魔術師長様はご機嫌ななめ

鷹月 檻

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第三章

12肖像画家と菊の使い方

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 寝台の布団の中で私は眠っていた。
なんだか胸のあたりがぞわぞわして目覚めるとレイジェス様の手が私の乳首を弄っていた。

「あのう?」

 私の背後から伸びてくるレイジェス様の手を止めて、私はレイジェス様を見上げた。

「ん、起きたか」
「こんな風にされれば起きてしまいます。おはようございます、レイジェス様」

 私は微笑んだ。

「うむ、おはよう、リア」
「まだ朝の6の刻なのですね」
「なんだか早く目覚めてな、つい、リアを愛したくなってしまった」
「愛するのは全然構いませんけど、わたくし見たい所がございます。朝食を取ってから一緒に行きませんか?レイジェス様」

 レイジェス様が目を瞬く。

「見たい所とは?」
「庭です。城の前の庭に植木の迷路がございますでしょ? 塔から見たとき行きたいと思ったのです。色取りどりのお花が咲いていて綺麗でした。近くで見たいのです」
「そう言えば、ヒューイットが言っていたな? 庭が綺麗だと」

 私はレイジェス様の体の上に跨って首にぎゅっと抱きついた。そしてその顔を見上げる。

「わたくしと一緒ならお庭の散歩…て行ってくださいます?」

 レイジェス様の唇の間近に私の唇があった。

「そんな風におねだりされれば行くしかないだろう?」

 レイジェス様がそう言って、私の唇に軽くキスをした。私はレイジェス様を跨いでる自分のお股がきゅんとなるのを感じた。

「では、わたくし着替えますね」

 レイジェス様から降りようとすると両足首を掴まれた。

「もう行ってしまうのか? 君の重みが気持ち良かったのに」

足を掴まれていてはレイジェス様から降りられない。
お股はまだきゅんきゅんしている。
私は寝巻きの裾を捲り上げショーツに指輪を翳した。そして紐を解いていき、レイジェス様はそれをじっと見ている。脱いだショーツを私は寝台の外に放り投げた。その時にはもうレイジェス様は私の足を掴むのを止めていた。なのに私はやめられない。寝台のヘッドボードを両手で掴んでレイジェス様の唇に私の秘所が当たるように腰を下ろした。

深緋色(こきひいろ)をした舌が私のそこに伸びるのが見えた。
私はレイジェス様を見ている。レイジェス様は両手で花びらを広げて蕾を見つける。明るいから私の秘所の中まで見えてしまっている。それを優しく舌で舐め回し蜜花を舌先でとんとんと刺激する。

「レイジェス様が…悪いんだから。そんな風に言われるとわたくしがどうなるか…わかっているでしょ……?」
「責任…取ってくださるんですよね…?」

 レイジェス様は私の蕾を一心不乱にしゃぶっている。私はヘッドボードを強く握り締めた。

「レイジェス様ぁ、気持ちいぃよぅ…とけちゃうよぅ…」

 思わず退けてしまう腰を逃げないようにがっしり捕まえられて、ぶるっと体が震える。
蕾を刺激されすぎて頭がおかしくなりそうだった。

「いやぁ、だめ、それ…いっちゃうよぅ、レイジェス様ぁああ、いぃい、きもちぃい」

 レイジェス様は指を蜜花の入り口を刺激しながら蕾を激しく吸った。

「ああ! んんっ、リアの、蕾が溶けちゃう! いっちゃう! あああぁんいくっいくっ!」

 達した瞬間、私のあそこから何かがぴゅっと出た気がして、それを見るとレイジェス様がごくんと喉を鳴らしてそれを飲み込んだ。
体から力が抜けてくたっとレイジェス様の顔に体ごと乗っかってしまった私をレイジェス様はひょいっと持ち上げて横に寝かせた。

「レイジェス様、今わたくしの御小水を……」
「リアのこれは潮だ。何回言ったらわかる?小水なら独特の匂いがするだろうが」
「飲んじゃって大丈夫?」
「問題ない。トウミの濃い味がした。普通に美味かった。何故リアはトウミの味がするんだ? 何もかも甘いトウミの味がする。神とは不思議だな……」

