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【本編】永遠の旅人
03 ホッパーではなくジャンパー
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「ジャンパーは一度行った場所には跳びやすいっていう統計結果が出ている。あの部屋にキーツは自分のコートを置きっぱなしにしてきた。それを持ってまたここに戻ってこい。簡単なお使いだろう?」
「簡単って……そんな簡単に言うなよ」
「ヤール。君、何を達也にけしかけているんだね?」
ロゼと一緒にモニタリングをしていても、達也とウムルの会話はしっかり耳に留めていたらしく、ライアンは露骨に不満そうにウムルを見やった。
しかし、ウムルはまったく動じない。むしろ、ライアンよりも不平そうだ。
「このまま追いかけっこを続けていても埒が明かんだろう。とにかく、Jとエレナを引き離せばJはジャンプできなくなる。ほんの数秒でもいい、あの二人に追いついてエレナだけをさらうことができれば、Jの確保は比較的たやすい」
「それを達也にしろというのかね?」
ライアンは怒るのを通りこして呆れていた。
「あまりにも無謀すぎるだろう。私はそんなことをさせるために達也をここに連れてきたわけではないよ」
「まあ、おまえは小僧がジャンパーだろうがホッパーだろうが、どうだっていいんだろうがな」
――何か、悔しいよな。
自分のことをタイム・ジャンパー――ようやく覚えた――だと言ったくせに、頭からジャンプできないと決めてかかられているのが。
(俺に本当にそんな力があるんなら……でも、タイム・ジャンプって、どうすればできるんだ?)
とりあえず、達也はウムルに言われたとおり、あの応接室を思い浮かべてみた。
(……あ、そういや俺、あそこに自分のバッグも置きっぱなしにしてきちまった。回収してこないと)
達也が少しあせった、そのとき、何か航跡のようなものが頭にひらめいた。
(え?)
瞬き一つした間に――
周囲の景色は一変していた。
見覚えのある、白いソファセット。
ソファの背もたれには黒革のコートがかけられていて、その向かいのソファには使いこまれたスポーツバッグが置かれている。
達也はまずそのバッグのほうを手に取って、それが間違いなく自分のものであることを確認してから、今度は黒革のコートを小脇に抱えた。
(けっこう重いな)
――早くライアンに渡してしまいたい。
ふとそんなことを考えたとき、またあの航跡のイメージが浮かび――
ライアンとウムルが、言い争ったときの格好のまま、呆然とした様子で自分を見下ろしていた。
「えーと……」
適当な言葉を思いつけなかった達也は、ライアンにコートを突き出した。
「これ、取ってきた」
ライアンは面食らっていたが、はっと我に返って、自分のコートを受け取った。
「あ、ああ……わざわざどうもありがとう……」
「……俺、今、行って戻ってくるまで何分かかった?」
何となく、ライアンではなくウムルに訊ねてみると、彼はなぜか複雑な表情をしていた。
「ほぼ一秒だ」
達也は信じられなくて、ウムルを凝視した。
「……嘘。俺、一秒以上は確実にあっちにいたよ」
「つまり、それだけ時間を遡って戻ってきたということだろう」
やや興奮気味の女の声が、ライアンとウムルの背後からした。
それを聞いた瞬間、二人は同時に〝まずい〟と言いたげな顔をした。
「キーツ、おまえにそんな隠し球があったとは知らなかった。それならなぜさっさとJたちを追わせない? そのためにここに連れてきたのではないのか?」
「違う。単に一人では帰らせられなかったからだ。確かにこの子はジャンパーだが、今まで無意識にしか力を使ってこなかった。自分の意志で跳んだのは、おそらく今が初めてだ。とてもJを追えるレベルにはない」
ライアンはロゼに反論しながら、達也を自分の後ろに押しやった。
