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第15話 ミサゴの葛藤と問答、大拡散(ちょっと戻って拾った後)
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下種な下心がなかった訳じゃない。あわよくばちょっと良い事が返ってくれば良いなあなんて、そんなことを考えていたのは確かだが。
あんな所に人が転がっていたらまず助けるのが人の道という物で...
先ほど親不知海岸の辺りで救助した翡翠さんと数キロ先の駐車場まで歩道を歩きながら、内心で延々と言い訳を述べる。もし拒絶されて訴えられたり、警察に職質された場合のシミュレーションだ。触られた、見られた、匂いを嗅がれた、見たくもないものを見せられた何て、もはや何が何だかの罪状で痴女として訴えられた例は枚挙にいとまがないので、どこまでが大丈夫なのか全くわからない。
自分で自分の家に誘ったのだというのに、お世話になりますと言われたというのに自分自身何が何やらなのだ。
ぐへへ そこだ! 行け! 押し倒せ! 搾り取れ!
何てぬこぬこ動画なんかでは、創作世界で皆息をそろえて合いの手を入れているが、実際にその手前状態になると何をして良いのか分からない。
抱け!抱け!抱くんだ!
そんな叫び声を上げる『タイムスリップのすたる婆』のきぶり姿で有名な一コマが脳によぎる、今回逃がしたら……。
何て事を考えると寒くも無いのに震えが走る。
ぎゅっ
(ひょえ……)
内心で叫び声を上げたが、手をとっさに引っ込めなかった事は自分を褒めても良い気がする。
先ほど自分から手を取って抱えこんだはよかったのだが、上の道に上がるルートが結構険しく狭かったので、やむなく離してしまっていたのだ。もう一回手をつなぎたいと思っても、きっかけが分からず寂しい思いをしていたわけだが……
「汗冷えしました?すいません、無理させちゃって……」
近くを歩いていても見えるぐらいに震えていたのだろうか、そんな一言と共に、手を握られた。
「いえ......そんなことは.....」
今度は熱い、手から熱が伝わって全身が熱い、顔や耳まで熱くなっている気がする。
手汗とか大丈夫だろうか?
「今温めるとしてはこれぐらいしか出来ませんので、すいませんね?」
申し訳なさそうに苦笑された。
(はわわわわわ)
「じゅ……じゅうぶんです……」
もっと色々つなげたいなんて最悪な下ネタを連想する頭を内心で殴りつけて黙らせ。
つなげ方はコレじゃなくてもっと指と指をだな? 何て余計なことを妄想するのを必死に抑え込む。
コレで今は十分なのだ、今は外だし、これから家に連れ込むのだし。
口説く時間もいっぱいあるはずだ、無理矢理にこれから連れて帰るから場を整えてくれと母に頼んだのだし、そっちはばっちりのはず。
「ところで、ここの地名は?」
翡翠さんが不意に話しかけて来た。
「親不知海岸、旧北陸街道ですね?」
古くは日本海側を通る唯一の道なので。かなり大事な道だったらしい。
「地名的には合ってると……」
納得した様子でうなずいている。
「県は?」
「福潟県ですよ?」
「?」
不思議そうに首を傾げられた。
「新潟じゃなく?」
「古い地名ですね? 照平の大合併で福島県と新潟県が合併しまして、10年前だったかな?」
近代史的に必要性の謎な一幕である、人口が減ったのに公務員の比率がどうのと言われ、県庁所在地が人口が多く真ん中だからと会津にされた、縦軸移動はあるのだが、横軸移動がほっそいこの地方でである、面倒くさい事この上ない。
「しょうへい?昭和、平成、今和じゃなく?」
マイナーな方の元号が沢山出てきた、なんでそんなマニアックなのばかり?
