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第二章
2新たなる庇護者(候補) ユリウス視点
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私は神聖大国ワイアット皇国のツアーリ。
ユリウス=ワイアット=シルヴェストル、23歳独身。
ツアーリというのは万世一系のこの皇国の皇王の呼び名だ。
今日はプリストン王国の戴冠式に貴賓客として招待された。
なんでもプリストン王国に神の子が現れ、前王はその神の子を公の場で襲いスティグマの烙印を得て退位したという。法螺話にしては恐ろしい。
今回の戴冠式でその神の子の神籍が認可され婚約発表があると聞き、招待を受けこちらにやってきた。私の国、ワイアット皇国は神聖大国と言われるだけあって創造神アズライル様を信奉する信心深い国だ。私も仕事として毎日神に祈りを捧げている。それもあってアズライル神様の神の子と言われているその者を一目見てみたかった。
「ワイアット皇国ツアーリ、ユリウス=ワイアット=シルヴェストル様の御成り!」
私と側近一行は大広間の真ん中の絨毯をはさんで二手に分かれている右前方に案内された。正直、プリストン王国とワイアット皇国の縁は薄い。
今回王になるガブリエル王の父君が私の父と仲がよく交流があったというのは聞いていたが、ガブリエル王の父が亡くなり、王族の地位を追われて愚王である前王に変ってからは付き合いがない。
そして、私の父も病で亡くなって私が即位して今現在に至るが国をまとめるのに忙しく、他国との交流は自国を安定させてからだと思っていた。
プリストン国は利益が小さく後回しにされた。
どこに神の子はいるのか? と周りを見回すがそれらしき人物は見られない。噂ではとても美しい女であるという。
私が来城している貴族達を見回しているとガブリエル王がダンスをすることになった。神籍となった神の子が王と踊る! その姿を見れる! と私はわくわくした。
だが、王子が手を取ったのは雲に乗ってすーっと現れた幼女だった。
確かに可愛いかもしれないし、綺麗だ。しかし子供だ。
大人になれば誰もが振り返る位の美しさにはなるだろうが、私はがっくりした。
想像していたのは目の醒めるような美女で、そんな人だったら結婚を申し込もうを思っていた。神籍持ちは何人とでも結婚できる。
だがしかし、幼女に結婚を申し込む気にはならない。
私は正常な大人だ。当たり前だが大人の女性に魅力を感じる。
今回神の子の婚約者として紹介されたアルフォード公爵は24歳。私より1つ年上だ。
何故あのような幼女と婚約しようと決めたのか?
まぁ、彼女と婚約するだけでも色々メリットがありそうだが…。
王と彼女とのダンスは楽しそうであったがすぐ終わった。王が踊り終われば皆が踊る。彼女は次に自分の婚約者に話しかけ、最初は何やら機嫌が悪かったアルフォード公爵が踊る事になった。私は二人を見て驚いた。アルフォード公爵は何かのメリットがあって彼女と婚約したと思っていたのだが、どうやら違ったようだ。
彼女を見る目は慈愛に満ち、それは彼女も一緒だった。二人が踊り、彼女が楽しむと雲を蹴って空を飛んだ。私は凄く驚いた。
飛んだ後ふわふわと公爵の下に戻っていくのに何故か光っている。
きらきらと金粉でも散りばめたように。くるっと廻ってふわっとドレスのスカートが広がり揺れる。腕に付いた薄布は空を舞うたびふわふわとたなびいてまるで天女のようだった。
私は自分が呆然としていたことにはっとした。
その光景は美しかった。そのあと、彼女はアルフォード公爵と3回踊り、規定の4回に達してしまったのでつまらなくなったようだ。自分の執事らしき者に何か話しいなくなった。
私はもうこの時には彼女と踊りたいと思っていた。何やら執事らしき者と側仕えらしき者の話し声が聞こえる。
「セバスさん、姫様はどちらですか?」
「ああ、リリー、あちらのバルコニーの向こうの角にお花を摘みに行かれました」
「じゃあすぐ戻ってきますね」
「どうしたんです?」
「姫様にわたくしの婚約者となる方を紹介したかったのです」
「ああ、そういうことですか。暫く待てば来るでしょう」
「では待ちますね」
バルコニーの向こうと言われて辺りを見る。すぐ近くだった。もしかして、このバルコニーを降りてきたら彼女は立て続けに踊りに誘われるのではないだろうか?自分だって踊りたいと思ったのだから他の人達もそう考えてもおかしくはないだろう。
私は他の誰よりも早く彼女に踊りを申し込もうと思いバルコニーへ続く階段を上った。すると、女が言い争っている声がした。それは大人の女の声と子供の声だった。
「……何故もっと御自分を大切にされなかったのですか? 女の大事なものは1つしかないのです。その1つは失われれば戻ってきません。簡単に削って皆さんに配れるものではないのですよ!?」