 レイジェス様は私の頭を撫でて微笑んだ。その微笑は凄く美しくて、その唇が私の潮を飲んだとは思えなかった。そしてレイジェス様を穢してしまったような気持ちになった。

「ごめんなさい」
「なぜ謝る?」
「なんだか、美しいレイジェス様を穢してしまった気がして」

 レイジェス様はフッと笑った。

「それなら私の方こそ美しいリアを穢している。毎日のように君に迸る熱い物を吐き出しているのだから」

 私はレイジェス様の唇に指で触れた。

「わたくしだけ達してしまいました、レイジェス様は…その、よろしいのでしょうか?」

 レイジェス様は眉間に皺を寄せて言った。

「私はリアの潮を朝から飲めて満足している。だからしなくても良い」
「レイジェス様、わたくしまだお股がじんじんしていて…そのぅ…体の力が抜けていて動けません。だから朝食は申し訳ないのですが、お一人で行って頂いても良いですか? ごめんなさい」
「ああ、どうせリアは朝食と言っても紅茶だけであろう? リアは休んでいると良い、一人で寝ていては危ないからアーリンを部屋に寄越そう」

 レイジェス様は黒の細身のズボンと胸に三つボタンのシャツに着替えた。

「では、行って来る」

 レイジェス様は私のおでこにキスをして部屋を出た。私は体の疼きが収まると眠気がしていつのまにか寝てしまっていた。




「リア、起きなさい、庭に散歩に行くぞ」

 軽く体を揺すられて目が覚めた。欠伸をして周りを見渡すとアーリンとアランの他に20代中盤ぐらいの紺色のくせっ毛頭で丸眼鏡を掛けた人も立っていた。今まで見たことが無い人だ。
私はレイジェス様を見て言った。

「どなたです?」
「ああ、君の肖像画を描かせる為に呼んだ画家だ」

 その人は手に持った帽子をぐしゃぐしゃと握り締め私を見て会釈をした。

「私の名前はハンス=デュビング、26歳。次期子爵でございます。絵は趣味で描いておりますが数年前からアルフォード公爵様にパトロンになって頂いております。今回はアリア様の絵を描く為こちらに来ました。どうぞよろしく」
「はい、こちらこそどうぞよろしく」

挨拶をしてから気付いた。

「レイジェス様? わたくしじっとしているのは苦手かも知れません」

 レイジェス様はくっくっくと笑い出した。

「うむ。私もリアが大人しく絵のモデルなどやっている所など想像できん。だが大丈夫だ、彼は動いている姿をスケッチして頭の中で想像しながら描き上げる。だからリアはハンスの前では自由に動いていて良い、彼が勝手にスケッチする」

 私はハンスを見つめて言った。

「凄い才能をお持ちなのですね」
「いえ、とんでもございません」

 ハンスは手に持っている帽子をむぎゅむぎゅした。

「では着替えをするので……皆さん出て貰えますか?」

 レイジェス様は3人に一旦部屋を出て行かせて外で待つように言った。

「私は着替えを手伝うぞ? 手がいるだろう?」
「はいお願いします」

 私は脱いだ下着や寝巻きを寝台下の籠に入れる。ここに入れておくと使用人達が洗濯してくれて洗濯済みはタンスに戻される。
レイジェス様が新しい下着とドレスを持って来て長椅子に掛ける。レイジェス様が選んだドレスは銀灰色だった。まだ袖を通したことのないドレスで、デザインはもちろんエンパイアドレスで後ろから脇に白い紐が通っていて胸の下を通って中央で結べるようになっていた。紐の先には房がついている。レイジェス様はショーツの紐を結び、シュミーズを着せ、ドレスの横ファスナーを開けて私に足から着せたあとこの胸の紐も結んでくれた。
綺麗にりぼん結びが出来ている。靴は前にエドモンド商会に作ってもらったバレエシューズにしたらなんだかきつい。あれ? 私、足が大きくなった?
サイズの合わない物を履くのは足に良くないと思い、神呪でバレエシューズを履いた。見た目はエドモンド商会に作らせたのと同じだ。
着替えてすぐ廊下に出ると3人が待っていた。
私を見てハンスが言った。

「キタコレー!!」

 ん? 何が来たんだろう?

