって感じ。
ミニスカートの時は、もの落とされてそれを拾い上げるのを何度もやらされた。
「ほらほらパンティ見えちゃってるよ」って言われながら。
だけどこれはまあ定番といえば定番。
足閉じて上体反らして屈むから、意識しなくてもどうしても仕草が女の子っぽくなってしまって「あはは、女の子らしくなってきたじゃない」ってからかわれる。
勿論、元の素体の男子ラインはもうバレバレだけど。
………………………………………………………………………………
何度目かの夜中になった。
やっぱり湛は帰ってこない。心当たりに片っ端から電話したが無駄足だった。
勿論、スマホは全然反応なし。
俺はビールを煽りながら湛を又、待っていた。
心配だったが、あの時マリウスは帰した訳だし、湛とは話せば分かると信じていた。
真夜中を過ぎ俺は睡魔に襲われた。
明け方、俺は物音に目が醒めた。
まだ薄暗かった。
寝室を出ると、湛が居間の隅に置いてあったスポーツバッグに屈み込んでチャックを閉めている。
バッグのショルダー・ベルトを肩に掛けて振り向いて俺を見た。
知らぬ間に帰っていたのだ。
冷たい目だ。
立ちすくむ俺に、「俺・・・明日から親父のお供で出かける、人が足りないみたいなの、、当分会えないよ。」
「えっ?・・・ま、待ってくれ。ど、どこに行くんだ。いつまで?」
俺は必死だ。
「・・・西の方としか聞いてない、、帰るのは2週間後くらいかな」
2週間。俺にとっては悠久といっていい時間だ。
湛は俺の表情を見ていたが、ぷいと横を向くと俺の脇をすり抜けて戸口に向かった。
ジーパンの足にスニーカーをつっかけた。
俺は裸足で湛を遮って戸の前に立った。
「・・・ま、待てよ・・・」
湛は首を傾げて俺を上目で見る。
「な本当に、マリウスとは何も無いから。」
湛の顔に怒りの影がよぎった。
だが、俺は伝えたかった。
「あれから彼は帰ったんだ。」
「・・・可愛そうに。あんたに教えにもらいに来たんやろ。そやなのに帰したのか。」
言葉に詰まった。
言い訳をしようとすれば逆にこう言われる。
湛が怒ると、状況の全てが湛の攻撃材料になるのだ。
「・・・また戻って来てくれるんやろ?」
俺は聞きたいことをストレートに口に出した。
俺には駆け引きは出来ない。
湛は目を逸らして、
「さあね。考える」
「あんなに愛し合ったのに。俺が好きなんやろ。」
湛はかすかに笑って、
「俺たちは男同士だろ。いくらお前が好きだって言ってくれても、子供を産める分けじゃないし、今にお互いに邪魔になるよ。特に康平の方が。もうここらへんが限度じゃないか?俺にあんなマッチョ系の格好をさせたら、あれ以上はセックスで興奮出来へんやろ?」
(俺にあんな格好をさせたら、あれ以上はセックスで興奮出来へんやろ?)思ってもみなかった事だ。
そしてその通りだと思った。
湛は、性自認は女性じゃないけど、性嗜好は女性的な受けだ。
…それは最初から判っていて付き合い、俺はそれを利用もしたし甘えもしていた。
それなのにああいう形で裏切った。
思い切り後悔してる。
しかし俺はそういう思いを振り切るように言った。
「いいか。戻ってこい。」
湛はびくっとして俺を見たが、聞こえなかったやうに出て行った。
湛の頬に髪がかかった怒った妖艶な横顔を俺は見送った。
………………………………………………………………………………
親父が地方に出た際には馴染みにしてる場末のバーのママ、智草、と知りあった。
親父とどの程度の仲なのは判らない。
革のタイトスカートにデカい尻を押し込んで、胸の谷間をチラチラ見せながら客待ちをしてる。
紫の爪でつまんだ煙草を毒々しい口紅を塗り込んだ唇でふかし、水割りを傾ける。
付け睫毛の鋭い眼で見つめて、ひたすら淫らな口調と言葉で客を挑発するのが常だ。
ボックス席では黒パンストに白サンダルという絶妙の組み合わせでお客に絡み、胸を押し付けて色々な事をせがむ。
時には客のペニスに欲情するのか、低音ボイスで「せんずりコイてあげようか?」と根っからの淫乱を丸出しにする。
白のサテンスーツで磔にした男のペニスを責めまくる、智草を見たことがある。
客はそうとう禁欲的な生活を続けていたようでこれが限界という様の疼きにうずいたペニスをビキニ越しに真っ赤っ赤の唇でフェラされている。
焦らして焦らして口紅塗り直した後は強烈な直フェラ。
男客のゴッツゴツに限界まで勃起しきったペニスをジュブジュブねぶり回しながら寸止め地獄を味合わせている。
「この際、全部出してみてよ」と搾り切っても終わらずに連射させている。
若い男にはボディコン+太ベルトというわざと作ったオールドファッションの若つくりでハッスルする、智草。
口紅ベッタリのキスから始まり、若いペニスを味わい尽すお下劣という表現がぴったりなフェラをする。
前戯など必要のない智草のぬるぬるしたオマンコに若いペニスをハメ込んでデカい尻をピストンさせる。
