魔術師長様はご機嫌ななめ

鷹月 檻

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第一章

21王都にお出かけ

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 今日は王都にお出かけの日だ。
というか、この公爵邸自体が貴族街にあって王都内にあるらしい。
王都の名前はオーツ。

 これから行くのは中流貴族が多く館を構えてるところで、そこに商会が並んでるとのこと。繁華街みたいな所なのかな?
平民がいる下町は危険だから連れて行けないと言われてしまった。

 レイジェス様に抱っこされて馬車を待ってたらすぐ来た。黒に金縁の線や公爵家の紋章が彫刻されてる。2頭立ての白い馬の格好いい馬車だった。足を乗せる所が高い位置にあるのでレイジェス様が抱っこして乗っけてくれた。窓に寄り付いて外の景色を見てると城らしき物が見えた。石造りの立派な塀が見える。

「あれがレイジェス様がお勤めしているお城ですか?」
「うむ」

 お城は道の角を曲がってすぐにあった。外にあまり出ないし、公爵家の門の鉄柱沿いに背丈の高い木が生えてるから分からなかった。
外の景色を見てると大きなお屋敷ばっかりだった。
もう少し馬が進むと段々館の規模が小さくなっていった。次第に館の他に店らしいものが見える。馬車が止まった。

「着いたぞ」

 レイジェス様が先に出て、私はまた抱っこされて降ろされた。周りを見るとなんだか海外旅行に来たような感覚に陥る。
気分はヨーロッパ。初めて見る景色に心臓がどきどきしている。

 ちなみに今日の私はバッスルスタイルのクリーム色に水色の線の入ったドレスを着ている。一応綿素材で出来た、ボーンの入ってないコルセットもしてる。帽子もドレスに合わせて小さめのだ。レイジェス様はいつものローブじゃなくて紳士服。黒のズボンとジャケットはお尻より下の長さで、ベストはクリーム色。コートはインバネスコート。普段ローブばっかり着てるのを見てるから凄く新鮮だ。
美男子は何着ても似合うわ、眼福!

 私達が来たのはエドモンド商会。私はレイジェス様に抱えられ店に入った。
いつもデザインの希望を聞いてくれる会頭のアンヌが来た。

「公爵様!? お久しぶりでございます」
「ああ、久しぶり。今日は買い物に出掛けたいと、これが言うので連れてきた」
「何かあるか?」

 とレイジェス様が言うけど、私はレイジェス様の耳元に囁いた。

「わたくし大丈夫です。ドレスなら沢山ありますから」

 言ったけど聞いてくれない。

「では二階にいかがですか?」

 と二階へ案内される。二階は上流階級のみ入れるらしい。

「サイズが変わってないか採寸いたしますね」

と言われて店員さんがわらわらくる。全員女性なので安心できる。
その様子を長椅子に座ってるレイジェス様が見てる。
採寸が終わるとレイジェス様の所に行く。そこにアンヌも来てドレスの色や形などを決めていく。なんだか今日はレイジェス様が決めてる。

「このお色はどうですか?」
「ふむ……」
とか言っちゃってる。

 暇なのでだれてきた。隣のレイジェス様にこてんと体を預ける。
見下ろされて目があった。おでこにちゅっとされた。
それを見てたアンヌが目をぱちぱちさせてた。

 ほんとにね、二人の時だけにした方がいいと思うのこういうことは。
絶対やばい人だって思われてるよ。
とか思ってたら懐から布袋だして

「これで装飾下着を追加で作ってくれ」って。

 袋の中にはダイヤが入ってた。作れるだけ枚数作ってって。
ダイヤの下着って貞操帯じゃないですか……。
他に何か欲しいか聞かれたので【耳あて】と言ったらわからなかった。

