異世界坊主の成り上がり

峯松めだか(旧かぐつち)

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3章 活躍する坊主

首狩り坊主

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 一足先に先行して地形を確認、どうやら斜面に隠れるように集落を作っているようだ、なるほど、枯れた草を屋根にして見事に地面と一体化している中で、ゴブリンがあっちこっちと動いている。となると、下から上昇気流に合わせて燃え広がるように、風向きは、ほぼ無風と、丁度良い感じだな、下から炎で追い立てて、上に陣取って叩くのが楽か?逃げ遅れると焦げるので、出来れば斜めか横に逃げ道と誘導路を、残りは俺より経験があると思われる先輩冒険者方の現場力に頼ろう。

 それぞれ配置について、油を撒き、放火して回る、前日に雨が降っていたと言う事も無く、計画通り燃え広がり始めた。斜面に沿って舐める様に燃え広がり、炎と煙が上がる。
 混乱したゴブリンは三々五々に散り、逃げ回るが、地形に合わせて燃え広がる炎に追い立てられ、まとめて迎撃エリアに迷い込むように誘導される、机上の空論が見事に当たった様だ。
 順調に通常種が撃破されて行く。
 俺を含む深紅の翼のメンバー、こちらは遊撃で、混乱に乗じてさらに炎をつけて回り、追い立てる役だ。危険な役回りではあるが、他のメンバーより強いのはこのPTと言う事で、後ろで見ている訳には行かないらしい。
 逃げる物はそのまま袋小路に行くはずなので放置だが、突っかかって来る物は容赦無く潰して行く。

「出たぞ!キングだ!集まれ!」
 遠くで切羽詰まった声が響いた、急いで合流しようと声の元に向かう。
 合流した頃にはすでにキングの包囲網は粗方出来上がっていた。これなら出番は無いかと思ったが、どうやら盾持ちで囲んでいるが、包囲網の強度が紙だ。
 今回のキングの得物はこん棒だった、キングが振り回す重量武器に巻き込まれて盛大に吹き飛ばされている、止めが刺される前にカバーは入って居る様なので無事なようだが、あれ、即死したらどうにもならんだろう。
 死角になった位置から攻撃は入れているが、今一攻撃力が足りずに、ほぼ皮一枚だ、出血はしているが、あのペースで倒すのは何時間かかるか判らない。
 余りにも見て居られないので、カバーで割り込んだ。
「南無八幡・大菩薩!」
 手元の槍をキングの頭部に狙いを定めて投擲する。
 狙った通り、投擲した槍がキングの頭部に突き刺さる。
 周囲の空気が固まった、いや、追撃を頼みたいのだが?
 視線が槍の投擲元、俺に集中する、ん?視線抜けてる?
 咄嗟に横に転がる。
 ぶおんと、さっきまで居た場所を何かが通り過ぎる音が響く。
 体制を立て直しつつ、犯人を確認する、キングがもう一匹いた。一回り大きい気もするが、同じ顔だから同種だろう。

 今度の得物はこん棒と言うより丸太だ、これは切り合えない・・・
 追撃が来たので。咄嗟に飛んで距離を開ける。手元の丸太を投げ飛ばして来かねないので、振りぬく方向の延長線上に行かないように注意する。
 避けながら相手の動きを観察する、重量武器で大振りなのでやはり隙は大きい。
 腰に差して有る剣を抜き、懐が開いたタイミングで飛び込む。
「ナウマクサンマンダ・バサラダンカン!」
 不動明王の真言を唱えつつ、膝の関節部を切りつけ、足元を抜ける。
 明らかに大きいので、自分の有効射程に首や頭が無いのだ。
 膝元を切られたキングが若干バランスを崩すが、前から切ったので傷が浅い、切り返して無事な方の足も同様に今度は後ろから切りつける。
 両足を切られ、体制が崩れ、頭の位置が下がる。
「ナウマクサンマンダ・バサラダンカン!」
 三度目の正直と、不動明王の真言の力を借り、キングの首を刈り取る。
 首を刈り取られたキングは、今度こそ動かなくなった。
「南無阿弥陀仏。」
 何故か口をついてそんな言葉が漏れた。
 内心合掌しつつ、3匹目が来ないかと周囲の状況を確認する、流石に3匹目は居ないようだ、茫然とした様子の他の冒険者の視線が刺さる。
 剣を素振りして血糊を飛ばし。刃を確認する、見事に刃こぼれだらけで、ちょっと使い物になりそうにない。ため息を付きつつ、鞘に納める。槍の方も回収しなくては、人目があるので虚空の蔵での武器の持ち替えが出来ないし、さっき狩ったキングの丸太は俺が持って振り回せる大きさではない。
「すいません、後頼みます。」
 横に来ていたリーダー、ヒゲクマさんに一言断って、戦線を一時離脱することにする。
「ああ、後は任せろ。」
 最初のキングの死体に向かう、呆然とした様子の冒険者たちが道を開けてくれる。
 刺さっている槍を確認する、無事頭蓋骨を抜けて脳に刺さって居る様だ、止めは要らないかと、槍を抜こうと掴むと、ビクンと体が跳ねた、反射かな?と思いつつ、念の為軽く押し込んでおく、ガタガタをと体が震え、今度こそ動かなくなったので、改めて引き抜いた、ちょっと足元が返り血でエライ事になっている、後で洗わなければ。
「南無阿弥陀仏。」
 同じ様に血糊を飛ばし、槍先を確認する、こっちは多少潰れた程度か、まだいけるな?