相手は神の子と呼ばれる彼女とアルフォード公爵に因縁のある女のようだった。
ここでまた私は驚いた。女にひとつしかない大事な物を粗末に扱うなと小さな子供である彼女が大の大人である目の前の女に啖呵を切っているのだ。
「あなたみたいな子供に…何が分かるのっ!!」
「子供子供って、馬鹿にしないで!! 好きで……子供なわけじゃ、ないんだからっ……!」
しかも、自分が人を好きになって子供であることにジレンマを感じている。
女は怒りで我を失っていた。私が止めに入ろうとした瞬間、彼女はベランダから落とされた。
階下がざわざわとざわめいた。
私はすぐさま女を捕らえた。
「衛兵を呼べ!! 犯人は捕らえた!!」
衛兵が来たので犯人の女を引き渡した。そのあとバルコニーから階下を見ると、小さな彼女の体から大量の血が流れていたのが見えた。私は血の気がうせた。
彼女がこの世からいなくなってしまうことに。恐怖を感じた。
もっと話をしてみたかった。守りたかった。何故もっと早く彼女を保護しなかったのか? 自分の行動に後悔し怒る。その時だった。私の中でピキーンと音が響いた。
ん? この音は……。
自分のステータスに新しく出た一文を見て驚く。
【神の愛し子の庇護者候補】
なんだこれは? けれど、候補ではあるが庇護者の文字にフッと笑みが零れた。
私はアルフォード公爵邸の外門、鉄柱の近くに幾つかのプレイスマークを付けてゲートの魔法を使えるようにした。
そして夜な夜な公爵邸の門の外から邸の明かりを見つめていた。
日中は祈りや仕事などやる事が多いので、こうして彼女の様子を見ることはできない。
【つての者】という諜報の者をプリストン王国に何人も忍ばせているが、その1人がやってきた。
黒い上下を着込んだ男で足音も無くやってきていつのまにか跪いている。
「命は助かったようですが、アリア様はまだ目覚めていない御様子です」
「ふむ。彼女がどういう人なのかはわかったのか?」
「優しく可愛らしいことは皆知っておりました」
「引き続き調べておくように。私はワイアットに戻る」
「はっ」
私はゲートを開き、城へ戻った。
彼女はもう四日も目覚めてなかった。心配だった。近くにいれば私が看病したのに。
けれど、私は彼女に自分の存在さえ知ってもらっていない。
こうして夜中に公爵邸の門の外から屋敷の明かりを見ることしかできない。
私は胸が苦しくなった。
今夜は【つての者】達の集う館にゲートを開いた。
多くの【つての者】から話が聞きたかったからだ。
館の小広間に二手に分かれて皆跪いている。真ん中の道を通り私は椅子に座る。
それぞれが報告しはじめた。
「姫様は食が細くほぼトウミしか食べられない様ですが、米が好きらしいです。リッツ伯爵の晩餐会で米をおかわりしたのが下界にきてからはじめてのおかわりだそうです」
「米とはなんだ?」
「天界の食べ物で小さな白い粒の物です。リッツ伯爵はギレス帝国の貴族と交友があり、そちらから種や育成の技術協力を得ているようです。ギレス帝国は勇者降臨の地、米は勇者様が天界から持ってきたと言われていますから」
「ふむ」
「なんでも、姫様は米を食べれたことに感激し、アルフォード公爵を抱きしめ【大好き!】とおっしゃったそうです」
「何!? たかが食べ物でか?」
「姫様はよほど米がお好きなようです。米を持ってきた者は評価すると言っていたと使用人が聞いていたと言う話もあります」
「ふむ……」
「ちなみに、アルフォード公爵は姫様のためにトウミ園を手に入れたようです」
「彼女のためにか?」
「はい。トウミは摘みたてが美味いですから」
この話を聞くだけでアルフォード公爵が8歳の子供に入れ上げているのがわかってしまった。彼は幼女趣味なのか?いや、まさかな。
歳経れば美しくなると今から情を注いでいるだけだろう。
「次の者、何かあるか?」
「はい、ピレーネについてお話したいと思います」
「楽器だな?」
「はい。姫様はピレーネが大変お上手で、まぁ、歌もらしいのですが、姫様がピレーネを弾くと花が降るらしいです」
「花?」
「はい、以前開かれたピレーネの夕べに出た者が言っておりました。曲も美しく大変感動し涙がでたと言っておりました」
「ああ、そういえば神話であったな音楽の神マティオン様が祝福の花を降らせると」
「それです、そしてアルフォード公爵邸にマティオン様が降臨されたとのことです」
「何っ!?」
「その情報は統制されているようであまりわからなかったのですが、その日からアルフォード公爵はゲートの魔法で屋敷に帰るようになったとのことです」
それは無属性空間魔法を女神に貰ったということか? と私は考えた。
「次の者」
「先程でたリッツ伯爵の晩餐会にてアルフォード公爵が公の場にて姫様に口付けをし、その場にいた貴族が愛妾と勘違いし、俺にもやらせろと揉め、アルフォード公爵はすぐさま姫様を屋敷に連れ帰ったそうです」
「公の場で幼女と口付け?」
「はい」
8歳の幼女と口付け? 頬に軽くではなく?
