悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音

文字の大きさ
4 / 22

4.

しおりを挟む
「ここなら誰にも邪魔されずに二人きりで過ごせそうだから」
その一言で彼の意図を察することが出来て私は愕然となる。つまりこれから始まるのね。だけど私はヒロインなんかにならないわ。彼は諦めた方がよろしいのではなくて!?   とまあ、ここまで来たなら覚悟を決めるしかないのですけど……。
「さあルミア」
彼は椅子を引いて私の手を取って立たせてくれるわ。
「ありがとうございます」
私はそう返事をした。
それから二人で他愛のないことを話しながらお茶を楽しむことにしたのよ。彼は優しい口調とは裏腹に隙あらば誘惑してくるみたいなんですのね。キスまでは行きませんでしたわ。というか最後までしてしまう勇気がありません。もししてしまえば彼を本気で好きになってしまうんじゃないかしら。
「そんなのはダメですわ」
私は小さく首を振ったわ。とにかく彼は焦らすように触れてくるだけで、私は反応しないように努めているわ。だけど時々気持ちよくなってしまうの。つい甘い声を出しそうになってしまいましてね。我慢するので精一杯よ。
でも流石にこれ以上は不自然なんで、そろそろいいかと思って立ち上がったのだけど……。彼はまた急に無言になると、しばらく沈黙を続けていますの。その視線がどこか怪しいものに見えてきたわ。どうにも様子がおかしいのでもう一度尋ねてみると……。
「あっ……いや……何でもない……」
そう言われてもどうしたのか答えて欲しい。
「じゃあ話すけどさ。ルミアは可愛いからつい虐めたくなって」
はぁ?  という疑問符が頭の上に浮かんでいたに違いないけどそれを気にせずに話し出すあたりはきっと大物だと思いますの。
「それで何ですか一体」
彼は先程と同じ内容を早口に述べてから大きく息をつくとこちらを向いて言った。
「実は君とこうしたかったんだ」
「こんな風にされたくてずっと待っていた」
と彼は私に熱い抱擁を求めてきたのよ!
ああなんていうことでしょう!
確かにそういう雰囲気ではあったの!
そういえば前回はこの流れだと襲われて致命傷を受ける羽目になるという最悪の結末を迎えるところだったわ。それが今回は……私は意を決して受け入れようとします。そしてとうとうその時が来た!
そしていざ覚悟を決めて彼の方に目を向けると、彼は瞳に哀しみの色を浮かべていましたのよ。
「もう終わりなのかな……」
そんな悲しい目をされると心苦しくなってきちゃうわ。でもここで安易な道を選ぶわけにはいきませんのよ!
「あなたを騙すつもりでいたのに私の方があなたの事を好きになってしまったみたい。愛しています」
「僕もだ!」
彼は嬉しさのあまり私に抱きつくようにして何度も接吻をしてきてくれましたの。私も応じるように首に腕を回します。情熱的な行為はさらにエスカレートしていき乳房への執拗なる攻撃に私は快感を覚え始めてしまいついに陥落してしまった…… そこで目が覚めます。やはり夢でしたの。
「どうしましたのルミア様?  酷い汗です」メイドのエレナさんが心配そうな顔をして訊ねてきます。
「悪夢を見たの」
私はそう答えて寝台から抜け出します。まだ目覚めて間もないため多少体が重くはありますが、時間の問題です。身支度を整え、朝食のため部屋を出て、階段を下ってゆきます。既に皆さんは席についていますが、その中に王太子は見受けられず、お姿が確認できません。どうしたことでしょう?   すると背後に気配を感じました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました

春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。 名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。 誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。 ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、 あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。 「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」 「……もう限界だ」 私は知らなかった。 宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて―― ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

処理中です...