魔術師長様はご機嫌ななめ

鷹月 檻

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第二章

13リューク『表』 中編

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「リア、何をやっている?」
「お箸で食べるのです」

 セバスがもう一本持って来てくれてお箸として使えそうだ。
がしがしと開いたり狭めたりする。

「このお箸でこうやってお魚さんを食べます」

 すーっとお魚さんの頭から、尻尾に向かった背骨に沿って水平に箸を入れる。そして上半分の身から食べだす。

「器用だな?」

 とレイジェス様が目を丸くする。

「わたくしは普通のカトラリーよりこのお箸の方がお魚さんを食べる時は食べやすいのです」
「私は普通のカトラリーの方が食べ安いがなぁ」

 とレイジェス様が言う。
上半分の身を食べたので次は下の身を食べる。裏返さないでそのまま尻尾から背骨を外して頭の付け根を箸で押さえると骨は簡単に外れた。で、お皿の上にその骨を置く。そのあとは普通に上の身と下の身を食べると頭と尻尾のついたお魚さんの骨だけが残る。

「ほらほらレイジェス様見て~。綺麗にとれたでしょ?」

 その骨だけになった頭と尻尾のついた魚を箸で摘んでどや顔で見せつける。

「見事だな」

 とレイジェス様は目を丸くしたあと笑った。

「おかわりが欲しいです!」

 セバスが微笑んで厨房に行った。
リューク様を見るとお魚を食べるのが下手糞だった。めっちゃ身残ってるし。
もったいない。レイジェス様はやっぱり育ちがいいのかフォークとナイフでも凄くきれいに食べてる。

「レイジェス様はお魚さんを上手に綺麗に食べていますね」
「私が小さい頃いた執事に、あ、セバスの父だが、彼に魚を食べると背が高くなるから、良く食べなさいと言われてな。魚を食べる事が多かった」
「慣れてらしたんですね」

 と私は微笑む。

「俺は魚などめったに食べぬからうまくいかぬな、難しい」

 やーい、ざまぁ! レイジェス様にかっこ悪いところ見せちゃったね! ふふふ。
待ってたら、さんまがまた来てぺろっと食べた。

「姫様、デザートはいりますか? ナージェの実がありますよ?」
「じゃ半分で!」
「はい」

 とセバスが微笑む。
それをレイジェス様が見ていてにっこりする。

「君がおかわりをするくらい食事をするようになって私は嬉しい」
「でも、わたくし、このままではおデブちゃんまっしぐらですわ?」
「まだ大丈夫だろう軽すぎる」
「わたくし危機感を感じでいるのですけどね?」

 私がそう言うとフッと笑われた。ナージェの実を食べた後、私は椅子を降りた。そしてセバスに椅子をレイジェス様の左斜めに置いて欲しいという。
ととととっとレイジェス様のそばに行って椅子にのぼって座る。

「お神酒を飲みましょう。レイジェス様」
「そうだな。明日は休みだしな」

 私は空間収納から徳利を出し、以前だしておいた杯二つを私とレイジェス様の前にだす。
じろじろ見るので仕方ない。

「あなたの分も出して差し上げますわ? わたくし優しいですから」

 と仏頂面で杯の神呪を唱える。

「ユンタース!」

 私の手のひらに出来た杯をリューク様に渡す。そしてお酌をする。
一応お客様だから一番先に注いであげる。次にレイジェス様、とくとくとそして自分で注ごうとしたら

「私がやる。ほら出しなさい」
「えへへへ。ありがとうございます」

 と顔がふにゃっとなる。三人で乾杯をした。カチンと陶器の重なる音がした。
ごくごくっと私が飲んでいると、リューク様が怒っている。
「子供が酒など!」
とか言ってる。体つきも筋肉質でかちかちしてそうだけど頭も固いなぁ。

「これはぁ、お神酒って言って、神様の飲むお酒なの! 子供とか関係ないの!」

 そう言って私はぐびぐびとお酒を飲んだ。
レイジェス様がまた私の杯にそそぐ。

「文句言ってないで飲めばわかるってば。甘いんだから! ね~レイジェス様!」

 ふにゃっとレイジェス様に笑う。
レイジェス様もごくごくと飲む。

「うむ。やはりこの酒は旨いなぁ。甘いが」
「甘いからお子様なわたくしでも飲めるんですよぅ。苦い物なんて嫌いです」

 私はテーブルに両肘をついて指をからめた上に顎をのせる。酔ってきたのかふわふわして気持ちいい。

「こんな格好ハンナ先生に見つかったら、そのような態度は淑女のする行動ではありません! とか言って叱られそう! うふふ」

 レイジェス様はリューク様の空になった杯にお酒を注ぐ。
私も空になった自分の杯をだす。レイジェス様がとくとくと注ぐ。
綺麗な白くて長い指。

「レイジェス様、むふふふ」
「ん? どうした?」
「ふふふっなんでもないです」

 なんだか顔がほんと、にやける。かっこいいなぁ。素敵だなぁって。
ああ、大好き!
視線に気付く。リューク様だ。なんだもう杯が空じゃん。

「ほら、おじさんも、飲んで?」

 とくとく注ぐ。

「おじさんだと!?」

 レイジェス様が笑っている。

「? おじさんでしょ?」
「ほら、もう一杯!」

 煽られてごくごく飲むリューク様。

「いけるくちですねぇ? もう一杯ついじゃおう!ほら、だ・し・て」
「なっ!!」
「杯をちゃんと出してくださいよぅ」
「なんだ、杯か……」
「今なんだと思った?」

 レイジェス様がリューク様をぎろりと睨む。

「い、いや、杯だな、うん」
「なんかわかんないけど、リューク様にレイジェス様は渡しませんからね?」
「は? どうしてそうなる?」

 とリューク様。私は自分の杯が空なことに気付く。

「ほら、ついで! おじさん。気が利かない男は嫌われますよーだ」

 リューク様は渋々わたしの杯に酒を注いだ。

「どうなってるんだ? この子は!」
「ん? 酔っているな。それだけだ」
「レイジェス様ぁ、抱っこ~」

 レイジェス様は私を抱き上げた。

「そろそろこれと風呂にはいる」

 リューク様はがっと立ち上がってよろけたが言う。

「その子と風呂に入るのは許さん!」
「変なことを言う。これは私の嫁だぞ?」
「そういう問題じゃない、その子はまだ子供じゃないか」
「そういう一般論は聞き飽きた」

 とレイジェス様が風呂に行こうとしたらリューク様ががくっと足がふらついた。

「お前も酔っているじゃないか。泊まるなら部屋を用意する。泊まらないなら馬車を出す、好きにしろ。セバス!」

 セバスを呼んでリューク様に対応させた。




 脱衣所に着くといつもの通りレイジェス様にぽいぽい脱がされる。髪のピンも取られて。すっぽんぽん。レイジェス様も脱いでお風呂へ。
私が先に洗われる。

「なんだか今日のわたくしはふにゃふにゃです」
「言わなくても見るからにふにゃふにゃだな。可愛いな、ふにゃふにゃなリアは」
「……ちょっと嫌なことがあって……飲みすぎちゃったみたいです」
「嫌なこと?」

 レイジェス様の指が大事な所を洗うので敏感になってしまう。

「んっ、はぁぁ、……言ってもどうしようもないから」
「言わぬとわからぬなぁ。何があった?」

 とか言いつつ蕾のあたりをくちゅくちゅされる。

「使用人が私とレイジェス様のことを、悪意はお有りにならないのでしょうけど、そのぅ、言っていて……わたくしがあんあん大きな声で言ってしまったせいですけどね。陰でそう言う風に言われるのが苦手なのでございます」

私の蕾を弄る手が止まった。

「そういえば先程リアは使用人達がゼフィエルが殺されたということを話ししていたと言ってたな?」
「ええ」
「【死んだ】という話しなら噂になるのは分かるのだが、なんで【殺された】と噂話になるのか分からんな? 殺されたかも知れぬというのは番所の者しかしらないはずだ」

 これ、言っちゃったらまずいんじゃないかしら? どうしよ。
でも、言った方がいいよね……?

「その、使用人さんが付き合ってる人が番所の人で、その人から話しを聞いたそうですよ」

 レイジェス様の目がカッと大きく見開いた。

「何だと? 服務規程違反ではないか。プリストン王国では解雇事案だぞ」
「その人、わたくしがこの話ししちゃったから辞めさせられちゃうの? わたくしのせい?」

 私が言ったから辞めさせられてしまうかも、と怖くなった。

「いや、君のせいではない。仕事の内容をぺらぺら話すそいつが悪い」
「女もいらんな、クビでいいか」
「え? でも、人の口に戸は立てられないですよ。違う人を入れてもまた同じに」

 レイジェス様は私の言葉に少しイラついた様で強い口調ではっきりと言った。

「同じかどうかやってみれば分かる。おしゃべりでどうしようもないやつを切っていき、口の慎ましいのを残す。これを何回か繰り返せば慎ましいのしか残らん」

 レイジェス様は思い出した様に私の蕾を弄り出した。真面目な話しをしていたのに。
くちゅくちゅいやらしい音が私の股からする。

「大体、側仕え以外の仕事をやってる使用人などいくらでも替えがきく、そんなことで悩むくらいなら私の事でも考えて暮らせ」

 そう言われて蕾を弄られ気持ち良くなって、笑みが零れた。
私は髪を洗い流されてお風呂に先に入るように言われた。
レイジェス様は自分の体をさささっと洗っている。
ふぅ、お風呂いいわ~。生き返る。
レイジェス様もお風呂に入ってきたので抱っこしてもらう。

「でも、わたくし、どなたがその話をしていたのかわからないのですよ?」
「ふむ、男から辿ればわかるだろ。その件は心配しないで私に任せなさい」
「わたくし、恨まれそうでなんだか怖いです」
「大丈夫、私が守る」

 レイジェス様が軽く唇に触れるキスをした。そして私のおでこにこつんと自分のおでこを当てる。

「週末が楽しみだった。リアを長く愛することが出来るからな」
「うふふ。わたくしもレイジェス様と時間を気にせずに、一緒にいられるのが嬉しいです」

ふにゃりと笑った。

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