「あんたのせいだよっ」
達也は小声でウムルを責めたが、ライアンの非難ですら平然と受け流す彼が悪びれるはずもなかった。
「いや、おまえがあんなにあっさり正確に跳んじまったからだ。無意識では何度も跳んでるっていうのは本当かもしれないな」
「無意識?」
「ようするに、眠ってる間にタイム・ジャンプしてたってことだ。スケールのでかい夢遊病だな」
ウムルの話を信じたわけではないが、そう言われてみれば妙にリアルな夢を見た記憶もいくつかあって、達也は何も言えなくなった。
「追えるか追えないかは、試してみなければわからないだろう」
一方、ロゼはあきらめるどころか、ますます乗り気になっていた。
「現時点で、エレナつきのJを追えるようなジャンパーはここにはいない。やらせるだけやらせてみろ。無理なようなら最終手段をとる。Jのスタミナ切れを待っていたら、いつになるかわからんぞ」
「早く確保したいのは私も同じだが、最終手段というのはもう少し時間をかけてからとるものではないかね?」
不快そうにライアンは言ったが、達也に向き直って少し身をかがめた。
「達也。本当にすまないが……」
「いいよ、やるよ」
皆まで聞かず、達也は答えた。
これにはライアンだけでなく、ウムルまで驚いた顔をしていた。
「事情はさっぱりわかんないけど、これが片づかないうちは、あんたから話の続きは聞けないんだろ? 一応、やるだけやってみる。失敗したらごめん」
「達也……」
感極まったようにライアンは達也を抱きしめようとしたが、それより先にウムルが達也の両肩をつかんで後ろに下がらせ空振りさせた。
「ヤール……」
「今ここでそんなことをしている場合か」
恨めしそうに自分を睨む同僚に、ウムルは侮蔑一歩手前の視線を投げ返した。
「そんな時間があったら、早く小僧に必要最小限の情報を与えて行かせてやれ。どうせ失敗するんなら早いほうがいい」
――最初から失敗するって決めてかかってるな。
達也は面白くなかったが、確かに、つい先ほどまで意識的に力を使えなかった自分が、顔も知らないジャンパーたちの後を追いかけて、さらにそのうちの一人をさらってくるなど、できると思うほうがどうかしている。
「それもそうか。……ティッタ」
「はい」
いちばん近くにいた職員が、すぐにモニタから目を離してライアンを見た。ということは、〝ティッタ〟というのはその職員の名前らしい。
金髪のやはり美人だったが、瞳の色はライアンとは違い、若葉色をしていた。
「そこのモニタに、Jとエレナの顔写真を出してくれ」
「承知しました」
ティッタは即座に自分の前の端末を操作し、モニタの一つに二人の顔写真を映し出した。
モニタ画面の向かって左には、くすんだ金髪の白人の青年。わりと整った顔をしているが、表情はふてぶてしい。
同じく右には黒人の少女。まだ小学生くらいに見える。ちぢれた黒髪を頭の両脇で団子にしていて、彼女には不似合いな濃いサングラスをかけていた。
「男のほうがJで、女の子のほうがエレナだ。エレナは全盲だが、タイム・シアーといって、意識だけをジャンプさせて過去や未来を見ることができる。Jは跳躍力はあるがノーコンでね。彼女がいないとまともに跳ぶことができない。……この写真、プリントアウトしようか?」
二人の顔写真を睨むように見ている達也に、ライアンは訊ねた。
「うーん……いいよ、いらない。邪魔になりそうだから」
「そうか。……いいかい、達也。無理は絶対禁物だよ。もう駄目だと思ったら、すぐにそのマシンの赤いボタンを押しなさい。オートでここに跳ぶようにセットしてあるから」
「赤いボタン?」
言われて、自分の左手首にはまっている腕時計型タイム・マシンを見てみると、確かにデジタル画面の下によく目立つ赤いボタンがあった。
「そのマシンの詳しい説明もしたかったんだがね。今は時刻しか表示されていないが、ここを出れば、現在地の年月日と時刻・経緯度を表示するようになる。……あ、そうだ、これも必要だな」
