貞操逆転世界の温泉で、三助やることに成りました

峯松めだか(旧かぐつち)

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第99話 その頃 ハクトと辞令(ハクト視点)

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「ほれ、辞令だ、確認しておけ」
 指令室で上官から辞令の書類を受け取り、何の気なしに開ける。
 新潟で見つかった男性、海野翡翠の護衛と、護衛官はハチクマが既に居るので、合流する形に成るのだろう。
 護衛官は自衛官と部署の並びが近いので、割と人員の融通が利く。
 部隊は勝手に組んでいいのか。
「直で新潟に行くのなら、基地のオスプレイ使っていいぞ?」
 そんな優しい言葉が続く。
「おや? 珍しい」
 伝統的に人員輸送はトラック移動で、離島以外は基本荷台で日本縦断とか平気でやらせるのに。
「嫁とかも全員連れて行っちまえ」
「至れり尽くせりだ」
「お前にしか懐いて無いし、お前が居なくなると使い物に成らなくなるだろうが」
「その通りだ」
 思わず笑みがこぼれる、そもそも北方4島と樺太は兎も角、それより北にはほぼ基地しかない、軍用機を使わないと休日のお出かけなんかもどうしようもないのだ、最低限基地内、島内で最低限どうにか出来るのだが。本格的に遊びたいなら最低限北海道本島の都市部まで行きたい。
 当然といえば当然だが、そうなると定期的な人員輸送と補給物資に相乗りするしかない。そして、個人で船とヘリコプター持ち込む強者なんて者は、公務員の安月給では無理な相談だし、海路は冬場流氷で埋まってしまうし、北の海はそもそも波が荒い、結局空路で荷物に紛れるコバンザメ移動こそが本命だ。
「お前ら休ませるに当たって、50人ほど追加人員手配するからな、まったくこっちはいい迷惑だ」
 口元は笑みの形を作っているが、目が笑っていないし、何なら青筋が立っている。
「やったな、元より多いじゃないか」
 連れて帰る分は20人ほどだ、数字の上では勝ったと言える。
「やかましい、主力の幹部とその精鋭、実質上から20人持ってかれて、その代わりがひよっこ50人じゃ割に合わんわ!」
「代わりの人員寄こすだけマシじゃないか」
 感情が乗ってしまったらしく、最終的に怒鳴り声に成ったのを、適当に流しつつ、皮肉で返す。
「逃がさず、大事に育てろよ?」
「ああ、お前の嫁達より立派に育ててやるわい」
 何時もの調子に戻ったので、にっこり笑みを浮かべる。

「んで、どっからの辞令だ?」
「幕僚長のコノハ様から、では無く、その上だな? イサギ総理から直々だ」
「天辺だな?」
 極論、うちの一族で結構要所要所、主要なポストは抑えられている、それであろうと、政局の関係上、足の引っ張り合いと、権力争いで指示やら何やら捻じ曲がる為、一族内でもイマイチ信用されて居ない訳だが。
 例の馬鹿が来たのとかその最たる例なので、笑い話にもならない。


「例の男性の保護警備の為に、お前の所の20人をそのまま充てて、足りなかったら現地の基地から持ってこい」
「そりゃまた大げさな・・・・・・・・・」
「琥珀様亡き今、男性は貴重だ、暫定であろうと、Sランクを護衛官一人では足りんだろう」
 その貴重な男女比は表向き1/100だが、実際の体感は1/1000所か、1/10000でも納得する程度には少ない、居る所には居る、ただし、居ない所には全く居ないのだ。
 そして、ヒトボルバキアが世界単位で蔓延したこの世界。国単位でもその問題は変わらない。
「爺様越えか、そりゃあ各国躍起に成るな?」
 今の時代、精液と言うのは人口を維持する為の重要物資として、国家間貿易にも使われる物である、Bから上は厳重管理、琥珀の爺様に関して、当時は護衛として一個小隊常に居た気がする、正直当時としては、やたらとガタイの良い近所のお姉さん達とか、正妻達と言うか、義母達扱いなので、見分け付いていたかはアレなのだが。
 教育隊配属されたら、顔見知りがそこら中にいっぱい居て驚いた記憶が有る。
 琥珀の爺様は、国からの要請で警備の為に引きこもってくれと言うのを、笑って流していた、客との触れ合いを大事 にしたいと、常にロビーに居て客を出迎えつつ、ニコニコ笑っていたのだ、護衛の方は大変だったらしいが、全方位に優しく誠実なあの人を悪く言う人は一切居なかった。
 幼心に、その姿が理想的で眩しくて、自分も優しく誠実な大人になろうとしたものだ、結果として、結婚申し込まれ たら拒まない男っぽい女として、なんか嫁いっぱい増えたけど、別に後悔していない。

「補助金申請使ってくれりゃあ、生活保護保障の名目で特区に保護出来たのだろうが」
 確かにそっちなら警備や駐屯のコストもはるかに安く抑えられたのだろう、だが。
「うちの大婆様が許すハズも無いだろう?」
 見た目は幼いが、歳食ってる分だけ、良くも悪くも昔気質だ、時代遅れと言われようと、男性が居る幸福は一族郎党 所か客まで含めて共有しようとするし、小銭稼ぎにも活用する、お金はそれこそ、もはや使い切れるとも思えないのだが。琥珀爺様と一緒に居たあの場所を離れるとは思えない、さらに、自分の手の内に抱え込んだ男性を手放すハズもない。
 例の馬鹿は例外だ、あんなもん、生かしとく価値すら無いし。
「俺らが多少苦労するだけだ、目の肥えたあの婆様が大手を振って抱え込んだんだ、俺等も損はしないだろうさ」
 そう言って笑う、実際逢うのが楽しみである。
「その時はこっちにもおこぼれをだな?」
 分類的に上司と部下では有るが、勝手知ったる仲だ、任務中以外は女社会でスケベ心を隠しても苦しいだけなので、基本的に明け透けだ。
「多分、身動き取れないだろうから、客としてどうぞ」
 多分今現在、護衛対象は遊園地の唯一無二のマスコットみたいなものだ、居なかったら問題になる。
「行けると思うかね?」
「無理やりにでも来ればいいだろう、俺もあんたも歯車だ、一個抜けても変わりは出来るはずだろう?」
 戦場で司令官がうっかり死んで右往左往する軍隊なんて笑い話にもならない、実際副指令の自分が消えても動く予定なのだし。

 今回懲罰人事のフリをして飛ばすにしても、微妙に悪手である。
「副官ぬかしてから司令官抜けたら、そりゃあな」
 お互い苦笑が浮かぶ。
「こっちは辞令だし~♪」
 思わずお道化る。
「あ~もうやかましい、とっとといっちまえ」
 会話終わり、しっしと追い出されるジェスチャーをされる、これ幸いとくるりと戸に向かって歩き出し。

 外に出る前に、もう一回くるっと振り向き、姿勢を正して、向き合う。
「では、謹んで、辞令をお受けいたします!」
 ピッと敬礼する。
「武運を祈る!」
 ピッと返礼される。
「最初からコレで行かんのか?」
 緊張状態は一瞬で崩れ、苦笑交じり、呆れ気味の言葉が飛んでくる。
「雑談こそ本体ですから」
 悪気無くニシシと笑う、さてと、じゃあオジロとか部下と言うか嫁達を連れて帰って荷造りだな。
 泊る所、客間は埋まってるだろうから、従業員用と、現地の空き家接収か、ツバメ辺りが役場職員だから、話してみるか。

 話通してあれば楽なんだが、下手に自衛隊として動くとやかましいからなあ。
 ある程度個人のフリして動く羽目に成るのだろう。


 後日、旅館の従業員と客と護衛や、ご近所の面々に、妙にガタイの良いのが多くなるのは当然の帰結であった。



 追伸
 コノハ(コノハズク)
 知恵の象徴なフクロウ系
 インテリ眼鏡の年長者、裏方担当。

 イサギ (ゴイサギ)
 元ネタの名前が五位なので貴族枠、まあ財閥解体でほぼ残っていないので、元。
 表向きでは位が高めの総理大臣。
 嫁ランキング的に、ヤタばあちゃんには頭が上がらないので、身内内では微妙な扱い。
 例のアレに関しては、当時は実権あまり無かったので主犯と言う訳では無いけど、琥珀亡くなった際に次の男性をと急いで頑張っちゃった結果、知らん間に微妙なのが出て来た。
 結果としてだが、男性の横暴に関して、男性に女性が暴力をふるい、女性側から三下り半を叩き付け、女性側無罪になった貴重な前例として、歴史的にはかなり重い、一部ではツグミが英雄視されている。そういう意味では評価されている。
 ただし、怪我した当人達は正直どうでも良いアレなので、何だかなあ案件。

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