17 / 31
17・リボンの行方
しおりを挟むわたしは、人を見る目が無いって言われている。
でも、でも、
(鈴ちゃんって、人のリボンを取るような子かな)
ねおちゃんから話を聞いてから、鈴ちゃんの事をずっと考えてしまう。
鈴ちゃんとは、去年の後半に同じ保険委員会になって、当番が同じ日だった事から仲良くなった。
来年、同じクラスになったらいいなって話して、今年、本当に同じクラスになってずっと一緒にいた。
長い付き合いではなけど、鈴ちゃんの事は知っている。鈴ちゃんは、意地っ張りで強がる所はあったけど、人の悪口を言ったり、物を取ったりをするような子では無い。
鈴ちゃんは、わたしのこと、友達だとは思ってなかった。わたしのこと、本当は好きじゃなかった。
それをわたしは分からなかったけど、でも、物を盗むような子じゃないって、わたしは思っている。
人を見る目がないっていわれているけど、わたしは自分の目を信じたい。
(鈴ちゃん、違うって言えるかな)
どちらかというと、気弱な子だ。
一対一でも犯人だって言われたら、否定できないかもしれなくて、心配。
(……わたしなら、見れる)
わたしの見る目が間違っていて、鈴ちゃんが本当に取ったのかもしれない。
わたしの見る目は間違ってなくて、鈴ちゃんは取ってないかもしれない。
わたしに見る目はないから、鈴ちゃんを百パーセント信じられないのが、申し訳ない。
でも、今のわたしなら、どちらが真実なのかを見ることができる。
鈴ちゃんが本当に取ってないのを見て、心から否定出来る。
不安で怖い気持ちはある。でも、わたしは、ベッドから抜け出した。
授業中だと思ったのに、教室は騒がしかった。
(予定にはなかったけど、自習になったの?)
恐る恐るドアを開けて教室に入ると、立ったり、座ったりしている沢山の目がこちらに向う。
『十歳』『昨日、母と喧嘩した』『百四十一㎝』『飯坂夏』『四年前、離れ離れになった……』『面倒くさい』『幽霊が苦手』『退屈』『アイスが好き』『犬の守護霊が着いている』『カラオケが苦手』『六月三日誕生』『時計を壊してしまった』『父親がいない』『十一歳』『笹野碧』『あれ?』『十二年後に……』『AB型』『人見知り』『最近ハマっているのは、ダンス』
何十人もの情報が一気に見えて、気持ち悪い。
俯いたけど、まだ頭がぐわんぐわんする。
「大丈夫?」
藤間くんが隣に来て、声をかけてきた。
顔は見なかったけど、声で誰か分かった。
「無理しないで」
心配そうな声。
沢山の人が見えてしまう状況にわたしの胸はドキドキする。
(もし、これで本当に、鈴ちゃんがとっていたら、わたしは自分の目を本当に信じれなくなる……ううん、わたしは鈴ちゃんを信じているんだ。大丈夫)
「鈴ちゃんのとこ、行きたい」
隣で藤間くんの息を呑んだ声が聞こえた。
少し間があって、藤間くんは言った。
「赤穂さん、ちょっとこっち来てほしい」
その言葉にクラスが、ざわざわしている。
「大丈夫だから」
優しい声だけど、鈴ちゃんには怖く感じたのか、動かなかったらしい。
「ほらほら、行きなよ」
そんな、背中を押す声が聞こえる。
ちょっとして、足音がわたしの前で止まった。
「前に来たよ」
藤間くんもそう言ってくれる。
「うん」
(大丈夫、わたしは鈴ちゃんを、自分の目を信じている)
決心して、顔をあげた。
『なに?』『いじっぱり』『赤穂鈴』『困惑』『アイドルに憧れている』『疑っているの?』『ツーサイドアップ』『ストレス』『おしゃれが好き』『細い体』『A型』『わたし、取って無いのに』
たくさんの情報の中から、確信的な情報を見れて、ほっと一息ついた。
(ああ、良かった。やっぱり違う)
これ以上は見る必要はないので、目を閉じる。
「大丈夫だよ、鈴ちゃん。分ってる、鈴ちゃんは、リボンを取って無い」
わたしの言葉に、クラスがまたざわってした。
一呼吸おいて、目を開ける。
「わたしのリボン取った人、このクラスにいるの? いるなら、だれ?」
『何の話?』『百三十七㎝』『ボブカット』『虫取りが好き』『早口言葉が苦手』『苛立ち』『男』『昨日、母と喧嘩した』『唐揚げが食べたい』『先生:七十』『夕陽輝』『ハートが好き』『十歳』『お腹が弱い』
沢山の情報の中、一つの情報が見れた。
『なんで、鈴ちゃんじゃないってバレているの?』
その情報を、その心の声を見せたのは、ねおちゃんだった。
わたしは、ねおちゃんに近づく。
「わたしのリボン、どこにやったの?」
「あ、え……」
ねおちゃんは、怯えたような声を出す。
沢山の情報を身すぎたのか、脳がじんじんとうるさい。それでも、ねおちゃんだけを見る。
『百田ねお』『藤間統治:九十五』『焦り、困惑』『リーダータイプ』『四年後に初めて彼氏ができる』『父は仕事人間』『可愛いものが好き』
ねおちゃんの情報がどんどん見える。
頭も、目も、鼻も熱い。
