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2章 いちゃつく坊主の冒険者

お買い物

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「結局何します?」

「教会の挨拶自体は済んでるしな、改めて行ってもしゃあないから、素直にギルドでお仕事探すか。」

 使命が分かりました、やりますのでよろしくなんて行ってもしょうがない、まさか教会経由で何かの最前線に送られるわけでもあるまい。そこまで切羽詰まっているのなら前回のでもっと粘ったはずだ。

「優先度低めでそのうち顔出しって流れで?」

「そだね、じゃあ身支度して出かけるか。」

「そうですね。」

 ぽんぽんと頭を叩くと張り付いていたエリスが顔を上げた。泣き止んでは居たがそのまま張り付いていたのだ。

「ギルドと買い物行くから案内頼む。」

 多分、必要とされていないと不安なのだろう、と言う事で仕事を頼む。

「はい。」

 エリスは少し笑って立ち上がった。



「いってらっしゃい、気を付けてね」

 義母上が送り出してくれた。

「いってきます」



「今日のクエスト何にします?」

「まだ様子見で日帰りできる奴。」

 そう言いながら自分でも壁に貼ってある紙を覗き込む、まだ読めないことも無い程度だ、文字は認識できても其れに付いている言葉の意味が分かりにくい。そこまで都合良くは行かないらしい。灯も困り顔で睨みつけている。

「読めないこともないけど意味は分かりませんね。」

「そだな、多分ベースの知識が足りないんだろう。」

 地名と獲物の名前が分かっても、それが何かまでは分からないし位置関係もわからないので地図でも買って置かないとどうにもならない。

「良いのあったか?」

 エリスに声をかける、二つの紙を見比べていた。

「山と沼どっちが良いですか?」

「山。」

 高い所に上って地形を調べたい、

「じゃあこれで良いですか?」

「薬草採取?」



「この村に流れ込んでいる川なんですけど、上流に行くと水源地帯にしか生えない薬草があるんです、昨日みたいに袋に取れるだけです。」

「良いけど、川には入るの?」

「水源地帯には魔物はあまり出ないんで水浴びできますよ?」

「行こう。」

「和尚さんはわかりやすくていいですね。」

 灯に笑われた。



 昨日と同じようにエリスに受付してもらい、ギルドから出て商店通りに立ち寄る。

「何か買っておくもの有る?」

「いざと言う時の保存食。」

 エリスが言う。

「大事だな。」

 先ずは同意する。

「可愛い服。」

「モチベ的には大事だが、有るか?」

「着替え自体は欲しいですし、着た切り雀はつらいです、有るかどうかは見てから決めましょう。」

「そだな」

「例の虚空収納でどの程度入るか勝負になりそうですけどね。」

「そだな、まずは見て回るか、」

 そもそも相場が分からないのでエリス頼りである。



「先ずは灯に靴を買わせたいんだ。」

「そんなに靴大事ですか?」

「そういうローファーだとグキッたときに足首捻挫する、出来ればこういう靴が良い。」

 自分の登山靴を指差す、エリスの靴もちゃんとした編み上げのハーフブーツだ。

「そんな訳でエリス、靴屋頼む」

「はい、こっちです。」



 ちゃんとなめし皮の立派な靴が並んでいた。皮なめしを伝えように成らなくて良かった。

 カキが有ったらカキによるタンニン鞣し安定だが、まるっきり科学薬品なクロム鞣しは正直面倒くさい。

 店頭を覗き込むが靴が並んでいるだけでサイズ表も無いので選びようがない。

「すいませーん。」

 一先ず店員を呼ぶ。

「はいはいーい」

 店員は軽い調子ですぐに出てきた、結構若い青年だ。

「何かお探しで?」

「こいつに靴を誂えてくれ、編み上げ靴で丈夫なの。」

 灯を前に立たせる。

「はい、サイズ図るから其処の椅子に座って下さい。」

 店の奥にある椅子を指定したので灯が座る。手慣れた様子で足をメジャーで図っていく、店員が微妙に顔を赤くしてるが、位置的にあれか、見えるのか。短いスカート履いてるから・・