腰を振らせればベテランの円熟技といっていい。
…………………………………………………………………………………
図書館に行った。
湛がいない2週間をどう過ごすか、湛が俺のところに戻ってくれるか、俺は不安になった。
暗澹たる気分だ。
勉強にも身が入らない。
……そして、本やノートをいっぱい両手に持ってマリウスが立っていた。
びっくりする俺を見て、「・・・教えてくれるんだろ?ここなら良いよね?」
そういわれれば、俺に断る理由がなかった。
ここは図書館だ、前とは違う。
マリウスは資料を4人掛けの小テーブルに置き、俺の前に座った。
俺は気まずかった。
だが、マリウスはあっけらかんと質問を投げかけて来た。
この間、起こったことは気にしてない様だ。
俺が答え、資料を示唆する。
マリウスがそれを読んで次の質問を考える間、俺は自分の作業をする。
予想とは違って、なにか自然に時間が流れて行く。
マリウスの存在が気にならなくなった。
マリウスの醸し出す雰囲気が、大らかなフレンドリーさで俺の気分を落ち着かせてくれるのだ。
ふとマリウスを眺めると、湛に劣らぬ美形であることが分かる。
母親譲りだという艶やかな黒い長髪は肩に流れ、気の強そうな細面の眉と高い鼻、端が笑う様に切れ上がった口。
形の良い手と指。
校内で見るマリウスはいつも数人の女の子に囲まれていた。
日が暮れる頃、俺たちは再びうち解けていた。
マリウスは別に俺に執着があるとか、そういうことでは無いようだ。
俺の下宿で湛と鉢合わせしたとき、俺のことを恋する乙女のように見ていたと思ったが、所在なさげなマリウスの表情を俺は勘違いしたのだろう。
一緒に図書館を出る時、俺の孤独感は一時癒されていた。
だが・・・また一人で下宿に戻れば・・・
「湛君はどうなった?」
マリウスは俺を見上げた。
俺の心臓が疼いた。
マリウスの流し目、濡れた唇。
コイツとは身体が合いそうだと判った。
やはり俺はこいつが湛より欲しかったのか?。
俺の賤しい下心が打算を始めた。
湛がもし、戻らなければ・・・マリウスはその穴埋めに十分すぎる・・・ああ、俺は本気でそう考えていた。
俺は笑いながら言った。
下卑た心を隠して。
「俺の下宿に来るかい?」
「今度は追い返されない?」
俺は破廉恥男に成り下がっていた。
「・・・ああ」
下宿に着くと、マリウスは湛と同じように流しを片づけ始めた。女ぽさは微塵もない。
自分にとって目障りなものを整理してるという感じだ。
湛が旅に出てから3日経っていて、料理を作れない俺は総菜屋から買ってきては飯だけ焚いて、使った食器は流しに放り込んでいたのだ。
3日の間、俺は不安で自慰をするでもなく酒を喰らって眠気を誘っていた。
マリウスの競馬馬の尻みたいな妖艶な後ろ姿に、溜まった性欲がじりじりと俺の下腹部を焦がしていた。
俺はマリウスの後ろに身を寄せるとがっしりしているが丸い肩を抱いた。
マリウスの体がびくっとする。
俺はマリウスのうなじに髪の上から口を付ける。
マリウスの息がせわしくなりじっと耐えているやうだ。
マリウスをくるりと回して、後ろの髪を掴み上を向かせる。
俺の顔が接近する。
「・・・こうなるのを期待して来たんだろ?」
マリウスは浅く息をつき答えない。
恐れているわけじゃないだろう。
俺はマリウスの口に俺の口を合わせた。
俺の打算はこう叫んでいる。
もう湛は戻らないんだ。湛は俺に飽きたんだ。湛は俺を狂わせて、飽きたら他の男を捜すやうな『淫売』だ。マリウスをものにしろ。湛に見せつけてやれ。せせら嗤ってやれ。どうせ終わりなのだ。せめて二人の別れには"お前よりマリウスの方がいい"、と湛に見せつけてやれ。
俺はマリウスを俺の虜にすべく計画を立てた。
マリウスだって何人もの男と寝ている筈だ。
今は慣れない異国で安易に手に入る恋人を誘っただけだと考えているのだろう。
まず、マリウスの性感帯を探した。
裸にしてベッドに連れて行って口から、首、乳首を嬲る。
やはり乳首は敏感だった。
「男に嵌められた自分の姿でオナニーするのか?」
マリウスは少し恥ずかしさうに頷いた。
マリウスは女と寝たことがあるという。
だが、その容姿を保ち、俺なぞが見てもそそられるということは、どこかで中性的な魅力を持っていることを自ら受け入れているということだ。
その証拠に俺とこうして受け身で肌を合わせている。
マリウスの臍、下腹に口を沿わせる。
マリウスの息が荒くなり大きなペニスがさらに勃起する。
ペニスの裏を舌でなぞる。
毛が全くない腿が締まる。
血の通ったギリシャ彫刻を抱いてるようだ。
湛とは抱き心地がまったく違う。
汗と微かな尿臭と淫靡な下着の中の匂い。
尿道口を開いてに粘膜に舌をなぞらす。
マリウスがオゥと声を上げて仰け反る。
俺は湛の体から学んだ受け身の体の秘密を全てマリウスに試そうとしていた。