次の者は前に屋敷で働いていた者を連れてきていて話ができると言う。
その者を通すことを許可した。私が皇国の者だということは伏せてあり、私は彼女に興味を持つ他国の貴族ということになっている。
「ゼフィエルと申します。以前屋敷で働いておりました」
「ふむ、して、何故やめた?」
「左遷させられました……お館様のいない城など、勤める価値もありません。
…お館様はあの幼女が来てからおかしくなってしまったのです! 始終あの幼女のことばかりで、私は長い間あの方に仕えてきたのに……」
「おかしいとはどのようにおかしいのだ?」
ゼフィエルは言うのを迷っているようだった。が心を決めて言う事にしたようだ。
「姫様がその日屋敷に来たときから寝台を共にし離れようとしなくなりました」
私は目を見開いた。けれど、彼女はまだ子供だ、寂しくて親代わりにアルフォード公爵と寝台に入っていたのかもしれない。
「あの幼女は魔性です。屋敷に来た何人もの男があの幼女を穢そうと襲っているのです」
「何だと!?」
私はその話を聞いて信じられなかった。どう見ても天女か天使にしか見えない。
魔性? 彼女が?
「して、姫は穢されたのか?」
「穢されてはいませんが……お館様が私達使用人の前でも平気で口付けしていますし、風呂も一緒に入っておりましたから。もうお手が付いているやも知れません」
「何ぃ!?」
私は思わず座っていた椅子から立ち上がった。あんな小さな子に口付けだけではなく、風呂まで? 大人のあれを見せたのか!?
やはりアルフォード公爵は幼女趣味だったのか……。
しかし、それでは彼女が危険ではないか。
もう手が付いたかもとこの男は言っているが、まだ手が付いていない可能性もあるわけだ。彼女を守らなくては……私に妙な焦燥感が生まれた。
「私はあんな風にお館様を変えたあの幼女が憎いのです。あれは神の子なんかではない。魔性です。悪魔ロレーヌです。でなければあんなに沢山の男達が彼女を襲うでしょうか? 誘っているのです。あの魔性は」
「なぜ、そんなに姫を憎む?」
「私はお館様を愛しておりましたから」
この男の言うことは信用できないと思った。嫉妬してるのだ彼女に。
しかも、仕事を辞めたのであればアルフォード公爵とも接点が無くなりもっと彼女を憎むのではないか?
私はバルコニーで彼女が首を絞められて突き落とされた時の事を鮮明に思い出した。
彼女と踊ろうと楽しみにしていたのが一瞬にして彼女の死への恐怖と変る。
この男は危険だ。彼女に関わらないように消すしかない。
私は【つての者】に視線で合図した。
それから3日ほどして彼女は目覚めたらしい。相変わらず食事はトウミしか食べていないと聞いている。我が国で米を作れないものか……。
アルフォード公爵も領地で米を作りたいらしく、リッツ伯爵に技術提供を申し込んでいるとか。同じような事を考えるものだ。私はまた公爵邸の門の外をうろうろと屋敷の明かりを見ていた。
本当に目が覚めて良かった。私の胸が温かくなった。
あの屋敷のどこが彼女の部屋なのかは分からない。
けれどこの明かりの下に彼女がいると思えることが私に笑みを零れさせる。
私はゲートを開いてワイアットに帰った。
私はまた【つての者】の館に来ていた。例の報告を受ける。
「本日アルフォード公爵邸に侵入者が押し入り姫様が襲われました」
「何だと!?」
先日エメラダという女に襲われ重傷を受けたというのにまたかっ!
