上 下
3 / 3

番外編*嫉妬のキス

しおりを挟む
「ルイセ、あと誰か残ってる?」
「いえ、リリー。これで全員……こら、逃げない」

 濡れた髪のまま駆け出す末っ子を捕まえたのは今や年長者となったルイセ。まだ顔立ちは幼くともテキパキと他のきょうだいにパジャマや寝具の指示をし、暴れる末っ子をなんでもないように押さえつけるとタオルで拭く。
 一日のミサを終えた教会が今日一騒がしくなる時間だ。

「わーん、リリ姉ー! ルイセがこわいよー!」

 ルイセから逃げてきた末っ子の涙に、片付ける手を止めたリリーはくすくす笑いながら抱きしめる。

「貴方が風邪を引かないためにしてくれてることよ。でも、拭き終わるまで我慢できたのは偉いわ」
「えへへ~」

 乾いた髪を撫でてくれるリリーに末っ子も笑顔になると彼女の唇に小さくキスする。リリーもまた頬にキスを返すと他の子供たちを見回した。

「それじゃ、みんなおやすみ。良い夢を」
「おやすみ、リリー」
「また明日~」

 ひとりずつおやすみのキスを頬にし、返される。いつもの光景だが不思議と空気が冷たいのは夜だからか。子供たちを見送ったリリーは両手で腕を擦ると、用意されていた暖かいハーブティーを口に運んだ。

「また隙間風ができたのかしら……。ルイセも戸締まりしてくれるのは助かるけど上着を羽織ってね」

 カップを置いたリリーがカーディガンを差し出すと、窓を確認していたルイセが振り向く。その口元は笑みを浮かべているのに黄金の瞳は光を失ったように冷ややかだ。
 それをリリーは灯りの影だと、気に留めることなく彼の肩にカーディガンを掛けると頬にキスを落とす。

「おやすみ、ルイセ。良い夢を」
「…………ぅん」

 か細い囁きにリリーの視線が移るが、先にキスが返されリップ音が鳴る。が、一度や二度ではない。リリーの顔を両手で包んだルイセは頬中にキスを落としていった。

「ん、はぁ……リリー……んっ」
「もう、ルイセ……ぁん」

 次第に息が荒く、リリーも恥ずかしそうに視線を床に落とす。
 異常に思えるが、神父が亡くなったばかりなうえ、下の子供たちの面倒や教会の掃除に寄付金集めと忙しい日々が続き、彼にとっての【甘え】が今しかないのだとリリーは受け入れる。が、さすがに唇に触れた瞬間、後退ってしまった。

「ちょ、ダメよルイセ……!」

 真っ赤な顔を両手で覆うリリーだったが、強く叱ってしまったことに気付く。伏せているルイセに顔面蒼白となるが、顔を上げた彼ははにかんでいた。

「僕こそ、ごめんねリリー……気持ち良くてつい……叱ってくれなかったら我慢でき……っ」
「る、ルイセ? 大丈夫?」

 身体を抱えたまま屈みこんだルイセにリリーは慌てて駆け寄るが制止をかけられた。

「大丈夫……だから、リリーも部屋に行って……もう、寝る時間だよ……」
「それはあな……っ」

 諭す声に反論したいリリーの視界が揺れる。
 最近増えた眩暈と眠気。自分も疲れていることを実感するリリーはふらつく身体を堪えながらルイセに目を向けた。

「ご、ごめんね私……先に寝るわ……」
「うん……おやすみ、僕の神様リリー

 妙な違和感を覚えたが、天使のような笑顔に安堵の息をついたリリーは覚束ない足で寝室へ向かうと泥のように眠った──近付く足音など知らず。









「っはあ、んっ、んっ、はあ……リリー、リリー……!」

 夜も深まり、町も静寂に包まれるなか、教会に併設された一室には熱を帯びた声が響き渡っていた。冷えきっていた室内は徐々に暑く、うわ言のように部屋主リリーを呼んでいるが、徐々に呻きへと変わる。

「あっ、ああぁ出る……っ!」

 お腹の奥から湧き上がった熱が白濁となって散る。
 大きく肩を上下に動かしながら蕩けた顔を魅せるのは月光によって一際黄金の髪を輝かせるルイセ。息を切らす彼は白濁を垂らす肉棒と寝息を立てる顔を一瞥する。

「ほら、リリー……僕の精子だよ」

 安らかに眠るリリーの顔も部屋着もすでに跨がるルイセによって穢され、新たな白濁が頬に擦りつけられる。
 粘性の糸に再び興奮したのか、勢いよく両手でリリーの顔を掴んだルイセは唇に口付けた。堪能するように何度も舐め、薄く開いた隙間に無理やり舌を捩じこむと口内を蹂躙する。

