勇者パーティーを追放された俺は辺境の地で魔王に拾われて後継者として育てられる~魔王から教わった美学でメロメロにしてスローライフを満喫する~

一ノ瀬 彩音

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母はもういない。
彼女は俺と目が合うとニコリと微笑んだ。
俺は気まずさを感じつつも部屋に入ると、彼女と向かい合うようにして座った。
彼女はにこにこと笑っている。
「やあ、よく来てくれたね」
「いえ、こちらこそわざわざお越しいただいてありがとうございます」
社交辞令的に挨拶を交わしてから本題に入ることにする。
「実はお願いがあって来たんだ」
「なんでしょう?」
「君に、うちの子達の家庭教師をして欲しいと思ってね」
俺がキョトンとしていると、補足するように説明してくれた。
要するにこういうことらしい。
今、勇者達は実戦経験を積むために各地を旅しており、俺もそれについて回っているという。
しかし、いくらレベルを上げてもスキルを習得していないため強くなることができないのだという。
だから俺に修行をつけて欲しいというのが彼女の頼みだったのだ。
「なるほどな、そういうことなら任せておけ!」
と胸を張る俺を見て安心した様子の彼女はさらに続けた。
「では、魔王の選定に勝てればいいと?」
「ああ」
と答えると彼女は笑顔で頷いた後こう言ってきた。
「わかったわ、それじゃあ、貴方の強さを見せてもらうわね」
そう言って指を鳴らすと結界のようなものが展開されるのが見えた。
これで周りへの被害を抑えられるらしい。
そして俺は聖剣を構えて駆け出した。それを見た彼女も剣を抜き放ち構えを取る。
そしてぶつかり合った瞬間に火花が飛び散り衝撃が走った。
そのまま鍔迫り合いへと持ち込むが相手の力に押し返されてしまう。
(くっ、やはり強いな……でも負けられないんだ!!)
そう思いながら再び斬りかかると今度は受け流されてしまった。
「どうしたの?こんなものかしら?」
挑発してくる彼女に対して俺は冷静さを失いかけていた。
それでも何とか堪えて攻撃を仕掛けるが、全て防がれてしまい逆にカウンターを受けてしまい吹き飛ばされてしまった。
地面に叩きつけられた衝撃で動けずにいると彼女が近づいてくる気配を感じたので顔を上げると目の前に刃を突きつけられていた。
「これで終わりよ」
そう言った途端首筋に鋭い痛みが走った。
見ると血が滴っていた。
どうやら斬られたらしい。
「うぐっ……」
呻くような声を漏らしながらその場に倒れ伏すしかなかった。
薄れゆく意識の中で最後に見たものは不敵な笑みを浮かべる彼女の顔だった。
次に目を覚ました時にはベッドの上だった。
辺りを見回すと知らない部屋にいることがわかった。
「ここは……?」
呟くように言いながら体を起こすと、隣に誰かいることに気がつく、
そちらを見ると裸の女性が眠っていた。
驚いて声を上げそうになるが慌てて口を塞ぐ、よく見るとそれはリリアだった。
彼女もまた一糸まとわぬ姿になっていた。
どういうことだ?
混乱しているとドアが開き誰かが入ってきた。
振り返るとそこにはアリアが立っていた。
彼女は微笑みながらこちらに近づいてくると、いきなり抱き着いてきた。
突然のことに戸惑っていると耳元で囁かれる。
「おはようございます、リュート様」
それを聞いた瞬間背筋が凍りついた気がした。
恐る恐る振り向くとそこにはルミナスの姿があった。
彼女はニコニコしながらこちらを見ている。
その視線に耐えられず目を逸らすと、背後から声をかけられた。
振り向くとそこにいたのはアレクだった。
「よう!久しぶりだな!」
思わず身構えたが特に敵意はないようだ。
安堵して警戒を解くと彼は笑いながら言った。
「そう邪険にするなよ、ただ挨拶に来ただけだってのにさ」
そう言うと俺の肩を叩いてくる。
それに対して苦笑しつつ答えることにした。
それにしてもなんだか馴れ馴れしい奴だなぁと思っていると急に真剣な表情になったかと思うと頭を下げてきたので何事かと思った直後、
爆弾発言を口にしたのだ。
その言葉に動揺を隠しきれないまま質問を投げかけるが返ってきた答えは意外なものだった。
驚きのあまり呆然としていたがすぐに我に帰ると反論しようとしたが、
言い終わる前に遮られてしまった為それ以上何も言えなくなってしまった。
そんな様子を見ていたマリアは呆れたような表情を浮かべると言った。
「まったく、仕方ないんだから……まあ、いいわ、とにかく、今は勇者パーティを追放されて落ちぶれた元・魔王だけど、これからは私達と一緒に旅をするからよろしくね」
それを聞いて納得した。
(そうか、確かにそうだよな、それに考えてみれば、魔王の子か一緒にいれば、今後、人間に襲われることもなくなるんじゃないか?)
そう考えると悪い話ではないように思えた。
何より彼女達と一緒の方が楽しそうだと思った俺は二つ返事で了承することにした。
こうして俺は新たな仲間と共に旅に出ることになったのである。
数日後、俺たちは街を出て街道を歩いていた。
天気は快晴、絶好の旅日和である。
「まずはどこに行きますか?」
不意に声をかけられ振り返るとそこには笑顔のアリアがいた。
どうやらずっとついてきていたらしい。
そんな彼女に問いかけることにした。
すると予想外の答えが返ってくることになる。
なんでもここから北にある山を越えた先に人間の住む村があるらしいのだが、そこに立ち寄って情報収集をしたいのだという。
もちろん断る理由などないので承諾する事にした。
そして数時間後、目的の場所に到着したわけだがそこはとても貧しい村だった。
畑は荒れ果て家畜もほとんど見当たらない状態だったし、人々の服装もみすぼらしかったからだ。
だがその中でも一つだけ目を引く建物があった。
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