「いんすぴがふつふつと! 湧きましたぁぁああ!」

 ハンスは肩に下げてた鞄からスケッチブックを出して鉛筆で私をデッサンしていた。

「気にするな、ハンスは絵を描きだすといつもあんな感じだ。才能はあるのだがなぁ」

 レイジェス様はハンスを生暖かい目で見た。
私は何だかサーシャと同じ空気を感じてしまった。

「では、庭に行くか」

と私の手を握った。後にアーリンとアランとハンスが付いてくる。




玄関の外に出るとひゅ~っと風が吹いた瞬間緑の香りがした。ここから見える前庭の迷路の植木が気になって私は走り出す。玄関ポーチから階段をとととっと降りて花壇を駆け抜ける。

「リア! 走るな! 鼓動に良くない!」

 レイジェス様の叫ぶ声が聞こえる。

「レイジェス様! ここは迷路なのですよ! わたくしを探して捕まえてください!」
「こら、リア! はしゃぎすぎだ!」

 やばいレイジェス様、少し怒ってる。

「ではこの私が探してひっ捕まえてあげましょう! 姫様!」

 とアーリンがノリノリで私を追っかけてくる。

「ほいじゃ、俺が一番にひっ捕まえる!」

 とアランも追いかけてきた。私はこそこそと植木の間を走って止まって逃げる。

「ここに立ってちゃ姫様が描けません、私も姫様を追いますね、公爵様!」

 とハンスまで追いかけてきた。そのあとのっそりとレイジェス様も動く。
皆が私を探している中、私は植木と植木がコの形になって皆から見えない位置に隠れた。
ほら、ここなら見つからないでしょ?えへへ~誰が見つけれるかな?
と思ってたら肩を後ろからとんとんと軽く叩かれた。
振り向いたらそこにいたのはレイジェス様だった。
凄くご機嫌ななめな様子である。眉間に思いっきり深い皺が出来ている。

「リアは忘れているようだが……そのピアスを付けている限り、私にはリアの居場所がすぐ分かる。隠れるなど無駄だ」
「あっ! GPS装置!!」

 私は思わず耳のピアスを押さえた。そしてしょんぼりする。

「これがあってはかくれんぼも出来ないのですね」

 としょんぼりすると怒っていたレイジェス様が少し和らいだ。

「それはリアの身を守る道具であるから、はずすなよ? はずしてはいけないぞ?」

 と心配そうに私の顔を覗き込んだ。

「わかってます、はずしませんてば」
「本当にか?」

 とまだ私の顔を覗く。

「本当ですってば」
「なら良い」

 とレイジェス様は笑顔になって大声で叫んだ。

「私が一等である! リアをひっ捕まえた!!」

 えっ、レイジェス様、何気に追いかけっこ楽しんでた? もしかして。
めちゃめちゃ顔が晴れやかだ。

「え~! 公爵様早いですよ!」

 とアランが嘆く。

「こんな所に隠れていたのですね、姫様」

 とアーリンが言う。
ハンスは必死にスケッチをしていた。
玄関から結構遠くまで走ってきたので歩いて行くのに結構時間がかかる。アーリンとハンス、レイジェス様が話をしていたので、私はアランに話しかけた。