「んっ、はあ、リリーとキス……んっ、んく……幸せ……」

 離した唇から涎を落とすのも構わず頬どころか鼻、瞼、額、リリーの顔面を自身の白濁と共に舐め回す。きょうだい達の痕を消すように。

「はあ……リリー、可愛い……好き好き好き好き好き好き好き大好き……愛してる……早く家族になりたい」

 曝け出された乳房に肉棒を押し付けながら耳朶を舐め回し欲望を吐き出す。それでもリリーは小刻みに身体を浮かせては小さく喘ぐだけで起きる気配はない。
 恍惚とした目でリリーを見つめるルイセは彼女の細く白い腕を持ち上げると舌を這わせた。

「今日は……んっ、我慢ならなかったから……いつもより多く盛ったけど……よけい我慢できなくなっちゃった……」

 悪びた様子もなく指を一本一本舐めながら反対の手に自身の肉棒を握らせる。そのまま腰を動かせば扱かれているように思えて膨張した。

 自分の大切な神様リリーに甘えるどころか口付けた光景に腸が煮え返ったのは言うまでもない。むしろ、その場で堪えられたのが奇跡だ。

「もう、ダメだよリリー……僕以外に奪われるなんて……んっ、お仕置……っ!」

 腰を上げたルイセはリリーの頭を両手で持ち上げると、奪われた唇に勃起した肉棒を無理矢理咥えこませた。歯が当たって痛みが走るが、それさえも快楽に変わるルイセは根元まで押しこむと腰を振る。

「んっ……んん……っ」

 反射でのけ反り、くぐもるリリーに構わずルイセは頭を押さえつける。口内の暖かさ、舌のざらつき、亀頭を刺激する喉に再び白濁が放出された。

「~~~~っ!!!」
「あああぁ……リリー……そう、飲んで。僕の精子……全部……!」

 笑顔のルイセに対して激しく暴れるリリーは口から白濁と嘔吐、ショーツ越しに潮を噴き出した。鈍いスプリング音を響かせたベッドも彼女も多様な汁にまみれているが、ゆっくりと肉棒を引き抜いたルイセは気に留めることなく唇に口付けた。

「んっ、んん……はあ、リリー可愛い……可愛いよリリー……」

 最早なにがなんなのかわからない汁で穢されたリリーを愛しく呼びながら唇や顎、柔らかな乳房をしゃぶる。そのまま衰えを知らない肉棒を愛液にまみれた秘部に擦りつけた。

「はあ……はあ、リリー……僕、こんなに頑張って我慢もしてるから……ちょっとぐらいご褒美……ね?」

 懇願よりも脅迫に近いが、睡眠薬を盛られたリリーが聞くことはない。
 悍ましい笑みを浮かべるルイセは動悸を速めながら亀頭を秘部へと挿しこんだ──瞬間、産毛が逆立つほど全身が歓喜し、間髪を容れず白濁が噴出した。

「あっ、あっ……ぅ……そ……」

 たった先っぽを挿入しただけで達してしまったルイセは信じられないように痙攣するが、下唇から垂れた涎が落ちた先のリリーを見つめると両手で自身の頬を包み、はにかんだ。

「……どうしよ、リリー……僕、リリーが大好きって証が止まらないよ……早く家族ひとつになりたい……ならなきゃ……──家族ひとつに」

 月光よりも美しく微笑む黄金の天使。だが、貪るように口付け、亀頭に付けた白濁を秘部に押し付け穢す姿は悪魔そのもの。その正体を知る者はおらず、狂気は陽が昇るまで続いた──。




 ──翌日。
 カーテンの隙間から零れる陽光に重い瞼を開いたリリーがベッドから起き上がる。そのまま大きく背伸びし、欠伸をするが、ふと喉に違和感を覚えた。

「なんか……渇いてる?」

 渇きと苦味以外にも死角だが姿見だとわかる赤い痕、色味が変わったような部屋着や下着。些細な引っ掛かりを感じるが、いまだ頭がボーっとするリリーは深く考えることをやめ、修道服へ着替えると洗面所へ向かった。

「おはよう、リリー」
「あら、ルイセ」

 先客に迎えられたリリーは驚くが、柔らかな微笑に自然と頬が緩んだ。すると、拭き終えたタオルを置いたルイセが両手を広げる。きょとんとするリリーだったが、すぐ気付くと笑顔で彼を抱きしめた。

「おはよう、ルイセ」
「……おはよう、僕の神様リリー
「え?」

 か細い語気と背中に回った小さな両腕に、リリーの身体が僅かに疼く。不思議に思うも、新しいタオルを差し出すルイセに頭を横に振ったリリーは蛇口を捻り、鏡に映る彼を見送った。
 その手にあるタオルに自身を穢した愛液と白濁が浸みこんでいることなど知る由もない。

 数日後、末っ子の里親が決まり、家族ひとつになるまでの秒針が大きく傾くのだった────。





しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。

天織 みお
恋愛
「おめでとうございます。奥様はご懐妊されています」 目が覚めたらいきなり知らない老人に言われた私。どうやら私、妊娠していたらしい。 「だが!彼女と子供が出来るような心当たりは一度しかないんだぞ!!」 そして、子供を作ったイケメン王太子様との仲はあまり良くないようで――? そこに私の元婚約者らしい隣国の王太子様とそのお妃様まで新婚旅行でやって来た! っていうか、私ただの女子高生なんですけど、いつの間に結婚していたの?!ファーストキスすらまだなんだけど!! っていうか、ここどこ?! ※完結まで毎日2話更新予定でしたが、3話に変更しました ※他サイトにも掲載中