腿を揃えさせて持ち上げ、マリウスの肛門を臀部の肉を広げながら舐める。
マリウスの口から泣き声が漏れる。
きれいに洗ってあるのか糞臭はない。
俺はマリウスを四つん這いにして、ジェルをマリウスの肛門と俺のものに塗って、後ろから慎重に挿入していった。
痛みを出来るだけ与えないようにゆっくりと。
マリウスは息を殺して耐えている。
当然だがハーフだからってケツの穴が違うってわけじゃない。
そして根本まで入ったらマリウスの背中から体全体を密着させ、優しく体を起こしてやる。
髪の匂いを嗅ぎ、うなじを吸い、顔をこちらに向けさせ目、鼻、口にキスをする。
最後に深く口を吸い舌を吸う。
マリウスはうっとりと顔を上気させている。
すでに男同士のセックスの快楽を堪能し始めているのだ。
「期待通り・・・?」
マリウスは気怠そうにこっくり頷く。
俺はゆっくりと腰を動かして行く。
・・・・・
マリウスは俺の胸に頭を付けて寝息を立てている。完全に俺のものにしてしまった。
「・・・俺、又、国に帰るんだ。」
「えっ?・・・嘘だろ?」
「親父の転勤だけならこっちに残るけど、母親が病弱なんだよ。身近で面倒見る人間がいるんだ。」
俺は絶句した。
俺はまた失うのか。
「だから、その前に好きな人に告白したかったんだ。ここでの最後の思い出に・・・」
俺は力無くフォークを皿に戻した。
まさか、俺の事は"本気"だったんだ。
「湛君には悪いことをしたと思うけど、こうなった事は二人だけのひみつにしよう。僕がいなくなれば、全て元に、戻る、だろ?」
俺は呆けたように頷くしかなかった。
湛が旅に出てから2週間経った。
俺は湛がこちらに帰って来たのかさえも、分からなかった。
何度も電話したが、湛は自分が掛けるとき以外は電話には一切でない様だった。
でも着任履歴は残っているはずだ。
それでも湛は返事をくれない。
あの日のマリウスのことが、よほど頭に来ているのか?
その上、俺はまたマリウスと身体を重ねている。
これ以上、湛を掴まえておける自信はもうなかった。
俺は彼らを使ってさんざん薄汚れた自分の性欲を満たして来た。
もう良いのかも知れない。
人との付き合いが、性欲を満たすというだけの事なら、俺は幸運だったのだろう。
………………………………………………………………………………………
バイトが終わってから夏の通り雨にびしょ濡れになって下宿に帰り、俺は鼻歌を歌いながらシャワーに入った。
シャワーから出て、さらに自分を酔わそうとビールを冷蔵庫から出し缶を開けた。
振り返ると薄明かりの居間に誰か居る。
湛だった。
稲光が走った。
湛は塑像の様に突っ立ち、怒りを眉に俺を睨んでいる。
「ど・・・どうしたんや。」
湛は濡れた上着を脱いで、黒い半袖シャツにいつものぴったりしたジーパン姿だ。
前髪が濡れ、頬に張り付いている。
走って来たのだろうか、後ろ毛が逆立っている。
湛が雷の音とともに叫んだ。
「やっぱりマリウスを抱いたんやな。」
俺は湛ともう争いたくなかった。
もう湛を追うのは止めたのだ。
「もう関係ないやろ・・・」
俺は卑屈に笑うと、静かに言った。
「ここにいるといつかみたいにまた乱暴するかも知れへんで。俺は・・・筋金入りの変態のホモやからな。性依存症なんだよ。…帰れよ。」
湛はびっくりしたように目を見開いて俺を見た。
しばらく黙っていたが、
「・・・どうしたらええんや。」
「な、なにを?」
「・・・どうしたらまた俺を抱いてくれるんや?」
今度は俺が驚いた。
「マリウスを抱いた俺がもうホントに嫌になったんやろ?」
俺は湛の答えを黙って待っていた。
湛が自棄になった様に言った。
「分かったんや・・・俺はもう康平無しじゃ駄目なんや。お前にこういう風にされたんや。そやから何でもするからよりを戻して」
屈辱と卑屈の色が目に宿っていた。
こんな湛を見たのは初めてだった。
「よりを戻す・・・?」
俺は余裕が出来てきた。
また、湛が戻ってきた。そうだろう。
俺は湛の喜ばし方を知っているのだ。
「俺が欲しかったら・・・いつでも抱いてやる。」
自分でも赤面するような台詞が口からするりと飛び出た。
湛は本当に情けなそうな顔をして俺を見た。
だが、俺は思い出していた。
抱いても抱いても常に相手を失うことにおののいていたことを。
俺はだから湛を諦めようと思ったのだ。
「いやだ。女ならいいけど、男は俺だけしか抱いちゃ。・・・そやから・・・なんでもする」
湛は唇を噛んだ。
違う。性衝動が全てに、優先される、それだけだ。
今激しく俺を求めてもそれが去ればまた離れようとする。
無惨にも、今衝動を抑えられなくなっている湛を、意のままにしようという圧制者の欲望が、むらむらと俺の中に湧き上がって来る。
いくら抱いても俺の愛を疑る湛に仕置きをしようとする陰湿な俺。
隠れサディスト?そうなのか?
