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42.

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(どう考えても無謀過ぎるだろ……これ)
とはいえ、やらないわけにもいかないし仕方がないと思うことにしよう。
よし、やるぞ!
覚悟を決めて、立ち上がる。
そうして決意を固めたところで早速行動に移ることに決めた。
(そうと決まれば……)
「それじゃあ、始めるよ」
クロードに向かってそう言うと頷き返してくる。
それを見てから深呼吸をした後で意識を集中する。
しばらく待っていると全身が熱くなっていくのを感じた。
同時に、頭の中に声が響いたかと思うと次の瞬間には意識が薄れていった……。
そして、再び意識を取り戻した時、目の前の光景を見て言葉を失う。
なぜならそこには自分の姿が映っていたからである。
どうやら成功したみたいだ。
ホッと一息ついて安心すると、視線を下に下ろす。
(うわぁ、おっぱいデカイな)
自分の胸を揉みながら感想を思い浮かべる。
そんなことを考えていたらクロードと目が合ったような気がした。
慌てて視線をそらすが手遅れだったみたいで彼に声をかけられてしまう。
「何をしているんだ?」
その問いかけにビクッと震えるとぎこちない動きで振り向いて答えることにする。
正直怖かったけど意を決して答えた結果、なんとか信じてもらえたみたいだった。
その後は何事もなく時間が過ぎて行ったんだけど途中から何故かニーナが話しかけてきて困った。
内容は俺の性別についての質問だったのだが正直に答えていいものか、
どうか迷っていたところクロードに助けられたため安心した。
でもその後の話を聞いているうちにとんでもないことになってしまったと思いクロードを恨むことにするのだった。
結局その日はそれで解散になったのだけど翌日になってようやく目が覚めた。
昨日はあの後すぐに眠くなってしまったので早めに寝ようという話になり寝室に案内されそこで寝ることにした。
「ん~っ」
背伸びをしながら目を開けると、辺りを見渡す。
まだ朝早い時間だったが隣には既に誰かが眠っていたようだ。
よく見るとそれはクロードで、思わず声を上げてしまったために起こしてしまったようだった。
目を覚ました彼に謝ろうとした時である。
不意に違和感を覚えたので股間に触れてみたのだがそこにあるはずのものが、
ないことに気づき困惑するもののそれどころではなかった。
なんと胸が膨らんでいるのだから当然だろう。
一体いつの間にこんな身体になっていたのだろうと思いつつ自分の身体を見つめていると、あることに気がついた。
「えっ?」
驚きのあまり固まってしまうが、その間にも変化が起き始めたのか胸が大きくなっていったのである。
(まさか……本当に……)
呆然としながらも見ているとついには顔全体が変わっていくのがわかった。
(そんな……こんなことが……)
鏡に映った姿を見るとそこには美しい女性が映っており思わず見惚れていると後ろから声をかけられたので振り返って、
クロードが心配そうにこちらを見ていたのだがその姿を見た瞬間ドキッとしてしまったのだが、
それが何故だかわからず困惑していたところに更なる事態が発生するのだった。
どうやら俺の中で何かが起きたらしかった。
それからしばらくの間は、様子を見ていたが特に何も起こらないことから大丈夫だろうと判断した。
そのため部屋を出て一階へと下りることにした。
「それにしてもここは一体何なのだろう? なんで俺がここに連れて来られたのかもよくわからないんだよな」
そう呟いた直後のことである。目の前にいきなり扉が現れたのである。
それに驚いているうちに扉が開き始め、そこに一人の少女が姿を現したのを見て、今度はもっと驚いた。
何故なら現れたのは、以前助けたことのある銀髪の女性だったからである。
彼女は俺のことをじっと見つめたまま微笑んでくるだけだった。
背後から足音が聞こえてきたので振り向くとクロードがいた。
しかも何故か険しい顔をしているように見える。
もしかして怒っているのかと思っていた矢先のことだった。
突然腕を掴まれると、そのまま家の中に連れていかれてしまったのだがその行き先には、
全く覚えがなかったのだが気がつくといつの間にかベッドの上に座らされて、クロードと向き合う格好にさせられていた。
その時の様子は明らかにおかしかったように思う。
何せ、彼の顔は真っ赤に染まっていたのだから、そう思った瞬間。
俺はあることに気づいた。気づいてしまった。
いや、気付いてしまったのだ。
なぜなら、俺の目の前にいる男こそがクロード本人であり、しかも今の姿というのは女装した姿だという
事実に気付いてしまったからである。
そう考えた途端に全身に悪寒が走った気がしたのだがその直後のこと、突然視界が遮られた。
何が起こっているのかと戸惑う中、聞こえてきた声は紛れもなく彼女のものだった。
クロードだと思っていた相手は実は彼の娘であるニーナで、しかもその姿は先程まで見ていたものと全く同じもので、
つまり彼女は、本物だったのである。
そのことに驚いていたところで不意に押し倒されるような感覚を覚えて見上げるとそこには、
彼女が覆い被さってきていて身動きが取れなくなっていたのだが、不思議と怖くなかった上に妙に心地よかったためこのままでも、
いいかとすら思えてくるようになっていたのだということを、今の今まで気づくことはなかったのだと今さら後悔したところで遅いとは、
わかっているのだがどうしても悔やまずにはいられない自分がいることもまた事実ではあるのだった。
「んっ……」
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