ライアンは思い出したように呟くと、制服のポケットから何かを取り出し、達也に手渡した。
「何これ?」
達也の手のひらの上に載せられたそれは、小指の先ほどの大きさしかない肌色をした石のようなもので、形は勾玉にいちばんよく似ていた。
「自動翻訳機。相手が何語をしゃべっていても、日本語に同時翻訳してくれる。Jもエレナも英語圏の人間だから、もし万が一会えたとしても、話ができないだろう。向こうも同じものをつけているから、君は普通に日本語で話せばいいよ。……これをね、耳の中にこうやって入れるんだ」
ライアンはその自動翻訳機を取り上げると、達也の右耳の穴に押しこめた。
肌に吸いつくような感じで、異物感はほとんどなかった。
「……何かしゃべって」
右耳を押さえながら、達也はライアンを見上げた。
『必ずここに帰ってくるんだよ』
真顔でライアンは言った。
左耳からは達也の知らない異国の言葉が、右耳からはライアン自身の声で日本語が聞こえた。
「すっげー! 二カ国語放送みてー! やっぱ未来は違うなー!」
達也は無邪気に喜んだが、ライアンは苦笑に近い微笑を浮かべていた。
「でも、意味は通じなかったみたいだね」
「え? 何?」
はしゃいでいて、ライアンの呟きはよく聞こえなかった。
「いや、何でもない。それはインカム兼用だから、絶対はずさないようにね。……参考までに。ティッタ、Jたちは今どこにいる?」
「一九〇一年アメリカ――」
ティッタはよどみなくそう答えかけたが、すぐにこうつけくわえた。
「でしたが、また跳びました。現在サーチ中……」
「というわけだ。とりあえず、アメリカに跳んでみなさい。……跳べるなら」
「沖縄もまだ行ったことないのにアメリカなんて……」
ぼやきながらも、達也は自分のバッグを〝教壇〟の下に置いた。
「俺、ニューヨークくらいしか知らな……」
そう言いかけた瞬間、達也の姿はかき消えていた。
「ティッタ! 達也は!」
上司の声に反応して、ティッタはモニタを確認したが、一瞬返す言葉に詰まった。
「き……紀元前一〇七年……アメリカ……に将来なるところです……」
「……跳びすぎたか」
ライアンが無表情に紡いだのと同じセリフを、達也は大草原のど真ん中で呟き、もっと時代を下るべく、もう一度タイム・ジャンプをした。
「簡単って……そんな簡単に言うなよ」
「ヤール。君、何を達也にけしかけているんだね?」
ロゼと一緒にモニタリングをしていても、達也とウムルの会話はしっかり耳に留めていたらしく、ライアンは露骨に不満そうにウムルを見やった。
しかし、ウムルはまったく動じない。むしろ、ライアンよりも不平そうだ。
「このまま追いかけっこを続けていても埒が明かんだろう。とにかく、Jとエレナを引き離せばJはジャンプできなくなる。ほんの数秒でもいい、あの二人に追いついてエレナだけをさらうことができれば、Jの確保は比較的たやすい」
「それを達也にしろというのかね?」
ライアンは怒るのを通りこして呆れていた。
「あまりにも無謀すぎるだろう。私はそんなことをさせるために達也をここに連れてきたわけではないよ」
「まあ、おまえは小僧がジャンパーだろうがホッパーだろうが、どうだっていいんだろうがな」
――何か、悔しいよな。
自分のことをタイム・ジャンパー――ようやく覚えた――だと言ったくせに、頭からジャンプできないと決めてかかられているのが。
(俺に本当にそんな力があるんなら……でも、タイム・ジャンプって、どうすればできるんだ?)
とりあえず、達也はウムルに言われたとおり、あの応接室を思い浮かべてみた。
(……あ、そういや俺、あそこに自分のバッグも置きっぱなしにしてきちまった。回収してこないと)
達也が少しあせった、そのとき、何か航跡のようなものが頭にひらめいた。
(え?)
瞬き一つした間に――
周囲の景色は一変していた。
見覚えのある、白いソファセット。
ソファの背もたれには黒革のコートがかけられていて、その向かいのソファには使いこまれたスポーツバッグが置かれている。
達也はまずそのバッグのほうを手に取って、それが間違いなく自分のものであることを確認してから、今度は黒革のコートを小脇に抱えた。
(けっこう重いな)
――早くライアンに渡してしまいたい。
ふとそんなことを考えたとき、またあの航跡のイメージが浮かび――
ライアンとウムルが、言い争ったときの格好のまま、呆然とした様子で自分を見下ろしていた。
「えーと……」
適当な言葉を思いつけなかった達也は、ライアンにコートを突き出した。
「これ、取ってきた」
ライアンは面食らっていたが、はっと我に返って、自分のコートを受け取った。
「あ、ああ……わざわざどうもありがとう……」
「……俺、今、行って戻ってくるまで何分かかった?」
何となく、ライアンではなくウムルに訊ねてみると、彼はなぜか複雑な表情をしていた。
「ほぼ一秒だ」
達也は信じられなくて、ウムルを凝視した。
「……嘘。俺、一秒以上は確実にあっちにいたよ」
「つまり、それだけ時間を遡って戻ってきたということだろう」
やや興奮気味の女の声が、ライアンとウムルの背後からした。
それを聞いた瞬間、二人は同時に〝まずい〟と言いたげな顔をした。
「キーツ、おまえにそんな隠し球があったとは知らなかった。それならなぜさっさとJたちを追わせない? そのためにここに連れてきたのではないのか?」
「違う。単に一人では帰らせられなかったからだ。確かにこの子はジャンパーだが、今まで無意識にしか力を使ってこなかった。自分の意志で跳んだのは、おそらく今が初めてだ。とてもJを追えるレベルにはない」
ライアンはロゼに反論しながら、達也を自分の後ろに押しやった。
「あんたのせいだよっ」
達也は小声でウムルを責めたが、ライアンの非難ですら平然と受け流す彼が悪びれるはずもなかった。
「いや、おまえがあんなにあっさり正確に跳んじまったからだ。無意識では何度も跳んでるっていうのは本当かもしれないな」
「無意識?」
「ようするに、眠ってる間にタイム・ジャンプしてたってことだ。スケールのでかい夢遊病だな」
ウムルの話を信じたわけではないが、そう言われてみれば妙にリアルな夢を見た記憶もいくつかあって、達也は何も言えなくなった。
「追えるか追えないかは、試してみなければわからないだろう」
一方、ロゼはあきらめるどころか、ますます乗り気になっていた。
「現時点で、エレナつきのJを追えるようなジャンパーはここにはいない。やらせるだけやらせてみろ。無理なようなら最終手段をとる。Jのスタミナ切れを待っていたら、いつになるかわからんぞ」
「早く確保したいのは私も同じだが、最終手段というのはもう少し時間をかけてからとるものではないかね?」
不快そうにライアンは言ったが、達也に向き直って少し身をかがめた。
「達也。本当にすまないが……」
「いいよ、やるよ」
皆まで聞かず、達也は答えた。
これにはライアンだけでなく、ウムルまで驚いた顔をしていた。
「事情はさっぱりわかんないけど、これが片づかないうちは、あんたから話の続きは聞けないんだろ? 一応、やるだけやってみる。失敗したらごめん」
「達也……」
感極まったようにライアンは達也を抱きしめようとしたが、それより先にウムルが達也の両肩をつかんで後ろに下がらせ空振りさせた。
「ヤール……」
「今ここでそんなことをしている場合か」
恨めしそうに自分を睨む同僚に、ウムルは侮蔑一歩手前の視線を投げ返した。
「そんな時間があったら、早く小僧に必要最小限の情報を与えて行かせてやれ。どうせ失敗するんなら早いほうがいい」
――最初から失敗するって決めてかかってるな。
達也は面白くなかったが、確かに、つい先ほどまで意識的に力を使えなかった自分が、顔も知らないジャンパーたちの後を追いかけて、さらにそのうちの一人をさらってくるなど、できると思うほうがどうかしている。