何故こうも彼女は襲われる?私なら守れるのに……。
と焦っている自分と今の現実の自分に笑えた。彼女は私の事など知りもしないのに。
「彼女を守っていた者はいなかったのか?」
「側仕えのリリーという女が姫様を守り重傷を受けたようです。すぐに治療魔法を行ったので大丈夫のようでしたが」
「そうか」
リリーというのは確か舞踏会の時に婚約者を姫様に紹介すると言っていたあの女か。重傷を受けるなど怖かったろうに、それでも彼女を守ろうとしたとは、相当慕っていたのか。
と考えていると【つての者】が何かを言い淀んでいる。
「どうした? はっきり申せ」
「犯人は神殿長でした」
「ああ、あの戴冠式のときに王冠を新しい王に載せた者だな」
「はい。そして、あの男は姫様に薬を使ったそうです」
「薬? ……毒かっ!?」
「いえ、……媚薬でございます。ギレス帝国産の」
それだけで分かった。私は使ったことはないが、話に聞いてはいる。
男女の閨事をする時にギレス産の媚薬を使うのが流行してるという事を。
ギレス産のはミドルキュアや状態異常の回復薬を使っても治らない。
治す方法は極みに達することだけだった。
もし達しないで治すのであれば二週間ほどかかる。しかもその間からだが快感を欲して悶え苦しむのだ。だから男女間の楽しみだけではなく、近頃は犯罪にも使われているという。
そんなものを彼女に!? はらわたが煮え返るような気持ちだった。
「犯人はもう捕まったのか!?」
「アルフォード公爵が捕らえ番所に突き出したそうです」
「そうか……」
「邸に行ってくる」
「この時間では明かりもついてないと思いますが……」
「それでもよい」
私はゲートを開いてアルフォード公爵邸に行った。
屋敷には明かりがついてなかった。帰ろうと思ったその時、前庭のベンチに小さな影があるのが見えた。私は視力強化の呪文を唱えてそれを見た。
月の光を浴びてぽつんと1人寂しげに頼りなくそこに座っている。彼女の瞳から涙がぽろりと零れたのが見えた。
……もしかして、極みを知らされたのかも知れない……。
私の胸はドクンと大きな音を立てた。
その時、遥か遠くから馬の嘶きが聞こえた。そちらに視線を向けると大きな光が彼女の近くに舞い降りた。それは天馬と光輝く者だった。
私は急いで自分の個人スキルである【幻影魔法:インジビリティ】をかけた。
こうすれば姿が見えなくなる。
人には通用しても神には通用しないかもだが。
気になって彼女の方へ近づけるだけ近づいた。
会話の内容からしてあの光は彼女の父であるアズライル様だった。光が屋敷に入り使用人が来て三人で何かを話し彼女はアズライル様と共に天馬に乗って遥か彼方の空に消えた。
私は非常にこの光景に衝撃を受けた。正直神籍を献上されたと言ってもどこか胡散臭いと思っていた。この光景を目にするまでは。
彼女は本当に神の娘で女神だった。でなければあの愛らしさは異常だ。
彼女と結婚して子供を作れば、その子供はこの世界で最も神の血を受け継いでいる子になるのではなかろうか?我が国、神聖大国ワイアット皇国に相応しい花嫁ではないかと確信した。我が国が万世一系なのはそもそもワイアット皇国を興したのが降臨した神だからだ。その神の血を繋げる為に万世一系を貫いている。
私の一物が少し人の物と違うのも神の遺伝子による物だと母上に教えられた。
私はゲートを開いてワイアットに帰った。
「お帰りなさいませ」
家令のオリオンが言う。
「うむ。今帰った」
「オリオン、私は今日アズライル様を見た」
「え?」
「例の神の子の屋敷を見ていたらアズライル様が来て彼女を連れて天馬で空へ消えた」
「本当にですか?」
「ああ、信じられなかった」
「我が国に花嫁に来て欲しいですねぇ……」
「ああ……」
「まぁ、アルフォード公爵様とはまだ婚約ですし。成人しなければ結婚はできません。まだ時間はありますし、奪ってしまえば良いのです」
「まだ、出会うことも出来ていないんだが?」
私は卑屈に笑う。私は彼女からすると他国の王だ。出会う場所がない。戴冠式のように国の式典位でしか公式でその姿を現す事ができない。
「攫って連れてくれば良いのです」
とオリオンが言う。
にしても、彼女は屋敷から殆ど出ない。
「プリストン王国の取り込んでいる貴族を利用して御自分も一貴族として出会うのはいかがですか?」
「私が貴族になりすますのか?」
「そうです。そうしてお知り合いになって、心を許した時に攫ってくるのです。出会って、恋愛関係になるのでも構いません。ツアーリが好かれ、慕われれば彼女は勝手に付いてくるでしょう。どちらを選ぶかはツアーリのお心のままに」
「にしても、どうやって貴族になりすまして彼女に近づく?」
「魔術師団の書記官のザイードという男が辞任しています。彼女のせいで辞めたという噂もありますが……その書記官の席が空いてます、書記官になりましょう。そして、まずはアルフォード公爵と親しくなるのです」
「公爵は彼女の婚約者だぞ? そんな奴と私が親しくするだと……?」
「親しくせねば屋敷に招かれないではありませんか。招かれなければ彼女と親しくなど出来ませんよ?」
「う~む……」
「ツアーリであれば書記官の試験などお手の物でしょう?」
「まぁ、多分大丈夫だろうな」
「まずは、取り込んでいる貴族を背乗りしましょう。そこから身分を誤魔化し試験を受けるのです」
「……ふむ」
攫ってきて嫁にするか、それとも恋愛関係に陥り、彼女を私に付いてこさせ結婚するか。
後者がいいに決まっている。
しかし、私は恋愛などしたことがない。ツアーリとして子供を作る閨事は後宮にて致しているが女と恋愛のいろはを順序だててやったことなどないのだ。
そんな私が彼女と恋愛関係に陥れるのだろうか?