「候補には有ったらしいですね?」
返答するたびに翡翠さんがショックを受けた様子でぎょっとしている、驚いているらしい。
「今は西暦で何年?」
「えーっと2100かな? 世紀末ですね?」
「そっちかあ……」
翡翠さんが開いている手で頭を抱えた、記憶の混乱が酷いらしい。
「記憶がうまく噛み合いませんか?」
「深刻に……」
ため息交じりの返答が返ってきた、と言うか、根本的に、この距離感が近いのは記憶喪失かなんかで混乱しているおかげだろうか?
一般的に男性は女性の事を毛嫌いして居て、手をつなぐなんてもってのほか、二人っきりになるような事があったら、訴えられて社会的に死ぬことを覚悟しろとか散々聞かされているのにだ。
女性に対して常に優しかったひいおじい様はかなり特殊な大人物であったらしい。
だとするとこの記憶喪失は追い風、もしかするとすぐに記憶とか戻って、手を振り払われたりするかもしれない。
ビーッ
不意に響いた音にぎょっと振り向く、顔見知りの車だった。
「何やってんのさミサゴ?」
車のパワーウインドウが下がって開き、中の人が現れる、幼馴染だったツバメだった、言うまでもないが、片親同じな腹違いの姉妹だ、この土地柄、血縁者が多いので距離感が近い。
「道案内中、邪魔するなら居ね……」
返事しつつ、内心で目いっぱい殺意を込める。
「おや、殺意が?」
ツバメがおどける。
「すいませんが、今はデート中なのでまた次回?」
翡翠さんが苦笑を浮かべて混ざって来た。
「「え………?」」
目線が翡翠さんに集中する。
「滑りました?」
照れたのか首を傾げているが、言う程照れても居ない、まだ余裕がありそうだ。
対して、私はこれデートなんだ?! と、顔を真っ赤にしつつ、内心で喝采をあげているわけだが。
「何処で捕まえやがったミサゴ?!」
ツバメが叫び声をあげた。
ああ、これ光の速さで全方位に拡散される奴だ。
この後のオチに思い至り、内心で頭を抱えた。
追伸
元ネタ『のすたる爺』やり損ねた男の悲しみを描いた名作。
多分、『やれたかも委員会』何かも強いと思われます。
良かったら感想とかお気に入り登録とか、ご協力お願いします。
あんな所に人が転がっていたらまず助けるのが人の道という物で...
先ほど親不知海岸の辺りで救助した翡翠さんと数キロ先の駐車場まで歩道を歩きながら、内心で延々と言い訳を述べる。もし拒絶されて訴えられたり、警察に職質された場合のシミュレーションだ。触られた、見られた、匂いを嗅がれた、見たくもないものを見せられた何て、もはや何が何だかの罪状で痴女として訴えられた例は枚挙にいとまがないので、どこまでが大丈夫なのか全くわからない。
自分で自分の家に誘ったのだというのに、お世話になりますと言われたというのに自分自身何が何やらなのだ。
ぐへへ そこだ! 行け! 押し倒せ! 搾り取れ!
何てぬこぬこ動画なんかでは、創作世界で皆息をそろえて合いの手を入れているが、実際にその手前状態になると何をして良いのか分からない。
抱け!抱け!抱くんだ!
そんな叫び声を上げる『タイムスリップのすたる婆』のきぶり姿で有名な一コマが脳によぎる、今回逃がしたら……。
何て事を考えると寒くも無いのに震えが走る。
ぎゅっ
(ひょえ……)
内心で叫び声を上げたが、手をとっさに引っ込めなかった事は自分を褒めても良い気がする。
先ほど自分から手を取って抱えこんだはよかったのだが、上の道に上がるルートが結構険しく狭かったので、やむなく離してしまっていたのだ。もう一回手をつなぎたいと思っても、きっかけが分からず寂しい思いをしていたわけだが……
「汗冷えしました?すいません、無理させちゃって……」
近くを歩いていても見えるぐらいに震えていたのだろうか、そんな一言と共に、手を握られた。
「いえ......そんなことは.....」
今度は熱い、手から熱が伝わって全身が熱い、顔や耳まで熱くなっている気がする。
手汗とか大丈夫だろうか?
「今温めるとしてはこれぐらいしか出来ませんので、すいませんね?」
申し訳なさそうに苦笑された。
(はわわわわわ)
「じゅ……じゅうぶんです……」
もっと色々つなげたいなんて最悪な下ネタを連想する頭を内心で殴りつけて黙らせ。
つなげ方はコレじゃなくてもっと指と指をだな? 何て余計なことを妄想するのを必死に抑え込む。
コレで今は十分なのだ、今は外だし、これから家に連れ込むのだし。
口説く時間もいっぱいあるはずだ、無理矢理にこれから連れて帰るから場を整えてくれと母に頼んだのだし、そっちはばっちりのはず。
「ところで、ここの地名は?」
翡翠さんが不意に話しかけて来た。
「親不知海岸、旧北陸街道ですね?」
古くは日本海側を通る唯一の道なので。かなり大事な道だったらしい。
「地名的には合ってると……」
納得した様子でうなずいている。
「県は?」
「福潟県ですよ?」
「?」
不思議そうに首を傾げられた。
「新潟じゃなく?」
「古い地名ですね? 照平の大合併で福島県と新潟県が合併しまして、10年前だったかな?」
近代史的に必要性の謎な一幕である、人口が減ったのに公務員の比率がどうのと言われ、県庁所在地が人口が多く真ん中だからと会津にされた、縦軸移動はあるのだが、横軸移動がほっそいこの地方でである、面倒くさい事この上ない。
「しょうへい?昭和、平成、今和じゃなく?」
マイナーな方の元号が沢山出てきた、なんでそんなマニアックなのばかり?
「候補には有ったらしいですね?」
返答するたびに翡翠さんがショックを受けた様子でぎょっとしている、驚いているらしい。
「今は西暦で何年?」
「えーっと2100かな? 世紀末ですね?」
「そっちかあ……」
翡翠さんが開いている手で頭を抱えた、記憶の混乱が酷いらしい。
「記憶がうまく噛み合いませんか?」
「深刻に……」
ため息交じりの返答が返ってきた、と言うか、根本的に、この距離感が近いのは記憶喪失かなんかで混乱しているおかげだろうか?
一般的に男性は女性の事を毛嫌いして居て、手をつなぐなんてもってのほか、二人っきりになるような事があったら、訴えられて社会的に死ぬことを覚悟しろとか散々聞かされているのにだ。
女性に対して常に優しかったひいおじい様はかなり特殊な大人物であったらしい。
だとするとこの記憶喪失は追い風、もしかするとすぐに記憶とか戻って、手を振り払われたりするかもしれない。
ビーッ
不意に響いた音にぎょっと振り向く、顔見知りの車だった。
「何やってんのさミサゴ?」
車のパワーウインドウが下がって開き、中の人が現れる、幼馴染だったツバメだった、言うまでもないが、片親同じな腹違いの姉妹だ、この土地柄、血縁者が多いので距離感が近い。
「道案内中、邪魔するなら居ね……」
返事しつつ、内心で目いっぱい殺意を込める。
「おや、殺意が?」
ツバメがおどける。
「すいませんが、今はデート中なのでまた次回?」
翡翠さんが苦笑を浮かべて混ざって来た。
「「え………?」」
目線が翡翠さんに集中する。
「滑りました?」
照れたのか首を傾げているが、言う程照れても居ない、まだ余裕がありそうだ。
対して、私はこれデートなんだ?! と、顔を真っ赤にしつつ、内心で喝采をあげているわけだが。
「何処で捕まえやがったミサゴ?!」
ツバメが叫び声をあげた。
ああ、これ光の速さで全方位に拡散される奴だ。
この後のオチに思い至り、内心で頭を抱えた。
追伸
元ネタ『のすたる爺』やり損ねた男の悲しみを描いた名作。
多分、『やれたかも委員会』何かも強いと思われます。
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