「どうしたらええのか・・・お前がよく知ってるやろ。」
湛は目を瞬いて俺を見た。
そして濡れた服を脱いでいった。
俺を淫靡な目で、時々ちらと見ながら。
阿修羅が天から戻って俺にその肢体をさらけやうとしている。
湛は寝室に駆け込んで洋タンスをひっくり返していたが、あのプラスティックパンツを見つけて居間に戻った。
パンツを俺に恥ずかしさうに見せて、震える声で、
「・・・こ、これ良いい・・・?」
湛は自分からあの淫靡なパンツを履き、足を内股にして右の腰下でベルトを締めた。
大きな腰と発達した腿がやっぱり色っぽい。
半透明なゴムの下にまだ勃起していないペニスと陰毛が見える。
湛は俺の前に跪き、俺のブリーフからもう怒張しきった一物を掴みだし口に銜えた。
湛は口を動かしながら自分の乳首を摘み、嬲りだした。
なんともいえない、禁じられるべき妖艶さだった。
俺は湛の口に濃密なものを夥しく出した。
諦観していた俺はここしばらく自慰もしていなかった。
苔がむしたやうな自分の太い根が湛の喉に入っている。
あまりの射精感に、俺は声を出して湛の髪を掴み、喉の奥まで突っ込んでいた。
湛は息を詰めて全てを受けた。
だが、すぐにむせて、手で俺の糸を引く精液を受けたがまた舐めた。
息が整うと湛は膝を突いたまま、俺を下から見上げる。
犬のやうに俺の次の命令を待っているのだ。
俺の中のサデストが意地悪く言った。
「俺が他の誰かを抱いても、もう怒らへんな?」
湛は泣きそうな顔をした。
ゆっくり下を向いて頷いた。
(ああ・・そんなことはもうするつもりはないのに。何いってんだ俺は、)
俺の中の悪魔が出て来て湛に言った。
「覚えてるだろ。あのコンドームを持って来て俺に被せろ」
俺は携帯用のプラスティックの太いストラップを、自分の陰嚢の周りに巻いて睾丸を絞り上げた。
勃起をさらに長引かせるためだ。
湛に『ドライ・オーガニズム』を湛が気を失うまで味あわせてやるのだ。
湛が俺に、厚いスキンの突起があるゴム臭の強い甲冑を着せる。
湛の目は、獣のやうにさかりがついてギラギラとしている。
湛の腕を掴み立たせた。
湛は下を向いて激しく息をしている。
垂れた前髪の下の美しい長い睫が震えている。
もう興奮する自分にどうにもならないやうだ。
勃起して盛り上がったプラスティックパンツの尿道口の部分が、カウパー氏腺液が出て透明になっていく。
「後ろを向けよ」
これから俺の長い湛への責めの夜が始まる。
抱いても抱いても『一つ』に成れないのならば、永遠に俺は湛を抱き、喜びの声を上げさせ続けるしかない。
俺はもう湛を逃がさない。
俺と湛(しずか)は、この映画のウィンとファイ、どちらに該当するんだろう? 俺は自分がトニー・レオンのファイだと思っていたが、実は湛から見たらウィンの方なのかも知れない。
・・・湛は今、何をしてるんだろう。
………………………………………………………………………………
色んな経緯で親父にSMクラブで置き去りにされちゃって、こっちも調子に乗ってる部分もあったんだけど、いきなりキャミと網タイツ渡された時は『嘘だろう?これ着なきゃいけないの?』と思って憂鬱になった。
逃げられない状況で、女王様に「はい、これ着て」って、何なんだ。
ピンクのフリフリでスケスケのキャミ。それと網タイツ、股とお尻の部分が無いヤツ。
頼んだ訳でもないし、本当にいきなり。
躊躇してたら「着るの?着ないの?別に嫌なら着なくてもいいんだよ」って冷たく言われたから、こっちもなんだか意地になって「着るよ」って答えた。
明らかに、俺の眼の前にいる小柄なその子サイズだよ。
キャミ脇が編み上げになってて、それ緩めたんだけどきつかった。
ピンクのフリフリがいっぱいあってこれで他の客の前にでるなんて泣きたくなるほど恥しい。
キャミウエスト丈で網タイツが股間丸出し、お尻丸出しだし。
ヘタに着ているから、逆に丸出しの股間とお尻に神経集中してしまう。
後ろ手に縛られ、鏡連れて行かれて情けない格好をみせられ、彼女がその場で脱いだムラサキのパンティまで穿かされた。
それで気がついたらその子、縄の痕があるんだよ。
それとあそこの毛に蝋燭。
「あぁ、これ。さっきの客に。とれないんだよね」って笑ってた。
この子さっきまで別の客に、S客にこの衣装着て立ってたんだ。縛られて、あそこに蝋燭垂らされて。
その子、小柄で凄く可愛いんだよ。
屈辱感と嫉妬、逆に今の自分の姿と彼女の姿がダブって、妙な興奮状態だった。
俺の女の子扱い、受けたさ。
まるで男が女の子の体触るように触られ、女の子の様に声上げさせられた。
彼女が着けたペニバンに奉仕させられるし。
浣腸されて、アナルも犯された。
まあそこは、半分ステージショーみたいなもんだから形だけだったけどね。
