「ネオ・ヰタ・セクスアリス放浪記 (空蝉編)」

二市アキラ(フタツシ アキラ)

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第1章

空蝉編 1-3「ケルベロスの首輪」 3: 暗い淵の前で

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……あのラブホの夜、館岡のペニスが完全挿入されたわけではなかった。

 ローションを塗りこめられた尻穴に硬い亀頭がめりこんでくる感触は、いかにも「犯されている」という倒錯感が伴っていた。
 だが館岡の亀頭部が細孔に埋没したところで、そこから何故か激痛が走り、湛は「痛いっ……」と叫び続けたのだった。
 あれだけの巨根を目にして最初からびびっていた湛が館岡を受け入れられるわけがなかったのだ。
 泣いて痛みを訴えるものだから、館岡は途中で挿入を断念していた。

……それにしても、二人の間にあったあの濃密な空気は何だったのだろう、と湛は思う。
 フェラチオを開始してから帰り際まで、湛はほとんど館岡と会話らしい会話はしていない。
 館岡は湛の若い肉体を味わうのを望んでいたし、湛は館岡に肛姦されるつもりでいた。

 その淫らに歪んだ行為を、館岡は圧倒的な存在感でリードし、湛は羞恥に苛まれながらそれに従った。
 身も心もすべて隷従する被支配感……この人の命令なら何でも従うつもり、この人に悦んでもらえるなら何でもするつもり……、やくざの女が陥るようなそんな幸福感に包まれていたのを否定できないのに…何故かそれが止まった。
 結局、館岡は深奥までのインサートを諦め、湛は解放された。
    館岡が射精した気配はないし、湛は肛交の痛みに耐えていたのでエレクトするどころではなかった。
 しかし、あの一夜を経て、湛の世界は完全に変貌してしまったのだ。

 それが証拠に、館岡のペニスが完全に挿入できないとわかり、すまない気持ちになってしまったではないか。それは他の男には感じない感情だった。

 しかし、本当にただソレだけなのだろうか……?
 館岡という男にそそのかされて、あらぬ方向に足を踏み出してしまったのか……?
     やがては館岡という男が恋しくて、今まで嫌で余りしたこともないアナリングスさえ夢中にやってしまう関係に陥いる可能性を湛は考えていた。

     肛門への愛撫は、女性にとっても、男性にとっても、特別なものだ。
    例えば、おまんこならいいが「肛門は絶対にイヤ!」 という女性は多い。
     その最大の理由は、アナルが 「汚いところ」 であり、さらにそれ以上に 「恥ずかしい」 ところだからだ。

     冷静に考えれば確かにその通りだ。
   しかしそんなところまで、舐めてあげる、舐めてもらえる、というのが強い興奮を呼び起こすのがアナリングスだ。
     つまり、おしりの穴を舐められて、女性が痺れるような快感を覚えるのは、その特別な快感だけでなく、なにかイケないことをしているという背徳感か大きい。

 男女の深い間柄の男でも、 「ケツの穴はちょっと...」 というのも多いだろう。男女とも、クンニと肛門愛撫との間には、越え難い一線があるのだ。

    もっとも、クンニ好きの男にしてみれば、膣の穴もお尻の穴も、直ぐ近くにあるし似たようなものではある。
    ちょっと舌先を下げれば、たどり着くところだ。
   もちろん、衛生学的には、肛門の方はたとえ清潔にしてあっても、雑菌が多く本来、舐めるべきところではない。
     だだ  、舐める側の男からみれば、洗ってないおまんこや愛液を垂らしている膣口も、感覚的な 「汚さ」でいえば大差はない。

 但し、衛生学的にはあまり清潔な場所ではないので、する方もそれなりの覚悟が必要だ。 
    それだけに、される方の女性には、衝撃的な体験となる。
    湛の今までの経験でも、アナリングスしたために体調を崩したということはないけれど、あまり匂うよう状況は雑菌が繁殖している証拠なので、綺麗に洗ってからと決めていた。

 もう一つ決めたのはフェラの時とは違って、体液を飲み込まないようにすること。
    具体的には、常に唾液をたっぷりと垂らしながら、雑菌を唾液で口外に流してしまうという方法だった。

     実際にどれほどの効果があるのかは分からないけど、飲み込むよりは遙かにいいだろうと湛は思っていた。
    される側の男にしても、フェラの場合は液を啜り飲まれると嬉しいけど、アナリングスの場合は、舐めてくれるだけで十分なようだった。
     つまりアナリングスは禁断領域なのだ。
     それでも湛はそのアナリングスを使って舘岡に奉仕したいと感じ始めていて、同時にそんな自分が怖くなり始めていた。

 しばらくの間、湛の心は乱れるばかりだった。





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