『どうしてばれたの?』
その心の声を見た瞬間、ねおちゃんの動きが見えた。
過去が流れ込んできたんだ。
体操着を着ているねおちゃんが、教室の棚と壁の隙間に、わたしの白いリボンを落としている。
「あそこにあるんだね」
ねおちゃんから目を離し、ねおちゃんの記憶で見た、棚と壁の隙間を見る。
でも、ここまでで頑張りすぎたらしい、脳がブラックアウトした。
0
あなたにおすすめの小説
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
ノースキャンプの見張り台
こいちろう
児童書・童話
時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。
進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。
赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。
まぼろしのミッドナイトスクール
木野もくば
児童書・童話
深夜0時ちょうどに突然あらわれる不思議な学校。そこには、不思議な先生と生徒たちがいました。飼い猫との最後に後悔がある青年……。深い森の中で道に迷う少女……。人間に恋をした水の神さま……。それぞれの道に迷い、そして誰かと誰かの想いがつながったとき、暗闇の空に光る星くずの方から学校のチャイムが鳴り響いてくるのでした。
【奨励賞】氷の王子は、私のスイーツでしか笑わない――魔法学園と恋のレシピ【完結】
旅する書斎(☆ほしい)
児童書・童話
【第3回きずな児童書大賞で奨励賞をいただきました】
魔法が学べる学園の「製菓科」で、お菓子づくりに夢中な少女・いちご。周囲からは“落ちこぼれ”扱いだけど、彼女には「食べた人を幸せにする」魔法菓子の力があった。
ある日、彼女は冷たく孤高な“氷の王子”レオンの秘密を知る。彼は誰にも言えない魔力不全に悩んでいた――。
「私のお菓子で、彼を笑顔にしたい!」
不器用だけど優しい彼の心を溶かすため、特別な魔法スイーツ作りが始まる。
甘くて切ない、学園魔法ラブストーリー!
オバケの謎解きスタンプラリー
綾森れん
児童書・童話
第3回きずな児童書大賞 奨励賞をいただきました! ありがとうございます!
――七不思議を順番にめぐると、最後の不思議「大階段踊り場の鏡」に知らない自分の姿が映るんだって。
小学六年生の結菜(ユイナ)が通う三日月(みかづき)小学校では、そんな噂がささやかれていた。
結菜は難関中学に合格するため、塾の夏期講習に通って勉強に励んでいる。
だが一方で、自分の将来にひそかな期待と不安をいだいてもいた。
知らない自分を知りたい結菜は、家族が留守にする夏休みのある夜、幼なじみの夏希(ナツキ)とともに七不思議めぐりを決意する。
苦労して夜の学校に忍び込んだ二人だが、出会うのは個性豊かなオバケたちばかり。
いまいち不真面目な二宮金次郎のブロンズ像から、二人はスタンプラリーの台紙を渡され、ルールを説明される。
「七不思議の謎を解けばスタンプがもらえる。順番に六つスタンプを集めて大階段の鏡のところへ持って行くと、君の知らない君自身が映し出されるんだ」
結菜と夏希はオバケたちの謎を解いて、スタンプを集められるのか?
そして大階段の鏡は二人に何を教えてくれるのか?
思春期に足を踏み入れたばかりの少女が、心の奥底に秘めた想いに気付いてゆく物語です。
【シスコン】シスターコントロール ~兄のダンジョン探索を動画サイトで配信して妹はバズりたい!~【探索配信】
釈 余白(しやく)
児童書・童話
西暦202x年、日本を襲った未曾有の大災害『日本列島地殻変動』により日本での生活環境は一変してしまった。日本中にダンジョンと呼ばれる地下洞窟が口を開き、周辺からは毒ガスが噴出すると言った有様だ。
異変から約一年、毒ガスの影響なのか定かではないが、新生児の中に毒ガスに適応できる肺機能を持った者たちが現れ始めていた。さらにその中の数%には優れた身体能力や頭脳を持つ者や、それだけでなく従来とは異なった超能力と言える特殊な異能力を持つ者もいた。
さらに八十年ほどが過ぎて二十二世紀に入ったころには人々の生活は落ち着き、ダンジョンを初めとする悪辣な環境が当たり前となっていた。そんなすさんだ世の中、人々の娯楽で一番人気なのはダンジョンを探索する限られた者たちの様子をリアルタイムで鑑賞することだった。
この物語は、ダンジョン探索に情熱を燃やす綾瀬六雨(あやせ りくう)と、その様子を配信してバズりたい綾瀬紗由(あやせ さゆ)という、どこにでもいるごく普通の兄妹が身近な人たちと協力し楽しく冒険するお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる