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(やっぱり強い)
改めて実感すると同時に焦りが出てくる。
(このままやっていても勝てない)
そんな事を考えながらも必死に食らいつく。
しかし、どれだけ攻撃しても当たらないどころか、掠りもしない。
(どうすれば良いんだ)
このままでは埒が明かないと思い、一旦距離を取ると、深呼吸をする。
そして、再び攻撃を仕掛ける。
今度はフェイントを入れながら攻撃をする。
それに対して、余裕を持って対処する父に苛立ちを覚えながらも、冷静に相手の動きを観察する。
やがて、隙を見つけたリュートはそこを狙って攻撃を仕掛ける。
しかし、その一撃すらも簡単に防がれてしまう。
その後も何度も仕掛けるが、全ていなされてしまう。
それどころか、反撃を食らってしまう始末だ。
そんな時、リュートはあることを思いつく。
(もしかして……)
そう思ったリュートは魔法を使う事にした。
火属性の魔法を使い、炎の弾を飛ばす。
その数は十個ほどあり、避ける隙間がないように見える。
それを見たルーティアは避けようとせずに魔法を発動する。
すると、彼女の目の前に氷の盾が現れ、全ての炎を受け止めると蒸発してしまった。
それを見たリュートは愕然とした表情を見せる。
(嘘だろ……こんなのどうやって勝てばいいんだよ)
絶望に打ちひしがれていると、ルーティアが言う。
「これでは、私に勝てないわよ、私どころか、父親であるクロードの姿にも勝てない」
そう言いながら歩き始めると、リュートの前で立ち止まる。
そして、リュートの身体を優しく抱き上げるとクロードの姿に戻った。
突然の出来事に驚いているとクロードは言う。
「もう十分だろ?  もう無理をすることはないんだよ」
その言葉に思わず涙がこぼれそうになるが堪える。
今は泣いている場合ではないのだから。
そう思い顔を上げるとクロードを見つめる。
その視線に気づいたのか、クロードは言った。
「なんだ? 言いたいことがあるなら言ってみろ」
そう言われたので素直に思った事を話すことにする。
「俺、強くなれるのかな……」
その言葉にクロードは少し考えるとこう答えた。
「そうだな、今のお前では無理だな」
その言葉を聞いたリュートは肩を落とした。
それを見たクロードは続けて言う。
「だが、素質は悪くない、鍛えれば強くなるだろうな」
そう言うと、リュートは嬉しそうに微笑んだ。
それを見たクロードは微笑むと、リュートの頭を撫でる。
リュートは気持ちよさそうに目を細めると、そのまま眠ってしまった。
それを見たクロードはリュートを抱き抱えると、ベッドに寝かせる。
それから数日が経ったある日の事、リュートはいつものように修行を行っていた。
そんな中、リュートはふとある事を思い出す。
(そういえば、父さんって普段何しているんだろう……)
そんな疑問を抱いたので聞いてみることにした。
すると意外な答えが返ってきた。
なんと、彼は暇つぶしのために世界を旅しているらしいのだ。
そんな話を聞いていると羨ましくなってくる。
そんなリュートの様子を見たクロードが笑いながらこう言った。
「お前も行きたいか?」
そんな質問に対してリュートは迷わず頷いた。
そんな様子を見ていたクロードは頷くとこう言った。
「わかった、連れて行ってやろう」
その言葉を聞くと嬉しくなったが、同時に不安にもなった。
(本当に大丈夫なのだろ
そんなことを考えていると、クロードが言った。
「安心しろ、俺がいる限り、お前に危害が及ぶ事はない」
その言葉を聞くと安心すると共に安心した。
そして、二人は旅に出る事になったのだった。
こうして始まった二人の旅だったが、目的地は特になかった。
「父さんお願いがあるんだけど、ルーティアを封印してもらえるかな」
そう言うと頷き、クロードは変身魔法を使わないと約束してくれた。
それからというもの、二人はのんびりと旅を続けた。
そんなある日、二人はとある村を訪れる。
そこは小さな村だったが、活気があり、平和そうな場所だった。
リュートはこの村で暮らすのも良いかもしれないと思いながら歩いていると
一人の少女が話しかけてきた。
彼女は名をミレイというらしい。
年齢は14歳らしいのだが、見た目はもっと幼く見える。
そんな少女を見ているとなぜか懐かしい気持ちになった。
(なんだろうこの気持ち……まるで昔に会ったことがあるような……)
そんな事を考えつつも、彼女に案内されるがままについて行くと、そこには一軒の家があった。
どうやらここが彼女の家らしいのだが、どう見ても普通の民家にしか見えないのだが……。
そんな事を考えていると彼女が言った。
「今日からこの家に住むのよ」
(え?  なんで?)
そんな事を思っているとさらに驚く事になる。
なんと、その家にはもう一人住んでいたのである。
しかも、その少女は、リュートと同じぐらいの年齢に見える。
リュートは困惑しながらも自己紹介をした。
「初めまして、リュートと言います」
そう言うと、彼女も挨拶を返してくる。
「ミレイです、よろしくお願いしますね」
そう言って微笑む彼女を見てドキッとした。
(あれ? どうしたんだろう急に胸がドキドキしてきたぞ)
そんな事を考えていると、父が話しかけてくる。
「とりあえず今日はもう遅いから寝なさい」
そう言われて、ベッドに入るとすぐに眠りについた。
翌朝、目を覚ますと、すでに朝食の準備が出来ており、食卓には三人分の料理が並んでいる。
それを見て驚いたのは言うまでもないだろう。
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