13 / 18
初日最後のオリエンテーションⅡ
しおりを挟む
動きは悪くないな。エリーの拳を受け止めてみて俺はそう感じた。少しだけ痛いと感じる程には重たいパンチだ。
「なかなかやるじゃん」
俺がそう言うとエリーは「舐めないで下さい!」と言って渾身のパンチを俺にぶつけてきた。
「おっと」
なかなかの良いパンチだ。受け止めた俺の手がジンジンしていやがる。
「おっ!?」
至近距離からのセレネの一撃だった。俺の顔に向かって飛んできたその弾丸を、俺は紙一重で避けた。
「ほれ」
俺はエリーを左足に向かって足払いをするとエリーは体勢を崩してしまう。すると左腰にあるポーチからナイフを取り出して投げてきた。そのナイフは俺の顔に向かって真っ直ぐ飛んでくる。
「いい攻撃だ」
エリーはその間に体勢を立て直して俺に隠していたもう一本のナイフで攻撃を仕掛けてきた。俺の動きをよく見えてエリーは丁寧に攻撃を仕掛けてくる。そして左手に持つセレネの存在をチラつかせて、俺に銃の警戒を怠らないように仕向けている。実に効果的だ。普通の奴なら切り傷の一つや二つ負っていても不思議ではない。
「いい攻撃だエリー」
「まだまだです!」
エリーは俺に足払いを喰らわせたようだ。視界がグルンと回ってしまった。エリーはそのまま体勢を崩した俺の顔に目掛けてセレネの銃口を向けてきた。勿論、俺の顔を狙っていた。俺はメラーキで顔をガードしつつ、右手で地面をつきながらエリーの腹部を左足で蹴った。勿論、エリーはそのまま後ろへ飛んだ。距離にして十メートル程。まあまあ手加減したんだけどな。
「す――凄い」
「いい攻撃だったけどな。感心ばかりしていては駄目だぞ」
「まだまだいきます!」
と意気込んだエリーだったが。
「足払いで俺に一撃入れているから合格だよ」
俺がそう言うと「あ、そうか」と手をポンと叩くエリー。
「確かオリュンポス養成学校の四年生では実際に犯罪者を捕まえる演習があるんだっけ?」
「そうです! とは言っても犯罪者になりすました教師ですけどね」
「成程な。だから実践はしたことが無いと言ったわけか。その割には動きはなかなか良かったけどな」
「ありがとうございます!」
エリーはそう言って一礼をしてきた。
「一番良かった点はナイフを投げて体勢を立て直す時間を稼いだ事だ。それに銃の存在を意識してナイフ攻撃に集中していたのも良かった。悪かった点は攻撃の連撃が単調な事かな。あとは筋肉をもう少し付けたほうがいいな。武氣による身体向上に頼りすぎている」
「ご指導頂きありがとうございます! それにリストキー副所長の戦い方、ものすごく勉強になりました。最後の一撃のシーンですが、あんな身のこなしは私にはできませんので。何より最後の蹴りは武氣は全く纏っていなかったと思いますので、ただの脚力ですよね?」
「よく見ていたな。その通りだ。最後にエリーに仕掛けた攻撃はただの筋力。武氣も大事だけど筋力も大事だ。まあ俺程の筋力はつけなくていいよ。どちらかと言うと最後の左手に持つ銃でガード。右手で地面を支えながら左足で蹴り飛ばしたのは、確かに筋力もいるけど体幹だな。体幹トレーニングを行っていれば、攻撃のバリエーションも、カウンターのバリエーションも増える訳だ」
「体幹ですね――私あまり自信ないんですよね」
「自信が無くてもトレーニングをしていれば何とかなる。俺の任務にしばらく同行してもらって現場の肌に慣れてもらいつつ、空き時間には武氣の使い方、筋力、体力、体幹、集中力、精神力、狙撃力。様々なトレーニングを行う予定だから覚悟しておいてくれ。この演習場は様々な環境の疑似体験が出来る。特に溶岩フィールドは暑くてたまらん。900度から1100度近くある溶岩地帯に身を置くんだ。厳しい環境ってもんじゃない」
