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6章 変な石とその後の話
第269話 編集 落ち穂拾いの子供達(時系列、領主になって直ぐの頃)
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「コレはダメだ」
「これもだ」
有る晴れた日の麦畑。麦の刈り取り作業をしていた農夫達が、わざとらしい大きな声で呟き、麦の穂を刈り終わった畑に投げ捨てていく、選別作業の一種らしく、投げ捨てられた麦の穂には黒い角が生えていた。
「なるほど、麦角(ばっかく)か」
EXが平坦に納得の声を上げる。
「義父上(とうさん)の領地では出なかったですよね?」
エリスが呟く。
「水稲(すいとう)では出ないんじゃ無いか?」
麦角自体、日本では先ず見ない風景だった。
「と言うか、勿体ないのでは?」
灯(あかり)が呟く。
「確かに、黒い角以外は無毒では有るけどな?」
米一粒に7人の神が居る八百万国(やおよろず)の民としては、米一粒、麦一粒でも捨てるのは勿体ない訳だが。
「捨てる側になると勿体ないんですけど、アレ拾う側も居るので……」
クリスが困ったような訳知り顔で引き継いだ。
因みに、揃って鎌や手袋を着けた農夫スタイルである、おしゃれ感やら貴族感は無い。
「アレって何か意味あるんですか?」
灯が首をかしげる。
「ただの廃棄と見れば確かに勿体ないのだがな? 多分コレはクリスが詳しい」
予測は付くが、精通しているわけじゃないので、まあ任せたと言う感じに話を振った。
「えっ……と……」
話を振られてクリスが少し考え込んだ。
「収穫物で、角麦(つのむぎ)が出たときは、刈り取り作業をしていた農夫は余裕をもってその麦の穂をその畑、その場で投げ捨てるんです、コレを畑の持ち主や農夫がそのまま拾うのは卑しいと言うか、見栄的に悪いこと何です」
たどたどしくだが、言葉を選んでクリスが解説を始めた。
「見栄(みえ)なんですか?」
灯が、そんな、はる見栄有ったっけと首をかしげる。
「多分ソレだけじゃ無いんだろう?」
予想は付くなと続きを促す。
「畑の作物を根こそぎ全部収穫するのはちょっと宜しくないんです、神様からも怒られます、と言うか、ちゃんと拾う人が居るんです」
「なるほど? 無駄では無いと?」
灯が納得行ってない様子で続きを促す。
「基本的に、生活に困ってる人、孤児とか、仕事が無いとか、お金が足りないとか、どうしようも無くなった人達が拾います」
だから、生活に困ってない私達が拾ったりしたら非難囂々(ひなんごうごう)ですよと言外に示す。
「ああ、そういう回りくどい仕組みなんですね………」
灯が微妙な表情を浮かべる。
「ミレーの落ち穂拾いか………」
思わず呟いた、美術の授業で必ず見ることになるアレだ、旧約聖書で書かれていた当時の弱者救済システムの一種と酷似している。
「アレってそう言うヤツなんですか?」
うろ覚えだが、大体分かるという様子で灯が返す。
「ああ、アレ拾ってるのは農夫でも何でも無く、そう言う困窮(こんきゅう)者だ、確かに伝統的に怒られるわな?」
異世界でも思考形態は万国共通らしい。
「あの辺に居ますから」
クリスが目線だけで言外に示す、遠巻きに作業に混ざらず、物陰で此方を伺う子供達が見えた。
「成るほど………」
現物を見て灯が納得した様子で肯いた。
「直接的に物乞いすると結構風当たり強いし、あの子達にも見栄とか有りますから、見て見ぬふりしてあげるのがお約束です」
やっと言い終えたと、クリスがほっとした様子でため息をついた。
「毒麦ですけど、大丈夫ですか?」
灯が不安点を上げる。
「纏めて粉にするときには困りますけど、言うほど量がないので、毒なのは親とか大人が最低限教えてるはずなんで、より分けには困らないハズです」