「ねぇ、アラン。痛くない菊への入れ方ってあるんですの?」

 と聞いたらアランが私を二度見した。そして固まったあと叫ぶ。

「ええええっ!?」
「ちょ! しーっ!!」

 前を歩いていたレイジェス様が何事かとこちらを振り返る。

「ん? どうした?」

 と私に聞く。

「いえ、別に何も……」

 と私が顔を横に向けると今度はアランに同じように聞いた。私はアランに喋らないで!と視線を必死に送る。

「いえ、あ、あのぅ、いや、うううぅ」

 とアランは今にもレイジェス様に私が言った事を吐きそうだ。
レイジェス様はアランの顎をくいっと持ち上げた。

「アランは男色だと思っていたが違うのか? アリアがいいのか?」

 と色気に訴えて吐かせようとしている。

「うあああああ! やめてぇぇ! レイジェス様あああ!」

 思わずレイジェス様の足にしがみついた。そんな対応したらアランが更にレイジェス様に惚れてしまうがな。私は焦っていた。

「姫様には痛くない菊の使い方を教えろと言われただけですよ」

 とアランがレイジェス様の手を自分の顎からはずして言った。

「はっ!? 君は……諦めてなかったのか?」

 とレイジェス様が呆れている。

「だって……だってレイジェス様が好きなんだもん! ひとつになりたいの! そんな馬鹿な子を見る目で見ないでよっ!!」

 私は何かがぷつんと切れた。

「方法があるなら試したいって思うじゃない!」

 というとアーリンがうんうん頷いた。

「まぁ、菊なら法律には触れないですからね、姫様がそう考えてしまうのも仕方ないかも知れません」

 それを聞いてレイジェス様がこめかみを押さえた。

「アーリン、肯定するな。私はリアを傷つけたくない。痛い思いをさせたくないのだ」

 と言うとアランが顎を撫でながら言った。

「公爵様、菊は必ずしも痛くはないですよ、ちゃんと拡張すれば。まぁ、そうするにはパートナーの協力が要るんで、姫様だけがしたいと思っても無理ですが」

 レイジェス様はそれを聞いて目を瞬いた。

「痛くないのか?」
「ちゃんと徐々に拡張すれば。ただ時間はかかりますけど」
「あと、姫様は男にもなれるって聞いておりますが、菊を弄るなら女よりも男の姿の方がいいと思います。男は前立腺があるんで気持ちいいですから」
「ふむふむ」
「あとは、道具が必要ですね」
「道具とは?」

 とレイジェス様がアランに聞いて、私とアーリンとハンスまで耳を傾けている事にアランは気付いて咳払いする。

「公爵様、その件についてはあとで教えましょう。取りあえず、城に戻りませんか? もう昼食の時間ですよね?」

 とアランが言うとレイジェス様は頷いた。
城に戻って昼食を取りに食堂へ向かう、アーリンとアランとハンスは使用人専用の食堂で取る事になっているのでそちらへ行った。
一緒に食事をしているとレイジェス様がなんだか気力の抜けた腑抜けた感じになっていた。
どう見てもおかしかったので理由を聞いた。

「致しても痛くないのなら、菊でひとつになるのも有りかと思った。で、リアとひとつになれるかもと思ったら、なんだか夢の中にいるようで……ふわふわしている。これは現実か? 夢か? 夢なら覚めないで欲しい」

 私は思いっきりレイジェス様のほっぺを抓った。

「何をする!」

 と頬を押さえながら怒るレイジェス様。

「痛かったら現実です。良かったですね」

 と私はふにゃりと笑った。レイジェス様は途端に顔が茹蛸みたいに真っ赤になった。

「食事が終わったらアランに二人で聞きましょう?」

 と言ったらレイジェス様は頷いた。
食事が終わったのでエドアルドにアランを部屋に呼んで欲しいと言付けてから部屋へ向かった。部屋に行く途中、2階の中庭沿いのベランダから中庭の方で言い合いをしている声がかすかに聞こえた。中庭をちらっと見たけれど姿は見えなかった。あの声はヒューイット様とレンブラント様だったように思う。何を話しているかまではよく聞こえなかったけどヒューイット様が感情を露にしていたような感じは受けた。
気にしても仕方がないので私は頭を振って今あった事を忘れる事にした。
部屋に付いてからレイジェス様がそわそわして落ち着きが無い。なんだか彼の心は嵐が吹いている様だ。暫くしてドアをノックする音が聞こえた。ささっとレイジェス様が駆け寄ってドアを開けると中にアランが入って来た。
アランを応接セットの個人椅子に座らせるレイジェス様。私は長椅子に座っていた。その隣にレイジェス様も座る。

「で、道具とは何だ?」

 いきなり話を振るレイジェス様。

「ゼリーとか器具とかゴム手袋、もしくは指サック、あ、あと浣腸器とかかな? もちろん、衛生面を考えるとサイラスの帽子も必要だ。姫様の菊なら器具は使わないで指でいいと思うが……一応拡張の道具も用意した方がいいか……」
「ふむ」
「自分の小指からどんどん太い指に変えて行って自分の親指が入るようになったら公爵様の小指から始めたらいんじゃないか?」
「じ、自分の指を入れるのですか?」

 怖気づいているとアランが当たり前のように言う。

「器具はたぶん一番小さくて公爵様の中指くらいあるぞ? 自分の小指から始めるのが姫様の体の大きさから考えると一番いいと思うがな」
「そうですの」

 私はレイジェス様の中指を見た。私の中指の2倍はあるのじゃなかろうか……。
それで一番小さいサイズって、無理。
自分の指からがいいと理解した。

「最初は湯で何回か浣腸して、中を綺麗にするだろ、そのあとゼリーを塗って菊の辺りをマッサージして、菊が柔らかくなってきたなと思ったら力を入れたり抜いたりする。菊を動かすのに慣れたら思いっきり力を抜いて指を入れる。入れたらまた菊に力を入れたり抜いたりして入っている状態が分かってきたら少しずつ指を動かす。動きに余裕が出てきたら太い指に変えるって感じだな。それを取りあえず姫様の親指までやってみればいい。そのあとは公爵様の指に変っても同じように進めていけばいい」
「私の親指まで入ったらどうすればいい?」

 とレイジェス様が聞いた。
「そしたら公爵様の指を2本、3本と増やせばいい。3本位入れば公爵様の橘も入ると思うんだがなぁ。俺は公爵様のあれを見たことがないからなんとも言えないがね」

 とアランが言ったのでレイジェス様の指3本を見た。
それより少し大きいかも? レイジェス様の方が。

「まぁ、無理しないで徐々にやっていった方が痛くない。絶対無理しないこと、ヘタしたら切れちゃうからな菊が」

 私はぶんぶんと頭を縦に振った。

「あ、浣腸器は注射タイプが使いやすくてお勧めだ」
「へ~、アランも使うのですか?」

 と聞いたら目をぱちぱちさせた。

「俺はタチだからな? 自分に使ったことは無いが相手に使ったことはある」
「ゼリーは王都のイースターブルッグ商会で売ってる。大人のおもちゃを扱ってる店だ」
「それはどこら辺にある?」

 レイジェス様が真剣な顔で聞く。

「タブリン通りの手前にある」
「ふむ、タブリン通りとは奥に娼館がある所だな」
「お、公爵様行ったことがあったのか?」
「いや、行ったことはない。リュークの調査報告書を読んだ時にタブリン通りの娼館に通っていたと書いてあったのを思い出した。あの通りに被害に遭った子が立っていたと報告書で読んで記憶に残っていた」
「ああ、あの事件か……。でも、通りのほんの手前2件目位だからな。あんな奥まで行ったら、公爵様だったら襲われちまう、俺が代わりに買いに行ってもいいけどな? その方が安全だ」

 レイジェス様は暫く考えてから言った。

「ではアランに頼む。これから買ってきてくれないか? ゲートを開く」
「前払いで頼む、俺今金欠なんだ」
「ふむ、5万ギルで足りるか?」
「それは多い、余る」
「では余った金は駄賃だ、好きに使え」

 と言ってレイジェス様はお財布から金貨5枚を出してアランに渡した。
そしてゲートを開く。

「屋敷に開いた。今は屋敷にも人が少ない、馬車は出せないかもしれん」
「歩いてもそう遠くないから大丈夫だ。帰りはどうすればいい?」
「何時なら帰れる? その時間にゲートを同じ場所にまた開く」
「じゃ、夕の5の刻で」
「わかった、ではな」
「了解、行ってくる、公爵様」

 と言ってアランとゲートは消えた。
私は段々どきどきしてきた。浣腸とかされちゃうんだ? 私。ぐおおおおお。
今更ながら菊でひとつに! と思っていた自分が恥ずかしいのと、もしかしてこの方向性は間違っていた!? と後悔の渦になりつつある私の表情が顔に出ていたせいかレイジェス様がぽつりと言った。

「嫌なら無理をしなくても良い。説明を受けてやってみようかと思ったには思ったが、私はやってみても無理だと思っている」

 なんだかしょんぼりしている。そんな顔されると励まさなきゃいけない気分になってしまう。

「まだ挑戦してもいないのに、やめましょ? そういうの。だめだった時の事は、だめだった時に考えればいいですよ」
「リアが嫌そうな顔をしていたから私はそう言ったんだけどなぁ……」

 とレイジェス様に言われて正直に言う。

「ちょっと、不安になっただけです、でもやるだけやってみます!」

 私は笑った。私の笑った顔を見てレイジェス様は少しほっとしたようだった。

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