彼女に自分の女扱い、いや、まるで客に買われたお店の女の子みたい。
ずっとその格好で弄ばれ続け、、大勢の客の前でだよ。
男客の視線にはこたえないんだけど、女の客にはね。女性の前でそんな格好するなんて考えてもみなかったし。
それが、突然目の前に女性モノの下着出され着なさいと強制されたんだよ。
自分で身に着けるのと、強制されるのでは全然違う。
本当に恥しかった。
でも「着るの?着ないの?別に嫌なら着なくてもいいんだよ」って冷たく言われた時は『着ないで済ませられない』ってなんだか思ってしまったんだ。
専門学校もサボり倒して、時々は女装して騙しで小金を稼いでそれで又遊んでという自滅的な自分への処罰ってゆーか、修行みたいな感じもあったし。
彼女の前でキャミ着るときは、本当に恥しくてブルブル震えていた。
網タイツは、穴空きだと気がついた瞬間、屈辱で頭がクラクラした。
パンティは手を後ろ手に縛られてたから、彼女に履かせてもらった。
これ自分で穿くより絶対恥しい。
彼女の体温が感じられたんだけど、あそこの部分は湿って冷たかった。
それは今でも凄く覚えてる。
フリフリのブラウスとか、あり得ない位短いスカートとか、下着もフリフリでリボン付いてるパンティとか逆にシンプルな白の綿パンとか、ホント恥ずかしい。
あとセーラー服も。
女王様姿の姫の前で、素っ裸にされて、「はい、次コレ着て」って指示されながらそれを着るところを見られる状況は、本当に屈辱以外の何ものでもない。
パンティ履くときは何故か内股になってしまうし、ブラジャー着けるときはさらに恥ずかしい。
なんでだろ、、指が震えてホック掛けられなくて、「ブラジャー着けてください、お願いします。」って言わされたときは顔から火が出るくらい恥ずかしかった。
逆合わせのブラウスのボタンをハメル時『自分は女の子にさせられてる。』って強烈に意識したし。
ブラウスは透けてるものが多くて、ブラジャーとか透け透けになって恥ずかしいし。
ワンピースも、極度に舞い上がってるから、自分でチャック開け閉めできず、全て姫にお願いしなくちゃいけなくなるしね。
一口に女装といっても個人個人の趣味があって、この時着せられたブラウスもワンピも全然好みじゃない。
「ファスナー上げてください。」までははまだ良かったんだけど、 声震わせながら「ワンピース脱がせてください。」ってまでお願いさせられるんだよ。
まあスカートまで履いてしまうと、不思議に落ち着いたけどね。
ウエスト高くキュッと締め付けられ、ブラジャーしてるせいもあって胸あって腰からお尻へのラインも女の子っぽくて。まあこれならって感じ。
ミニスカートの時は、もの落とされてそれを拾い上げるのを何度もやらされた。
「ほらほらパンティ見えちゃってるよ」って言われながら。
だけどこれはまあ定番といえば定番。
足閉じて上体反らして屈むから、意識しなくてもどうしても仕草が女の子っぽくなってしまって「あはは、女の子らしくなってきたじゃない」ってからかわれる。
勿論、元の素体の男子ラインはもうバレバレだけど。
………………………………………………………………………………
何度目かの夜中になった。
やっぱり湛は帰ってこない。心当たりに片っ端から電話したが無駄足だった。
勿論、スマホは全然反応なし。
俺はビールを煽りながら湛を又、待っていた。
心配だったが、あの時マリウスは帰した訳だし、湛とは話せば分かると信じていた。
真夜中を過ぎ俺は睡魔に襲われた。
明け方、俺は物音に目が醒めた。
まだ薄暗かった。
寝室を出ると、湛が居間の隅に置いてあったスポーツバッグに屈み込んでチャックを閉めている。
バッグのショルダー・ベルトを肩に掛けて振り向いて俺を見た。
知らぬ間に帰っていたのだ。
冷たい目だ。
立ちすくむ俺に、「俺・・・明日から親父のお供で出かける、人が足りないみたいなの、、当分会えないよ。」
「えっ?・・・ま、待ってくれ。ど、どこに行くんだ。いつまで?」
俺は必死だ。
「・・・西の方としか聞いてない、、帰るのは2週間後くらいかな」
2週間。俺にとっては悠久といっていい時間だ。
湛は俺の表情を見ていたが、ぷいと横を向くと俺の脇をすり抜けて戸口に向かった。
ジーパンの足にスニーカーをつっかけた。
俺は裸足で湛を遮って戸の前に立った。
「・・・ま、待てよ・・・」
湛は首を傾げて俺を上目で見る。
「な本当に、マリウスとは何も無いから。」
湛の顔に怒りの影がよぎった。
だが、俺は伝えたかった。
「あれから彼は帰ったんだ。」
「・・・可愛そうに。あんたに教えにもらいに来たんやろ。そやなのに帰したのか。」
言葉に詰まった。
言い訳をしようとすれば逆にこう言われる。
湛が怒ると、状況の全てが湛の攻撃材料になるのだ。
