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俺は、喜んで引き受けた。
それから、しばらくの間、二人きりで過ごした。
何をするわけでもなく、のんびりと過ごすだけの時間だったが、幸せだった。
だが、それも、そう長くは続かない。
ニーナがやってきて、俺に話しかけてきた。
どうやら、俺達を探していたようだ。
何の用だろうと思っていると、彼女はこう言った。
「実は、お願いがあるんです」
「何でしょうか」
聞き返すと、彼女は答える。
「私を、あなたの弟子にしてもらえませんか」
それを聞いて、俺は驚いた。
なぜ、そんなことを言い出したのか、理解できなかったからだ。
だが、詳しく話を聞いてみると、理由はわかった。
彼女は、強くなりたいそうだ。
そのための手段として、俺のところに来たらしい。
俺は迷った末に、了承することにした。
どうせ、断ることはできないのだから、受け入れた方が楽だと思ったからだ。
それに、もし、彼女が強くなってくれるのなら、それはそれで都合がいいと思った。
なぜなら、いずれは、彼女を倒さなければならないからだ。
そのためには、強くする必要があるし、ちょうどよかった。
そういうわけで、俺は、彼女に稽古をつけることにした。
まずは、基本的なことから教えていくことにする。
とはいえ、俺は素人なので、大したことはできないのだが。
とりあえず、最初に教えるのは、
「魔力をコントロールする練習から始めよう」
魔力というのは、生命エネルギーのようなものであると言われている。
それを操ることができれば、身体能力を強化することができるようになるというわけだ。
というわけで、早速試してみることにした。
まず、目を閉じて集中する。
すると、自分の体の中に、温かいものを感じることができた。
これが魔力なのだろう。
それを右手に集めるようにイメージしてみる。
すると、手のひらの上に光球が現れた。
それは徐々に大きくなっていき、やがてバスケットボールほどの大きさになる。
そこで一度止めると、今度は左手に意識を向ける。
同じようにやってみると、やはり同じくらいの大きさの光の玉ができた。
そのまま維持していると、しばらくして、少しずつ光が弱くなっていく。
完全に消えると、俺はその場に座り込んだ。
すると、クロードが俺の顔を覗き込んでくる。
「大丈夫?」
心配そうな表情を浮かべながら聞いてくる。
俺は大丈夫だと答えると、立ち上がった。
クロードの手を取ると、歩き出す。
彼女は嬉しそうに微笑んだ。
俺はそんな彼女の姿を見て、可愛いなと思うと同時に、申し訳ない気持ちになった。
なぜなら、彼女の正体は、あの恐ろしい魔王なのだから。
しかも、今は人間の少女の姿をしているが、その正体は巨大なドラゴンなのだ。
そんな相手と、俺はこれから一緒に暮らさなくてはならない。
そう考えると、不安で仕方がなかった。
(本当に大丈夫なのか?)
心の中で呟くが、答えてくれる者はいない。
(まあ、考えても仕方ないか)
そう思い直して、気持ちを切り替えることにした。
ひとまず、家の中を見て回ろう。そう思ったところで、あることに気づいた。
(そういえば、どこに行けばいいんだろう)
考えてみれば、この家のことについて何も知らないことに気づく。
どうしようか悩んでいると、不意に声をかけられた。
見ると、そこにはニーナがいた。
彼女はこちらを見て微笑むと、話しかけてくる。
「どうかなさいましたか?」
その言葉に戸惑いながらも返事をする。
「いや、なんでもないよ」
すると、彼女は首を傾げる。
そして、不思議そうな顔をしながら聞いてきた。
「そうですか……ところで、あなたは誰ですか?」
その質問に対して、どう答えるべきか迷う。
正直に答えるわけにはいかないが、かといって嘘をつくわけにもいかない。
悩んだ末、本当のことを話すことにした。
自分は人間ではなく、別の世界から来た存在であり、この世界を救うためにやってきたのだと説明する。
それを聞いた彼女は納得した様子で頷くと言った。
「なるほど……そういうことでしたか」
それから、改めて自己紹介をする。
「私の名前はクレハと申します」
「私はニーナです」
お互いに挨拶を交わすと、握手を交わした。
その後、色々と話をした後、夕食をご馳走になった。
食事を終えると、風呂に入り、寝室へと向かう。
そして、ベッドに横になると、眠りについた。
翌朝目を覚ますと、朝食を食べる。
その後は、出かける準備をして家を出た。
向かった先は冒険者ギルドだ。
中に入ると、受付に向かう。
そこで、依頼書を受け取った後で、外へ出た。
目的地までは歩いて向かう。
森が見えてきたので、そこを通り抜ける。
さらに進んでいくと、分かれ道に突き当たったので、右の道を進む。
分かれ道に突き当たったので、左の道を進む。
さらに歩いていくと、分かれ道に突き当たったので、右の道を進む。
分かれ道に突き当たったので、左の道を進む。
その後も何度か道を間違えつつも、なんとか目的の場所にたどり着いた。
そこは小さな村だった。
周囲を柵で覆われており、入り口には門番が立っていた。
俺はその人に話しかけると、中に入れてもらった。
村の中に入ると、周囲を見回す。
建物は木造で、二階建ての建物が多い。
通りを歩いている人々は皆、獣人族で、猫のような耳や尻尾を生やしている者が多かった。
また、髪の色も様々で、青や緑などカラフルな色をしている。
中にはエルフのような尖った耳を持つ者もいた。
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