書記官の試験に受かる自信はあるが、彼女に好かれる自信はまったくない。
オリオンが提案してくれた内容はやってみる価値があると思うが……。
私が悩んでいるとドン! という音と共にテーブルに5冊の本が置かれた。
「ツアーリには大変失礼かと思いましたが、必要だと思い私が用意しました」
「なんだそれは?」
「男性版愛の教科書全5巻です。参考書としてご利用してください」
爽やかな笑顔で言われた。
ユリウス=ワイアット=シルヴェストル、23歳独身。
ツアーリというのは万世一系のこの皇国の皇王の呼び名だ。
今日はプリストン王国の戴冠式に貴賓客として招待された。
なんでもプリストン王国に神の子が現れ、前王はその神の子を公の場で襲いスティグマの烙印を得て退位したという。法螺話にしては恐ろしい。
今回の戴冠式でその神の子の神籍が認可され婚約発表があると聞き、招待を受けこちらにやってきた。私の国、ワイアット皇国は神聖大国と言われるだけあって創造神アズライル様を信奉する信心深い国だ。私も仕事として毎日神に祈りを捧げている。それもあってアズライル神様の神の子と言われているその者を一目見てみたかった。
「ワイアット皇国ツアーリ、ユリウス=ワイアット=シルヴェストル様の御成り!」
私と側近一行は大広間の真ん中の絨毯をはさんで二手に分かれている右前方に案内された。正直、プリストン王国とワイアット皇国の縁は薄い。
今回王になるガブリエル王の父君が私の父と仲がよく交流があったというのは聞いていたが、ガブリエル王の父が亡くなり、王族の地位を追われて愚王である前王に変ってからは付き合いがない。
そして、私の父も病で亡くなって私が即位して今現在に至るが国をまとめるのに忙しく、他国との交流は自国を安定させてからだと思っていた。
プリストン国は利益が小さく後回しにされた。
どこに神の子はいるのか? と周りを見回すがそれらしき人物は見られない。噂ではとても美しい女であるという。
私が来城している貴族達を見回しているとガブリエル王がダンスをすることになった。神籍となった神の子が王と踊る! その姿を見れる! と私はわくわくした。
だが、王子が手を取ったのは雲に乗ってすーっと現れた幼女だった。
確かに可愛いかもしれないし、綺麗だ。しかし子供だ。
大人になれば誰もが振り返る位の美しさにはなるだろうが、私はがっくりした。
想像していたのは目の醒めるような美女で、そんな人だったら結婚を申し込もうを思っていた。神籍持ちは何人とでも結婚できる。
だがしかし、幼女に結婚を申し込む気にはならない。
私は正常な大人だ。当たり前だが大人の女性に魅力を感じる。
今回神の子の婚約者として紹介されたアルフォード公爵は24歳。私より1つ年上だ。
何故あのような幼女と婚約しようと決めたのか?
まぁ、彼女と婚約するだけでも色々メリットがありそうだが…。
王と彼女とのダンスは楽しそうであったがすぐ終わった。王が踊り終われば皆が踊る。彼女は次に自分の婚約者に話しかけ、最初は何やら機嫌が悪かったアルフォード公爵が踊る事になった。私は二人を見て驚いた。アルフォード公爵は何かのメリットがあって彼女と婚約したと思っていたのだが、どうやら違ったようだ。
彼女を見る目は慈愛に満ち、それは彼女も一緒だった。二人が踊り、彼女が楽しむと雲を蹴って空を飛んだ。私は凄く驚いた。
飛んだ後ふわふわと公爵の下に戻っていくのに何故か光っている。
きらきらと金粉でも散りばめたように。くるっと廻ってふわっとドレスのスカートが広がり揺れる。腕に付いた薄布は空を舞うたびふわふわとたなびいてまるで天女のようだった。
私は自分が呆然としていたことにはっとした。
その光景は美しかった。そのあと、彼女はアルフォード公爵と3回踊り、規定の4回に達してしまったのでつまらなくなったようだ。自分の執事らしき者に何か話しいなくなった。
私はもうこの時には彼女と踊りたいと思っていた。何やら執事らしき者と側仕えらしき者の話し声が聞こえる。
「セバスさん、姫様はどちらですか?」
「ああ、リリー、あちらのバルコニーの向こうの角にお花を摘みに行かれました」
「じゃあすぐ戻ってきますね」
「どうしたんです?」
「姫様にわたくしの婚約者となる方を紹介したかったのです」
「ああ、そういうことですか。暫く待てば来るでしょう」
「では待ちますね」
バルコニーの向こうと言われて辺りを見る。すぐ近くだった。もしかして、このバルコニーを降りてきたら彼女は立て続けに踊りに誘われるのではないだろうか?自分だって踊りたいと思ったのだから他の人達もそう考えてもおかしくはないだろう。
私は他の誰よりも早く彼女に踊りを申し込もうと思いバルコニーへ続く階段を上った。すると、女が言い争っている声がした。それは大人の女の声と子供の声だった。
「……何故もっと御自分を大切にされなかったのですか? 女の大事なものは1つしかないのです。その1つは失われれば戻ってきません。簡単に削って皆さんに配れるものではないのですよ!?」
