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第23話 交渉
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「で、どこの出版社ですか?」
「申し遅れました、こういうものです」
記者さんが胸元の名刺ケースから名刺を取り出し、テーブルに置きこちらの目の前に突き出してくる。流れるように手元の手提げ鞄から一冊の雑誌を取り出した。
「この辺の記事書いてます」
袋とじグラビアと何とも言えない写真と、体当たり温泉レポ系の記事の後ろに、名刺の名前が書いてあった。
『ヨツバ出版 ルポライター 土井 加奈子』
「なるほど、分かりやすい」
面接にポートフォリオを持ち込むことの大事さを教えてくれた。
「ところで、写真撮られたのもそうですけど、色々使われると思いますけど、翡翠さん的に平気ですか?」
ミサゴがごそごそと小声で言いながら、目線をそらし、言葉を濁している。
(どう使います?)
と、分かっていても言わせたいニヤニヤ笑いのコンボが、こういう時に使うのだと浮かんで来たが、スルーする。
「自分の写真の使い道、それ自体は何されても多分平気だと思います」
知ってますよと言外に示す。色々なネタに使われるのだろうけど。知らんところで使われる分には平気だ。
「自分自身の事よりは、この旅館とミサゴさんにご迷惑かからなければ……」
その一言に、ミサゴがぱちくりと瞬きをする、キョトンとした後に、にっこりと強めの笑みを浮かべた。
「じゃあ、任されますね?」
「はい、ご随意に?」
その答えにミサゴが大きく息を吸い込んだ。
「この翡翠さんは私の所の看板息子です、私らのところの庇護下にありますので、以降の交渉は私が引き受けます」
そう言ってミサゴが仲居さんをちょいちょい手招きすると、ミサゴの名刺ケースが出て来た、当人が持っているものじゃないらしい。
名刺を相手に渡すと、記者の人が恭しく受け取った。
「ひとまず、どんなの撮りました? 見せてください」
記者の人が大人しくスマホをテーブルに置いた、テーブルの上で撮られた画像が操作に合わせてスライドショーされていく、ミサゴが少し赤くなった。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫です、あんまりエロくもありませんし?」
全方位着衣撮影である、そんな目で見えるかと言われても困る。
「……………分かりました、セーフという事で」
結構なタメがあったので、ミサゴ的に割と何かあったらしい。
記者の人達があからさまにホッとした表情を浮かべた。
「出版前に献本要求と、センスがない記事だったら男性保護法使ってでも潰します、後はギャラですかね?」
「この辺で」
スマホが取り出される、いくら払うかと、決済決定ボタンが表示されていた。
(いちじゅうひやくせんまんじゅうまん・・・・・)
50万という数字が表示されていた。
(うわぁ……)
思わず遠い目をする、多分、額面通りではないだろう、年が下ってある程度インフレしているはずなので、自分の働いていたあっちの時空の通貨価値とは違うはずだ。
そんなことを考えて、ちょっと写真撮られただけで向こうの月収より取れると言う事に頭がぐらぐらするのを、必死にせき止めた。
「相場的には?」
小さく聞く。
「流石に其処までは私も不案内ですから……」
ミサゴも首をかしげる。ドヤって出て来たのに最後が微妙であった。
「そりゃあ前金じゃな? その号、売り上げの1%でも追加で寄こさんか」
いつの間にかヤタちゃんがどや顔で混ざって来た。ミサゴ自分ヤタちゃんの順番で挟まれていた。
「そこまでは……私の権限では……」
「ふぅん? お主の所はヨツバ社か……という事は……?」
名刺を確認する、そのままスマホを取り出して連絡する。
「おう、儂じゃ、お主の所のが儂の所で色々撮影してのう、今この時点では秘蔵っ子なんじゃが、どうしてもと言う事でな?」
妙に手慣れた感じで連絡している。
「おうおう」
にこやかに相づちを打っている。
「掲載号の売り上げ増えた利益分の5%じゃな?」
「増えてる………」
エグイ値上げに誰かが呟いた。
なんと言うかあっという間にエグい数字が出てきた。
「よし、まとまったな? 後で書面寄越せよ?」
「ん」
ちょっと代われと記者の人にヤタちゃんがスマホを向ける。
渡すのかと思いきや、スピーカーにしてテーブルに置いた。
「売れるんだろうな?」
切羽詰まって居る感じの、女性らしいがドスの効いた声が響いた。
「ひゃい! 間違いなく!」
裏返った声で記者の人が答える。
「じゃあ任せた! 良いの撮って来い!」
割と信頼感はあるらしい。
「ひゃい!」
ぷち
そのまま通話が切れた、記者の人が頭から煙を出しそうな勢いでぐったりと突っ伏した。
「頑張ってください、私でよかったら色々協力しますんで……?」
お互い社会人として、他人事とも思えなかった。
「色々? 何でも?」
ぎゅるんと顔をあげ、ギランと目を光らせてこちらを見た。
「できる範囲でなら?」
苦笑しながら答えて見せた。
周囲の目線がギラっと光った気がした。
「まあ、今はちょっと控えろ、今はこやつが一番じゃ」
ヤタちゃんが、右手の親指でミサゴを指さし、今は察して外せと言う感じで左手でしっしっと手を振る。
それで色々察したのか、記者の人達は大人しく引き下がった。
ぺこりと会釈した後、そのままカウンターでなんだか手続きを始めたので、今はコレで終わりという事らしかった。
はぁ……
独特の緊張感から解放されて、小さく溜め息をついた。
追伸
EX大〇とか、週◯現代とか、混浴限定るる〇もどきとか、その辺のエロ本にはならんけど面白くもないヌード写真が袋とじで変なポエムと共に載ってるアレ系の情報雑誌をご想像ください。
100年なら10倍インフレとかも割とあるんで通貨価値はあてにならないです、戦時中の一円はそれなりの価値がありますが、今では塵芥みたいな扱いなので、そんなもんを想像。
良かったら感想とかお気に入り登録とか、ご協力お願いします。
「申し遅れました、こういうものです」
記者さんが胸元の名刺ケースから名刺を取り出し、テーブルに置きこちらの目の前に突き出してくる。流れるように手元の手提げ鞄から一冊の雑誌を取り出した。
「この辺の記事書いてます」
袋とじグラビアと何とも言えない写真と、体当たり温泉レポ系の記事の後ろに、名刺の名前が書いてあった。
『ヨツバ出版 ルポライター 土井 加奈子』
「なるほど、分かりやすい」
面接にポートフォリオを持ち込むことの大事さを教えてくれた。
「ところで、写真撮られたのもそうですけど、色々使われると思いますけど、翡翠さん的に平気ですか?」
ミサゴがごそごそと小声で言いながら、目線をそらし、言葉を濁している。
(どう使います?)
と、分かっていても言わせたいニヤニヤ笑いのコンボが、こういう時に使うのだと浮かんで来たが、スルーする。
「自分の写真の使い道、それ自体は何されても多分平気だと思います」
知ってますよと言外に示す。色々なネタに使われるのだろうけど。知らんところで使われる分には平気だ。
「自分自身の事よりは、この旅館とミサゴさんにご迷惑かからなければ……」
その一言に、ミサゴがぱちくりと瞬きをする、キョトンとした後に、にっこりと強めの笑みを浮かべた。
「じゃあ、任されますね?」
「はい、ご随意に?」
その答えにミサゴが大きく息を吸い込んだ。
「この翡翠さんは私の所の看板息子です、私らのところの庇護下にありますので、以降の交渉は私が引き受けます」
そう言ってミサゴが仲居さんをちょいちょい手招きすると、ミサゴの名刺ケースが出て来た、当人が持っているものじゃないらしい。
名刺を相手に渡すと、記者の人が恭しく受け取った。
「ひとまず、どんなの撮りました? 見せてください」
記者の人が大人しくスマホをテーブルに置いた、テーブルの上で撮られた画像が操作に合わせてスライドショーされていく、ミサゴが少し赤くなった。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫です、あんまりエロくもありませんし?」
全方位着衣撮影である、そんな目で見えるかと言われても困る。
「……………分かりました、セーフという事で」
結構なタメがあったので、ミサゴ的に割と何かあったらしい。
記者の人達があからさまにホッとした表情を浮かべた。
「出版前に献本要求と、センスがない記事だったら男性保護法使ってでも潰します、後はギャラですかね?」
「この辺で」
スマホが取り出される、いくら払うかと、決済決定ボタンが表示されていた。
(いちじゅうひやくせんまんじゅうまん・・・・・)
50万という数字が表示されていた。
(うわぁ……)
思わず遠い目をする、多分、額面通りではないだろう、年が下ってある程度インフレしているはずなので、自分の働いていたあっちの時空の通貨価値とは違うはずだ。
そんなことを考えて、ちょっと写真撮られただけで向こうの月収より取れると言う事に頭がぐらぐらするのを、必死にせき止めた。
「相場的には?」
小さく聞く。
「流石に其処までは私も不案内ですから……」
ミサゴも首をかしげる。ドヤって出て来たのに最後が微妙であった。
「そりゃあ前金じゃな? その号、売り上げの1%でも追加で寄こさんか」
いつの間にかヤタちゃんがどや顔で混ざって来た。ミサゴ自分ヤタちゃんの順番で挟まれていた。
「そこまでは……私の権限では……」
「ふぅん? お主の所はヨツバ社か……という事は……?」
名刺を確認する、そのままスマホを取り出して連絡する。
「おう、儂じゃ、お主の所のが儂の所で色々撮影してのう、今この時点では秘蔵っ子なんじゃが、どうしてもと言う事でな?」
妙に手慣れた感じで連絡している。
「おうおう」
にこやかに相づちを打っている。
「掲載号の売り上げ増えた利益分の5%じゃな?」
「増えてる………」
エグイ値上げに誰かが呟いた。
なんと言うかあっという間にエグい数字が出てきた。
「よし、まとまったな? 後で書面寄越せよ?」
「ん」
ちょっと代われと記者の人にヤタちゃんがスマホを向ける。
渡すのかと思いきや、スピーカーにしてテーブルに置いた。
「売れるんだろうな?」
切羽詰まって居る感じの、女性らしいがドスの効いた声が響いた。
「ひゃい! 間違いなく!」
裏返った声で記者の人が答える。
「じゃあ任せた! 良いの撮って来い!」
割と信頼感はあるらしい。
「ひゃい!」
ぷち
そのまま通話が切れた、記者の人が頭から煙を出しそうな勢いでぐったりと突っ伏した。
「頑張ってください、私でよかったら色々協力しますんで……?」
お互い社会人として、他人事とも思えなかった。
「色々? 何でも?」
ぎゅるんと顔をあげ、ギランと目を光らせてこちらを見た。
「できる範囲でなら?」
苦笑しながら答えて見せた。
周囲の目線がギラっと光った気がした。
「まあ、今はちょっと控えろ、今はこやつが一番じゃ」
ヤタちゃんが、右手の親指でミサゴを指さし、今は察して外せと言う感じで左手でしっしっと手を振る。
それで色々察したのか、記者の人達は大人しく引き下がった。
ぺこりと会釈した後、そのままカウンターでなんだか手続きを始めたので、今はコレで終わりという事らしかった。
はぁ……
独特の緊張感から解放されて、小さく溜め息をついた。
追伸
EX大〇とか、週◯現代とか、混浴限定るる〇もどきとか、その辺のエロ本にはならんけど面白くもないヌード写真が袋とじで変なポエムと共に載ってるアレ系の情報雑誌をご想像ください。
100年なら10倍インフレとかも割とあるんで通貨価値はあてにならないです、戦時中の一円はそれなりの価値がありますが、今では塵芥みたいな扱いなので、そんなもんを想像。
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