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エレウテリアの支援者Ⅲ
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食事を済ました30分後。俺とエリーは世界で行ってはいけないとされているスタンへと到着した。本来であれば武器の類は没収されるのだが、俺達は民間軍事事務所の戦安官という事で許可が下りる。まあ許可されると言っても検問をしているスタン人の表情はあまり歓迎ムードでは無い。
勿論、その際にパスポートも提示している。まあ俺の場合は世間では死んだ人間。名前は同じでもパスポートに入っている過去の情報などは偽物だ。だから、俺の事を元オリュンポスの執行官とデータで気付くことは出来ない。
俺達が提示したパスポートをカードリーダーで読み取り、パスポートの中に入っている個人情報をパソコンでチェックする。
「どうぞ」
俺とエリーの入国検査は終了だ。武器の所有を認めないといけないので、検問官からすれば俺とエリーの存在は煙たい。
「凄い。本当に入国できた」
「オリュンポスや民間軍事事務所の戦安官なら通れるだけで、あとはスタンの重要人物とパイプが無いと、武器を所有して入国する事は出来ない」
「今の時代に武器を持たせてくれない国なんてあるんだと思っていましたからね」
「まあ、それが普通の感想だな。俺も同じ事思っているくらいだし。国としてはそれほど他国の人間を入国させたくないんだよ。それに閉鎖的な国だろ? ネットでも国の風景画像とかも極端に少ないからな。同じような街の画像ばかりだ。何なら、Z地区の情報なんて色々な都市伝説的な話が出てくるだけで、実態が明らかになっている情報は世間に出回っていない」
「そうですね――リストキー副所長はどんな国かご存知なんですか?」
「まあな。でもまあ守秘義務ってやつだ」
「本当に何者なんですか、リストキー副所長」
「なあに。俺は亡くなった兄貴の弟さ」
「そうですか」
と言ったエリーの表情は納得いっていなかった。少し喋り過ぎただろうか。
空港を出ると辺りは数キロ先にある山と地平線くらいの景色しかない。ハリブ国際空港はスタンの東側に位置する
空港だ。
「やっぱり褐色肌の人多いですね」
「スタン人の約七割が黒色人種だからな。残りの三割は白色人種やら、黄色人種がいるよ。そして黒色人種以外の人が権力を持つことが多いから、先住民の黒色人種のスタン人は外部の人間を嫌う傾向にある」
「そうなんですね。何だか歴史を掘り返すと根深そうですね」
「まあこの国の事については知らない方がいい」
「何でですか?」
「身の危険を守る為だ」
俺がそう言ったと同時に一台のタクシーが停まった。俺が手配していた防弾車だ。扉が自動に開くのは勿論、運転手がいない無人の真っ黒な車だ。
「す――凄い! もしかして自動操縦車ですか!?」
「そう言う事。目立つけど何があるか分からないからな。この国にいる間の移動はコイツに任せるつもりだ」
「徹底していますね」
「当たり前だろ? 危険な国なんだからな」
俺はそう言ってタクシーの後部座席に乗りシートベルトを着用した。エリーも同様にシートベルトをかけると、タクシーに搭載されているAIがこう問いかけてくる。
『行先はどちらにしますか?』
「チャイルドビルへ」
『かしこまりました。到着までおよそ40分。料金は10,500円です』
「え――そんなにするんですか?」
「そりゃあな。だって防弾車で自動操縦車だぜ」
俺がそう言うと「経費使いすぎじゃないな~」とエリーは心配していた。まあ、俺一人ならレンタルのホバーバイクなりでチャイルドビルまで行くんだけどな。エリーを出来るだけ危険から遠ざけるためだ。何より所長から許可下りてるし。
そこから40分かけてキールにあるチャイルドビルへと向かった。辺りに山しかない道をしばらく進むと、ビルが建ち並ぶ街が見えてきた。俗に言う都会の街ってやつだ。
「意外と発展しているんですね」
「キールだけだぞ。あそこまで発展しているのは」
俺がそう言ってもエリーはあまり俺の話を聞いていないようだった。建ち並ぶビルに夢中らしい。まあ、俺達の国にはあんな高いビルが並ぶことが無いからな。釘付けになるのも無理は無い。
そうしてキールに入ると景観がガラリと変わる。俺達の国のようなレンガ造りの建物が多い景観ではなく、鉄筋コンクリートを用いた20階建て以上のビル群だ。
「す――凄い」
「俺達が向かうところはまだまだこんなもんじゃない」
俺がそう言うとエリーが高揚しているのが分かる。
「もうすぐに着くぞ。気を引き締めろ」
「はい」
エリーが返事をした時の表情を見て大丈夫だなと感じた。さっきまで気が緩んでいた表情だったが、今は気が引き締まっている。
それから5分後。俺達が到着したのは地上高100mの高層ビル。
タクシーから降りるとエリーは目を丸くしてこのチャイルドビルを見上げていた。
「すご――まるで別世界みたい。もしかしてこのビルが?」
「そうだ。チャイルドビルだ。ビルに入る前に周辺調査しよう」
「え、入らないんですか?」
エリーはそう怪訝な表情を浮かべていた。
「確かに正面から入るのもアリかもしれないけど、こういった周辺調査も必要だ。何かあったときに地形も知っておく必要があるからな」
俺がそう言うとエリーは「でも――お迎えが――」
と不思議な事を言っていた。
「お待ちしておりましたガレス・リストキー様」
タクシーの前に黒いスーツと黒いグローブを着用している黒髪をオールバックにした白色人種の中年男性が俺にそう声をかけてきた。
「あれ――何で」
「詳しい事はチャイルド総帥に聞いてください」
と、言っているこの案内人の男性の目つきは普通の人間とは思えない凄みがあった。俺と同じだ。人を殺したことがある人間の瞳だ。一見普通の格好に見えるこの男性も武器を仕込んでいる。何より武氣を抑えている――。
今所有している武器はグローブピストルやら、仕込み刀と言った類のようだ。
「アンタ名前は?」
「私は名乗る程の者ではありません」
「いいから」
俺がそう言うとこの案内人は折れてくれた。
「私はパルスと申します。お見知りおきを」
「アンタと戦わない事を祈ってるよ。では案内してくれ」
「かしこまりました」
俺とパルスのやり取りにエリーはついていけてなかった。エリーはパルスが何者なのかも気付いていない。パルスって名前もコードネームだ。本名じゃない。恐らくチャイルド総帥直属の護衛。または雇われている殺し屋。或いは執行官――。
勿論、その際にパスポートも提示している。まあ俺の場合は世間では死んだ人間。名前は同じでもパスポートに入っている過去の情報などは偽物だ。だから、俺の事を元オリュンポスの執行官とデータで気付くことは出来ない。
俺達が提示したパスポートをカードリーダーで読み取り、パスポートの中に入っている個人情報をパソコンでチェックする。
「どうぞ」
俺とエリーの入国検査は終了だ。武器の所有を認めないといけないので、検問官からすれば俺とエリーの存在は煙たい。
「凄い。本当に入国できた」
「オリュンポスや民間軍事事務所の戦安官なら通れるだけで、あとはスタンの重要人物とパイプが無いと、武器を所有して入国する事は出来ない」
「今の時代に武器を持たせてくれない国なんてあるんだと思っていましたからね」
「まあ、それが普通の感想だな。俺も同じ事思っているくらいだし。国としてはそれほど他国の人間を入国させたくないんだよ。それに閉鎖的な国だろ? ネットでも国の風景画像とかも極端に少ないからな。同じような街の画像ばかりだ。何なら、Z地区の情報なんて色々な都市伝説的な話が出てくるだけで、実態が明らかになっている情報は世間に出回っていない」
「そうですね――リストキー副所長はどんな国かご存知なんですか?」
「まあな。でもまあ守秘義務ってやつだ」
「本当に何者なんですか、リストキー副所長」
「なあに。俺は亡くなった兄貴の弟さ」
「そうですか」
と言ったエリーの表情は納得いっていなかった。少し喋り過ぎただろうか。
空港を出ると辺りは数キロ先にある山と地平線くらいの景色しかない。ハリブ国際空港はスタンの東側に位置する
空港だ。
「やっぱり褐色肌の人多いですね」
「スタン人の約七割が黒色人種だからな。残りの三割は白色人種やら、黄色人種がいるよ。そして黒色人種以外の人が権力を持つことが多いから、先住民の黒色人種のスタン人は外部の人間を嫌う傾向にある」