「アリア様、いつものように絵を描いてくださいますか?」

とアンヌに言われて頷く。
レイジェス様はそれを興味深そうに見る。
紙を持ってきてもらったのでそこにペンで描く。

「この前の、白いコートがほわほわして気に入ってるのです。それの生地と同じなら嬉しいです。耳の部分に丸く重なるようにして綿が入ってて、上にうさぎの耳を付けて欲しいのです」
「まぁ! これはとても可愛らしいですわね」

 と言われる。どれどれとレイジェス様が覗き込む。
私が描いたのはうさ耳のついた耳あてだ。

「うさぎと間違われて銃で撃たれそうだな」
「怖いこと言わないでくださいませ!」




 エドモンド商会を出て、ちょっと歩こうという事になった。馬車はもう広い道のほうに移動させていてそこで待ってるそうな。ちょっと歩いていると屋台があった。
なぜか【たい焼き屋】だった。
たい焼き!? なんでこんな所で?

「あれが食べたいです! レイジェス様! 」

 買って貰ってぺろっと食べた。

「あんこが一杯入ってて美味しかったです!」

 と言うと屋台のおじさんがお嬢ちゃん、ありがとうね。と言って、そのおじさんと少しお話した。どうやらギレス帝国から出稼ぎで働きに来ているらしい。たい焼きはこちらであまり見ないお菓子なので敬遠されがちで中々売れないという。

「こんなに美味しいのに! わたくしが全部買い取りたいくらいです!」
「君がこんなに食べるのは珍しい」

 とレイジェス様が驚く。

「おなかがぱんぱんです……。触って」

 レイジェス様は私のお腹に触れて「本当にぱんぱんだ」と笑った。
しょぼん。

「次はどこですか?」
「宝石店に行こう」

 と手を引かれて連れて行かれた。道を歩いていると他にもお店があった。
営業していない空き店舗もちらほら見える。
その道の通りには紳士服のお店、木工工房、レストラン、本屋、食器店が角にありそこを曲がって歩いてすぐの所だった。

 ここでも2階に連れて行かれる。私は眠くなって欠伸をしていた。
レイジェス様がお店の人と話している。
私はこくりこくりと頭が動いてレイジェス様にこてんとすると抱っこされた。
そしていつの間にか寝ていた。
レイジェス様は私が寝ていても宝石商のトリスターノと話をしていた。

「石を乗せない状態で台座付きの指輪を2つ作って欲しい」
「誰の物でしょう。指のサイズがありますので……」
「私と、今寝ているこの子のだ」

 トリスターノは目をぱちぱちさせた。

「こちらのお子様のですか? お子様ですと、育ちますから普通の指輪だとすぐサイズアウトしてしまいます。お値段は張りますが、成長に合わせてサイズが大きくなる魔方陣入りのタイプにしますか?」
「そうだな。それにしてくれ」
「では今サイズを測りましょう」

 トリスターノは寝ている私の左の薬指のサイズを測った。
ついでに右の薬指も。

「サイズを記入させて頂きました。材質は何に致しましょう? お二人の肌色から考えると金よりプラチナの方がいいかも知れません」
「うむ。ではプラチナで」
「贈られるなら、裏に愛のお言葉を刻めますが…」

 トリスターノは上目遣いで紅茶を飲みながらレイジェス様を見る。

「愛の言葉か……では、【私の愛を永遠に君へ】と刻んでくれ」

 トリスターノが飲んでる紅茶を噴いた。
どうやら本気で愛の言葉を刻ませると思わなかったらしい。

「ん? 文字数で無理か?」
「いえ、入ります」
「では、よろしくな、トリスターノ」
「お任せください。アルフォード公爵様」

 レイジェス様は私の頭を撫でてから立ち上がって抱きかかえ直した。
馬車にのって揺られている感覚があった。

 気が付くとお屋敷で、レイジェス様に起こされて疲労回復のお薬を飲まされた。
食事はお腹がぱんぱん過ぎて入らなかった。
お風呂は眠いから無理というとレイジェス様がアクアウォッシュをしてくれた。
今日はなぜか疲れて眠い日だった。せっかく街に出るのを楽しみにしていたのに。

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