「・・・また戻って来てくれるんやろ?」
俺は聞きたいことをストレートに口に出した。
俺には駆け引きは出来ない。
湛は目を逸らして、
「さあね。考える」
「あんなに愛し合ったのに。俺が好きなんやろ。」
湛はかすかに笑って、
「俺たちは男同士だろ。いくらお前が好きだって言ってくれても、子供を産める分けじゃないし、今にお互いに邪魔になるよ。特に康平の方が。もうここらへんが限度じゃないか?俺にあんなマッチョ系の格好をさせたら、あれ以上はセックスで興奮出来へんやろ?」
(俺にあんな格好をさせたら、あれ以上はセックスで興奮出来へんやろ?)思ってもみなかった事だ。
そしてその通りだと思った。
湛は、性自認は女性じゃないけど、性嗜好は女性的な受けだ。
…それは最初から判っていて付き合い、俺はそれを利用もしたし甘えもしていた。
それなのにああいう形で裏切った。
思い切り後悔してる。
しかし俺はそういう思いを振り切るように言った。
「いいか。戻ってこい。」
湛はびくっとして俺を見たが、聞こえなかったやうに出て行った。
湛の頬に髪がかかった怒った妖艶な横顔を俺は見送った。
………………………………………………………………………………
親父が地方に出た際には馴染みにしてる場末のバーのママ、智草、と知りあった。
親父とどの程度の仲なのは判らない。
革のタイトスカートにデカい尻を押し込んで、胸の谷間をチラチラ見せながら客待ちをしてる。
紫の爪でつまんだ煙草を毒々しい口紅を塗り込んだ唇でふかし、水割りを傾ける。
付け睫毛の鋭い眼で見つめて、ひたすら淫らな口調と言葉で客を挑発するのが常だ。
ボックス席では黒パンストに白サンダルという絶妙の組み合わせでお客に絡み、胸を押し付けて色々な事をせがむ。
時には客のペニスに欲情するのか、低音ボイスで「せんずりコイてあげようか?」と根っからの淫乱を丸出しにする。
白のサテンスーツで磔にした男のペニスを責めまくる、智草を見たことがある。
客はそうとう禁欲的な生活を続けていたようでこれが限界という様の疼きにうずいたペニスをビキニ越しに真っ赤っ赤の唇でフェラされている。
焦らして焦らして口紅塗り直した後は強烈な直フェラ。
男客のゴッツゴツに限界まで勃起しきったペニスをジュブジュブねぶり回しながら寸止め地獄を味合わせている。
「この際、全部出してみてよ」と搾り切っても終わらずに連射させている。
若い男にはボディコン+太ベルトというわざと作ったオールドファッションの若つくりでハッスルする、智草。
口紅ベッタリのキスから始まり、若いペニスを味わい尽すお下劣という表現がぴったりなフェラをする。
前戯など必要のない智草のぬるぬるしたオマンコに若いペニスをハメ込んでデカい尻をピストンさせる。
腰を振らせればベテランの円熟技といっていい。
…………………………………………………………………………………
図書館に行った。
湛がいない2週間をどう過ごすか、湛が俺のところに戻ってくれるか、俺は不安になった。
暗澹たる気分だ。
勉強にも身が入らない。
……そして、本やノートをいっぱい両手に持ってマリウスが立っていた。
びっくりする俺を見て、「・・・教えてくれるんだろ?ここなら良いよね?」
そういわれれば、俺に断る理由がなかった。
ここは図書館だ、前とは違う。
マリウスは資料を4人掛けの小テーブルに置き、俺の前に座った。
俺は気まずかった。
だが、マリウスはあっけらかんと質問を投げかけて来た。
この間、起こったことは気にしてない様だ。
俺が答え、資料を示唆する。
マリウスがそれを読んで次の質問を考える間、俺は自分の作業をする。
予想とは違って、なにか自然に時間が流れて行く。
マリウスの存在が気にならなくなった。
マリウスの醸し出す雰囲気が、大らかなフレンドリーさで俺の気分を落ち着かせてくれるのだ。
ふとマリウスを眺めると、湛に劣らぬ美形であることが分かる。
母親譲りだという艶やかな黒い長髪は肩に流れ、気の強そうな細面の眉と高い鼻、端が笑う様に切れ上がった口。
形の良い手と指。
校内で見るマリウスはいつも数人の女の子に囲まれていた。
日が暮れる頃、俺たちは再びうち解けていた。
マリウスは別に俺に執着があるとか、そういうことでは無いようだ。
俺の下宿で湛と鉢合わせしたとき、俺のことを恋する乙女のように見ていたと思ったが、所在なさげなマリウスの表情を俺は勘違いしたのだろう。
一緒に図書館を出る時、俺の孤独感は一時癒されていた。
だが・・・また一人で下宿に戻れば・・・
「湛君はどうなった?」
マリウスは俺を見上げた。
俺の心臓が疼いた。
マリウスの流し目、濡れた唇。
コイツとは身体が合いそうだと判った。
やはり俺はこいつが湛より欲しかったのか?。
俺の賤しい下心が打算を始めた。
