貞操逆転世界の温泉で、三助やることに成りました

峯松めだか(旧かぐつち)

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第32話 お仕事とネタ晴らしと、大事な書類

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 朝風呂と身支度を整えて食事を終え、一人ロビーで新聞等を読みつつ時間をつぶす。ちょっと準備してきますとミサゴは席を外していた。
「何か仕事とかありません?」
 当然の顔をして横でお茶を飲んでいるヤタちゃんに話を振ってみた。
「お主に仕事降るとしたら、三助か、夜這いか、混浴広告用の客寄せパンダじゃな?」
 思わずきょとんとヤタちゃんを見る、目が合って、にやりと笑われた。
「そのまま種付けも含めると喜ばれるぞ?」
 流石に声が出てこない、なんだそりゃと突っ込みを入れる場面だと思うのだが。
「ちなみに、仕事というと色々お役所案件じゃから、あくまで混浴していたらお互い一目ぼれして恋愛に発展して、夜這いして一発致してしまったという建前を忘れないように注意じゃぞ?」
「建前いるんですか?」
 やっと声が出た。まるでソープラントだ。
「表向き男性に負担をかけてはいけないという、実質売春禁止法があるからのう、まったく世知辛い世の中じゃ」
 ヤタちゃんがため息をつく、立ち位置がやり手婆になっている。
「ちなみに料金は、チップとしてあずかっておいても良いし、何なら先払いで貰っておいても良いぞ?」
「直払いなら、領収書も残らんから、だつぜ....げふんげふん」
「まあ色々お得じゃな?」
「真っ黒じゃないですか、やだー」
 思わずツッコミで合いの手を入れた。
 税務署とかが怖いにもほどがある。
「ちなみに、相場的にはおいくらで?」
 話的には面白そうなので乗っかってみる。
「うちじゃ通常客室一泊二日で二食付き2万位の格安温泉宿じゃが、お主が何だかそんな感じにうろうろしてくれるだけで一泊10万位で、多分予約が年単位で埋まるな?」
「買い被りと言うか強すぎませんか?」
「これでも格安じゃぞ?」
「と言うか、何人泊まれるんでしたっけ?」
 こっちも立つか立たないか問題が出てくるし、そうなって来ると全員にサービスはできない。
「気に入った者だけで大丈夫じゃ、宝くじみたいな扱いで」
 何と言うか宝くじ買うだけで10万は取りすぎじゃなかろうか?と言うか、夜這いにそんな価値が出るのか?
「ディナーショーの券みたいなもんじゃ、混浴と背中流しは大体全員サービスで、時々当たりの夜這い種付けが出て、大当たりも出る」
「大当たり?」
「妊娠じゃろ?」
 何をいまさらと言う感じに出てくる、思った以上に価値観が違う。妊娠出産は罰ゲームと撒き散らすフェミモドキが脳裏にかすめる、思った以上にアレの影響と言うか呪縛は強いらしかった。
「やればできる、当然の事じゃ」
 ヤタちゃんがうむうむとうなずく。
「そりゃそうですね?!」
 一撃必中のどこぞの漫画家ネタが脳裏をよぎる、ヒロインと一回だけやったら必中孕ませで強制結婚エンドになるのが一時期流行ったのだ。その時の読者の感想が、ヤれば出来るだった。
「実際、ヤって出来るなら大抵喜ぶぞ? 昨日はミサゴがアレだけがっついてたじゃろ?」
「確かにすごい勢いでしたけど、別の意味ありません?」
「お主とやって、お主がミサゴに多少なりとも情を持ってくれれば、お主が居なくなる事も無いじゃろう?」
 当然のようにしれっと言う、悪気も何も感じない当然と言った様子だった。
「それだけに?」
「それこそ本懐じゃぞ? あやつオボコなの気にしとったし自信を持たせるにはオボコじゃなくす必要がある、なおかつ儂らとしてもお主を囲い込みたい、お主も初めてなら、初めて同士、共感と愛着はあるじゃろ?」
「そりゃそうですね?」
「雄なら、孕ませて欲しいと強請る雌は可愛く見えるもんじゃろ?」
「ええ……」
 もう全部この人の仕込みみたいな流れらしい。
「因みに、儂が仕込んだ訳でも無いぞ? この世界丸ごとそんなルールじゃ、お主とミサゴが出会ったのも偶然じゃし、ここに儂が居たのも偶然じゃ、別の場所でもそれなりに歓待されたじゃろうな?」
 確かに、何処へ行っても歓迎されるとは、最初にミサゴが言っていた。
「そんな意味だとは思わなかったというか、当時は分からなかったというか……」
 目が覚めて直ぐだったので、刷り込み(インプリンティング)的に付いて来ただけである。
「まあ、縁は異なもの味なものと言う事じゃろ? あ奴可愛いじゃろ?」
「それは……はい……可愛いですね?」
 余りに明けっ広げなので、一瞬言葉を濁そうとするが、この場合開き直った方が良さそうなので、やけくそに肯定した。それを受けてうむうむと頷くヤタちゃん、身内の贔屓目とかありそうだが、機嫌は良さそうだ。
「そんな訳で、ミサゴが正妻で一番で良いじゃろ?」
 ぴらっとヤタちゃんが何かを取り出して、テーブルを滑らせて目の前に置いてくる。
 何かとみると、婚姻届だった。相手の欄には【海野ミサゴ】の名前が先に書いてあった。
「因みに、ミサゴ直筆じゃぞ?」
 後見人には【海野ヤタ】と名前が書いてあった。やっぱり身内らしいし、確かに筆跡が違う。
「話が早くありません?」
 早すぎる気がする、出会って次の日に入籍とか電撃婚にしても早い。
「早いに越したことはないじゃろ?」
「ああああああああ! 何やってんのヤタ祖母ちゃん!」
 奇声を上げるミサゴが出て来た、と言うか祖母ちゃんなのかヤタちゃん……
 今更知る衝撃の事実だが、なる程、年齢詐欺のロリババアなのか……
 もうそんなもんなんだろうと、変な説得力があるので、そのまま受け入れることにした。
「見ての通り、先に書類を準備しておこうかと思ってな?」
「だからって勝手に……」
 二人のごたごた具合に肩の力が抜ける、あははという感じに笑いつつ、自分の名前を書き込む。
【海野翡翠】っと。。
「あーーーーーーー!」
 ミサゴが奇声をあげた。

 なお、嬉し泣きなのか何なのか、ミサゴはしばらく泣き止まなかった。
 ヤタちゃんは大笑いで、ついでにミサゴはそのまま中居さん達にも、もみくちゃにされていた。

 追伸
 リアルでも泡姫さんの税制はかなりアレです、個室で口約束で領収書無しの直渡しですから、尚且つ数ヶ月もすると別の店に異動してたりするので追いかけるのも無理やりだとか何とか。
 あくまで建前は大事ですね? って事で結婚させてみました。
 書いててアレですけど、ヤタちゃんが便利。
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