【R18】失恋してヤケ酒したら、ヤバいヤンデレに捕まった

おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
 初恋の王子様だと思っていたイケメン騎士が性犯罪者になってしまい、失恋して婚約解消の運びとなった、貧乏令嬢出身女騎士サンディ。  彼女が酒場でやけ酒していたところ、仮面をつけた綺麗な魔術師に持ち帰られてしまう。  次に気づいた時には、牢屋の中にいたサンディ。鎖で吊るされたまま、彼女は彼に――?  ※ムーンライト様の完結作品です、全9話予定。R18に※

私だけの神様

帳ツキミ
恋愛
「お姉さん、大丈夫?」 ある日、「死にぞこないの彼女」は一人の「少年」に救われる。 そして、「作り替えられる」。 その日から、少年は彼女の「神様」になった――。 これは、人を捨ててでも生きたかった「アリス」と少年の姿をした魔法使い「ロキ」の物語。

ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。

光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。 昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。 逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。 でも、私は不幸じゃなかった。 私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。 彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。 私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー 例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。 「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」 「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」 夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。 カインも結局、私を裏切るのね。 エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。 それなら、もういいわ。全部、要らない。 絶対に許さないわ。 私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー! 覚悟していてね? 私は、絶対に貴方達を許さないから。 「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。 私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。 ざまぁみろ」 不定期更新。 この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。

一部完|すべてを妹に奪われたら、第2皇子から手順を踏んで溺愛されてました。

三矢さくら
恋愛
「侯爵家を継承できるという前提が変わった以上、結婚を考え直させてほしい」 マダレナは王立学院を無事に卒業したばかりの、カルドーゾ侯爵家長女。 幼馴染で伯爵家3男のジョアンを婿に迎える結婚式を、1か月後に控えて慌ただしい日々を送っていた。 そんなある日、凛々しい美人のマダレナとは真逆の、可愛らしい顔立ちが男性貴族から人気の妹パトリシアが、王国の第2王子リカルド殿下と結婚することが決まる。 しかも、リカルド殿下は兄王太子が国王に即位した後、名目ばかりの〈大公〉となるのではなく、カルドーゾ侯爵家の継承を望まれていた。 侯爵家の継承権を喪失したマダレナは、話しが違うとばかりに幼馴染のジョアンから婚約破棄を突きつけられる。 失意の日々をおくるマダレナであったが、王国の最高権力者とも言える王太后から呼び出される。 王国の宗主国である〈太陽帝国〉から輿入れした王太后は、孫である第2王子リカルドのワガママでマダレナの運命を変えてしまったことを詫びる。 そして、お詫びの印としてマダレナに爵位を贈りたいと申し出る。それも宗主国である帝国に由来する爵位で、王国の爵位より地位も待遇も上の扱いになる爵位だ。 急激な身分の変化に戸惑うマダレナであったが、その陰に王太后の又甥である帝国の第2皇子アルフォンソから注がれる、ふかい愛情があることに、やがて気が付いていき……。 *女性向けHOTランキング1位に掲載していただきました!(2024.7.14-17)たくさんの方にお読みいただき、ありがとうございます! *第一部、完結いたしました。 *第二部の連載再開までしばらく休載させていただきます。

男主人公の御都合彼女をやらなかった結果

お好み焼き
恋愛
伯爵令嬢のドロテア・ジューンは不意に前世と、そのとき読んだ小説を思い出した。ここは前世で読んだあの青春ファンタジーものの小説の世界に酷似していると。そしてドロテアである自分が男主人公ネイサンの幼馴染み兼ご都合彼女的な存在で、常日頃から身と心を捧げて尽くしても、結局は「お前は幼馴染みだろ!」とかわされ最後は女主人公ティアラと結ばれ自分はこっぴどく捨てられる存在なのを、思い出した。 こうしちゃいれんと、ドロテアは入学式真っ只中で逃げ出し、親を味方につけ、優良物件と婚約などをして原作回避にいそしむのだった(性描写は結婚後)

ぴるぴる小動物系夫の守り方

駒元いずみ
恋愛
世間では行き遅れと呼ばれる二十五歳になった女性騎士クロエは、ある日王妃に縁談を持ちかけられた。縁談相手は何かと噂に事欠かない伯爵家の、もうすぐ十六歳になる三男坊。しかもこの少年、見た目は十二、三歳の訳あり美少年で……。小動物系美少年✕苦労性女性騎士のショタおね話。 ※設定上同性愛者が登場しますがメインではありません。また同性愛のR18シーンもありません。 【重複投稿】ムーンライトノベルズ

アンリお兄様は度を超えた心配性

下菊みこと
恋愛
・ヤンデレ ・運命の番 ・王子様 そんな短いお話です。小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...