湛がもし、戻らなければ・・・マリウスはその穴埋めに十分すぎる・・・ああ、俺は本気でそう考えていた。
俺は笑いながら言った。
下卑た心を隠して。
「俺の下宿に来るかい?」
「今度は追い返されない?」
俺は破廉恥男に成り下がっていた。
「・・・ああ」
下宿に着くと、マリウスは湛と同じように流しを片づけ始めた。女ぽさは微塵もない。
自分にとって目障りなものを整理してるという感じだ。
湛が旅に出てから3日経っていて、料理を作れない俺は総菜屋から買ってきては飯だけ焚いて、使った食器は流しに放り込んでいたのだ。
3日の間、俺は不安で自慰をするでもなく酒を喰らって眠気を誘っていた。
マリウスの競馬馬の尻みたいな妖艶な後ろ姿に、溜まった性欲がじりじりと俺の下腹部を焦がしていた。
俺はマリウスの後ろに身を寄せるとがっしりしているが丸い肩を抱いた。
マリウスの体がびくっとする。
俺はマリウスのうなじに髪の上から口を付ける。
マリウスの息がせわしくなりじっと耐えているやうだ。
マリウスをくるりと回して、後ろの髪を掴み上を向かせる。
俺の顔が接近する。
「・・・こうなるのを期待して来たんだろ?」
マリウスは浅く息をつき答えない。
恐れているわけじゃないだろう。
俺はマリウスの口に俺の口を合わせた。
俺の打算はこう叫んでいる。
もう湛は戻らないんだ。湛は俺に飽きたんだ。湛は俺を狂わせて、飽きたら他の男を捜すやうな『淫売』だ。マリウスをものにしろ。湛に見せつけてやれ。せせら嗤ってやれ。どうせ終わりなのだ。せめて二人の別れには"お前よりマリウスの方がいい"、と湛に見せつけてやれ。
俺はマリウスを俺の虜にすべく計画を立てた。
マリウスだって何人もの男と寝ている筈だ。
今は慣れない異国で安易に手に入る恋人を誘っただけだと考えているのだろう。
まず、マリウスの性感帯を探した。
裸にしてベッドに連れて行って口から、首、乳首を嬲る。
やはり乳首は敏感だった。
「男に嵌められた自分の姿でオナニーするのか?」
マリウスは少し恥ずかしさうに頷いた。
マリウスは女と寝たことがあるという。
だが、その容姿を保ち、俺なぞが見てもそそられるということは、どこかで中性的な魅力を持っていることを自ら受け入れているということだ。
その証拠に俺とこうして受け身で肌を合わせている。
マリウスの臍、下腹に口を沿わせる。
マリウスの息が荒くなり大きなペニスがさらに勃起する。
ペニスの裏を舌でなぞる。
毛が全くない腿が締まる。
血の通ったギリシャ彫刻を抱いてるようだ。
湛とは抱き心地がまったく違う。
汗と微かな尿臭と淫靡な下着の中の匂い。
尿道口を開いてに粘膜に舌をなぞらす。
マリウスがオゥと声を上げて仰け反る。
俺は湛の体から学んだ受け身の体の秘密を全てマリウスに試そうとしていた。
腿を揃えさせて持ち上げ、マリウスの肛門を臀部の肉を広げながら舐める。
マリウスの口から泣き声が漏れる。
きれいに洗ってあるのか糞臭はない。
俺はマリウスを四つん這いにして、ジェルをマリウスの肛門と俺のものに塗って、後ろから慎重に挿入していった。
痛みを出来るだけ与えないようにゆっくりと。
マリウスは息を殺して耐えている。
当然だがハーフだからってケツの穴が違うってわけじゃない。
そして根本まで入ったらマリウスの背中から体全体を密着させ、優しく体を起こしてやる。
髪の匂いを嗅ぎ、うなじを吸い、顔をこちらに向けさせ目、鼻、口にキスをする。
最後に深く口を吸い舌を吸う。
マリウスはうっとりと顔を上気させている。
すでに男同士のセックスの快楽を堪能し始めているのだ。
「期待通り・・・?」
マリウスは気怠そうにこっくり頷く。
俺はゆっくりと腰を動かして行く。
・・・・・
マリウスは俺の胸に頭を付けて寝息を立てている。完全に俺のものにしてしまった。
「・・・俺、又、国に帰るんだ。」
「えっ?・・・嘘だろ?」
「親父の転勤だけならこっちに残るけど、母親が病弱なんだよ。身近で面倒見る人間がいるんだ。」
俺は絶句した。
俺はまた失うのか。
「だから、その前に好きな人に告白したかったんだ。ここでの最後の思い出に・・・」
俺は力無くフォークを皿に戻した。
まさか、俺の事は"本気"だったんだ。
「湛君には悪いことをしたと思うけど、こうなった事は二人だけのひみつにしよう。僕がいなくなれば、全て元に、戻る、だろ?」
俺は呆けたように頷くしかなかった。
湛が旅に出てから2週間経った。
俺は湛がこちらに帰って来たのかさえも、分からなかった。
何度も電話したが、湛は自分が掛けるとき以外は電話には一切でない様だった。
でも着任履歴は残っているはずだ。
それでも湛は返事をくれない。
あの日のマリウスのことが、よほど頭に来ているのか?
その上、俺はまたマリウスと身体を重ねている。
これ以上、湛を掴まえておける自信はもうなかった。
俺は彼らを使ってさんざん薄汚れた自分の性欲を満たして来た。
もう良いのかも知れない。
人との付き合いが、性欲を満たすというだけの事なら、俺は幸運だったのだろう。
………………………………………………………………………………………
バイトが終わってから夏の通り雨にびしょ濡れになって下宿に帰り、俺は鼻歌を歌いながらシャワーに入った。
シャワーから出て、さらに自分を酔わそうとビールを冷蔵庫から出し缶を開けた。
振り返ると薄明かりの居間に誰か居る。
湛だった。
稲光が走った。
湛は塑像の様に突っ立ち、怒りを眉に俺を睨んでいる。
「ど・・・どうしたんや。」
湛は濡れた上着を脱いで、黒い半袖シャツにいつものぴったりしたジーパン姿だ。
前髪が濡れ、頬に張り付いている。
走って来たのだろうか、後ろ毛が逆立っている。
湛が雷の音とともに叫んだ。
「やっぱりマリウスを抱いたんやな。」
俺は湛ともう争いたくなかった。
もう湛を追うのは止めたのだ。
「もう関係ないやろ・・・」
俺は卑屈に笑うと、静かに言った。
「ここにいるといつかみたいにまた乱暴するかも知れへんで。俺は・・・筋金入りの変態のホモやからな。性依存症なんだよ。…帰れよ。」
湛はびっくりしたように目を見開いて俺を見た。
しばらく黙っていたが、
「・・・どうしたらええんや。」
「な、なにを?」
「・・・どうしたらまた俺を抱いてくれるんや?」
今度は俺が驚いた。
「マリウスを抱いた俺がもうホントに嫌になったんやろ?」
俺は湛の答えを黙って待っていた。
湛が自棄になった様に言った。
「分かったんや・・・俺はもう康平無しじゃ駄目なんや。お前にこういう風にされたんや。そやから何でもするからよりを戻して」
屈辱と卑屈の色が目に宿っていた。
こんな湛を見たのは初めてだった。
「よりを戻す・・・?」
俺は余裕が出来てきた。
また、湛が戻ってきた。そうだろう。
俺は湛の喜ばし方を知っているのだ。
「俺が欲しかったら・・・いつでも抱いてやる。」
自分でも赤面するような台詞が口からするりと飛び出た。
湛は本当に情けなそうな顔をして俺を見た。
だが、俺は思い出していた。
抱いても抱いても常に相手を失うことにおののいていたことを。
俺はだから湛を諦めようと思ったのだ。
「いやだ。女ならいいけど、男は俺だけしか抱いちゃ。・・・そやから・・・なんでもする」
湛は唇を噛んだ。
違う。性衝動が全てに、優先される、それだけだ。
今激しく俺を求めてもそれが去ればまた離れようとする。
無惨にも、今衝動を抑えられなくなっている湛を、意のままにしようという圧制者の欲望が、むらむらと俺の中に湧き上がって来る。
いくら抱いても俺の愛を疑る湛に仕置きをしようとする陰湿な俺。
隠れサディスト?そうなのか?
「どうしたらええのか・・・お前がよく知ってるやろ。」
湛は目を瞬いて俺を見た。
そして濡れた服を脱いでいった。
俺を淫靡な目で、時々ちらと見ながら。
阿修羅が天から戻って俺にその肢体をさらけやうとしている。
湛は寝室に駆け込んで洋タンスをひっくり返していたが、あのプラスティックパンツを見つけて居間に戻った。
パンツを俺に恥ずかしさうに見せて、震える声で、
「・・・こ、これ良いい・・・?」
湛は自分からあの淫靡なパンツを履き、足を内股にして右の腰下でベルトを締めた。
大きな腰と発達した腿がやっぱり色っぽい。
半透明なゴムの下にまだ勃起していないペニスと陰毛が見える。
湛は俺の前に跪き、俺のブリーフからもう怒張しきった一物を掴みだし口に銜えた。
湛は口を動かしながら自分の乳首を摘み、嬲りだした。
なんともいえない、禁じられるべき妖艶さだった。
俺は湛の口に濃密なものを夥しく出した。
諦観していた俺はここしばらく自慰もしていなかった。
苔がむしたやうな自分の太い根が湛の喉に入っている。
あまりの射精感に、俺は声を出して湛の髪を掴み、喉の奥まで突っ込んでいた。
湛は息を詰めて全てを受けた。
だが、すぐにむせて、手で俺の糸を引く精液を受けたがまた舐めた。
息が整うと湛は膝を突いたまま、俺を下から見上げる。
犬のやうに俺の次の命令を待っているのだ。
俺の中のサデストが意地悪く言った。
「俺が他の誰かを抱いても、もう怒らへんな?」
湛は泣きそうな顔をした。
ゆっくり下を向いて頷いた。
(ああ・・そんなことはもうするつもりはないのに。何いってんだ俺は、)
俺の中の悪魔が出て来て湛に言った。
「覚えてるだろ。あのコンドームを持って来て俺に被せろ」
俺は携帯用のプラスティックの太いストラップを、自分の陰嚢の周りに巻いて睾丸を絞り上げた。
勃起をさらに長引かせるためだ。
湛に『ドライ・オーガニズム』を湛が気を失うまで味あわせてやるのだ。
湛が俺に、厚いスキンの突起があるゴム臭の強い甲冑を着せる。
湛の目は、獣のやうにさかりがついてギラギラとしている。
湛の腕を掴み立たせた。
湛は下を向いて激しく息をしている。
垂れた前髪の下の美しい長い睫が震えている。
もう興奮する自分にどうにもならないやうだ。
勃起して盛り上がったプラスティックパンツの尿道口の部分が、カウパー氏腺液が出て透明になっていく。
「後ろを向けよ」
これから俺の長い湛への責めの夜が始まる。
抱いても抱いても『一つ』に成れないのならば、永遠に俺は湛を抱き、喜びの声を上げさせ続けるしかない。
俺はもう湛を逃がさない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる