貞操逆転世界の温泉で、三助やることに成りました

峯松めだか(旧かぐつち)

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第201話 番外 舞台裏 権力者の憂鬱(イサギ視点)

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「うわあ……」
 上がってきた報告書を見て、思わず呻くように溜息をついた。
「良かったですね? 今回は水際セーフってヤツですよ?」
 首相官邸の執務室、幕僚長のフクロウの報告を受ける、主に例の男性、翡翠の護衛にと、虎の子なハクトとオジロの姉妹と、その部下嫁達の活躍だ。
 直接護衛と成ったハチクマ達は今の所活躍して居ない、外縁部の水際部隊が活躍している。
 派遣後の撃墜数、キルスコアの増え方が尋常じゃなかった。
 いや、殺して居る訳では無いので、殺数と言うのは違うが、不審船のゴムボートとか、不審な飛行物体、偵察用ドローンとか、ソレに付随する密入国な不審者の逮捕、確保のアシストが多い事多い事。
「前回は、油断してて、後手に回って上陸されて、怪我人出したりしてますからね?」
 そういう意味では、ちゃんと前例から学習出来ている。
 前回、琥珀様の代では、本格的に男性が不足気味になって来た。そんな時代に隣国からの男性誘拐事件とか多発したのだ。
 あの時は、琥珀お父様は無事だが、義理の母達とか、結構な怪我人が出て大騒ぎになった。
 それ以降だ、男性には必ず護衛官が着く様に成ったのは。
 特に精液のランクが高い男性は、精液自体が国際的に取引される戦略物資として、より一層の防衛をと言う事で、Aランクであった琥珀お父様の護衛は、最終的に数百人規模となり、あの温泉周辺の商店街は、実質的に自衛隊の外部基地みたいな扱いとなって居た。
 ノリと勢いでSランクを新設しようと成ったので、最終的にそれ以上の規模で護衛を展開する事に成るだろう。
 今回は正式な精液ランクの公表を待たずにこの騒ぎで有る、国内にスパイの類が潜り込んでいるのは明白であった。
「まあ、護るのはあいつ等に任せて、政治的なのはこっちの仕事か……」
 思わずぼやく。
 捕まえた奴らの処遇は、政治的に面倒くさい。
 まあ、国籍を明らかにしない以上、不審な密入国者止まりな訳だが。
 罰金と言う名の身代金も、母国が払う様子は無い。
 母国が知らぬ存ぜぬを貫く以上、無縁仏だ。
 せいぜい奉仕活動と言う名の無給に近い労働に励んでもらうだけだが。
「頑張ってくださいよ?」
 フクロウが苦笑交じりに、若干他人事の様に応援して来る。
「そっちも当事者じゃないですか……」
 恨みがましく言って見る。
「シビリアンコントロールされてますから、軍人に決定権なんて物は無いのですよ」
「おのれ他責な軍人思考め……」
「そんなの言うのなら、とっとと憲法改正してくださいよ」
「うげ……」
「藪蛇ですね」
 フクロウが笑う、お約束の政治的なジョークと言う奴だ。
 200年ぐらい前に戦争に負けて軍国主義をやめろと酷い憲法を押し付けられ、未だに全部直しきれていない。
「先にスパイ防止法でも立ち上げてくださいよ」
 因みに、立場的に私、イサギは総理大臣であるのだが、分類的に部下扱いの筈の幕僚長のフクロウは義理とはいえ母だったり、義理の姉だったりするので、結局身内の贔屓目とか何やらで強く出れ無いのだ。
 琥珀様のお手付きの範囲が、お客様達と従業員達、護衛官チームと自衛隊チームを満遍なくと言った形になって居た為、自衛隊関係、防衛関連の嫁が多いのだ。
 という事で、私は悲しい中間管理職と言う事で、総理の上は何だって? 言うまでも無い、民衆、民草、ヤタ御婆様である……
 皆が思っているより、あのダモクレスの剣は勢い良く落ちて来るので、関係者一同戦々恐々としているのだ。

「まあ、一段落したら温泉旅行で里帰りだな?」
 例の男性、翡翠の顔を見なければ。
「イベント好きのあの方々が、結婚式を大々的にやれば公務に成りますよ?」
 フクロウが苦笑を浮かべる。
「………巻き込まれる規模が、私等だけで終わる筈が無いじゃないか……」
 その光景がありありと思い浮かべられて困る。
 琥珀時代の最後に葬式が国葬に成り、どれだけの騒ぎになったかを忘れた訳じゃあるまい。
「国内規模で、多分、セキレイ様辺りも出るだろうと?」
「多分、目いっぱい巻き込んで自慢しに来る」
「「ははははははははは」」
 二人で乾いた笑いを浮かべた。

 後日
「やると思ったがやりやがった!」
 動画配信に雑誌のモデルに、何故かルリの新曲てんこ盛りで、大々的にアピールを通り越して、大炎上していた。
「まあ、平常運転ですね」
「護衛、もう一部隊突っ込むか?」
「それとなく、増強程度で良いでしょう」
 こっちの裏方仕事は、まだしばらく忙しそうだった。

 追申
 まあ、裏方もなんだかんだ、楽しく忙しい日々です。
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