クリスはよどみなく応えている、まあ見れば分かるはずではある。
「ギルド登録で仕事貰うのも、10歳からですからね、孤児だったらその前が辛いです」
エリスが困り顔で引き継いだ。
「と言うか、この領地って孤児院有ったか?」
今更変なことを思い出した。
「刈り終わりました~! 俺達はコレで上がります~!」
今日の分の刈り取り作業を終えた農夫と冒険者達が声を上げ、引き上げ始めた。
「おーう! お疲れ様~! 給金はギルドの方で渡すから行ってくれ~!」
一先ず返事をして作業者達を帰らせる、ヤレヤレと言った様子で人がはけていく。
待っていましたという様子で、子供達がこっそりと畑に入って落ち穂拾いを始めた。
「EX、あの子達監視、致命的だったら手を出すが、基本傍観で頼む」
「了解した」
思わずEXに指示を出した、この領地は直前に疫病でかなり死んでいるため、裏側で笑えないことがありそうだった。
その後、執務室にて。
「今、この領地に領主運営の孤児院は無いです、前任の領主が金にならないって予算切ってそのままですよ?」
状況を確認しようと書類の山に埋もれたカナデに聞いたところ、かなり無情な事が返ってきた。
「ソレはもっと早くに教えてくれ」
思わずため息交じりに力なく突っ込みを入れた。
「で、これが孤児院復活の嘆願書ですね?」
カナデがこの辺にあったかな? と、書類の山から書類を一枚引っ張り出した。
この土地の教会の方からの一筆だった。
「最優先で立て直す、予算確保頼んだ」
強めに返事して指示を出した。
追伸
カナデ到着前、例のダモクレスが先に前任者の『処理』をやった上で引き継ぎなしで来ている為、所々断絶気味、尚且つ、書類仕事できる知識階級は稀少なので、結局キャパオーバーで仕事は遅れ気味、別に薄情なわけでは無い。このメンバーの中では裕福枠で当事者だった事は無いので若干優先度が下がり気味なのはしょうが無いと言うことでお願いします。
「これもだ」
有る晴れた日の麦畑。麦の刈り取り作業をしていた農夫達が、わざとらしい大きな声で呟き、麦の穂を刈り終わった畑に投げ捨てていく、選別作業の一種らしく、投げ捨てられた麦の穂には黒い角が生えていた。
「なるほど、麦角(ばっかく)か」
EXが平坦に納得の声を上げる。
「義父上(とうさん)の領地では出なかったですよね?」
エリスが呟く。
「水稲(すいとう)では出ないんじゃ無いか?」
麦角自体、日本では先ず見ない風景だった。
「と言うか、勿体ないのでは?」
灯(あかり)が呟く。
「確かに、黒い角以外は無毒では有るけどな?」
米一粒に7人の神が居る八百万国(やおよろず)の民としては、米一粒、麦一粒でも捨てるのは勿体ない訳だが。
「捨てる側になると勿体ないんですけど、アレ拾う側も居るので……」
クリスが困ったような訳知り顔で引き継いだ。
因みに、揃って鎌や手袋を着けた農夫スタイルである、おしゃれ感やら貴族感は無い。
「アレって何か意味あるんですか?」
灯が首をかしげる。
「ただの廃棄と見れば確かに勿体ないのだがな? 多分コレはクリスが詳しい」
予測は付くが、精通しているわけじゃないので、まあ任せたと言う感じに話を振った。
「えっ……と……」
話を振られてクリスが少し考え込んだ。
「収穫物で、角麦(つのむぎ)が出たときは、刈り取り作業をしていた農夫は余裕をもってその麦の穂をその畑、その場で投げ捨てるんです、コレを畑の持ち主や農夫がそのまま拾うのは卑しいと言うか、見栄的に悪いこと何です」
たどたどしくだが、言葉を選んでクリスが解説を始めた。
「見栄(みえ)なんですか?」
灯が、そんな、はる見栄有ったっけと首をかしげる。
「多分ソレだけじゃ無いんだろう?」
