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「ここなら誰にも邪魔されずに二人きりで過ごせそうだから」
その一言で彼の意図を察することが出来て私は愕然となる。つまりこれから始まるのね。だけど私はヒロインなんかにならないわ。彼は諦めた方がよろしいのではなくて!? とまあ、ここまで来たなら覚悟を決めるしかないのですけど……。
「さあルミア」
彼は椅子を引いて私の手を取って立たせてくれるわ。
「ありがとうございます」
私はそう返事をした。
それから二人で他愛のないことを話しながらお茶を楽しむことにしたのよ。彼は優しい口調とは裏腹に隙あらば誘惑してくるみたいなんですのね。キスまでは行きませんでしたわ。というか最後までしてしまう勇気がありません。もししてしまえば彼を本気で好きになってしまうんじゃないかしら。
「そんなのはダメですわ」
私は小さく首を振ったわ。とにかく彼は焦らすように触れてくるだけで、私は反応しないように努めているわ。だけど時々気持ちよくなってしまうの。つい甘い声を出しそうになってしまいましてね。我慢するので精一杯よ。
でも流石にこれ以上は不自然なんで、そろそろいいかと思って立ち上がったのだけど……。彼はまた急に無言になると、しばらく沈黙を続けていますの。その視線がどこか怪しいものに見えてきたわ。どうにも様子がおかしいのでもう一度尋ねてみると……。
「あっ……いや……何でもない……」
そう言われてもどうしたのか答えて欲しい。
「じゃあ話すけどさ。ルミアは可愛いからつい虐めたくなって」
はぁ? という疑問符が頭の上に浮かんでいたに違いないけどそれを気にせずに話し出すあたりはきっと大物だと思いますの。
「それで何ですか一体」
彼は先程と同じ内容を早口に述べてから大きく息をつくとこちらを向いて言った。
「実は君とこうしたかったんだ」
「こんな風にされたくてずっと待っていた」
と彼は私に熱い抱擁を求めてきたのよ!
ああなんていうことでしょう!
確かにそういう雰囲気ではあったの!
そういえば前回はこの流れだと襲われて致命傷を受ける羽目になるという最悪の結末を迎えるところだったわ。それが今回は……私は意を決して受け入れようとします。そしてとうとうその時が来た!
そしていざ覚悟を決めて彼の方に目を向けると、彼は瞳に哀しみの色を浮かべていましたのよ。
「もう終わりなのかな……」
そんな悲しい目をされると心苦しくなってきちゃうわ。でもここで安易な道を選ぶわけにはいきませんのよ!
「あなたを騙すつもりでいたのに私の方があなたの事を好きになってしまったみたい。愛しています」
「僕もだ!」
彼は嬉しさのあまり私に抱きつくようにして何度も接吻をしてきてくれましたの。私も応じるように首に腕を回します。情熱的な行為はさらにエスカレートしていき乳房への執拗なる攻撃に私は快感を覚え始めてしまいついに陥落してしまった…… そこで目が覚めます。やはり夢でしたの。
「どうしましたのルミア様? 酷い汗です」メイドのエレナさんが心配そうな顔をして訊ねてきます。
「悪夢を見たの」
私はそう答えて寝台から抜け出します。まだ目覚めて間もないため多少体が重くはありますが、時間の問題です。身支度を整え、朝食のため部屋を出て、階段を下ってゆきます。既に皆さんは席についていますが、その中に王太子は見受けられず、お姿が確認できません。どうしたことでしょう? すると背後に気配を感じました。
その一言で彼の意図を察することが出来て私は愕然となる。つまりこれから始まるのね。だけど私はヒロインなんかにならないわ。彼は諦めた方がよろしいのではなくて!? とまあ、ここまで来たなら覚悟を決めるしかないのですけど……。
「さあルミア」
彼は椅子を引いて私の手を取って立たせてくれるわ。
「ありがとうございます」
私はそう返事をした。
それから二人で他愛のないことを話しながらお茶を楽しむことにしたのよ。彼は優しい口調とは裏腹に隙あらば誘惑してくるみたいなんですのね。キスまでは行きませんでしたわ。というか最後までしてしまう勇気がありません。もししてしまえば彼を本気で好きになってしまうんじゃないかしら。
「そんなのはダメですわ」
私は小さく首を振ったわ。とにかく彼は焦らすように触れてくるだけで、私は反応しないように努めているわ。だけど時々気持ちよくなってしまうの。つい甘い声を出しそうになってしまいましてね。我慢するので精一杯よ。
でも流石にこれ以上は不自然なんで、そろそろいいかと思って立ち上がったのだけど……。彼はまた急に無言になると、しばらく沈黙を続けていますの。その視線がどこか怪しいものに見えてきたわ。どうにも様子がおかしいのでもう一度尋ねてみると……。
「あっ……いや……何でもない……」
そう言われてもどうしたのか答えて欲しい。
「じゃあ話すけどさ。ルミアは可愛いからつい虐めたくなって」
はぁ? という疑問符が頭の上に浮かんでいたに違いないけどそれを気にせずに話し出すあたりはきっと大物だと思いますの。
「それで何ですか一体」
彼は先程と同じ内容を早口に述べてから大きく息をつくとこちらを向いて言った。
「実は君とこうしたかったんだ」
「こんな風にされたくてずっと待っていた」
と彼は私に熱い抱擁を求めてきたのよ!
ああなんていうことでしょう!
確かにそういう雰囲気ではあったの!
そういえば前回はこの流れだと襲われて致命傷を受ける羽目になるという最悪の結末を迎えるところだったわ。それが今回は……私は意を決して受け入れようとします。そしてとうとうその時が来た!
そしていざ覚悟を決めて彼の方に目を向けると、彼は瞳に哀しみの色を浮かべていましたのよ。
「もう終わりなのかな……」
そんな悲しい目をされると心苦しくなってきちゃうわ。でもここで安易な道を選ぶわけにはいきませんのよ!
「あなたを騙すつもりでいたのに私の方があなたの事を好きになってしまったみたい。愛しています」
「僕もだ!」
彼は嬉しさのあまり私に抱きつくようにして何度も接吻をしてきてくれましたの。私も応じるように首に腕を回します。情熱的な行為はさらにエスカレートしていき乳房への執拗なる攻撃に私は快感を覚え始めてしまいついに陥落してしまった…… そこで目が覚めます。やはり夢でしたの。
「どうしましたのルミア様? 酷い汗です」メイドのエレナさんが心配そうな顔をして訊ねてきます。
「悪夢を見たの」
私はそう答えて寝台から抜け出します。まだ目覚めて間もないため多少体が重くはありますが、時間の問題です。身支度を整え、朝食のため部屋を出て、階段を下ってゆきます。既に皆さんは席についていますが、その中に王太子は見受けられず、お姿が確認できません。どうしたことでしょう? すると背後に気配を感じました。
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