「そうなんですね。何だか歴史を掘り返すと根深そうですね」
「まあこの国の事については知らない方がいい」
「何でですか?」
「身の危険を守る為だ」
俺がそう言ったと同時に一台のタクシーが停まった。俺が手配していた防弾車だ。扉が自動に開くのは勿論、運転手がいない無人の真っ黒な車だ。
「す――凄い! もしかして自動操縦車ですか!?」
「そう言う事。目立つけど何があるか分からないからな。この国にいる間の移動はコイツに任せるつもりだ」
「徹底していますね」
「当たり前だろ? 危険な国なんだからな」
俺はそう言ってタクシーの後部座席に乗りシートベルトを着用した。エリーも同様にシートベルトをかけると、タクシーに搭載されているAIがこう問いかけてくる。
『行先はどちらにしますか?』
「チャイルドビルへ」
『かしこまりました。到着までおよそ40分。料金は10,500円です』
「え――そんなにするんですか?」
「そりゃあな。だって防弾車で自動操縦車だぜ」
俺がそう言うと「経費使いすぎじゃないな~」とエリーは心配していた。まあ、俺一人ならレンタルのホバーバイクなりでチャイルドビルまで行くんだけどな。エリーを出来るだけ危険から遠ざけるためだ。何より所長から許可下りてるし。
そこから40分かけてキールにあるチャイルドビルへと向かった。辺りに山しかない道をしばらく進むと、ビルが建ち並ぶ街が見えてきた。俗に言う都会の街ってやつだ。
「意外と発展しているんですね」
「キールだけだぞ。あそこまで発展しているのは」
俺がそう言ってもエリーはあまり俺の話を聞いていないようだった。建ち並ぶビルに夢中らしい。まあ、俺達の国にはあんな高いビルが並ぶことが無いからな。釘付けになるのも無理は無い。
そうしてキールに入ると景観がガラリと変わる。俺達の国のようなレンガ造りの建物が多い景観ではなく、鉄筋コンクリートを用いた20階建て以上のビル群だ。
「す――凄い」
「俺達が向かうところはまだまだこんなもんじゃない」
俺がそう言うとエリーが高揚しているのが分かる。
「もうすぐに着くぞ。気を引き締めろ」
「はい」
エリーが返事をした時の表情を見て大丈夫だなと感じた。さっきまで気が緩んでいた表情だったが、今は気が引き締まっている。
それから5分後。俺達が到着したのは地上高100mの高層ビル。
タクシーから降りるとエリーは目を丸くしてこのチャイルドビルを見上げていた。
「すご――まるで別世界みたい。もしかしてこのビルが?」
「そうだ。チャイルドビルだ。ビルに入る前に周辺調査しよう」
「え、入らないんですか?」
エリーはそう怪訝な表情を浮かべていた。
「確かに正面から入るのもアリかもしれないけど、こういった周辺調査も必要だ。何かあったときに地形も知っておく必要があるからな」
俺がそう言うとエリーは「でも――お迎えが――」
と不思議な事を言っていた。
「お待ちしておりましたガレス・リストキー様」
タクシーの前に黒いスーツと黒いグローブを着用している黒髪をオールバックにした白色人種の中年男性が俺にそう声をかけてきた。
「あれ――何で」
「詳しい事はチャイルド総帥に聞いてください」
と、言っているこの案内人の男性の目つきは普通の人間とは思えない凄みがあった。俺と同じだ。人を殺したことがある人間の瞳だ。一見普通の格好に見えるこの男性も武器を仕込んでいる。何より武氣を抑えている――。
今所有している武器はグローブピストルやら、仕込み刀と言った類のようだ。
「アンタ名前は?」
「私は名乗る程の者ではありません」
「いいから」
俺がそう言うとこの案内人は折れてくれた。
「私はパルスと申します。お見知りおきを」
「アンタと戦わない事を祈ってるよ。では案内してくれ」
「かしこまりました」
俺とパルスのやり取りにエリーはついていけてなかった。エリーはパルスが何者なのかも気付いていない。パルスって名前もコードネームだ。本名じゃない。恐らくチャイルド総帥直属の護衛。または雇われている殺し屋。或いは執行官――。
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