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1章 山男のサバイバル

似非坊主の異世界

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 山の中、ちょっとした運動にと近場の山にと登ってみたが、霧が立ち込めて足止めを食らっていた、足元すら見えない、この状態で歩くと滑落するか道迷いで死ぬ、死んだことはないが、死んだ人をよく聞く、こういう時は霧が晴れるまで動かないのがお約束である、寒さに負けないようにツェルトを着込んで腰を下ろして長期戦の構えである、霧はそのうち晴れるもの、急がず落ち着いて待つのだ、そしてしばらく経った。

「で、なんでこうなった?」

 周囲の光景と、植生ががらりと変わっていた、山頂近くの森林限界点だったはずだが、樹海というような鬱蒼とした森の中にいた。





「天狗じゃ!天狗の仕業じゃ!」

「ひゃっはー、新鮮なネタだー」

 棒読みで合の手を入れる、言葉に意味はない、現状が把握出来ないので適当に独り言をつぶやいているだけだ、相手もそもそもいない。

「この先生きのこるには」

 脳内サバイバル知識をざらっと読み出しつつ。

「そもそも此処何処だ?」

 周囲を見回す、鬱蒼とした森の中である、見覚えはない、植生はわからないが見覚えはない植物が多い気もする、木洩れ日はそこそこある、足元に道はない、ぐるっと回って

「獣道とかあればねえ」

 草は多く無いが枝が多い、自分が歩いてきたルートすらわからない、こういう時は。

「生存戦略しましょうか」

 上り坂のように見える方向に・・・ほぼ平地に見えるのだから極めて適当に歩き出した。



 数時間後

「ルートがねえ、水もねえ、食料今いち見つからねえ」

 見つけた木の実をかじりながらそんな愚痴を言う、握り拳大で少々でかいがイチイのような実である、周りの実は甘いが種が苦い、似たようなモノなら似ているのだろう、周りの実を齧って種を投げ捨てる、知っている通りなら種はアルカロイド系の猛毒である、狩りに使えるか?

「いや、毒餌で捕っても食えないし」

 そんなことを言いながら一粒はポケットに入れておく、まあ念のためだ。

「そろそろ暗いか」

 日が傾いて暗くなってきている、この状態じゃすぐ暗くなるだろう。

 着ていたツェルトをテントモードに切り替えて設置する、白樺のような植物の樹皮とキーホルダーにぶら下げていたマグネシウムマッチで火おこしを始める。

「こんなこともろうかとー」

 最低限の準備はしておくものである、実際にやるのは初めてだが、結果的にどうにかなった、締めているベルトには刃物(山菜堀のナイフ)も仕込んである、荷物はーとバックをあさる、ペットボトルに水、タオル、お菓子が少し、バックにぶら下げてある金属製のマグカップ、まあいいかとチョコを一口放り込む、あとはすぐ電池が切れそうなスマホか、地図をあらかじめ入れて置けるGPSナビが使えるのだが、GPSの信号をロストしてしまって使えない、電波も県外なのでライト機能以外役に立ちそうにない、モバイルバッテリーもおまけ機能のLED位しか使えないわな、意外と物はあるなと思うが、コンロと鍋ももってこいやーと此処に居ない親父の声が聞こえる。

「まあ、知識も何もため込んでた甲斐はあったわけだが」

 腰にぶら下げているキーホルダーには10徳ナイフ的なカギもどきも有るけど多分出番は無さそうだ、虫よけに煙を浴びてシェルターに入って横になった。
 ちなみに、煙を浴びると言う虫除けは、蛭除け、ダニ除けも兼ねるのでこの状態では生死を分ける知識だったりする。

「背中が固いよう、しくしく」

 そんな愚痴をつぶやきながら眠った。



「・・・・寒い」

 つぶやいて目を開ける、周囲が明るい、夜明けらしいが太陽は見えない、なんでしょうねこの森、起き上がり軽くストレッチをしてバックから水と食料を取り出して少し腹に入れる、「さて行くか」

 多少勢いをつけて立ち上がりまた歩き出した、

「ん?」

 がさりと音が聞こえる、足を止めて周囲を見回す、角の生えたウサギがいた、おお、野生動物が居るのかと感心しつつ、この間合いだと走って追いかけられるもんじゃないしご飯にはできんなと思いつつ、ベルトに引っかかっているナイフを取り出す、相手の目を見つめてお見合いタイム、野生動物がこちらを見て動きを止めるのは、逃げられるか襲う時の間合いギリギリで止まるもんだが、ウサギだから逃げるんだろと考えながら投擲の構えで止まる、できればあと少し位は近づきたいなと構え直しもかねて摺り足で少し前に移動する、狙いも付いたので投げようとしたところでウサギが飛びかかってきた。
 はい?!
 逃げるもんだと思っていたので反応が遅れる、胸の真ん中に真正面から角が来る、咄嗟に左手で角をつかんで頭のあたりに右手のナイフを突き刺す、勢いはそのままなので後ろに倒れた、ゴツンと嫌な感触がした。



「痛い」

 両手が塞がっていたので受け身も取れずに後頭部を強打した、手の中では目玉のあたりからナイフの柄を生やしたウサギのようなものが暴れている、服が足の爪でボロボロになっている、いつまで暴れる?と手と離さずにナイフの柄をつかんで奥に押し込む、ビクンという感触が響いて動きが止まる。

「肉げっと」



 腹の部分を裂いて皮をはぐ。

「ウサギは捌きやすくていいね」

 内臓を抜いて内容物確認のために置いておく、

 内臓と皮が無くなったウサギを焚火にかける、

「しかし、この歯と角はなんだろね、肉食っぽい」

 焼けるまで生体確認をとして時間を潰す

 前歯と一緒に犬歯が発達している、角はやたらと鋭く発達している、先端が尖っているだけで刃物状になっていなくて助かった、この世界のウサギは肉食らしい、内臓、胃袋を裂いて内容物の確認をする、

「草だけじゃないわな」

 小動物の骨やら肉のようなものやら虫やらが出てくる、草も食べているので雑食らしい、ウサギはフンまで食べられると言うネタもあるが、やめておこう。

「角が邪魔そう」

 頭を弄って構造を確認する、頭蓋骨に固定で生えているようだ、鹿のような生え方である、頭は切り離してしまったので首の構造までは分からないが、障害物抜けるとき邪魔っぽいが上向き加減で背中につくのだろうか?罠かければ引っかかるかな?と、罠の構造を考える、普通のウサギでも引っかかるのだが、どうだろう?角が引っかかってそもそもうまくとれない落ちも思い浮かぶ、後で蔓でもみつけたら試すか。

 そんなことをしているうちに焼けたようだ、塩はないのでお菓子の中にあったポテチを張り付け味をつける、

「いただきます」

 かぶりつく、多少薄味だが十分だ。美味しく頂いた。腹がすいていた分もあってか全部食い切った。

「ごちそうさまでした」



 骨と消化器系の内臓は燃えカスに混ぜて埋める、頭の骨と毛皮はどうするかと考えていた所で何かの音が聞こえた。

「ん?」

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