予想は付くなと続きを促す。
「畑の作物を根こそぎ全部収穫するのはちょっと宜しくないんです、神様からも怒られます、と言うか、ちゃんと拾う人が居るんです」
「なるほど? 無駄では無いと?」
灯が納得行ってない様子で続きを促す。
「基本的に、生活に困ってる人、孤児とか、仕事が無いとか、お金が足りないとか、どうしようも無くなった人達が拾います」
だから、生活に困ってない私達が拾ったりしたら非難囂々(ひなんごうごう)ですよと言外に示す。
「ああ、そういう回りくどい仕組みなんですね………」
灯が微妙な表情を浮かべる。
「ミレーの落ち穂拾いか………」
思わず呟いた、美術の授業で必ず見ることになるアレだ、旧約聖書で書かれていた当時の弱者救済システムの一種と酷似している。
「アレってそう言うヤツなんですか?」
うろ覚えだが、大体分かるという様子で灯が返す。
「ああ、アレ拾ってるのは農夫でも何でも無く、そう言う困窮(こんきゅう)者だ、確かに伝統的に怒られるわな?」
異世界でも思考形態は万国共通らしい。
「あの辺に居ますから」
クリスが目線だけで言外に示す、遠巻きに作業に混ざらず、物陰で此方を伺う子供達が見えた。
「成るほど………」
現物を見て灯が納得した様子で肯いた。
「直接的に物乞いすると結構風当たり強いし、あの子達にも見栄とか有りますから、見て見ぬふりしてあげるのがお約束です」
やっと言い終えたと、クリスがほっとした様子でため息をついた。
「毒麦ですけど、大丈夫ですか?」
灯が不安点を上げる。
「纏めて粉にするときには困りますけど、言うほど量がないので、毒なのは親とか大人が最低限教えてるはずなんで、より分けには困らないハズです」
クリスはよどみなく応えている、まあ見れば分かるはずではある。
「ギルド登録で仕事貰うのも、10歳からですからね、孤児だったらその前が辛いです」
エリスが困り顔で引き継いだ。
「と言うか、この領地って孤児院有ったか?」
今更変なことを思い出した。
「刈り終わりました~! 俺達はコレで上がります~!」
今日の分の刈り取り作業を終えた農夫と冒険者達が声を上げ、引き上げ始めた。
「おーう! お疲れ様~! 給金はギルドの方で渡すから行ってくれ~!」
一先ず返事をして作業者達を帰らせる、ヤレヤレと言った様子で人がはけていく。
待っていましたという様子で、子供達がこっそりと畑に入って落ち穂拾いを始めた。
「EX、あの子達監視、致命的だったら手を出すが、基本傍観で頼む」
「了解した」
思わずEXに指示を出した、この領地は直前に疫病でかなり死んでいるため、裏側で笑えないことがありそうだった。
その後、執務室にて。
「今、この領地に領主運営の孤児院は無いです、前任の領主が金にならないって予算切ってそのままですよ?」
状況を確認しようと書類の山に埋もれたカナデに聞いたところ、かなり無情な事が返ってきた。
「ソレはもっと早くに教えてくれ」
思わずため息交じりに力なく突っ込みを入れた。
「で、これが孤児院復活の嘆願書ですね?」
カナデがこの辺にあったかな? と、書類の山から書類を一枚引っ張り出した。
この土地の教会の方からの一筆だった。
「最優先で立て直す、予算確保頼んだ」
強めに返事して指示を出した。
追伸
カナデ到着前、例のダモクレスが先に前任者の『処理』をやった上で引き継ぎなしで来ている為、所々断絶気味、尚且つ、書類仕事できる知識階級は稀少なので、結局キャパオーバーで仕事は遅れ気味、別に薄情なわけでは無い。このメンバーの中では裕福枠で当事者だった事は無いので若干優先度が下がり気味なのはしょうが無いと言うことでお願いします。
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