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エレウテリアの支援者Ⅱ
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「景色いいですね~」
と、俺の向かい側に座るエリーが、飛行機の機窓からスタンへ向かう途中の島国の景色を堪能していた。
「新任早々いきなり俺と二人旅だったけど問題無かったのか?」
「全く問題ないです。他の人なら抵抗あったかもしれませんが、リストキー副所長なら安心かなって」
「それ女性の勘ってやつか?」
「そんな感じですね」
俺にそう返答した後エリーは子供のように空からの景色を眺めていた。
「それにこのフカフカの椅子も最高ですね。まるで飛行機の中とは思えない程快適です。リストキー副所長の力って凄いですね」
「俺の力ってより所長の力だよ。だからこの飛行機に俺達はファーストクラスを利用できた。これに慣れるとエコノミークラスに乗れなくなるから、普段は使用しないことをお勧めするよ」
「飛行機にすら滅多に乗る事無いんですから、ファーストクラスなんて乗れませんよ」
「それなら良かった。俺達が今から行く国は世界中から危険視されている国だ。今のうちリラックスしておけ」
「そうですね。ありがとうございます!」
エリーはそう言って満面の笑みを浮かべるなり、手元にあるコーヒーを口に運んだ。
ただ、コーヒーを飲んでいる表情とは反面に、ティーカップを持っている手が少し震えていた。
「怖いか?」
俺がそう問いかけると「少しだけ――」と小さく呟いた。
「スタンでは殺人は勿論、強姦窃盗が非常に多い国で、年商10億以上の社長なら護衛を付けるのが当たり前と聞いております。女性に関しては夜に一人で出歩いていると、強姦殺人の被害にもあいますし、貧富の差が激しい国の為、生活苦になった両親が実の子を虐待するケースも多いとされております。その為、精神病質になってしまう子供が多く、猟奇殺人が年々増加しているとも聞きます。ネットや動画では行っていけない国ベスト5に紹介されているくらいですからね」
「エリーの武氣は覚えているし心配するな。それに今回の任務でエリーを単独行動させる気は無い。俺の目が届く範囲で行動してもらうつもりだ。加えて半径200m以内なら、エリーの身に何かあっても直ぐに助ける事ができる」
「どういう事ですか?」
「武氣ってのは接敵時になると素人程大きく乱れるんだ。エリーが俺の目が届かないところで、拉致とかされそうになっても直ぐに分かるって事だ」
「成程――。副所長は乱れないんですか?」
「全くな。そもそも俺の武氣はほぼ感じないだろ?」
「そうでした。物凄く強いのに武氣の存在感だと一般人より薄い。まるで高い木でのんびりしているナマケモノのようです」
「へえ――いい例えだな」
獲物を捕らえようと待ち構えている蛇ですら無いって事か――。エリーは俺から殺気すら微塵も感じないと言いたいわけだ。
「じゃあ一つ良い事を教えてやろう」
「良い事ですか?」
エリーは怪訝な表情を浮かべながら首を傾げていた。
「仮に武氣を俺のように0に等しい程抑える事ができる相手がこの機内にいるとしよう。どうやって気配をを感じ取ればいいと思う?」
俺の質問に「え――」と硬直するエリー。
「第六感的なところに頼るしか無いんじゃないんですか――? 服装とか手のマメとか身のこなしとか――それらを計算して見破るしか――」
「いい答えだな。じゃあ無人だと思っている場所に、その技術を持った人物がどこかで身を潜めていた場合、どうやって気付くことができる?」
「え――そんなの分からなく無いですか?」
「一つだけあるんだ。どれ程の達人だろうが人が存在するだけで空気の流れが変わる。それを感じ取るんだ」
俺がそう言うとエリーはポカンとした表情を浮かべていた。
「そ――それは理屈だとそうかもしれませんが、空気の流れなんて分かるもんなんですか?」
「ああ。訓練さえすれば分かる。あ、因みにこれが出来るのうちの事務所だと俺だけだから」
「つまり所長でも出来ない芸当なんですか?」
「そういう事。まあ、あの人は野生の勘が鋭いからな」
「それどうやって身に付ける事ができるんですか?」
「まあ一番手っ取り早いのは執行官になる事だけど、まずは武氣を0に等しい程抑える。すると、自分がまるでその空間に溶け込んだような感覚になるんだ。その感覚が分かれば空気の流れも感じ取れるようになるから、その感覚を常に覚えていればどれほどの達人だろうと、人がいるって断定できるんだよ。勿論、達人になれば殺気は消せるから、殺気を感じ取っている訳じゃないぞ?」
俺がそう言うとエリーはメモを取っていた。
「勉強になります」
「基本的な戦闘技術がある程度備わったら教えるつもりだ。俺が持っている技術全てをな」
「光栄です!」
エリーはそう良い返事をくれた。
「さてそろそろ飯にするか」
「そうですね! ファーストクラスと言えば一流シェフによる料理! 楽しみです!」
とエリーは目を輝かせていた。
俺達が堪能するのは一流シェフによる洋食コース。とうもろこしのムースと煮穴子や赤ワインソースのステーキなどのメニューとなっていた。信じられない美味しさに俺とエリーの頬っぺたが零れ落ちたのは言うまでもない。
と、俺の向かい側に座るエリーが、飛行機の機窓からスタンへ向かう途中の島国の景色を堪能していた。
「新任早々いきなり俺と二人旅だったけど問題無かったのか?」
「全く問題ないです。他の人なら抵抗あったかもしれませんが、リストキー副所長なら安心かなって」
「それ女性の勘ってやつか?」
「そんな感じですね」
俺にそう返答した後エリーは子供のように空からの景色を眺めていた。
「それにこのフカフカの椅子も最高ですね。まるで飛行機の中とは思えない程快適です。リストキー副所長の力って凄いですね」
「俺の力ってより所長の力だよ。だからこの飛行機に俺達はファーストクラスを利用できた。これに慣れるとエコノミークラスに乗れなくなるから、普段は使用しないことをお勧めするよ」
「飛行機にすら滅多に乗る事無いんですから、ファーストクラスなんて乗れませんよ」
「それなら良かった。俺達が今から行く国は世界中から危険視されている国だ。今のうちリラックスしておけ」
「そうですね。ありがとうございます!」
エリーはそう言って満面の笑みを浮かべるなり、手元にあるコーヒーを口に運んだ。
ただ、コーヒーを飲んでいる表情とは反面に、ティーカップを持っている手が少し震えていた。
「怖いか?」
俺がそう問いかけると「少しだけ――」と小さく呟いた。
「スタンでは殺人は勿論、強姦窃盗が非常に多い国で、年商10億以上の社長なら護衛を付けるのが当たり前と聞いております。女性に関しては夜に一人で出歩いていると、強姦殺人の被害にもあいますし、貧富の差が激しい国の為、生活苦になった両親が実の子を虐待するケースも多いとされております。その為、精神病質になってしまう子供が多く、猟奇殺人が年々増加しているとも聞きます。ネットや動画では行っていけない国ベスト5に紹介されているくらいですからね」
「エリーの武氣は覚えているし心配するな。それに今回の任務でエリーを単独行動させる気は無い。俺の目が届く範囲で行動してもらうつもりだ。加えて半径200m以内なら、エリーの身に何かあっても直ぐに助ける事ができる」
「どういう事ですか?」
「武氣ってのは接敵時になると素人程大きく乱れるんだ。エリーが俺の目が届かないところで、拉致とかされそうになっても直ぐに分かるって事だ」
「成程――。副所長は乱れないんですか?」
「全くな。そもそも俺の武氣はほぼ感じないだろ?」
「そうでした。物凄く強いのに武氣の存在感だと一般人より薄い。まるで高い木でのんびりしているナマケモノのようです」
「へえ――いい例えだな」
獲物を捕らえようと待ち構えている蛇ですら無いって事か――。エリーは俺から殺気すら微塵も感じないと言いたいわけだ。
「じゃあ一つ良い事を教えてやろう」
「良い事ですか?」
エリーは怪訝な表情を浮かべながら首を傾げていた。
「仮に武氣を俺のように0に等しい程抑える事ができる相手がこの機内にいるとしよう。どうやって気配をを感じ取ればいいと思う?」
俺の質問に「え――」と硬直するエリー。
「第六感的なところに頼るしか無いんじゃないんですか――? 服装とか手のマメとか身のこなしとか――それらを計算して見破るしか――」
「いい答えだな。じゃあ無人だと思っている場所に、その技術を持った人物がどこかで身を潜めていた場合、どうやって気付くことができる?」
「え――そんなの分からなく無いですか?」
「一つだけあるんだ。どれ程の達人だろうが人が存在するだけで空気の流れが変わる。それを感じ取るんだ」
俺がそう言うとエリーはポカンとした表情を浮かべていた。
「そ――それは理屈だとそうかもしれませんが、空気の流れなんて分かるもんなんですか?」
「ああ。訓練さえすれば分かる。あ、因みにこれが出来るのうちの事務所だと俺だけだから」
「つまり所長でも出来ない芸当なんですか?」
「そういう事。まあ、あの人は野生の勘が鋭いからな」
「それどうやって身に付ける事ができるんですか?」
「まあ一番手っ取り早いのは執行官になる事だけど、まずは武氣を0に等しい程抑える。すると、自分がまるでその空間に溶け込んだような感覚になるんだ。その感覚が分かれば空気の流れも感じ取れるようになるから、その感覚を常に覚えていればどれほどの達人だろうと、人がいるって断定できるんだよ。勿論、達人になれば殺気は消せるから、殺気を感じ取っている訳じゃないぞ?」
俺がそう言うとエリーはメモを取っていた。
「勉強になります」
「基本的な戦闘技術がある程度備わったら教えるつもりだ。俺が持っている技術全てをな」
「光栄です!」
エリーはそう良い返事をくれた。
「さてそろそろ飯にするか」
「そうですね! ファーストクラスと言えば一流シェフによる料理! 楽しみです!」
とエリーは目を輝かせていた。
俺達が堪能するのは一流シェフによる洋食コース。とうもろこしのムースと煮穴子や赤ワインソースのステーキなどのメニューとなっていた。信じられない美味しさに俺とエリーの頬っぺたが零れ落ちたのは言うまでもない。
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