「も――もしかしてリストキー副所長はそんな厳しいところで稽古しているんですか?」
「まあ、うちの戦安官は皆そうだな。ヘルギと紹介できていない煉豪もそうだ。皆オリュンポス十二武レベルの強者揃いって訳だ。エリーもそれくらいにはなってもらうつもりだ」
「私がオリュンポス十二武のレベルに!?」
エリーはそう言いながら目を丸くして驚いていた。
「ああ。そうじゃないとエレウテリアの連中にはまず勝てないだろうよ。正直マンバみたいな幹部が他にも数名いると、今のオリュンポス十二武でまともに戦えるのは半分くらいだと思う。まあマンバがヘラクレス・ヴァイナーの右腕なら大した事ないんだけどな」
「しれっと凄い事言っていますねリストキー副所長」
「そうか? まあ今の俺が昔のヘラクレス・ヴァイナーくらいの強さだとすれば、奴はもっと上の実力だろう。それこそうちでもヘラクレス・ヴァイナーに勝てるのは所長くらい。オリュンポス十二武なら、シュパーガ・トリスタン司令官と、ウビーチ・ケイ執行官司令官くらいか」
「ヘラクレス・ヴァイナーはそれほど強いのですか?」
「ああ。恐ろしい程にな」
ヘラクレス・ヴァイナー。所長やストラーフさんなら大した相手では無い筈なんだけど、それ以外の人が戦うとなるとどうも勝てそうな人物がいない。もし、所長やストラーフさんがいない世界なら間違いなく奴が最強だ。
俺もずっとエリーに付きっ切りになる事はできないからエリーは自分の身を守る術を身に付けないといけない。
何より俺ももっと強くならないといけない。エリーに教える事で俺自身も学び。所長に練習相手になってもらう。それが俺が最強になる道のりだ。
「なかなかやるじゃん」
俺がそう言うとエリーは「舐めないで下さい!」と言って渾身のパンチを俺にぶつけてきた。
「おっと」
なかなかの良いパンチだ。受け止めた俺の手がジンジンしていやがる。
「おっ!?」
至近距離からのセレネの一撃だった。俺の顔に向かって飛んできたその弾丸を、俺は紙一重で避けた。
「ほれ」
俺はエリーを左足に向かって足払いをするとエリーは体勢を崩してしまう。すると左腰にあるポーチからナイフを取り出して投げてきた。そのナイフは俺の顔に向かって真っ直ぐ飛んでくる。
「いい攻撃だ」
エリーはその間に体勢を立て直して俺に隠していたもう一本のナイフで攻撃を仕掛けてきた。俺の動きをよく見えてエリーは丁寧に攻撃を仕掛けてくる。そして左手に持つセレネの存在をチラつかせて、俺に銃の警戒を怠らないように仕向けている。実に効果的だ。普通の奴なら切り傷の一つや二つ負っていても不思議ではない。
「いい攻撃だエリー」
「まだまだです!」
エリーは俺に足払いを喰らわせたようだ。視界がグルンと回ってしまった。エリーはそのまま体勢を崩した俺の顔に目掛けてセレネの銃口を向けてきた。勿論、俺の顔を狙っていた。俺はメラーキで顔をガードしつつ、右手で地面をつきながらエリーの腹部を左足で蹴った。勿論、エリーはそのまま後ろへ飛んだ。距離にして十メートル程。まあまあ手加減したんだけどな。
「す――凄い」
「いい攻撃だったけどな。感心ばかりしていては駄目だぞ」
「まだまだいきます!」
と意気込んだエリーだったが。
「足払いで俺に一撃入れているから合格だよ」
俺がそう言うと「あ、そうか」と手をポンと叩くエリー。
「確かオリュンポス養成学校の四年生では実際に犯罪者を捕まえる演習があるんだっけ?」
「そうです! とは言っても犯罪者になりすました教師ですけどね」