相手は神の子と呼ばれる彼女とアルフォード公爵に因縁のある女のようだった。
ここでまた私は驚いた。女にひとつしかない大事な物を粗末に扱うなと小さな子供である彼女が大の大人である目の前の女に啖呵を切っているのだ。
「あなたみたいな子供に…何が分かるのっ!!」
「子供子供って、馬鹿にしないで!! 好きで……子供なわけじゃ、ないんだからっ……!」
しかも、自分が人を好きになって子供であることにジレンマを感じている。
女は怒りで我を失っていた。私が止めに入ろうとした瞬間、彼女はベランダから落とされた。
階下がざわざわとざわめいた。
私はすぐさま女を捕らえた。
「衛兵を呼べ!! 犯人は捕らえた!!」
衛兵が来たので犯人の女を引き渡した。そのあとバルコニーから階下を見ると、小さな彼女の体から大量の血が流れていたのが見えた。私は血の気がうせた。
彼女がこの世からいなくなってしまうことに。恐怖を感じた。
もっと話をしてみたかった。守りたかった。何故もっと早く彼女を保護しなかったのか? 自分の行動に後悔し怒る。その時だった。私の中でピキーンと音が響いた。
ん? この音は……。
自分のステータスに新しく出た一文を見て驚く。
【神の愛し子の庇護者候補】
なんだこれは? けれど、候補ではあるが庇護者の文字にフッと笑みが零れた。
私はアルフォード公爵邸の外門、鉄柱の近くに幾つかのプレイスマークを付けてゲートの魔法を使えるようにした。
そして夜な夜な公爵邸の門の外から邸の明かりを見つめていた。
日中は祈りや仕事などやる事が多いので、こうして彼女の様子を見ることはできない。
【つての者】という諜報の者をプリストン王国に何人も忍ばせているが、その1人がやってきた。
黒い上下を着込んだ男で足音も無くやってきていつのまにか跪いている。
「命は助かったようですが、アリア様はまだ目覚めていない御様子です」
「ふむ。彼女がどういう人なのかはわかったのか?」
「優しく可愛らしいことは皆知っておりました」
「引き続き調べておくように。私はワイアットに戻る」
「はっ」
私はゲートを開き、城へ戻った。
彼女はもう四日も目覚めてなかった。心配だった。近くにいれば私が看病したのに。
けれど、私は彼女に自分の存在さえ知ってもらっていない。
こうして夜中に公爵邸の門の外から屋敷の明かりを見ることしかできない。
私は胸が苦しくなった。
今夜は【つての者】達の集う館にゲートを開いた。
多くの【つての者】から話が聞きたかったからだ。
館の小広間に二手に分かれて皆跪いている。真ん中の道を通り私は椅子に座る。
それぞれが報告しはじめた。
「姫様は食が細くほぼトウミしか食べられない様ですが、米が好きらしいです。リッツ伯爵の晩餐会で米をおかわりしたのが下界にきてからはじめてのおかわりだそうです」
「米とはなんだ?」
「天界の食べ物で小さな白い粒の物です。リッツ伯爵はギレス帝国の貴族と交友があり、そちらから種や育成の技術協力を得ているようです。ギレス帝国は勇者降臨の地、米は勇者様が天界から持ってきたと言われていますから」
「ふむ」
「なんでも、姫様は米を食べれたことに感激し、アルフォード公爵を抱きしめ【大好き!】とおっしゃったそうです」
「何!? たかが食べ物でか?」
「姫様はよほど米がお好きなようです。米を持ってきた者は評価すると言っていたと使用人が聞いていたと言う話もあります」
「ふむ……」
「ちなみに、アルフォード公爵は姫様のためにトウミ園を手に入れたようです」
「彼女のためにか?」
「はい。トウミは摘みたてが美味いですから」
この話を聞くだけでアルフォード公爵が8歳の子供に入れ上げているのがわかってしまった。彼は幼女趣味なのか?いや、まさかな。
歳経れば美しくなると今から情を注いでいるだけだろう。
「次の者、何かあるか?」
「はい、ピレーネについてお話したいと思います」
「楽器だな?」
「はい。姫様はピレーネが大変お上手で、まぁ、歌もらしいのですが、姫様がピレーネを弾くと花が降るらしいです」
「花?」
「はい、以前開かれたピレーネの夕べに出た者が言っておりました。曲も美しく大変感動し涙がでたと言っておりました」
「ああ、そういえば神話であったな音楽の神マティオン様が祝福の花を降らせると」
「それです、そしてアルフォード公爵邸にマティオン様が降臨されたとのことです」
「何っ!?」
「その情報は統制されているようであまりわからなかったのですが、その日からアルフォード公爵はゲートの魔法で屋敷に帰るようになったとのことです」
それは無属性空間魔法を女神に貰ったということか? と私は考えた。
「次の者」
「先程でたリッツ伯爵の晩餐会にてアルフォード公爵が公の場にて姫様に口付けをし、その場にいた貴族が愛妾と勘違いし、俺にもやらせろと揉め、アルフォード公爵はすぐさま姫様を屋敷に連れ帰ったそうです」
「公の場で幼女と口付け?」
「はい」
8歳の幼女と口付け? 頬に軽くではなく?
次の者は前に屋敷で働いていた者を連れてきていて話ができると言う。
その者を通すことを許可した。私が皇国の者だということは伏せてあり、私は彼女に興味を持つ他国の貴族ということになっている。
「ゼフィエルと申します。以前屋敷で働いておりました」
「ふむ、して、何故やめた?」
「左遷させられました……お館様のいない城など、勤める価値もありません。
…お館様はあの幼女が来てからおかしくなってしまったのです! 始終あの幼女のことばかりで、私は長い間あの方に仕えてきたのに……」
「おかしいとはどのようにおかしいのだ?」
ゼフィエルは言うのを迷っているようだった。が心を決めて言う事にしたようだ。
「姫様がその日屋敷に来たときから寝台を共にし離れようとしなくなりました」
私は目を見開いた。けれど、彼女はまだ子供だ、寂しくて親代わりにアルフォード公爵と寝台に入っていたのかもしれない。
「あの幼女は魔性です。屋敷に来た何人もの男があの幼女を穢そうと襲っているのです」
「何だと!?」
私はその話を聞いて信じられなかった。どう見ても天女か天使にしか見えない。
魔性? 彼女が?
「して、姫は穢されたのか?」
「穢されてはいませんが……お館様が私達使用人の前でも平気で口付けしていますし、風呂も一緒に入っておりましたから。もうお手が付いているやも知れません」
「何ぃ!?」
私は思わず座っていた椅子から立ち上がった。あんな小さな子に口付けだけではなく、風呂まで? 大人のあれを見せたのか!?
やはりアルフォード公爵は幼女趣味だったのか……。
しかし、それでは彼女が危険ではないか。
もう手が付いたかもとこの男は言っているが、まだ手が付いていない可能性もあるわけだ。彼女を守らなくては……私に妙な焦燥感が生まれた。
「私はあんな風にお館様を変えたあの幼女が憎いのです。あれは神の子なんかではない。魔性です。悪魔ロレーヌです。でなければあんなに沢山の男達が彼女を襲うでしょうか? 誘っているのです。あの魔性は」
「なぜ、そんなに姫を憎む?」
「私はお館様を愛しておりましたから」
この男の言うことは信用できないと思った。嫉妬してるのだ彼女に。
しかも、仕事を辞めたのであればアルフォード公爵とも接点が無くなりもっと彼女を憎むのではないか?
私はバルコニーで彼女が首を絞められて突き落とされた時の事を鮮明に思い出した。
彼女と踊ろうと楽しみにしていたのが一瞬にして彼女の死への恐怖と変る。
この男は危険だ。彼女に関わらないように消すしかない。
私は【つての者】に視線で合図した。
それから3日ほどして彼女は目覚めたらしい。相変わらず食事はトウミしか食べていないと聞いている。我が国で米を作れないものか……。
アルフォード公爵も領地で米を作りたいらしく、リッツ伯爵に技術提供を申し込んでいるとか。同じような事を考えるものだ。私はまた公爵邸の門の外をうろうろと屋敷の明かりを見ていた。
本当に目が覚めて良かった。私の胸が温かくなった。
あの屋敷のどこが彼女の部屋なのかは分からない。
けれどこの明かりの下に彼女がいると思えることが私に笑みを零れさせる。
私はゲートを開いてワイアットに帰った。
私はまた【つての者】の館に来ていた。例の報告を受ける。
「本日アルフォード公爵邸に侵入者が押し入り姫様が襲われました」
「何だと!?」
先日エメラダという女に襲われ重傷を受けたというのにまたかっ!
