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(優しい人だな……)
そんなことを考えていると、突然扉が開いて二人の少女が入って来たのだった。
入ってきたのは二人共少女だったが、二人ともとても可愛らしい容姿をしていた。
一人目は金色の髪をツインテールにしており、瞳の色は赤かった。
身長は低く、幼い顔つきをしているが年齢は自分よりも上のようだ。
もう一人も似たような感じではあるが、こっちは髪が緑色で長さはセミロングくらいだろうか。
顔立ちは幼さが残っているように見えるが、よく見ると整っていることがわかる。
二人はこちらを見た途端、駆け寄ってきた。
「クロードさんですよね!」
金髪の少女が元気よく尋ねてくる。
それに対してクロードは頷くと自己紹介をする。
それを聞いて喜ぶ彼女達を見ていると自分も嬉しくなってきた。
その後も会話を続けていたが、やがて話題はお互いのことになっていった。
クロードが二人に聞くと、まず緑の髪の少女のことから話してくれた。
彼女の名前はニーナと言い、年齢は十四歳だという。
「私は、魔族です」
言っても見た目は人間と変わらないですがね、
と付け足して苦笑する。
クロードが、そっと微笑むとと俺の頭を撫でてから、ゆっくり離れて行く。
「あ……」
離れたくないと言う気持ちを抑えながら小さく呟く。
でも、仕方ないことだ。
もうお別れだから……、そう思った時だ。
背中に柔らかい感触があることに気づいた。
振り返るとそこに、銀髪の女性が立っていた。
「貴女は?」
声をかけると女性は微笑み、ゆっくりと近づいてきてこう言った。
「私は、シンシアといいます、貴方の女ですよ」
そう言って、俺に、にっこり微笑む。
(えっと……、どういう意味だろう?)
意味がわからなかったので聞き返そうとしたら、彼女が話し始める。
その話によれば、どうやら俺を父親だと思っていたのだとか。
なるほど、そう来たか。確かに似ているしな、髪の色以外は、いや待て、それってつまり……俺って勘違いされてるのか?
なんで!?
わけがわからないよ!
でもまぁ、いいか。害はないだろうしな。
うん。
(いや待てよ、ということは……)
俺はある事実に気づいてしまい戦慄した。
もし、今目の前にいる彼女と本当の親であるはずの人物が顔を合わせればどうなるか?
間違いなく面倒なことになるだろうなぁ、と他人事のように思ったりしてみた。
そんな俺を見て、彼女はクスクス笑っていたが、不意に真顔になり言う。
「ねぇ、一つお願いしたいことがあるんだけど」
その内容を聞いてみると、先程話した妹の件であった。
なんでも、俺がミレイのことを受け入れてくれない限り、彼女と一緒にこの家に住み続けるつもりだと言ってきたのである。
いや、なんでそうなるのだろうか。
俺にはさっぱり理解できなかったが、拒否しても無駄なことはよくわかっていたので諦めるしかなかった。
とりあえず承諾してからミレイの方に視線を向けると、彼女は俯いてもじもじしていたので声をかけてみることにした。
何を言えばいいかわからないのでまずは名前を尋ねてみることにする。
それに対してミレイは小さく頷くだけで、何も答えてくれなかったが俺は続けて話しかける。
今度は自分のことをどう思っているのかを聞いてみたが、これもまた無視されてしまう。
さすがにちょっとイラッときたので思わず怒鳴ってしまったが、それでもなお黙ったままなので、さらに追撃を加えようとすると、
それをクロードに止められた。
なぜ止めに入るのかわからないが、とにかく俺はそのまま続けようとした。
「もういいんですよ、私なんて死んだ方がいいんです」
その言葉にカチンときた俺は思いっきりぶん殴ると大声で怒鳴りつけた。
全く効果はないらしく涙目のまま見つめてくるだけだ。
こうなったらもうヤケである。
覚悟を決めてからクロードに近づくと手を引っ張っていくことにしたのだが途中で逃げられた挙句どこかに行ってしまったので仕方なく追いかけることに、
気がつくとそこには、一人の男の子が立っていた。
誰だこいつは? と思っていると突然話しかけられる。
しかも日本語で、
(えっ、どういうこと……? だってここには私とこの子以外いないはず……)
混乱しているとその子が言う。
「僕はクロードの息子のリュートと言います」
それを聞いて驚くと同時に、彼が本物のクロードの息子であることを知ることになる。
「ど、どうして……?」
俺が動揺している間にも話は続いており、その話を聞き終える頃にはすっかり落ち着きを取り戻していた。
その後、彼は自分に何の用なのか尋ねたが、返ってきた言葉は予想外のものだった。
というのも彼の目的は自分を引き取ることであることがわかったからだ。
(そうか、そういう目的だったのか)
2人は何やら話し合っていたがやがて意見がまとまったようで、こちらの方を見ながら声をかけてきた。
こうして彼らに引き取られることになったわけだが、その際に注意されたことがいくつかあったので覚えておくことにした。
1つは、人前で変身したり本来の姿を見せないことなどだがこれは当然のことだと思う。
2つ目が問題だった。
なんでもこの姿でいる時は一人称を変えろということなのだ。
「わ、わかりました」
と返事をする。
ちなみに理由はよくわからないけど変えないといけないらしいです。
3つ目は魔法についての説明と練習のことだ。
5年前までは普通に使っていたはずなのに今は使えないということで困っていたら使い方を教えてもらえることになったがなぜか、
目の前で実演することになったのだ。
4つ目の理由が一番重要なことで、万が一の時には逃げることだった。
「わかりました」
了承した後に改めて考える。
やはり、逃げ出すのは難しいかもしれないと……。
何故なら、彼らの住んでいる所は人間の街だからだ。
それもただの人間が住んでるような普通の街ではなくて、大きな国の中にある一角に過ぎないからだ。
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