 そんな余計なことを考えたが、もう終わったらしい。図るのを止めて紙にサイズを書き込んでいる。

「サイズ的に入らないことも無いのが有りますけど、それにします?作ります?」

「履いてから決めて良いか?」

「はい、どうぞ。」

 結構ごつめの靴が出てきた。

「女性にしては結構大きめなんで男物になります。」

「なるほど・・」

 灯がちょっと気が進まない様子で履く、確かに可愛げは無いがそんなものか。

「履き心地どう?変なところに当たったりしない?」

「当たりはしないけどぶかぶかですし重いです。」

「そっか残念、じゃあ作ってくれ。」

「はいまいどー。」

「幾ら位で何時頃できる?」

「金貨一枚で一週間て所ですね。」

「ふむ。予算会議。」

「どうぞ。」

 一歩下がって相場が知りたい。

 エリスが固まり気味になっているが。

「エリス的には高い安い?」

「そもそも普通は作ると高いので出来合いで履けないことも無ければ履いてる感じ何で。」

「新品相場は判らないと。」

「はい、私のはお義父さんが冒険者になったお祝いで送ってくれただけ何で、どこで幾らで買ったのか分からないです。」

 まあ、外から見る限りしっかりとしているので安物と言う線はないだろうが。あのギルマス甘そうだし。

「んで、感覚としてはどう見る?」

 自分としては金貨が昨日ぽろっと入ってくる程度だから金銭感覚が無い。

「高いですけど、オーダーの新品ならしょうがないかと。」

「はいよ。諦めて買うか。」

「ありがとうございます。」

「んじゃ灯、何かデザイン希望ある?」

「書いて見て良いんですか?」

「物は試しだ、見せて見て損はしないだろう。実装されるかは置いといて。」

 デザインは盗まれるかもしれないが。

 じゃあこんな感じでと、俺のリュックからノートを取り出してさらさらと書いていく。元の通学鞄は手が塞がってしまうので俺が結局まとめて持っている。

「できればこんな感じのお願いします。」

 変にごつくなく歩きやすそうなブーツのデッサンがあった。

「すごいですね、参考にさせていただきます。」

 靴屋が感心した様子でデッサンを見る。

「じゃあ料金、前金と後金どっちで?」

「半々でお願いします、私が逃げるかもしれませんよ?」

「俺が後で踏み倒すかもしれないぞ?」

 極論引き取り前に死なれたら職人の丸損である。

「値切りもせずに買ってくれた人を職人はないがしろにしませんよ。」

「はいよ、じゃあ半分、大銀貨5枚だっけ?」

 ギルド証からお金を取り出して払う。確か大銀貨10枚で金貨一枚だ

「はい、確かに頂きました。これが領収書です。」

「じゃあまた今度。何かあったらギルド経由でガンダーラってPT呼べばわかるから。」

「はい、頑張って作らせてもらいます。」



「値切りもしないで買ってよかったんですか?」

 灯が不思議そうに聞いて来る、エリスも同様のようだ。

「ちゃんとした職人の所は暴利をむさぼったりはしないからな、あんまり値切るもんじゃない。」

「そんなもんですか?」

「道の横で適当に並べてる奴はあんまり信用できないが、あの類のちゃんと固定の店を構えてる職人は評判悪くなっても逃げるの大変なんだ、で、若くて独立してるのなら腕も有るはず、さらに若い方が頭が柔らかくてデザインがどうのなんて注文も受けてくれる。」

「なるほど。」

「これで相場の倍吹っ掛けられてたなんて言ったら桜の木の下に埋めてくれて構わない。」

「変なフラグを立てないでください。」

 実際問題残りは店側の良心次第だ、インターネット通販が普及した状態では店頭は高いものだったが、この世界で値段調べるのは自分の足で稼ぐかインターネットではなく仏の加護でアカシックレコード接続になる、多分虚空菩薩はアカシックレコードも対応しているが、困った時で良いだろう。

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