 周囲を確認する、俺が大物を2匹とも仕留めた後は。どうやら手を出す必要性も無い程度に優勢らしい。
 流石に危なげ無く通常種が狩られて行く、と?
「南無八幡・大菩薩!」
 違和感を感じて、茂みに槍を投げた、ギャアと言う叫び声が上がる、着弾地点を確認すると、弓矢を構えたゴブリンが絶命して居た、なるほど、助かった。
 しかし、毎回投げて回収するのも面倒だな、手裏剣か投げナイフでも作ってもらおうか?
 重量が足りない為、決め手には弱いので手斧や鉈の方が強いか?
 そんな事を考えながら、近くに居た冒険者を捕まえ、茂みの中に射手が隠れているので注意するように呼びかける。
 何人かチームを組んで怪しい茂みを潰し始めてくれた、これで大丈夫か?

 炎が燃え広がり、ゴブリンの集落が燃える、ゴブリンももう居ない様だ。最後の見回り遊撃組が戻って来た。

「後はこれの消火活動だな、完全に燃え広がる前にどうにかせんと・・・」
 ヒゲクマさんが消火の指示を出す、伐採用の斧と迎え火用の松明を持ったメンバーが動きだす。なんだかんだで全員参加だ、燃え広がる前に先に燃やして緩衝帯を作るのだ、こちらも雨乞いの準備を始めよう。既に結構な規模で燃えているので、上昇気流が発生してフェーン現象で上空に雲が溜まり始めている、最後の一押し位は出来そうだ。
「オン・バロダヤ・ソワカ。オン・バロダヤ・ソワカ。・・・・」
 竜の鱗を触媒として握りしめ、水天の真言を何度も唱える、何時もの物より規模が大きいので、念入りに・・。
 ぽつぽつと、雨が降り始めた。恵みの雨だ。
「助かった…」
 周囲の冒険者たちが呟き、手を止めて天を仰ぎ、天の恵みを喜ぶ、手の中の鱗がパキリと割れ、砕け、雨に流されて、手の中から零れ落ちた。流石にこじつけの触媒でも無理をさせすぎたらしい。

 無事山火事は鎮火したので、引き揚げる流れになった、念の為として、俺と深紅の翼のメンバーは最後の見回りをすることになった。
 他の参加メンバーは既に帰路に着いている。
 一応口止めをして、ゴブリンキング2体を虚空の蔵に収納しておく。
 予めギルマスからも釘を刺されているから安心しろと言われた、それは先に言って置いて欲しかった。
 ゴブリンの集落の建造物は代替炭化して、生きている物は居ない様だ。
 カリカリと音がする、音の出所を探り燃え残った建物の下を確認する、厳重な蓋の下に、小さなゴブリンが収まって居た、子供か、これだけ見れば可愛いかも知れないし、罪のない子供を殺めるのは・・・と、お約束の葛藤を挟むが、実際問題、逃がしてはいけないので、念入りに潰した。
「南無阿弥陀仏。」
 流石に辛いので一言唱えておく。
 他に打ち漏らしも居ないのを確認、般若心経で、澱んだ空気を浄化しておく。
「お疲れ様、大活躍だったな。」
「お役に立てればサイワイデス。」
「流石に疲れたか、目つきと口調が怪しいぞ。」
 リーダー、ヒゲクマが苦笑交じりにねぎらってくれる。
「里から出てた奴らが帰って来るかもしれないから、今日はここで一泊だ、今夜無事過ごせたら、朝一で帰路に着く、大丈夫そうか?」
「ハイ。大丈夫です。」
「まあ、一旦寝とけ、見張り位はやって置いてやるから。」
 大分気を使われたようだ。
「大丈夫です、見張り位は。」
「良いか寝れ、休むのも仕事の内だ。」
 意外と強い口調で窘められた。
「どうしてもと言うなら、最後の夜明け前だけ頼むから、それまで寝とけ。」
「はい。」

 燃え落ちた集落の真ん中でツエルトを設置して、横になった、神経が高ぶって居て、この状態で眠れるかと思ったが、あっという間に意識が無くなった。
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