何故こうも彼女は襲われる?私なら守れるのに……。
と焦っている自分と今の現実の自分に笑えた。彼女は私の事など知りもしないのに。
「彼女を守っていた者はいなかったのか?」
「側仕えのリリーという女が姫様を守り重傷を受けたようです。すぐに治療魔法を行ったので大丈夫のようでしたが」
「そうか」
リリーというのは確か舞踏会の時に婚約者を姫様に紹介すると言っていたあの女か。重傷を受けるなど怖かったろうに、それでも彼女を守ろうとしたとは、相当慕っていたのか。
と考えていると【つての者】が何かを言い淀んでいる。
「どうした? はっきり申せ」
「犯人は神殿長でした」
「ああ、あの戴冠式のときに王冠を新しい王に載せた者だな」
「はい。そして、あの男は姫様に薬を使ったそうです」
「薬? ……毒かっ!?」
「いえ、……媚薬でございます。ギレス帝国産の」
それだけで分かった。私は使ったことはないが、話に聞いてはいる。
男女の閨事をする時にギレス産の媚薬を使うのが流行してるという事を。
ギレス産のはミドルキュアや状態異常の回復薬を使っても治らない。
治す方法は極みに達することだけだった。
もし達しないで治すのであれば二週間ほどかかる。しかもその間からだが快感を欲して悶え苦しむのだ。だから男女間の楽しみだけではなく、近頃は犯罪にも使われているという。
そんなものを彼女に!? はらわたが煮え返るような気持ちだった。
「犯人はもう捕まったのか!?」
「アルフォード公爵が捕らえ番所に突き出したそうです」
「そうか……」
「邸に行ってくる」
「この時間では明かりもついてないと思いますが……」
「それでもよい」
私はゲートを開いてアルフォード公爵邸に行った。
屋敷には明かりがついてなかった。帰ろうと思ったその時、前庭のベンチに小さな影があるのが見えた。私は視力強化の呪文を唱えてそれを見た。
月の光を浴びてぽつんと1人寂しげに頼りなくそこに座っている。彼女の瞳から涙がぽろりと零れたのが見えた。
……もしかして、極みを知らされたのかも知れない……。
私の胸はドクンと大きな音を立てた。
その時、遥か遠くから馬の嘶きが聞こえた。そちらに視線を向けると大きな光が彼女の近くに舞い降りた。それは天馬と光輝く者だった。
私は急いで自分の個人スキルである【幻影魔法:インジビリティ】をかけた。
こうすれば姿が見えなくなる。
人には通用しても神には通用しないかもだが。
気になって彼女の方へ近づけるだけ近づいた。
会話の内容からしてあの光は彼女の父であるアズライル様だった。光が屋敷に入り使用人が来て三人で何かを話し彼女はアズライル様と共に天馬に乗って遥か彼方の空に消えた。
私は非常にこの光景に衝撃を受けた。正直神籍を献上されたと言ってもどこか胡散臭いと思っていた。この光景を目にするまでは。
彼女は本当に神の娘で女神だった。でなければあの愛らしさは異常だ。
彼女と結婚して子供を作れば、その子供はこの世界で最も神の血を受け継いでいる子になるのではなかろうか?我が国、神聖大国ワイアット皇国に相応しい花嫁ではないかと確信した。我が国が万世一系なのはそもそもワイアット皇国を興したのが降臨した神だからだ。その神の血を繋げる為に万世一系を貫いている。
私の一物が少し人の物と違うのも神の遺伝子による物だと母上に教えられた。
私はゲートを開いてワイアットに帰った。
「お帰りなさいませ」
家令のオリオンが言う。
「うむ。今帰った」
「オリオン、私は今日アズライル様を見た」
「え?」
「例の神の子の屋敷を見ていたらアズライル様が来て彼女を連れて天馬で空へ消えた」
「本当にですか?」
「ああ、信じられなかった」
「我が国に花嫁に来て欲しいですねぇ……」
「ああ……」
「まぁ、アルフォード公爵様とはまだ婚約ですし。成人しなければ結婚はできません。まだ時間はありますし、奪ってしまえば良いのです」
「まだ、出会うことも出来ていないんだが?」
私は卑屈に笑う。私は彼女からすると他国の王だ。出会う場所がない。戴冠式のように国の式典位でしか公式でその姿を現す事ができない。
「攫って連れてくれば良いのです」
とオリオンが言う。
にしても、彼女は屋敷から殆ど出ない。
「プリストン王国の取り込んでいる貴族を利用して御自分も一貴族として出会うのはいかがですか?」
「私が貴族になりすますのか?」
「そうです。そうしてお知り合いになって、心を許した時に攫ってくるのです。出会って、恋愛関係になるのでも構いません。ツアーリが好かれ、慕われれば彼女は勝手に付いてくるでしょう。どちらを選ぶかはツアーリのお心のままに」
「にしても、どうやって貴族になりすまして彼女に近づく?」
「魔術師団の書記官のザイードという男が辞任しています。彼女のせいで辞めたという噂もありますが……その書記官の席が空いてます、書記官になりましょう。そして、まずはアルフォード公爵と親しくなるのです」
「公爵は彼女の婚約者だぞ? そんな奴と私が親しくするだと……?」
「親しくせねば屋敷に招かれないではありませんか。招かれなければ彼女と親しくなど出来ませんよ?」
「う~む……」
「ツアーリであれば書記官の試験などお手の物でしょう?」
「まぁ、多分大丈夫だろうな」
「まずは、取り込んでいる貴族を背乗りしましょう。そこから身分を誤魔化し試験を受けるのです」
「……ふむ」
攫ってきて嫁にするか、それとも恋愛関係に陥り、彼女を私に付いてこさせ結婚するか。
後者がいいに決まっている。
しかし、私は恋愛などしたことがない。ツアーリとして子供を作る閨事は後宮にて致しているが女と恋愛のいろはを順序だててやったことなどないのだ。
そんな私が彼女と恋愛関係に陥れるのだろうか?
書記官の試験に受かる自信はあるが、彼女に好かれる自信はまったくない。
オリオンが提案してくれた内容はやってみる価値があると思うが……。
私が悩んでいるとドン! という音と共にテーブルに5冊の本が置かれた。
「ツアーリには大変失礼かと思いましたが、必要だと思い私が用意しました」
「なんだそれは?」
「男性版愛の教科書全5巻です。参考書としてご利用してください」
爽やかな笑顔で言われた。
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