「それもそうか。……ティッタ」
「はい」
いちばん近くにいた職員が、すぐにモニタから目を離してライアンを見た。ということは、〝ティッタ〟というのはその職員の名前らしい。
金髪のやはり美人だったが、瞳の色はライアンとは違い、若葉色をしていた。
「そこのモニタに、Jとエレナの顔写真を出してくれ」
「承知しました」
ティッタは即座に自分の前の端末を操作し、モニタの一つに二人の顔写真を映し出した。
モニタ画面の向かって左には、くすんだ金髪の白人の青年。わりと整った顔をしているが、表情はふてぶてしい。
同じく右には黒人の少女。まだ小学生くらいに見える。ちぢれた黒髪を頭の両脇で団子にしていて、彼女には不似合いな濃いサングラスをかけていた。
「男のほうがJで、女の子のほうがエレナだ。エレナは全盲だが、タイム・シアーといって、意識だけをジャンプさせて過去や未来を見ることができる。Jは跳躍力はあるがノーコンでね。彼女がいないとまともに跳ぶことができない。……この写真、プリントアウトしようか?」
二人の顔写真を睨むように見ている達也に、ライアンは訊ねた。
「うーん……いいよ、いらない。邪魔になりそうだから」
「そうか。……いいかい、達也。無理は絶対禁物だよ。もう駄目だと思ったら、すぐにそのマシンの赤いボタンを押しなさい。オートでここに跳ぶようにセットしてあるから」
「赤いボタン?」
言われて、自分の左手首にはまっている腕時計型タイム・マシンを見てみると、確かにデジタル画面の下によく目立つ赤いボタンがあった。
「そのマシンの詳しい説明もしたかったんだがね。今は時刻しか表示されていないが、ここを出れば、現在地の年月日と時刻・経緯度を表示するようになる。……あ、そうだ、これも必要だな」
ライアンは思い出したように呟くと、制服のポケットから何かを取り出し、達也に手渡した。
「何これ?」
達也の手のひらの上に載せられたそれは、小指の先ほどの大きさしかない肌色をした石のようなもので、形は勾玉にいちばんよく似ていた。
「自動翻訳機。相手が何語をしゃべっていても、日本語に同時翻訳してくれる。Jもエレナも英語圏の人間だから、もし万が一会えたとしても、話ができないだろう。向こうも同じものをつけているから、君は普通に日本語で話せばいいよ。……これをね、耳の中にこうやって入れるんだ」
ライアンはその自動翻訳機を取り上げると、達也の右耳の穴に押しこめた。
肌に吸いつくような感じで、異物感はほとんどなかった。
「……何かしゃべって」
右耳を押さえながら、達也はライアンを見上げた。
『必ずここに帰ってくるんだよ』
真顔でライアンは言った。
左耳からは達也の知らない異国の言葉が、右耳からはライアン自身の声で日本語が聞こえた。
「すっげー! 二カ国語放送みてー! やっぱ未来は違うなー!」
達也は無邪気に喜んだが、ライアンは苦笑に近い微笑を浮かべていた。
「でも、意味は通じなかったみたいだね」
「え? 何?」
はしゃいでいて、ライアンの呟きはよく聞こえなかった。
「いや、何でもない。それはインカム兼用だから、絶対はずさないようにね。……参考までに。ティッタ、Jたちは今どこにいる?」
「一九〇一年アメリカ――」
ティッタはよどみなくそう答えかけたが、すぐにこうつけくわえた。
「でしたが、また跳びました。現在サーチ中……」
「というわけだ。とりあえず、アメリカに跳んでみなさい。……跳べるなら」
「沖縄もまだ行ったことないのにアメリカなんて……」
ぼやきながらも、達也は自分のバッグを〝教壇〟の下に置いた。
「俺、ニューヨークくらいしか知らな……」
そう言いかけた瞬間、達也の姿はかき消えていた。
「ティッタ! 達也は!」
上司の声に反応して、ティッタはモニタを確認したが、一瞬返す言葉に詰まった。
「き……紀元前一〇七年……アメリカ……に将来なるところです……」
「……跳びすぎたか」
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