「成程な。だから実践はしたことが無いと言ったわけか。その割には動きはなかなか良かったけどな」
「ありがとうございます!」
エリーはそう言って一礼をしてきた。
「一番良かった点はナイフを投げて体勢を立て直す時間を稼いだ事だ。それに銃の存在を意識してナイフ攻撃に集中していたのも良かった。悪かった点は攻撃の連撃が単調な事かな。あとは筋肉をもう少し付けたほうがいいな。武氣による身体向上に頼りすぎている」
「ご指導頂きありがとうございます! それにリストキー副所長の戦い方、ものすごく勉強になりました。最後の一撃のシーンですが、あんな身のこなしは私にはできませんので。何より最後の蹴りは武氣は全く纏っていなかったと思いますので、ただの脚力ですよね?」
「よく見ていたな。その通りだ。最後にエリーに仕掛けた攻撃はただの筋力。武氣も大事だけど筋力も大事だ。まあ俺程の筋力はつけなくていいよ。どちらかと言うと最後の左手に持つ銃でガード。右手で地面を支えながら左足で蹴り飛ばしたのは、確かに筋力もいるけど体幹だな。体幹トレーニングを行っていれば、攻撃のバリエーションも、カウンターのバリエーションも増える訳だ」
「体幹ですね――私あまり自信ないんですよね」
「自信が無くてもトレーニングをしていれば何とかなる。俺の任務にしばらく同行してもらって現場の肌に慣れてもらいつつ、空き時間には武氣の使い方、筋力、体力、体幹、集中力、精神力、狙撃力。様々なトレーニングを行う予定だから覚悟しておいてくれ。この演習場は様々な環境の疑似体験が出来る。特に溶岩フィールドは暑くてたまらん。900度から1100度近くある溶岩地帯に身を置くんだ。厳しい環境ってもんじゃない」
「も――もしかしてリストキー副所長はそんな厳しいところで稽古しているんですか?」
「まあ、うちの戦安官は皆そうだな。ヘルギと紹介できていない煉豪もそうだ。皆オリュンポス十二武レベルの強者揃いって訳だ。エリーもそれくらいにはなってもらうつもりだ」
「私がオリュンポス十二武のレベルに!?」
エリーはそう言いながら目を丸くして驚いていた。
「ああ。そうじゃないとエレウテリアの連中にはまず勝てないだろうよ。正直マンバみたいな幹部が他にも数名いると、今のオリュンポス十二武でまともに戦えるのは半分くらいだと思う。まあマンバがヘラクレス・ヴァイナーの右腕なら大した事ないんだけどな」
「しれっと凄い事言っていますねリストキー副所長」
「そうか? まあ今の俺が昔のヘラクレス・ヴァイナーくらいの強さだとすれば、奴はもっと上の実力だろう。それこそうちでもヘラクレス・ヴァイナーに勝てるのは所長くらい。オリュンポス十二武なら、シュパーガ・トリスタン司令官と、ウビーチ・ケイ執行官司令官くらいか」
「ヘラクレス・ヴァイナーはそれほど強いのですか?」
「ああ。恐ろしい程にな」
ヘラクレス・ヴァイナー。所長やストラーフさんなら大した相手では無い筈なんだけど、それ以外の人が戦うとなるとどうも勝てそうな人物がいない。もし、所長やストラーフさんがいない世界なら間違いなく奴が最強だ。
俺もずっとエリーに付きっ切りになる事はできないからエリーは自分の身を守る術を身に付けないといけない。
何より俺ももっと強くならないといけない。エリーに教える事で俺自身も学び。所長に練習相手になってもらう。それが俺が最強になる道のりだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
5
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる