19 / 31
19・学校の二十一不思議
しおりを挟む「問題は、無さそうだね。体調の方はどう?」
「大丈夫だよ」
放課後、円地くんちの離れ、わたしが長く寝泊まりしていたあの場所で、リボンの確認をしたり、わたしの体調を検査する。
さっきは、ちょと無茶しちゃったから。
「ごめんね、藤間くん」
そのせいで、今日やる予定だった藤間くんのお手伝いはなくなってしまった。
「大丈夫だよ、急ぎではあるけど、今日しないといけない事ではないから」
優しく微笑んだ姿は、王子様らしく、ねおちゃんはこういうところを好きになったのかなって思った。
「ありがとう」
「お前ら、終わった? それなら夜ご飯持ってくるぞ」
呼ばれたからと母屋の方に行っていた、円地くんがわたし達に声をかけた。
もうそんな時間か。
円地くん越しに見える外は、暗くなっている。
今日は様子を見るために、泊まる事になっているから焦りはしないけど、もうそんな時間なんだ。
(円地くんのお母さんのご飯、久しぶりで楽しみだな)
美味しかったあの味がまた食べれるとは。
「藤間も食ってけよ。もう、用意されているから」
「うん」
「どこで食べるの? 運ぶなら手伝うよ」
立ち上がった時だった。
ぐらり、地面が揺れた気がした。
(あ、この感覚)
世界が揺れて、視界がぐにゃりと揺れて、気がついた時は、真っ暗な部屋の中にいた。
明るい藤間くんの離れの光景が一瞬で変わっていた。
(前は目隠ししていたけど、してなかったらこんな感じなんだ)
「ちっ、はぁー」
面倒くさそうにため息をついたのは、円地くんだった。
少し離れていたのに、今はとても近くにいる。
(円地くんが一緒で良かった。藤間くんは?)
探すため、この部屋を見ると、黒板があるから、学校? でも、普通の教室ではないな。沢山の物がある、倉庫?
そんな場所だった。
そして、藤間くんは居なかったけど、代わりに一人、人が居る。
「神の使いです」
それは、神社にいた巫女だった。
黒い髪、巫女服を着た整った顔の彼女は、今日も目を瞑ったまま、喋る。
「願われた訳ではありません。この地の霊気が乱れているのです。七つの不思議を制定し、この地の霊気を整えてください」
巫女は、それだけ伝えると、テレビを消したように、一瞬で消えてしまった。
「どういうこと?」
あまり分からなくて、円地くんに尋ねると、面倒くさそうながらも説明してくれる。
「神の使いをするってのは、人が願った時と、神がどうにかしようって思った時の二種類有るんだよ」
二本立てていた指を一本にする。
「そんで、今回は神がどうにかしようって思ったらしい。で、神がどうにかしようって思う時は、基本、自分の領地で何か起きた時だ。……こっちこい」
窓の外を見ていた、円地くんの側に寄ると、わたしにも窓から外が見える。そこに見えたのは、
「学校の中庭? あれ? これって、うちの小学校!?」
とても見覚えるの有る庭と、その奥に校舎があった。この部屋には見覚えないけど、場所的には北校舎の三階だろう。
「あの神の領地にある学校なら、もしかしたらって思ったけど、そうみたいだな。霊気をどうにかしろってよ」
「七不思議を制定しって、巫女は言ってたよね。どうやって、制定するの?」
わたしの見る力と、円地くんの切る力は使うんだろうけど。
「お前、この学校の七不思議知らねぇ?」
「え、わかんない」
ホラー系とかあんまり、興味無かったし。友達少ない方だからか、聞いた事が無い。
円地くんは、うげっと面倒くさそうにする。
「マジかよ」
「円地くんは知らないの?」
「知らねー。そんな事話すやついねー」
わたしと同じだ。
「じゃあ、どうするの?」
わたしが今まで神の使いをする時は、いつもは、見るべき人がいた。
でも、今回みたいな何を見るべきか定まってないことは初めてで、どうすればいいか分らない。
「とりあえず、外出るか」
首をひねった後、円地くんは、廊下に繋がるドアを開けた。
その瞬間、
「こんな所で何しているんだ?」
声をかけられた。
「うぉ」
「ひゃああああ」
「うるさっ」
小さく驚いた円地くんの声を掻き消すくらい、叫び声を上げてしまったわたしに、円地くんは耳をふさぐ。
「ごめん、でも、その人、その人!」
わたしが指を指すのは、ドアを開けた先にいた、声をかけてきた男の子だ。
身長がわたしより高いから、わたしよりは年上に見えるけど、小学生っぽい。
Tシャツに、七部だけのポッケがいっぱいついたズボン。
昼間なら、いくらだっていそうな姿だけど、
「透けてる! その人、幽霊じゃない!?」
「おっ、正解」
身体が透けて、彼の先にある廊下まで見えてしまう男の子は、ニッと笑った。
(フランクだなぁ)
その愛嬌に、怖がっているのが馬鹿らしくなる。
「お前、こんなとこで何してんだ?」
だけど、円地くんは警戒心を解いてないみたいだ。鋭い目で睨むから、幽霊は両手を上げる。
「おっと、そんな怖い顔で見ないでくれよ。俺はただ、変な気配がして様子を見に来ただけだから」
円地くんは、見極めるようにじっと見る。
(わたしも、限定解除して見た方が良いのかな?)
「二人はなんでここに? さっきまでは居なかったよな」
手を上げたまま、幽霊は尋ねてくる。
わたしが言っていいのか分からなくて、円地くんを見る。
円地くんは、難しい顔のまま答えた。
「最近、この地の霊気が乱れているから、七不思議で形を作ろうとしているんだ」
わたしにはよく分からなかったけど、幽霊には分ったらしい。
パッと、顔を明るくした。
「まじ! それ、すごい助かるよ。最近、夜の学校大運動会ってくらい、色々騒がしくて、大変な事になっているんだよ。俺も、二人に見えるくらいの霊力をゲットしちゃったりね」
「見たいだな。お前、昼間も居るのか? 見たことない」
「居る居る。夜が特に霊気大暴走して、しっちゃかめっちゃかになってるんだ」
「なるほどな」
二人は通じ合っているみたいだ。
円地くんの、怖い気配も薄くなっていく。
「もし必要なら、案内しようか? この学校、今、二十一不思議あるけど」
(二十一? 普通、七不思議っていうよね。この学校って、そんなに噂があるの?)
「案内してくれるなら、助かるわ。お前もそれでいいよな」
円地くんに聞かれて、頷く。
「うん、良いけど」
わたしより詳しい円地くんがそれで良いって思ったら、多分良いんだろう。
それより、聞きたいことがあった。
「七不思議を制定って、どうしてそんな事をするの?」
霊気が乱れいるってのが、良くないのは聞いてて何となく分かったけど。
「あー、虹で例える」
「虹?」
「例えば、青空の写真があったとして、その写真に沢山の色が適当に塗られていたら、それは空の写真かは分らないだろ」
「うん」
カラフルな絵だなってなると思う。
「だけど、どうしてもその青空に色を乗せなきゃいけない。だから、色を虹みたいに一本の線としてまとめるんだ。虹ってのは、空の写真にあっても、馴染むし、書きやすい」
「うん」
ここまでも、わかる。
青空の写真が学校のことで、色が霊気、虹の形ってのがたぶん、七不思議なんだろう。
「でも、形が決まったとしても、沢山の色が有るとごちゃごちゃするし、虹は七色って決まっているだろ。七色じゃなかったら、虹とは思われないかもしれないから、七色にするんだ」
「だから、七不思議の形で、七つだけ選ぶの?」
「おお」
なるほど、これが、七不思議を制定したい、神様とか、幽霊の気持ちなのか。
「じゃあ、今は二十一個ある色を、七色に厳選するってこと?」
「そう」
「どうやって?」
「ここは小学校だからな。危険なのを排除して、七不思議する。で、お前は、何を減らすべきか見る係」
指をさされる。
それ、分かったけど。
「七不思議って見ること出来るのかな?」
わたしのは、人を見る目なんだけど。
「たぶん出来る。とりあえず、全部見て回るぞ」
0
あなたにおすすめの小説
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
ノースキャンプの見張り台
こいちろう
児童書・童話
時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。
進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。
赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。
まぼろしのミッドナイトスクール
木野もくば
児童書・童話
深夜0時ちょうどに突然あらわれる不思議な学校。そこには、不思議な先生と生徒たちがいました。飼い猫との最後に後悔がある青年……。深い森の中で道に迷う少女……。人間に恋をした水の神さま……。それぞれの道に迷い、そして誰かと誰かの想いがつながったとき、暗闇の空に光る星くずの方から学校のチャイムが鳴り響いてくるのでした。
【奨励賞】氷の王子は、私のスイーツでしか笑わない――魔法学園と恋のレシピ【完結】
旅する書斎(☆ほしい)
児童書・童話
【第3回きずな児童書大賞で奨励賞をいただきました】
魔法が学べる学園の「製菓科」で、お菓子づくりに夢中な少女・いちご。周囲からは“落ちこぼれ”扱いだけど、彼女には「食べた人を幸せにする」魔法菓子の力があった。
ある日、彼女は冷たく孤高な“氷の王子”レオンの秘密を知る。彼は誰にも言えない魔力不全に悩んでいた――。
「私のお菓子で、彼を笑顔にしたい!」
不器用だけど優しい彼の心を溶かすため、特別な魔法スイーツ作りが始まる。
甘くて切ない、学園魔法ラブストーリー!
オバケの謎解きスタンプラリー
綾森れん
児童書・童話
第3回きずな児童書大賞 奨励賞をいただきました! ありがとうございます!
――七不思議を順番にめぐると、最後の不思議「大階段踊り場の鏡」に知らない自分の姿が映るんだって。
小学六年生の結菜(ユイナ)が通う三日月(みかづき)小学校では、そんな噂がささやかれていた。
結菜は難関中学に合格するため、塾の夏期講習に通って勉強に励んでいる。
だが一方で、自分の将来にひそかな期待と不安をいだいてもいた。
知らない自分を知りたい結菜は、家族が留守にする夏休みのある夜、幼なじみの夏希(ナツキ)とともに七不思議めぐりを決意する。
苦労して夜の学校に忍び込んだ二人だが、出会うのは個性豊かなオバケたちばかり。
いまいち不真面目な二宮金次郎のブロンズ像から、二人はスタンプラリーの台紙を渡され、ルールを説明される。
「七不思議の謎を解けばスタンプがもらえる。順番に六つスタンプを集めて大階段の鏡のところへ持って行くと、君の知らない君自身が映し出されるんだ」
結菜と夏希はオバケたちの謎を解いて、スタンプを集められるのか?
そして大階段の鏡は二人に何を教えてくれるのか?
思春期に足を踏み入れたばかりの少女が、心の奥底に秘めた想いに気付いてゆく物語です。
【シスコン】シスターコントロール ~兄のダンジョン探索を動画サイトで配信して妹はバズりたい!~【探索配信】
釈 余白(しやく)
児童書・童話
西暦202x年、日本を襲った未曾有の大災害『日本列島地殻変動』により日本での生活環境は一変してしまった。日本中にダンジョンと呼ばれる地下洞窟が口を開き、周辺からは毒ガスが噴出すると言った有様だ。
異変から約一年、毒ガスの影響なのか定かではないが、新生児の中に毒ガスに適応できる肺機能を持った者たちが現れ始めていた。さらにその中の数%には優れた身体能力や頭脳を持つ者や、それだけでなく従来とは異なった超能力と言える特殊な異能力を持つ者もいた。
さらに八十年ほどが過ぎて二十二世紀に入ったころには人々の生活は落ち着き、ダンジョンを初めとする悪辣な環境が当たり前となっていた。そんなすさんだ世の中、人々の娯楽で一番人気なのはダンジョンを探索する限られた者たちの様子をリアルタイムで鑑賞することだった。
この物語は、ダンジョン探索に情熱を燃やす綾瀬六雨(あやせ りくう)と、その様子を配信してバズりたい綾瀬紗由(あやせ さゆ)という、どこにでもいるごく普通の兄妹が身近な人たちと協力し楽しく冒険するお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる